第39回人工知能学会全国大会でブース出展・発表参加してきました
こんにちは、MTECのAIグループに所属している田代です。
5月27日~30日にかけて開催された「第39回人工知能学会全国大会 (JSAI2025)」へ、企業スポンサーとしてのブース出展、ならびにポスター発表参加をしてきました。初のブース出展だったということもあり、本記事では出展までの経緯や当日の様子などについてご紹介したいと思います。
人工知能学会全国大会 (JSAI) とは
人工知能学会全国大会は、日本のAI分野に関する研究者・技術者・学生が一堂に会し、最新の研究成果や技術動向を共有する国内最大級のイベントです。今年はグランキューブ大阪で開催され、参加者数は5000名弱、現地参加も4000名と大盛況でした。弊社からはAIグループのメンバー中心に5名が参加しました。
企業ブース出展
出展のきっかけ・準備
MTECからのJSAIへの参加自体は初めてではなく、何度か聴講・発表参加を行ってきましたが、小規模な企業ということもありブース出展はこれまで未経験でした。ですが、社内にAIグループが発足し「AI・機械学習人材の採用を強化したい」という動機が高まってきたこともあり、初の企業ブース出展に挑戦することを決めました。
ちなみに、実は昨年も出展を検討していたのですが、満員で早期募集打ち切りのトラップにはまり、出展機会を逃していました……。なんでも早め早めの行動が大事だと痛感しました。
さて、準備は大変だろうと薄々予想していたものの、いざ着手してみるとタスクの数は相当でした。何せブース出展自体が初めてなため、テーブルクロスや企業ロゴ入りの旗は当然なく、それどころかポスターやアメニティも一から準備する必要がありました。プレゼン資料以外のデザインを全然やったことのない面々にはなかなか過酷です。ですが今回はAIグループ以外の社員にも色々ご協力いただき、当日は下にあるような立派なブースを出展することができました!
当日の展示
今回のブースでは、会社紹介、研究ポスター紹介、プロダクト紹介など色々行いました。
初日の1セッション目の時間帯は全然人が来なく、「このままではチラシもアメニティも大量に在庫が出てしまう……!」と内心不安だらけでしたが、その後は物珍しさもあってか足を止める人もポツポツ増えていき、最終的には多くの学生や研究者の方々と交流できました。
アメニティのコーヒー。好評でした
ブースを訪れた方々の関心の1つは、弊社がそもそも何をやっているか。「金融でAIって使われているんですね。どういった活用事例があるのですか?」という質問も何度も受けました。昔よりは大分浸透してきたと思っていたのですが、分野の外ではまだまだ金融とAIは結びつかないようで、こういう場でのアピール・情報発信も大事だと実感しました。
また、研究ポスターを見て足を止めてくれる人が想像よりも多かったです。ブースにいる間も半分ポスターセッションを開いている気分でした。
若干心残りだったのは、インターン実施をもっと大きくアピールしとけば良かったということです。掲示の文字が小さく、詳細を口頭やWebリンクで補う形だったため、目に留まりにくかったと感じました。次に出展する際には、通りがかった人が一目で気がつくようなアピール方法を検討します。
研究発表
MTECからは今回以下2件の研究についてポスター発表を行いました。普段は口頭発表中心のためポスター発表は久々でしたが、活発にディスカッションができて良い機会でした。
[1Win4-59] 独立成分分析を用いた事業リスクの分類および定量化の検討
企業の有価証券報告書に書かれている事業リスクの節の文章を、独立成分分析を用いて定量化した研究です。リスクのカテゴリが独立成分として綺麗に分離できることを示しました。
[2Win5-72] 時系列基盤モデルを活用した金融リスク推定方法の検討
昨年盛り上がって時系列基盤モデルの金融への応用検討として、メジャーな金融リスク指標であるVaRの計測を試みた研究です。期待したよりも時系列基盤モデルの使い勝手が良くなく、実用には課題も残る結果となりましたが、有益な知見を得られました。
これらの研究については、今後ブログで詳細に紹介しますので、気になる方はお待ちください。
セッション聴講
ブース出展のためあまりセッションを聴講できなかったので、他のメンバーによる記録も少し交えて、気になった研究をご紹介します。
-
[3Win5-26] 経験的に推定した不確実性分布に基づく時系列予測のための拡散モデルの反復的なデコーディング戦略
拡散モデルによる時系列生成において、推論時に工夫して反復的なデコーディングすることで、時系列パスを尤もらしいものに近づけていこうという研究です。田代が以前発表したCSDIという時系列生成モデルを改良した研究であり、自身の研究がベース、かつ検討したことのないアプローチ、ということで非常にワクワクして聞きに伺い、色々質問もさせていただきました。
時系列生成モデルを予測に利用する際は中央値などを予測値とすることが多いですが、この研究で提案されている1本のパスのデコーディングからより尤もらしいパスを導けるのは有用そうで、試してみたいと思いました。最近は拡散モデルによるLLMも発展してきており、拡散モデル生成はまた熱い分野になるのではないでしょうか。(田代) -
[4G1-GS-6-04] 大規模言語モデルにより生成された日本語テキストの検出性能の検証
大規模言語モデル(LLM)によって生成されたテキストか、人間が書いたテキストかを判別する技術に関する研究発表です。
「Binoculars」と呼ばれるゼロショットでLLM生成文章を検出する手法を日本語テキストに対して適用し、人手判別よりも高い検出性能が得られています。また「焦点損失(Focal Loss)」を用いてスコア関数を改良しており、その結果判定が難しいとされる短い文章(短文)に対しての検出精度の向上が確認されています。
発表を聞いていて「なんとなく読んでLLMっぽい」という直感的な感覚がスコアとして可視化され、実際に分布の違いとして確認できる点が面白く、また近年の高度な生成が可能になったLLMでも同じような検出性能が確認できるのかがとても気になりました。(山口)
おわりに
初の企業ブースでの参加でしたが、聴講や発表参加とは全く異なる経験ができ、非常に有意義な学会参加となりました。ブースにお越しいただいた方々に感謝申し上げます。
最後になりますが、MTECでは1~2週間の研究インターンを募集しています。ご興味ある方はぜひ以下リンクからご応募ください。
Discussion