Microsoft Ignite 2025 その2
2日目以降のMicrosoft Ignite
※公開が遅くなってしまいましたが(現在12月)、11/19に記載していたレポートです
なお、掲載写真については、会場のイメージをお伝えするために撮影しました
そういえば、今回のIgniteは騒いだりする人もいませんし、大きな混乱もなく、順調に進んでいると思います。日本だと考えられませんが、多かれ少なかれ、過激な抗議活動はわりとあることなのでカルチャーの違いを感じます。日本と大きく違うのは貧富の差がとても大きいところでしょうし、会場から少し離れただけでもゾンビのような中毒者が結構歩いていたりします。なので、もしみなさんが海外カンファレンスに参加する場合、自分がどういう”ブロック”にいるのかは意識して行動したほうがいいと思いますし、「あれ?」と思ったら一気に治安が悪くなるのですぐに引き返したほうがいいと思います。
Foundry IQ
さて、2日目以降の内容になります。まずは
Foundry IQ: the future of RAG with knowledge retrieval and AI Search
からお話します。

内容は直接見ていただいたほうが早いと思うので、私が何を感じたかを中心に書いていきます。そもそも講演者のパブロさんは個人的に推しているエンジニアです。毎回講演内容がとても面白いので常にウォッチしていますし、直接質問しにいってもめっちゃ詳しく教えてくれます。とにかく頭キレキレのエンジニアで、話していて楽しいですし、親切でいい人です。去年は、AI SearchとCosmos DBとの違いや、どういう使い分けをするかを質問しました。個人的にはAI Searchって価格が高いなと思っていましたが、何を狙った構成なのか、非公開のHW構成の情報などもどんどん教えてくれました。どっちがいいというわけではなく、使い分けだという話をしてくれたのですが、とても納得できました。
そんなパブロさんですが、AI Searchを引っ張っている人なので、なんでFoundryなんだろうというのが疑問でした。ただ、講演を聞いてわかってきたのは、AI Searchの延長線に位置していて、FoundryにAI Searchのノウハウが沢山注ぎ込まれているということです。AI Searchは去年の後半からAgentic RAGに力を入れていて、インテリジェンスなナレッジ検索・引き出しが可能になっています。それをより進化させた、ある意味正常進化したのがFoundryだと思うようになりました。私は元々がデータベースエンジニアなので、AI時代のオプティマイザだなと思ったりしています。
そういったコンセプトが統合されてエージェント時代に合わせた設計がされていますし、どんなデータベースエンジニアも頭を悩ませるインデックスの作り方や考え方はとてもシャープだと思いました。これは完全に個人的な印象なのですが、Azureの強みはパブロさんがリードするAI Searchがあるからだとさえ思っています。AWSやGCPと比べてもアドバンテージがあるエリアでしょう。さらにそこに元々Microsoftが持っているOffice製品も組み合わせられるので強力です。パブロさんは、データの性質をよく理解されているので、話を聞いていて本当に気持ちいいです。
ただ、弊社環境は全部が全部Azureって訳でもないですし、オンプレミスにも相応にシステムがあるので、Foundryの良さを引き出すにはどうしたらいいのだろう・・・と思案していました。
Nasdaqの事例
私はこれまでAWS環境をずっと作ってきました。特にIaC(Infrastructure as Code)化を進めて、セキュリティに力を入れたのはいろいろなところでも語っているのですが、その際に参考にしていたのが、Capital OneとNasdaqです。どちらも金融業界においてはAWSの代表的なユーザーで、投資額もとんでもない金額になっています。もちろん沢山の事例公開もしていますし、ラスベガスのイベントではオリジナルセッションやブースも沢山出しています。Nasdaqのコンサートがクラブで開催されて行ってみたこともあります。「そんなNasdaqがなんで今更Azureなの?しかも結構地味な内容・・・」というのが興味を持ったきっかけでした。
Nasdaq Boardvantage: AI-driven governance on PostgreSQL and Microsoft Foundry
こんなマニアックな講演の聞き方をする人がいないのか、会場はかなりガラガラでした(苦笑)。AWSのイベントでNasdaqが講演となると結構人が入るんですけどね。で、実際に聞いてみてわかったことは、かなり割り切った使い方をしているということです。直接的に解説していないのですが、透けて見えることとしては、プロダクションシステムとしてNasdaqはAzureを使っていないということです。プロダクションの意味の捉え方にもよりますが、少なくともAWSのそれとは全く別物です。ただ、設計書を含むドキュメントや、コミュニケーションツールとしてのAzure利用はかなりありそうです。そういうナレッジの統合や、ミーティングの資料などを効率的に運営してAIを活用している印象でした。特に、会議の履歴を取っておいて、それで次のミーティングのアジェンダを生成させたりするのはとても合理的ですし、無駄な会議が減ると思います。
ドキュメント作成やOffice製品、会議アプリは何を選択して統合していくのかは悩ましい問題です。Microsoft系かGoogle系で分かれている印象がありますが、どちらも万全とは言えないと思います。特に個人的に不満なのは会議アプリの精度です。日本語の認識能力がまだ低いということと、アプリの問題ではなくスピーカーなどのハードが未成熟で、実際のミーティングにおいて完全に任せられるレベルにはなっていないと思います。議事録作成にも利用できますが、あくまでも補助的にしか使えないと感じています。話している人の認識をもっと正確にできて、同時に複数の人が話しても正確にトレースできるのであれば変わってくるのですが。
なので、現状では多くの会社が悩みながら運用しているのではないかと思います。Nasdaqの場合はMicrosoftのSPSやTeamsを使っているのだろうと想像できますが、英語だともっと認識できるのでしょうか。ちなみに話はそれますが、この手のツールをフル活用するのであれば、リモート会議のほうがうまくいきます。最近対面での会議も増えていますが、Teamsが人ごとの認識ができないので、トランスクリプトがめちゃめちゃになってしまい、この辺はファシリティーを含めての課題だと思います。
今回のIgniteで最も振り切ったセッション
ここまで振り切ったセッションはなかなか無いでしょう。1975年のコンピューター創世記にはじまり、Goto文で遊び、無駄にクラウドのリソースを使うという遊びを、これだけ豪華なメンバーで演じるのをライブで見るのは面白かったです。面白さがアーカイブで伝わるかはわかりませんが、ショーとして見てみるのをオススメします。
Scott & Mark learn to connect the dots

スコットもマークも、Azureのトップエンジニアなので全力でテックを解説しているのも面白いですが、今回は全力で遊びに振り切っていました。なお、インターネット創世記のモデム接続なんかは、世界どこでも同じことをやっていたんだなと思って笑ってしまいました。家族(親)からの見られ方も同じで、一緒だなと思います。テレホーダイで遊んでいた時代を思い出しました。同世代に生きることができたことに感謝します。
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