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RSGT2026参加レポート

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3年ぶりのRSGT参加

こんにちは。三菱UFJインフォメーションテクノロジーの髙橋です。Regional Scrum Gathering Tokyo 2026に参加してきましたので感想をレポートしたいと思います。

RSGT(Regional Scrum Gathering Tokyo)とはスクラムに関する国内最大級のイベントです。
世界的にはGlobal Regional Gatheringというイベントがあり、その東京版という形です。

Regional Scrum Gathering Tokyo 2026 is a 15th annual Regional Gathering held in Tokyo, organized by a non profit organization "Scrum Tokyo". Our purpose is to provide a "Ba" (place) where practitioners share ideas among Scrum practitioners having a great diversity.

ホームページより引用:https://2026.scrumgatheringtokyo.org/index.html

Day0から始まってDay3という4日間の開催ですが、私は業務の都合上Day2,3の2日間のみの参加となりました。

Day1

Day1のキーノートはImplementing Beyond Budgeting - Unlocking the Performance Potentialというタイトルで、「脱予算経営」をテーマにしたものでした。脱予算といっても無尽蔵に何でも、というものではなく、全体のプールはありつつ、お金の出入りを完全に透明化、可視化しながら運営していくというもののようです。動画は見られるようですので、後ほどじっくり見たいと思います。

Day2

From Frameworks to Substrate: Rewilding Agile to Work at Scale - フレームワークから土壌へ:アジャイルを野生に戻して大規模で機能させる

Day2のキーノートは「From Frameworks to Substrate: Rewilding Agile to Work at Scale - フレームワークから土壌へ:アジャイルを野生に戻して大規模で機能させる」というタイトルで、Dave Snowdenさんによる講演でした。

Agileはフレームワークで、そのとおりにだけやれば良いというものではない、難しいものだからこそ探求していく必要がある、という話と理解しました。以下は当日取っていた手元メモです。

  • アジャイルを何となくやっている人は、狼の皮をかぶった羊のようになっている。(通常よく出てくる表現である羊の皮をかぶった狼とは逆)
  • 欧米ではアジャイルは崩壊しているように見えている。トレーニングや制度設計といった大きな初期投資をし、理論ありきになってしまった
  • 相関と因果を混同するのはNG
  • 成功からの学びはただの真似ごとになりやすい。失敗からの学びは知恵や理解に繋がりやすい
  • アクターネットワーク理論。社員はリアルタイムのセンサーネットワークであり、モニターとなりうる
  • 会社では非公式ネットワークが大事。みんながお互いにつながって、社員が誰でも3ステップでCEOにつながれるようにすれば、緊急事態に強い組織になる
  • ITの人をユーザーに話させるよりも、ユーザーがITに話すようにトレーニングしたほうがよい
  • レジリエンスの5つのKey Action
    • 人間のセンサーネットワークの構築をする
    • サイロを超えたインフォーマルネットワークを構築する
    • 人間中心のゲームやシュミレーションを事前に活用する
    • 現状の状況を知る。どこにいくかではなく、5キロ先の道を知る
    • 道を作るということが大事
  • アジャイルはすべてのドメインで運用できるようにして、物事をドメイン間で移行していくことが重要
  • ストーリーには、マイクロナラティブとストーリーがあり混同してはいけない。例え話はストーリー。そこには人の行動や心情がある

アジャイル開発時代の品質マネジメントシステム

三菱電機の細谷さんによるセッションでした。製造業におけるアジャイル開発の拡大と品質保証の重要性について説明されていました。
細谷さんによる20年以上の経験を持つアジャイルコミュニティの活動が紹介され、IRにて公開されているようなイノベーティブカンパニーに向けた取り組みの一環として、マインドセットの変革が強調されました。
品質保証は単なるバグのないことではなく、顧客やステークホルダーに安心感を与える証拠やプロセスを提示する活動全般を指すということを再確認できたのが学びになりました。また、アジャイル開発における品質ガバナンスの確立が重要であり、権限委譲と透明性の維持が求められます。ISO9001の認証取得や品質技術者の派遣など具体的な方法が紹介されていました。

2つの画像の引用元: https://www.youtube.com/watch?v=SzF0jmQrRRE

一般的なアジャイル開発のプロセスだとPO(プロダクトオーナー)にリリース判定の権限を委譲するところ、説明の中では品質を重視するためにDoneの事前判定として品質技術者(QE)が加わって品質確認をしていくことが工夫ポイントだなと理解しました。
もう少し具体的に言うと、品質技術者(QE)がスクラムチームに派遣され、その人がNGと判断したら品質管理部門の中でエスカレーションされる形でした。
また単体テスト、結合テストという言葉は使わず、何をテストするのか?という聞き方で掘り下げるようです。
全部プロダクトバックログアイテム単位でのDone定義で品質確認できるのであればそれでいいが、できない場合はリリースのためのDoneの定義を作成し、それを確認するそうです。
さらに、品質部門長が定義を確認して承認し、そのあとでチーム単位へ権限移譲する形でした。なお、品質部門長は、品質もアジャイルもわかっている人というのが重要。電機でいうと自分です、と語られている点が力強く誇りをもって進められていると感じました。
当社でもアジャイル開発のスピード感を上げる際でも品質を悪くしてはならないというところがありますので、とても参考になりました。

あの夜、私たちは「人間」に戻った。 ── 災害ユートピア、贈与、そしてアジャイルの再構築

SHIFTの秋葉さんによるセッションでした。秋葉さんはトラブル対応や災害時の一体感をアジャイルに期待していたが、アジャイルを普通にやっているだけでは期待に達しなかった、そこからの工夫のようなところを語っていました。
制度が人間関係より重たくなったときに、人間関係が淡々としてしまうといった話がありました。確かにアジャイルチームを組成してチームビルディングをしていると最初は盛り上がってきてよいのですが、うまくいかなくなってきたときに人間関係やチームの雰囲気が悪くなるな、という身の回りの実感からも共感できました。
また、『災害ユートピア』という書籍より、「災害にはカーニバル的な側面がある。ユートピアである。」という記載もあったとのことで、最後にはRSGTというイベント自体もカーニバルとして考えられ、一緒に参加することで一体感を得られるのでは?という提案で締めくくられました。
私自身としても、システムトラブルが発生したときの一体感と高いパフォーマンスについては目を見張るものがあり、それこそがアジャイル開発で「問題VS私たち」のマインドに近いものがあるのではないか、と考えています。災害時の一体感ということは想像したことがありませんでしたので、今後のたとえ話の一つとして語れるようにしておきたいと思います。

Scrum を支える理論

永和システムマネジメントの平鍋さんによるセッションでした。昨年スクラムガイドのExpansion Packが発表されました。その際の発表に関するYouTubeを見ていたら、スクラムを作った一人であるJeff Sutherlandが近況としてなぜScrumがうまくいくのかの基礎的な理論体系を探っていることを語っていたのがきっかけで平鍋さん自身も興味をもって調べることにしたという話でした。
そこにはシンプルさがあったという発見でした。具体的にはニュートンの運動の法則(F=ma)のようなシンプルさ、漫画でいう「チ。」、ケプラーの法則も、膨大なデータがあってそこから帰納させて情報圧縮している。考え抜いた後にシンプルさが残る、それが多くの人に伝わる、というところに感銘を受けており、私もそうだな、と共感できました。
これをFirst Principlesと呼び説明されていました。

発表資料より引用:https://speakerdeck.com/hiranabe/first-principles-of-scrum

後半は数学の話になり、確率には2つの主義があるという話でした。頻度主義:長期的な試行の中での相対頻度として解釈。ベイズ主義:主観的な革新度、信念の度合いで解釈。1回目で戻せることが特徴、順方向ではなく、逆方向のことをGenerative Model(生成モデル)と呼ぶ。これはLLMと同じ。ベイジアンサプライズと呼ぶ過度なストレス:期待していた結果と全く違う結果がでると驚く(アフリカにいったことないのにアフリカの熱の陽性となる、など)ということをどうやって減らすか、ということが根底にあるとお話しされてました。プロダクトのデリバリー文脈では、最小驚きの原理と近しく、ステークホルダーの期待値管理と感じました。
以下の1点目の話です。


発表資料より引用:https://speakerdeck.com/hiranabe/first-principles-of-scrum

確率の話は高校数学以来にしっかり見たような記憶でしたが、丁寧に説明いただいたのでよく理解できました。資料上はもう少し続きはありそうでしたので、また別機会にお話を聞きたいと思います。

AI時代のアジャイルチームを目指して ー “スクラム”というコンフォートゾーンからの脱却 ー

ホロラボ 執行役員をされている及部さんによる、AI時代のアジャイルチームに関するセッションでした。及部さんといえばモブプログラミングや、チーム転職などこれまでも様々なアジャイル関連の発表をされてきた方という認識でしたが、そのチームでAIをどう扱っているのか気になっていたのでセッションを聞くことにしました。

生成AIをシステム開発でどう活用するか、世の中的な現在地はどうかという説明から入り、アジャイル文脈でいうと「XP、シクラム、アジャイルは変化に適応することをずっとやってきた自分たちであれば大丈夫」というメッセージがありました。
私たちは道具を形づくり、その後、道具が私たちを形づくる という言葉があるように、AI(道具)を使って何をするかよりも、AI(道具)を使う私たちはどうすべきかを考えたい、ということを念頭に入れて進められています。
チームで扱う変数を増やすという言葉も印象的でした。これまで定数にしてしまっていたところを変数にして考える(チーム人数、ロール、開発プロセス、組織)ということです。スクラムを今まで通りやっておけばよい、というコンフォートゾーンから脱却して物事を前に進める必要があるというものだと感じました。

発表資料より抜粋:https://speakerdeck.com/player/74b20e332c3d4173bf2114988d52a33c

Day3

RSGTの3日目はOST(オープンスペーステクノロジー)を午前中に実施し、午後はクロージングキーノートで終わるという流れが恒例になっています。

OST(オープンスペーステクノロジー)

OSTとは、集まったメンバーの中から語り合ったり議論したいものを出し合い、そのテーマにまた人が集まって語る、というのを繰り返す会議のファシリテーション手法の一つです。

この真ん中のテーブルで持ち込みたいテーマを発表します。

そのテーマが時間割のボードに貼られて、そのテーマごとに各テーブルで議論される、という流れでした。
今回は人数も多く、AからOまでのテーブルに分かれて1コマ30分で組まれていました。

参加したテーマの詳細は割愛しますが、アジャイル適応しにくい環境あるある、将来不安な若手に対して私に出来ることはないか、、というテーマについて参加しました。細かい環境は異なりますが、悩んでいる点や解決に向けての方向性は似ているなということを再確認できたのが収穫でした。

クロージングキーノート:AI駆動開発の時代〜小さなチームで世界を変えよう〜

ULSコンサルティングの漆原さんによる講演でした。事前に同社の方にDevinの話を聞いたことがあったので、その内容かなと思っていましたが、漆原さんから語られる背景や現状、期待については熱のこもった説得力のあるものを感じたので聞いてよかったなと思います。

Scrum的なAI駆動開発が今年、来年にかけて覚醒すると予想され、ヒトとAIの共働フレームワークが進化すると語られていました。Scrumの価値を尊重し、AIに任せすぎず、問い学びに集中し、価値へのコミットを重視することが大切とのことです。ロールやキャリアパスも変化し、スクラムマスターは人とAIの調整役、学習と成長文化の守護、AIに飲み込まれないブレーキ役を担うのではないかと予想されていました。小さなチームで大きな成果を出せるチャンスが来ており、学習と成長、若手育成問題、耐久力向上、予算と責任などの難しい場面もありますが、AI駆動開発の未来は明るいという締めくくりでした。

漆原さん自身がコードを書く際にAIを使うことが多くなったという話や、会社として提携されたCognition AI社のScott Wu氏とよくディスカッションしてAIの作り方、システム開発について分かっている方だったので話しているのが楽しくなった、その動画も公開してあるという話もよかったです。動画もまた時間を見つけて確認したいと思います。

まとめ

数年ぶりにRSGTに参加し、2日目と3日目のみでしたが多くの学びがありました。Agile Japanとは異なり、エンタープライズや事業会社中心という色が少ない分、かなり広い多様性が存在する中で意識的に学び、刺激を受けられる場としてとても貴重だなと感じました。

今回は社内から私一人での参加でしたが、機会と適切なメンバーを見つけて今後について参加を広げられないか考えていきたいと思います。

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