🗂

FlashAttentionとMLA(Multi-head Layer Attention)のアルゴリズム詳細

2025/03/05に公開

機械学習、特に自然言語処理において、トランスフォーマーアーキテクチャはその効果的な注意メカニズムにより広く使用されています。しかし、シーケンスの長さが増すにつれて、従来の注意メカニズムは計算コストとメモリ使用量が大きな課題となります。そこで登場するのが、FlashAttentionとMLA(Multi-head Layer Attention)という革新的な最適化手法です。本記事では、これらのアルゴリズムの詳細を具体的に解説します。

FlashAttentionのアルゴリズム

FlashAttentionは、長いシーケンスを効率的に処理するために設計された新しい注意メカニズムです。このアルゴリズムは、計算量とメモリ使用量を大幅に削減しながら、情報の重要な部分に焦点を当てることができます。

処理手順

  1. 入力データの準備:
    シーケンスデータが与えられた場合、まずはそれをトークン化し、各トークンをベクトル表現に変換します。

  2. キー、クエリ、バリューの生成:
    トークンのベクトル表現から、以下の3つの行列を生成します。

    • クエリ行列(Q)
    • キー行列(K)
    • バリュー行列(V)
  3. スパースな注意重みの計算:
    FlashAttentionでは、全てのトークンのペアに対して注意重みを計算するのではなく、重要なトークンに対してのみ計算を行います。これにより、計算量が削減されます。

  4. 注意重みの適用:
    スパースな注意重みを用いて、バリュー行列に適用し、最終的な出力を得ます。重要な情報が強調され、不要な計算を省くことができます。

  5. 最終出力の生成:
    最終的な出力は、スパースな注意重みを用いたバリュー行列の加重平均として計算されます。この出力は、次の層への入力として使用されます。

具体例

例えば、シーケンスが「I love AI and machine learning」で、トークン化されると次のようになります。

  • Q, K, V行列を生成
    • Q: [[0.2, 0.3], [0.1, 0.4], ...]
    • K: [[0.1, 0.2], [0.3, 0.1], ...]
    • V: [[1, 0], [0, 1], ...]

注意重みを計算し、スパースな注意マトリクスを生成し、最終的な出力を得ることで、効率的な計算が実現されます。


MLA(Multi-head Layer Attention)のアルゴリズム

MLAは、従来の多頭注意メカニズムを最適化するために設計された手法です。このアルゴリズムは、特に多頭注意の計算を効率化し、モデルのパフォーマンスを向上させます。

処理手順

  1. 入力データの準備:
    FlashAttentionと同様に、入力シーケンスをトークン化し、ベクトル表現に変換します。

  2. クエリ、キー、バリューの生成:
    クエリ行列(Q)、キー行列(K)、バリュー行列(V)を生成します。

  3. 注意の分割:
    MLAでは、注意を複数のヘッドに分割します。例えば、8つのヘッドに分割する場合、各ヘッドは異なる重み行列を持ち、それぞれ異なる特徴を捉えます。

  4. 各ヘッドでの注意計算:
    各ヘッドごとに注意重みを計算し、バリュー行列に適用します。この時、MLAは効率的なメモリ使用と計算を実現します。

  5. ヘッドの結合:
    各ヘッドからの出力を結合し、最終的な出力を生成します。これにより、異なる注意パターンを統合した情報を得ることができます。

  6. 出力の生成:
    最終的な出力は、ヘッドの結合結果をもとに、次の層への入力として使用されます。

具体例

例えば、同様のシーケンス「I love AI and machine learning」を用いた場合、8つのヘッドに分割し、それぞれのヘッドで異なる注意重みを計算します。

  • 各ヘッドの計算結果
    • ヘッド1の出力: [[0.5, 0.1], ...]
    • ヘッド2の出力: [[0.3, 0.6], ...]

最終的な出力は、各ヘッドの出力を結合した結果として得られます。これにより、モデルは多様な情報を効率的に捉えることが可能となります。


結論

FlashAttentionとMLAは、トランスフォーマーにおける注意メカニズムを最適化することで、計算効率とメモリ使用量を大幅に削減します。FlashAttentionはスパースな注意を採用し、MLAは多頭注意の効率的な計算を実現します。これらのアルゴリズムは、特に長いシーケンスを扱う際に、その真価を発揮します。今後もこれらの手法が進化し、さらなる応用が期待されます。

Discussion