Developer Productivity Engineering Summit2025参加レポート
はじめに
こんにちは、三菱UFJインフォメーションテクノロジーの髙橋です。
少し前の話になってしまいましたが、9月に開催されたDeveloper Productivity Engineering Summit2025に参加してきました。
本記事では、Developer Productivity Engineering Summit 2025で印象に残ったセッションを中心に、生成AI時代の開発生産性・DevExの最新動向と、実務にどう活かせそうかをまとめています。
なお、レポートの動画版についてはMUIT YouTubeにて公開していますので動画での説明のほうが良いということがあればそちらを参照ください。
【イベント】#177 Developer Productivity Engineering Summit2025 出張レポート
Developer Productivity Engineering Summitについて
Developer Productivity Engineering Summit2025は米国サンフランシスコにて2025年9月23日、24日に開催されました。このイベントは開発者生産性(Developer Productivity Engineering:DPE)と開発生産性に特化したイベントで開発者体験(DevEx)の未来を再定義することを目指したイベントです。
登壇者は、ソフトウェア組織のDPE及びDXの専門家で構成され、開発者生産性を大規模に拡大するための最新ツールとテクニックが発表されました。このイベント自体は4回目の開催となっており、今年の中心的なテーマはAI時代における開発スピードと品質の両立、そして開発者体験を重視した生産性測定の進化でした。

- 公式サイトより引用 https://dpe.org/dpe-summit
今回のイベントの参加者規模としては400名程度となっており、2部屋のみで発表されている形でした。部屋同士も場所が近かったので時間によってどのセッションに参加するのかを選択して参加することが可能でした。
注目セッション
聞いてきたセッション内容について一部ピックアップして説明します。
Keynote : You can write code faster. Can you deliver it faster?
このキーノートでは、AIが開発プロセスに与える影響と、AI時代に求められるデリバリーのスピードと品質の在り方について深堀されていました。
セッション動画は以下のリンクで公開されています。
AIがもたらす変化と課題
AIの活用により、ベロシティ(開発速度)は向上しています。AIはコードの理解促進、ペアプログラミング、コード生成、自動でのドキュメント生成、セキュリティ関連タスクの実行などを実行し、所要時間を短縮します。しかし「コンテンツにはエラーが伴う(More code = more mispredictions) と警告し、AIは魔法の杖ではないと強調していました。AI時代については単にコードの出力としてOutputを増やすだけではなく、ビジネス成果(Outcome)につなげること、そしてスピードと品質の両立が必要になるという説明がされていました。
可視化とフィードバックループの重要性
AIがコードを書くようになると、コードがブラックボックスとして扱われるリスクが高まります。このため、コードの内容以外の観点でのデータ化と可視化が重要になります。
鍵となる機能として、フィードバックループの安定化(Stabilizing the Feedback loop)が挙げられました。具体的な施策として予測的テスト選択(Predictive Test Selection)、テスト失敗のグルーピング(Failure grouping)、AIが実施したテスト結果や静的解析結果やコードカバレッジなどの情報をデータで人が見ていくことが重要であると述べられていました。



上記画像については動画より引用したものです。
AIを活用して短時間に多くのコードが出力されるようになっても、それが成果につながるか、品質についてもよく確認していかないといけない、ということを再確認することができました。
このセッションを通じて、AI活用の議論は「どれだけコードを書くか」ではなく「どれだけ価値を届けられるか」に移っていると感じました。
Optimizing for Time: Dark Matter
セッション動画は以下のリンクで公開されています。 以下画像についてはそこから抜粋したものです。
開発者の生産性を阻害する要因として、ビルド速度やツール改善といったコーディング時間そのものに焦点が当たりがちな現状に対し、非コーディング時間、すなわち「ダークマター」に存在する大きな最適化のチャンスがあることを発表されていました。
ダークマターの実態
開発者が日常的に対処しなければならないオーバーヘッドであるダークマターは、朝会、部門横断的な連携、チャット、メール、タスク管理など直接的にコーディングに影響を及ぼさない内容で構成されます。Metaの調査では、開発者の1日のコーディング時間が細切れになることが生産性低下の大きな要因であることが示されました。具体的にはある開発者の一日の時間の使い方が示され、ツールの切り替えや細切れ作業が続き、非常にノイジーで生産性が上がらない状況が例示されました。ダークマターの大部分は打ち合わせ、1on1、計画や進捗会、朝会などで示されています。
どのツールにどれぐらいの時間をかけているのかを可視化していました。スマホのどのアプリを使っているか?みたいなものかなと想像しました。ちなみにこの例は細切れ過ぎて良くない、ということでした。

理想的にはこのような形とのことです。

なぜこれに着目するかですが、生産性が高いフロー状態になるまで30分ぐらいはかかるということなので、細切れはNGということでした。

上記すべての画像については動画より引用したものです。
Metaにおける生産性の測定や改善
Metaでは、Time spending Coding per DiffやPercent Coding Time(コーディング時間/(コーディング時間+非コーディング時間)といったメトリクスを用いて測定、可視化しています。
改善策として、開発者が意図をもってコーディング時間とコラボレーション時間を固めていくように促すこと、そのために「Focus Time」を確保することが推奨されていました。予定表に Focus Blockとして集中時間を設定することが効果的とのことです。またビルド時間の削減は結果的にPercent Coding Timeの改善に寄与するとのことです。
私も個人の予定表にフォーカスタイムや、このタスクを実施する個人時間を設定して打ち合わせを差し込まれないように工夫しているのですが、それは効果があったのだなということで安心しました。
また、Meta社の別セッションでは、AIが書いたコードと人間が書いたコードのカウントを厳密にやっているということも特徴として語られていました。普通の企業はやったとしても行単位でカウントしているようですが、Metaでは単語単位にAIか人かを分別してカウント、管理、後から追えるようにメタ情報としてとっているとのことでした。デモで表示されていた画面では、人間が書いたコードは黄色、AIが書いたコードは青の背景になっていました。AIに一度コードを出力させ、一部を人間が修正するということもよくありますがその場合では修正したコードは黄色になっており、他のAIが出力してそのままのコードの部分は青くなっていました。レビュー品質を高めたり、開発者がAI出力結果についてどのあたりを直しているのかを分析してAIの精度改善にも使っているようです。
開発者の高いスキルを前提としつつも、しっかり数字として管理、判断に使っているというところは参考になりました。
Agentic Coding at AirBnb
セッション動画は以下のリンクで公開されています。
AirbnbのDeveloper Platformチームによるこのセッションでは、AIアシスタントの活用から一歩進んだ、エージェント型AI(Agentic AI)を活用したコーディング手法の現状と将来像が共有されました。
エージェント型コーディングへの移行
AirbnbではAIとのペアプログラミングでAIがドライバー、人間がナビゲーターとして捉えていました。AIエージェントの利用が急速に拡大しており、AIコードツールを利用した開発者の割合は87%に達しています。特にAgentic Codingを実践している開発者はプルリクエストを出すベロシティが38%向上しているとのことでした。なお単なるアシストツールとしてAI活用している人でも27%向上しているとのことです。
Airbnbは2025Q1に全エンジニアにAIエージェントを展開する計画を発表し、IntelliJプラグインベースのIDE型と、コマンドベースのCLI型のハイブリッドアプローチをとっています。CLIベースの利点はファイル操作が容易というのとAgenticワークフローに適しているためと説明していました。社内ノウハウを活用するRAGも構築しており、Air Chatというサービスを社内展開し、社内ノウハウをナレッジグラフ化してアクセスできるようにしているようです。新人や中途の方のオンボーディングの効率化に良い取り組みになりそうだと感じました。
重要原則
エージェント型コーディングを推進する中で、Airbnbでは品質の維持を最重要視していました。「AIによって標準レベルを落とすべきではない(Don't drop your standard for AI)」とし、AIによって生成されたコードであってもすべてのコード行はレビューが必要であるという方針を取っています。また、エキスパートの知識をMCPサーバーとして共有し、ツールの標準化を図ることも重要であると言ってました。
社内の知識をどのようにAIに活用するかという点はやはり重要であり、ツールの標準化もAI活用という観点で重要ということについて再度認識することができました。
Maven Turbo reactor
セッション動画は以下のリンクで公開されています。
Miroのエンジニアの方の発表でした。このセッションではマルチモジュールプロジェクトにおけるMaven実行時間を改善するツール、方法について紹介されていました。
mvn clean verifyコマンドで最初はビルドに41分もかかっていたというのがスタート地点でした。そこから本ツールを取り込んで-T5という並行ビルドを有効にするオプションを付与することで21分まで短縮できています。
また、Mavenの標準的な挙動では、モジュール間での並行処理が行われないことが問題であり、特にテストフェーズがすべてシリアル処理されると時間がかかることが問題と説明されていました。Mavenの実行フェーズにおいてpackageフェーズをテストの前に持ってきて、packageフェーズが終わったら並行で次のモジュールのビルドを開始するということで時間短縮が行われるとのことでした。
確かに、単体テストの書き方にもよりますがテストが終わらず時間がかかる、、という話はよくありますのでマルチプロジェクトの場合でこの問題にぶつかりそうな場合には利用を検討してみるのが良いかなと感じました。
このテーマについてはMavenの次期バージョンであるMaven5のテーマとしても議論中とのことでした。ただし取り込むと下位互換が保たれなくなるかもしれないということで慎重に進めているようです。
GitHubにプロジェクト公開されていました。Star数がまだ少なく、バージョンもまだまだ浅いというところは気になるところでした。

以下リンク先より図を抜粋しました。
- 説明されていたツールのGitHubプロジェクト
https://github.com/maven-turbo-reactor/maven-turbo-builder
まとめ
開発プロセスのモダナイズや、生成AI活用に直結するような取り組みとその情報にあふれていました。Gradle社のイベントということもありツールやツールチェーン(ツール間の連携)が中心かなと想像してきたのですが、期待を超える満足感を得られました。
参加者には日本から来ている方や、現地に駐在されている日本企業の方ともつながることができ、情報交換することもできてその点も良かったです。
参考:業後として現地Meetup(勉強会)に参加
知り合った現地駐在の方と話している中で、サンフランシスコはIT関連のコミュニティベースの勉強会ってどんな感じですか?という話題になり、一緒に現地のMeetup(勉強会)に参加しました。
詳細の記載は割愛しますが、今後もサンフランシスコに行くことはあると思いますので、今後の出張計画に組み込むかは都度考えていきたいと思います。
今後もこうした海外カンファレンスの知見を、自身の業務や組織改善に還元していきたいと思います。
Discussion