チーム開発における対話の重要性について
はじめに
アジャイルに開発しきれていないよなぁという自覚
私は新卒からずっとアジャイル開発(スクラム)案件に携わってきました。
スクラムのお作法を意識しつつも、会社の開発ルールとのおり合いをつけ、独自ながらある程度固まった形で開発を行ってきていました。
ただどうしても、「胸を張ってアジャイルに開発できてます!」とは言いづらく、なんとなくモヤモヤしていました。
Agile Japanのセッションを聴講したり、「組織を変える5つの対話 -対話を通じてアジャイルな組織文化を作る」 という本を読み進めていく上で、「フレームワークやツールに傾倒しすぎて、その前提の対話が不足しているのでは?」と感じ始めています。
(そもそも対話はアジャイルソフトウェア開発宣言に書いてある基本中の基本なんですけど。)
というわけで本書を読んで私が理解した対話が必要な背景、対話の分析の仕方を整理していこうと思います。
参考: Agile Japan 2024 2日目
参考:組織を変える5つの対話 -対話を通じてアジャイルな組織文化を作る
そもそもなぜ対話が重要なのか
以降、書籍のサマリはグレー背景で記載していきます。
- 「そもそも対話なんていらないぜ!」というのが昔の開発のスタンス。
- 優秀な管理職が、「機械的で交換可能な歯車」である労働者を正しく管理・指示すれば、プロジェクトはうまく推進するはず。(テイラー主義に基づいた考え方)
- しかし、ソフトウェア開発においては上手く機能しなかった。
- 1994年 CHAOS Reportでは「アメリカのソフトウェアプロジェクトの31%が打ち切られ、アメリカのソフトウェア企業の損失は810億ドルにのぼる」と結論。
- 実際にうまくいったプロジェクトを観察する中で、ドキュメントやプロセスやツールよりも 「人」 が重要であることが判明。
- 人間がソフトウェア開発における 「複雑だが最も重要な構成要素」 であることを認識。
- 人を中心にアプローチやプロジェクトを設計すべきだと考えられるようになった。
- その結果、アジャイルソフトウェア開発、リーンソフトウェア、DevOpsといった概念が生まれてきた。
物量的な生産性やルール・フレームワークではなく、人間の複雑さやプロジェクトにおける重要性 を意識して、開発手法がアップデートされてきている背景を理解すると、対話という背骨なしにフレームワークを実践するだけではアジャイル開発をうまく行うことができないことを理解できました。
アジャイル開発を進める上で、どうしてもプラクティスやフレームワークといった「これだけやればうまくいく!」と思えてしまうものに頼りたくなってしまっていたので、反省しました。
対話なんて簡単でしょ?
本当にうまく対話できているでしょうか...?
- 対話において重要とされているのは 「他者理解」 と 「自己開示」。
自身のコミュニケーションにおいてどのくらい「他者理解」と「自己開示」ができているのかを診断してみましょう。
自身の対話を診断する
以下が本書で紹介されていた対話の診断法です。
- 実際の会話の内容を記録する。
- その際に自身が感じていた感情も記録する。
- 相手をどれだけ理解しようとしていたのか を分析する。
- 自分が相手にした質問のうち、 純粋に相手がどのように考えているのかを確認するための質問 がいくつあったのかを数える。
- 「他者理解」は対話において質問という形で表現される。
- 同じ質問でも相手を誘導するための質問や自分の意見を主張するための質問は「他者理解」には通じない。
- 純粋な質問の割合からどのくらい他者を理解しようとしているかがわかる。
- 自分をどれだけ開示できていたのか を分析する。
- 自身が考えたことや、感情をどれだけ相手に伝えることができていたかを数える。
- 「なぜ相手は理解してくれないんだ?」とか「前に話していた内容と違うじゃないか?」と思った時に、相手にそれを伝えることができているか?
どのくらい「他者理解」と「自己開示」をすることができていたでしょうか?
私はチームの中でも比較的多く質問する方なので他者を理解しようとしている人間だと思っていたのですが、相手を理解するためではなく、自分の意見を通すための質問が多いことに気付かされました。
限られた時間内でより効率的に結論を出さねばという焦りから、対話よりも自分の意見を通す方に気持ちが寄ってしまっていたように感じています。
なぜうまく対話できないのか...?
「難しい決断をする時に、みんなで対話をして結論を出すべきだ!」と頭ではわかっているのに、なぜうまく対話できないのでしょうか?
- 人は「自分に危害が及んだり、恥ずかしい思いをしたりする可能性がある場合」は無意識に防御的な思考法を取ってしまう。
たとえば、気の置けない同僚には気軽に質問できるのに、大勢の前では「こんなことを質問したら自分が無知だと思われてしまうのではないか...?」と思って質問できなかったことはないでしょうか?
本当は伝えるべきだとわかっているのに、関係性の悪化を恐れて相手に意見できなかったりしたことはないでしょうか?
- 防御的な思考法を取ってしまうと、行動の目的が建設的なゴールの達成から、自分への危害・嫌な思いの可能性の排除に変わってしまう。
- この反応は無意識であるため、人は無意識にチームとしての建設的なゴール(対話)の阻害をしてしまう可能性がある。
無意識の内に対話がうまくいかない方向に動いてしまっていることを知り、難しい課題だと思いましたが、まずはそれを知ることが重要だなと前向きに考えています。
自身の対話を改善していく
ではどのように対話を改善していけば良いのでしょうか?
- 自身の対話を客観的に診断することにより、自身の無意識の癖を分析し、改善方法を考える。
- 実際にどう話すべきだったかを文章として整理し、実際に口にして練習する。
よりアジャイルに、チームが幸せに開発できるようにするために、まずは自身の対話能力を高めていきたいと考えています。
あとがき
本記事では、「組織を変える5つの対話 -対話を通じてアジャイルな組織文化を作る」という書籍を読み理解した、対話の重要性、対話を分析・改善する方法について記載しました。
本書籍には、より実践的な対話法がたくさん載ってるのでぜひ読んでみてください!
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