Microsoft Entra エージェント ID を理解したい
はじめに
Microsoft Entra エージェント ID (以降、エージェント ID) がパブリック プレビューで提供開始しています。ただ、正直なところ「何ができるのか」「何に使うものなのか」が分かりにくい、という印象を持ちました。そのため、本記事では Learn のドキュメントをベースに何となくイメージを掴むことを目的に整理していきます。
Agent 365 との関係性
2026 年 1 月時点で Agent 365 の詳細が明らかになっているわけではないので、あくまで個人の見解です。
エージェント ID
- AI エージェントが持つ ID・アカウント
- Microsoft 365 における Entra のユーザー アカウントに相当する
- AI エージェントに紐づく点では Azure リソースに紐づくマネージド ID に近いイメージ
Agent 365
- AI エージェントに対するあらゆる Micorosft 365 サービスを提供するパッケージ (特定の機能やサービスを表しているものではない)
- AI エージェントが Word、Excel などを操作して作業、Microsoft Defender でセキュリティ対策、Entra でエージェント ID を管理・アクセス制御、Purview で AI エージェントが扱うデータを管理、など
- Entra のユーザーに対する Microsoft 365 サービスの位置づけと近いイメージ
構成要素と概念
以下のドキュメントをベースに主要な構成要素と概念を確認していきます。
エージェント ID
- AI エージェントが様々なシステムに対して認証するためのアカウント
- パスワードなどの認証情報は持たない
- エージェントが実行されているサービスまたはプラットフォームに発行されたアクセス トークンを提示することによってのみ認証
- 親となるエージェント ID ブループリント (後述) から継承されたアクセス許可を利用可能
エージェント ID ブループリント
- エージェント ID を生成するためのテンプレート (ひな形)
- 1 つのエージェント ID プループリントから複数のエージェント ID を作成可能
- テンプレートとしてエージェントの説明やロール、発行者情報、所有者やスポンサー (後述)、認証プロトコルの設定を保有
- 情報を保持するだけではなく、エージェント ID を作成する機能を持つ (Graph API の
AgentIdentity.CreateAsManagerを付与されている) - エージェント ID の代わりに資格情報を持ち、AI エージェントが動作する場合はブループリントが持つ資格情報で認証してアクセス トークンを取得
- エージェント ID の論理コンテナー (親) として機能し、ブループリントに適用された条件付きアクセス ポリシーや OAuth アクセス許可が適用される
- ブループリントを無効化するとその子であるエージェント ID は利用不可となる
エージェント ID ブループリント プリンシパル
- 特定のテナント内でのブループリントの存在を管理する対応するプリンシパル オブジェクト (Entra におけるエージェント ID ブループリントの実体)
- プリンシパルの存在は、ブループリントがテナントに存在し、エージェント ID の作成に使用できることを示す
- トークンの発行と監査ログの記録の役割を担う
- エージェント ID ブループリント プリンシパルを削除することで、テナントからブループリントを削除できる
エージェント ユーザー
- AI エージェントがユーザー オブジェクトを必要とするシステムと対話する必要があるシナリオの場合に代替 ID (セカンダリ アカウント) として使用
- メールボックス、チャット アクセスを持つ必要がある
- ユーザー ID のみが使用できる API またはリソースにアクセス など
- 自動では作成されず、ブループリントで作成用のアクセス許可設定が必要
- エージェント ID と 1:1 の関係
- 一般のユーザーのようにグループへの追加、リソースへのアクセス、管理単位への追加、ライセンス割り当てが可能 (M365 リソースを利用するにはライセンスが必要)
エージェントの所有者・スポンサー
- 管理や権限を委任・分離するための仕組み
- エージェント作成者、技術アプリケーション所有者などに割り当て
- 所有者:
- エージェントの設定、構成、権限管理、無効化などすべての設定
- スポンサー:
- ライフサイクルに合わせたエージェント ID の延長、削除などが可能
- エージェントに変わってアクセス パッケージを要求し、アクセス許可を取得
- マイ アカウント ポータルから所有者とスポンサーはエージェントの有効化や無効化が可能
- マイ アクセス ポータルから所有者とスポンサーはエージェント ID に代わってアクセス パッケージを要求可能
エージェント レジストリ
- 組織内のすべての登録済みエージェントの情報が一元化されたリポジトリ
- エージェント作成者、技術アプリケーション所有者などを割り当て
エージェント レジストリ コレクション
- エージェントを検出できる範囲を管理
- 検出=組織のユーザーが Teams や Copilot でエージェントを見つけることができる
- Entra グループのようにエージェント ID をコレクションでグループ化
- コレクションごとに検出ポリシーを設定し、検出できるユーザーの範囲を設定
- デフォルトではGlobal (全ユーザー許可) と Quarantined (全ユーザー不可) がある
全体イメージ

エージェント動作パターン
エージェント ID では、2 つの主要な動作パターンをサポートしています。
対話型エージェント
- ユーザーをサインインさせ、チャット インターフェイスを介してユーザーのプロンプトに応答してアクションを実行するエージェント
- サインインしているユーザーに代わって動作し、そのユーザーの承認を利用してさまざまなシステムでアクションを実行
- ユーザーに代わって行動できる Microsoft Entra の委任されたアクセス許可が付与
- 対話型エージェントに発行されるトークンは、多くの場合、ユーザー トークンと呼ばれる
自律エージェント
- 独自の ID を使用してアクションを実行するエージェント
- バックグラウンドで実行され、実行するアクションについて自律的な意思決定を行う
- エージェント ID が認証されるときにエージェント トークンと呼ばれる
エージェントの作成
エージェントの作成方法を整理します。一部の Microsoft 製品は自動的にエージェントが作成されます。
Microsoft Foundry
- Foundry プロジェクトで最初のエージェントを作成すると、プロジェクトの既定のエージェント ID ブループリントと既定のエージェント ID がプロビジョニング
- プロジェクト内の未発行または開発中のエージェントは、共通の ID をエージェント ID を使用して認証
- エージェントを発行すると、専用のエージェント ID ブループリントとエージェント ID が自動的に作成され、エージェントは一意のエージェント ID を使用して認証
- モデル コンテキスト プロトコル (MCP) およびエージェント間 (A2A) ツールでの認証にエージェント ID の使用をサポート
Microsoft Copilot Studio
- 設定を有効化することでエージェント作成時にエージェント ID に自動的に割り当てされるように構成可能
- Power Platform 環境でエージェント ID が最初に作成されると、Microsoft Copilot Studio エージェント ID ブループリントとエージェント ID ブループリント プリンシパルが自動的に作成
手動作成
- 現時点では Graph API もしくは Graph PowerShell で作成
- エージェント ID ブループリント -> エージェント ID の順で作成
- https://learn.microsoft.com/ja-jp/entra/agent-id/identity-platform/create-blueprint?tabs=microsoft-graph-api
- https://learn.microsoft.com/ja-jp/entra/agent-id/identity-platform/create-delete-agent-identities?tabs=microsoft-graph-api
ポータルで確認
Copilot Studio でエージェント ID を使う
動作確認のため、Copilot Studio でエージェント ID の利用を有効化します。
Power Platform 管理センターで [コパイロット] > [設定] > [Copilot Studio の Entra エージェント ID] をクリックします。

環境を選択して [設定の編集] をクリックします。

[オン] にチェックを入れて保存します。

エージェントを作成します。

エージェント ID の確認
[エージェント ID] > [Overview] をクリックします。

[Types of agents] の箇所で 4 パターンのエージェントの種類があることが分かります。
| エージェントの種類 | 説明 |
|---|---|
| Agent identities (with no user) | エージェント ID (エージェント ID ユーザーなし) |
| Agent identities (with user) | エージェント ID (エージェント ID ユーザーあり) |
| Agents with service principals | サービス プリンシパルで動くエージェント |
| Agents with no identities | ID を持っていないエージェント |
[All agent identities] をクリックします。

ブループリント ID の記載があるものはエージェント ID、そうでないものはサービス プリンシパルになります。なおサービス プリンシパルをクリックすると、従来のエンタープライズ アプリの画面が開きます。
先ほど作成した Copilot Studio エージェントに紐づくエージェント ID をクリックします。

以下のように所有者・スポンサー、エージェント ID が持つアクセス許可を確認できます。(今回の場合だとユーザー委任の権限で動作するためエージェント ID 自体はアクセス許可を持たないと推測)


次にエージェント ID ブループリントを確認します。
[All agent identities] から上段メニューの [View agent blueprints] をクリックします。

エージェント ID ブループリントの一覧が表示されます。

[Microsoft Copilot Studio agent identity blueprint] を開きます。Copilot Studio からデプロイするエージェントはこちらがひな形となるエージェント ID が付与されていることが分かります。

以下のようにエージェント ID ブループリントが持つアクセス許可を確認できます。前述のようにブループリント自体がエージェント ID を作成するため、 AgentIdentity.CreateAsManager の権限を持っています。

なお、エンタープライズ アプリのほうでエージェント ID ブループリント プリンシパルも確認できます。

次に [Agent registry] を開きます。登録されたエージェント ID が表示されるはずなのですが、最新の 1 件のみになっているため、過去作成済みのエージェント ID は何かしら対処が必要となる可能性があります。

詳細画面はこちらです。ポータル上ではほとんど情報が見えないため、おそらくこれから様々な機能が追加されていくと思われます。

最後に所有者・スポンサーの画面を確認します。マイアカウント ポータル (https://myaccount.microsoft.com/) を開き、新しいバージョンのアカウント ホームページに切り替えます。

左側メニューに [エージェントを管理する] が表示されるので開きます。自分がスポンサーや所有者になっているエージェント ID が確認できます。

[Personal Availability Checker (Microsoft Copilot Studio)] を開きます。アクセスやアクティビティが確認可能です。またエージェントを無効化することができます。

まとめ
本記事では、エージェント ID にフォーカスし、各構成要素と Entra 管理センターからの見え方を整理しました。
Entra の観点では、エージェント ID に対して条件付きアクセスやアクセス パッケージといった既存の ID 管理機能を連携できる点がポイントです。
一方で、AI エージェント全体を考えると、M365 管理センターや Microsoft Foundry、セキュリティを管理する Defender、データ ガバナンスを担う Purview など、複数の管理プレーンを意識する必要があります。
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