2025年後半 スクラムチーム ふりかえりと感想
📌 この記事はモニクルAdventCalendar2025の23日目の記事です。
こんにちは!モニクルのエンジニアの久慈です。
スクラムでやってみたことと感想について書きます
今年中頃から僕の所属するチームのスクラムマスターになりました。
スクラムマスターの職務を任命していただいてから、やってみたことをふりかえってみたいと思います。
※ モニクルのエンジニアはフルリモートで働いています。ですので、全て対面ではなくオンライン上で起きたことになります。
まずやってみたこと
スクラムイベントのふりかえり会
まずやってみたことは、スクラムイベントのふりかえり会になります。
ふりかえり会を行った目的は、現状のスクラムイベントやその他チームで行なっている定期的なイベントの現状把握と、それぞれのイベントの目的の認識をチームメンバーと揃えること、そしてその目的に沿ったイベントになっているかを見直して、目的から逸れている実態のイベントがあれば改善するためでした。
それぞれのイベントの目的と現状を把握した上で、目的とずれているイベントになっていないかを確認したり、イベントの中で形骸化しているものや曖昧なものがないかを明確にしようと話し合いました。
また、スクラムガイドに定義されているスクラムイベントに関しては、まずスクラムガイドの定義を確認した上で、我々のチームとしてはどのような目的のイベントにしていきたいかを話し合いました。
スクラムガイド:https://scrumguides.org/docs/scrumguide/v2020/2020-Scrum-Guide-Japanese.pdf
スクラムイベントのふりかえり会をやってみた感想
ふりかえってみると、ちょうどメンバーの入れ替わりがあった後のタイミングでもあり、
各メンバーがそれぞれのスクラムイベントに対して「何のための場なのか」という目的認識をすり合わせるうえで、良いタイミングで実施できたと感じています。また、今までは特にそのような認識合わせを行っていなかったことにも気づけました。
また、スクラムガイドを改めて深く読んでみることで、
これまで毎週当たり前のように行っていたスプリントバックログリファインメントが、
スクラムガイド上では独立したスクラムイベントとして定義されていない、という新たな気づきもありました。
スクラムガイドでは、リファインメントについて以下のように記載されています。
開発者は、プロダクトオーナーとの話し合いを通じて、プロダクトバックログからアイテムを選択し、今回のスプリントに含める。
スクラムチームは、このプロセスの中でプロダクトバックログアイテムのリファインメントをする場合がある。
それによって、チームの理解と自信が高まる。
この記述を踏まえると、
「リファインメントをイベントとして実施すること」自体が目的なのではなく、
プロダクトバックログに対する理解を深め、チームとして自信を持ってスプリントに臨むための活動である、という位置づけであることが分かります。
ふりかえり会を通じて、スクラムに対しての知見が深まっただけでなく、こうしたスクラムガイドの意図と、我々のチームで実践してきたやり方を照らし合わせて考えることができ、スクラムを学ぶ・活用するうえでも非常に良い機会になりました。
また、目的とは逸れていたり、形骸化していたイベントがあることに気づき、それらのイベントが減ったことで、開発に集中できるような有意義に使える時間が増えたようにも感じていて、定期的なイベントのふりかえりはチームの生産性向上にも寄与すると実感することができました。
チームで起こしてみた変化
スクラムチーム内でそれぞれのイベントの認識を揃えた後は、現状のスクラムから改善できることがないかをチームでアイデア出しをし、少しずつ変化を取り入れていく流れを取りました。
やってみたことをいくつかピックアップしてふりかえってみようと思います。
やってみたこと1: 朝のデイリースクラムの時間でPRとスケジュールを確認する
我々のチームではペアプロやモブプロで開発することが多く、ペア・モブプロしている際に、他のメンバーからのPRレビュー依頼を忘れてしまい1日経ってしまう、といった問題がたびたび発生していました。
それを防ぐために、朝に行っていたデイリースクラムでのスプリントバックログのチケットの進捗確認の後に、PRのレビュー状態の確認を行うようにしました。この取り組みによって、PRのレビューサイクルを早くする心構えがチームに芽生えていき、より早いレビューやリリースのサイクルに繋げることができました。
加えて、PRの確認の後に、メンバーのその日や以降3日ほどの予定の確認を行うようになりました。そのおかげもあって、例えば「aのドメインに詳しいbさんは午後忙しそうだから午前中に質問しよう」だったり、「次のスプリントのうち1日が祝日で、加えてaさんが1日有給でお休みするので、スプリントゴールの設定はxxまでよりかはyyぐらいまでが現実的ですね」のように、未来のスケジュールに応じてその日ごとに適切なアクションを事前に考えられるようになりました。
加えて、上記のような意識がチームに芽生えることで、ペアプロやモブプロ中もSlack通知やPRレビュー通知により気づけるようになり、ペア作業のキリが良いところでPRレビューや割り込み作業の対応をより行えるようになりました。割り込みタスクへの心理的ハードルが下がったように感じています。
やってみたこと2: スプリントレトロスペクティブのアクティビティをハピネスレーダーに変更
週次で行っているスプリントレトロスペクティブにおいて、ふりかえりの手法を変更しました。
前提としまして、我々のスクラムチームでは、スプリントレトロスペクティブにおいて特定のふりかえり手法に固執しないことを大切にしています。
そのときどきのチームの状態や課題感に応じて、アクティビティを見直したり変更したりすることで、異なる角度から気づきや改善の種が生まれると考えているためです。
これまでも状況に応じていくつかの手法を試してきましたが、今回はその一環として「ハピネスレーダー」を取り入れてみることにしました。
我々のチームでは週次で読書会を行っており、今年の半ばごろに以下の書籍を読んだことがきっかけです。
その中で紹介されていた「ハピネスレーダー」というふりかえり手法が紹介されていて、そちらを今回は新たに導入してみました。
なぜハピネスレーダーを導入したのか
これまでのスプリントレトロスペクティブのふりかえり手法では、「何が起きたか」「何がうまくいったか」「何を改善するか」といった、事実ベースのふりかえりが中心でした。
もちろん、事実や成果をふりかえること自体は重要です。一方で、読書会で『アジャイルなチームをつくる ふりかえりガイドブック』の本で挙げられているふりかえり手法について話し合う中で、
同じ出来事でも、人によって受け取り方や感情はそれぞれ異なる
という点が強くチームメンバーの印象に残りました。
我々のチームでは、メンバー同士への感謝や関係性を大切にしながら、業務を心地よく、かつ効率よく進めることを重視しています。 そのため、スプリントレトロスペクティブも単にスプリントゴールの達成可否を確認する場ではなく、ゴール達成までのプロセスやチームの状態をふりかえり、次のスプリントをより良いものにしていくためのイベントとして位置づけています。
しかし、これまでのふりかえり手法では、実はしんどかった、不安だった、少しモヤモヤしていた、といった個々人の感情が表に出にくい構造になっていた可能性があると話し合いました。
そこで、出来事や結果だけでなく、その背景にある「感情」にも目を向けることで、チームメンバー同士のお互いの理解がより捗るのではないかと考え、ハピネスレーダーを導入することにしました。
以下はハピネスレーダーのテンプレートです。

実際にやってみてどうだったか
実際にハピネスレーダーを使ってチームでふりかえりを行ってみると、各メンバーがチケットそれぞれの対応、ステークホルダーのフィードバックなどスプリントであった事象に対してどのような気持ち・感情を持って過ごしていたのかが共有する場が作られました。
ハピネスレーダーではそれぞれの感情を上記のテンプレートのように縦軸に沿って感情の具合を表現します。
ハピネスレーダーを用いたことで、例えば以下のような感情をベースとした声が拾えるようになりました。
- タスク自体は順調に進んでいたが、AIに頼っていて実装者がコードの実態をあまり理解できていない
- 忙しいスプリントでゴールを達成できなかったが実装が進んで充実感を感じている
これらの感情ベースの声はこれまでのふりかえり手法より自然と共有されるようになったように感じています。
また、ハピネスレーダーを記入した後にそれぞれの感情についてメンバー間で話し合う時間を設けているのですが、そこで例えば以下のような悩みの感情に対しては
タスク自体は順調に進んでいたが、AIに頼っていてコードの実態をあまり理解できていないんですよね...
以下のような発言・議論につながる
それならチームとしてどうサポートしようか考えましょう。レクチャー会や実装強化期間を開いた方が良いだろうか...(→議論が盛り上がる
という前向きな会話につながる場面もありました。
その結果、単なる課題の抽出に留まらず、メンバー同士が互いの状況を理解し、支え合うための改善のネクストアクションまで生まれるようになったと感じています。
チームでハピネスレーダーに取り組み始めてから1ヶ月ほど経ったタイミングで、「ハピネスレーダーをやってみてどうだったか」という観点でふりかえりを行いました。その中で、
- チームの心理的な状態を以前より共有しやすくなった
- 小さな違和感を早めに拾い、メンバー同士の対話・ネクストアクションにつなげられるようになった
といった変化を実感しています。
仕事はハッピーな状態でしているに越したことはないので、メンバーの悩みや困りごとを少しずつ無くしていこうとメンバー同士で協力する関係性も強化するきっかけにもなれたかと思っています。
ハピネスレーダーを取り入れたレトロスペクティブは、スプリントの成果をふりかえるだけでなく、透明性が向上することでチームの関係性やコンディションを整える場としても機能しており、我々のチームの目的に沿ったレトロスペクティブのあり方に近づいていると感じています。
感想:形式的ではなく、目的に沿ったスクラムイベントを!
上で書きましたやってみたこと以外にも色々と試しつつスクラムに向き合ってみた今年後半をふりかえると、スクラムイベントを「形として回すこと」よりも、なぜこのイベントをやっているのかという目的の認識をチームで揃えることが大切であると実感しました。
イベントの目的を丁寧に言語化し直すことで、チームメンバー同士の理解や関係性が少しずつ深まり、
その結果として、業務の進めやすさや生産性、チームの雰囲気にも良い変化が生まれてきたと感じています。
スクラムガイドを拠り所にしつつも、絶対的な正解のないスクラムをベースとしている中でチームにあったスクラムはどんなものだろうかと試行錯誤しながら、より良い形を模索し続けるプロセスが学びに満ちていて、スクラムについてとても勉強になる期間でした。
最後に、スクラムを進化させるプロセスでさまざまなアドバイスをくださった認定スクラムマスターの上司や、色々と話し合いをしてくださった同僚のチームメンバーに感謝申し上げます。
来年も引き続き、チームメンバーと協力しながら「我々のチームらしいスクラム」を育てていけたらと思います。
おまけ:以下はfigjamで色々と議論したスクショです。

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