JevでXのタイムラインを浄化する拡張機能を作った
昨今のXのタイムラインがドブ川の様相を呈していることは、皆さんご存じのとおりです。
Xのアルゴリズムは、ユーザーに対して「今日はこの話題で怒りましょう」と義憤を煽り、「今日はこの人を嘲笑しましょう」とマウント欲を刺激する。義憤もマウント欲も太古から備わるヒトの本能であるため、アルゴリズムの誘いに乗ったユーザーの脳内にはドーパミンがドーパドーパと放出され、病みつきになる。
そう、Xは今やドパガキを量産して利益を稼ぐ、悪名高き資本主義インターネットの象徴なのです。こんなのやってたら人間ダメになります。
しかしその一方で、推しの情報を追ったり感想を共有したりする場として、Xが多くのネット民にとって代替不可能な存在になっていることもまた事実。新たに登場しては消えていった数多のSNSの屍がそれを証明しています。
ドブ川から抜け出せないのなら仕方がない。見える範囲だけでも川を浄化しましょう。
「Shirakawa」という拡張機能をChromeウェブストアで公開しました。
GitHubリポジトリはこちら。
万能直感AI「Jev」を採用
Jevは、現地時間9月15日にTypeSafe AIが発表した、今注目を集めているAIモデルです。
Jevとは、一言でいえば「万能直感AI」です。[1]
Jev自体の技術解説記事ではないので詳細は割愛しますが、例えば「今日は晴れです」という文に「これは天気の話題ですか?」という質問をくっつけてJevに送ると、ほんの0.5秒で「0.99」などの確率(0~1の間の数値で表す)を返してくれます[2]。長文を送っても、複数の質問を付けて送っても、回答の速さはほとんど変わりません。

Jevへのリクエストと応答のイメージ
ChatGPTのように思考過程を経ていないので間違っていることもありますが、ある程度の正確性があり汎用性が高く高速なので注目を集めています。
自然言語でルールを指定
ShirakawaではこのJevを用いて、あらかじめ設定した「非表示ルール」にタイムラインの各投稿がどれくらい該当するかをスコア化します。スコアが指定した閾値以上になった場合、その投稿を非表示にします。
ルールは私たちが普段使う自然言語で指定できるので、大変便利です。

ShirakawaでのJevの利用のイメージ

実際に投稿が非表示になる様子
デフォルトでは、以下のような非表示ルールを用意しています。
| 条件 | 閾値 | 有効/無効 |
|---|---|---|
| 特定の人物や団体への誹謗中傷 | 0.90 | 有効 |
| 読者の怒りや憎悪の煽動、対立の助長 | 0.90 | 有効 |
| 特定の地域・団体・界隈や、個人の属性を一括りにした決めつけ | 0.90 | 有効 |
| ユーモアの域を超えた、明らかな誇張や論理の飛躍したこじつけ | 0.90 | 有効 |
| 攻撃的な表現による批判・反論 | 0.90 | 有効 |
| 他者への見下し・侮辱・嘲笑 | 0.90 | 有効 |
| 上から目線の説教やアドバイス | 0.90 | 有効 |
| 他人の楽しみに水を差す冷笑 | 0.90 | 有効 |
| 「知らないと損」などの不安煽り | 0.90 | 無効 |
| 投稿の保存を要求 | 0.90 | 無効 |
| 卑猥な表現 | 0.90 | 無効 |
| 政治的な話題 | 0.80 | 無効 |
| 地震に関する話題 | 0.8 | 無効 |
| 戦争に関する話題 | 0.8 | 無効 |

追加ボタンで自分の好みのルールを追加することもできます。
注意:お金がかかります
Shirakawa自体は無料ですが、判定を行うAIサービス(Jev)のAPI利用料がかかります。
現在、APIの接続先としては、Jevの開発元であるTypeSafe AIと、OpenRouterに対応しています。Shirakawaを利用するには、これらのサービスで発行したAPIキーが必要です。
どちらのサービスも、2026年9月27日現在、入力100万トークンあたり0.042ドルがかかります。出力トークンには課金されません。
デフォルトで有効になっている8つのルールのみを、ポスト本文を空のまま送信した場合の入力トークン数は643でした。1,000ポスト判定すると、ルール部分のコストは約4円になる計算です(※実際はこれにポスト本文のトークン数が加算されます)。
Shirakawaでは、意図せぬ使いすぎを防ぐため、期間ごとの課金上限を設定できるようにしています。これを超えると新規の判定が停止し、その期間は新たな課金が発生しません。

デフォルトでは以下の通り上限が設定されています。
ツイ廃には少し物足りないかもしれませんので、適宜調整してください。

なお、一度判定したポストIDとその結果はキャッシュされるため、キャッシュが利用できる場合は、再判定による課金を抑えられます。また、途中で新しくルールを追加した場合は、過去に取得済みの投稿が再度流れてきても「新しく追加したルール」の分だけを差分判定する仕組みにしています。
リスク:APIキーが必要
前述のとおり、Jevを動かすためには各サービスが発行するAPIキーが必要です。
JevとのやりとりはこのAPIキーで認証され、使用量に応じて課金されます。
つまり、このAPIキーが漏れて第三者に渡れば不正利用されて大金を請求されるおそれがあるため、APIキーは厳重に管理しなければなりません。
え? そんな大事なものを、どこの馬の骨かも分からない個人開発者がリリースした拡張機能に入力して大丈夫なのかって?

...鋭いですね
おっしゃる通り、ここが現時点のShirakawa利用のリスクです[3]。 私自身がユーザーの立場なら、利用をためらうかもしれません。
仮に現時点で安全であったとしても、今後も安全とは限りません。過去にも「信頼されていた拡張機能が第三者に買収・譲渡された後、悪意あるコードを仕込まれた」という事例が実際に存在するからです。
とはいえ、以下のような方法でリスクを低減することもできます。
①LLMに読み込ませる
本拡張機能のソースコードはGitHubで公開されています。
自分でコードを読めなくても、公開されているコードや、実際にウェブストアから拡張機能をインストールして得られるCRXファイルを、ChatGPTやClaudeに読み込ませ、「不審な外部通信や悪意ある処理が含まれていないか」をチェックしてもらうことが可能です。コードはそこまで複雑ではありませんから、特に有料のフロンティアAIであれば、これでかなりリスクは低減できるはずです。
②APIサービス側で利用上限を設定する
万が一APIキーが漏洩したときに備えて、そのキーの利用上限をサービス側で設定しておきましょう。
例えばOpenRouterでは、APIキーごとに利用限度額を設定できます。最初は少額に設定し、実際の使用量を見ながら調整すると良いでしょう。
TypeSafe AIでは現時点で利用上限設定はできませんが、そもそも少額のみチャージしておき、自動チャージを有効にしないなどの対策が考えられます。
その他制約
- 判定対象は投稿本文のみです。画像・動画やリンク先の内容は判定しません。
- AIによる判定は常に完全とは限らず、誤判定が生じる場合があります。
おわりに
賢明な皆さんはすでにお気づきかと思いますが、この拡張機能は使い方によっては危険です。
特定の立場の意見のみ除けば、フィルターバブルやエコーチェンバーがこの上なく強化されますし、マイナスの意見のみ除けば、世論を読み違えることにもなりかねません。
とはいえ、「本当はドブ川なんて近づきたくもないのにドブ水をすする生活を余儀なくされ、精神衛生に支障を来している」という方にとっては、Shirakawaが快適なインターネット生活を取り戻す一助になるかもしれません。ぜひお試しください。
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