「市場全体が上がるとき、優良銘柄は劣後する説」を検証する
はじめに
以前読んだ下記の文献(※)に表題の説が紹介されていました。実際のデータでこの説を検証したのでまとめます。
(※)「投資のプロはこうして先を読む」 馬渕治好著 2018年7月
市場インデックス
日本国内の株価指数で代表的なものは以下である。
- 日経平均
- TOPIX
- JPX 400
日経平均は225社から成る指数、TOPIXは東証一部上場銘柄1000社以上から成る指数である。
JPX 400は比較的新しい指標で、優良銘柄で構成された、いわゆる「スマートベータ指数」である。(安定的に高ROEな銘柄)
検証したいこと
上記の株価指数はどれも日本市場の株価指数なので、基本的に連動している。「日経平均が上っているのにTOPIXやJPX400が下がった」などという事象は、ほぼあり得ない。ここでは、上がり幅・下がり幅(つまりボラティリティ)について考える。
上記3種の株価指数をボラティリティの大きい順に並べたらどうなるだろうか?率直に考えると、構成銘柄が多いほど平均化効果が働いてボラティリティが低減されると考えると、
日経平均 > JPX400 > TOPIX
と考えられる。
しかしながら、実際は
日経平均 > TOPIX > JPX400
となるというのが今回の説である。
説の根拠
つまり、
- 市場平均が上がるとき、優良銘柄(=JPX400)はそれほど上がらず、市場平均(=TOPIX)に負けてしまう。
- 市場平均が下がるときは、優良銘柄を持っておけば市場平均よりも下げ幅を抑えられる。
という意味である。この振る舞い、市場心理を考えれば以下のように説明できる。
市場が強気のときは、悪い銘柄がちょっと良くなっただけで大きく評価される。例えるなら、不良だった人間が更生すると、ずっと優等生だった人間よりもなぜか褒めてもらえる原理と同じである。一方、市場が弱気の時期は、寄らば大樹の陰の原理で優等生に人気が集まる。
検証
実際のデータで検証してみる。2014/1 ~ 2018/11のデータで、1ヶ月のリターンを集計してみたところ以下の表のようになった。TOPIXのリターンがプラスの時期は、TOPIXのリターン > JPX400のリターンとなる割合が大きく、TOPIXのリターンがマイナスの時期は、TOPIXのリターン < JPX400のリターンとなる割合が大きいということで、説のとおりの結果となった。
TOPIXのリターン > JPX400のリターン | TOPIXのリターン < JPX400のリターン | |
---|---|---|
TOPIXのリターン > 0 | 413日 (36%) | 291日 (25%) |
TOPIXのリターン < 0 | 200日 (17%) | 252日 (22%) |
まとめ
説がデータでサポートされて満足した。
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