マネージャー支援の会社から見たEMConf
はじめに
こんにちは。株式会社mento CTOの@matsumatsu20です。
今回開催されたEMConfに弊社mentoではEMConfにゴールドスポンサーとして参加させていただきました。
まずはじめに、EMConf、最高でした。 私個人にしても会社にしても非常に貴重な機会をいただくことができ、運営はじめ登壇者の皆さんにもこの場を借りて感謝を申し上げます。
当日はブースに立っていることも多かったのですが、keynote含めいくつか登壇も見ることができました。EMConfや各登壇についての感想やふりかえりはすでにたくさんの人がブログにしていますが、我々mentoは日頃からコーチングを中心にした「マネージャー支援」をしているということもあり、せっかくなので私の目線でEMConfのふりかえりをしていきたいと思います。
keynote
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日本におけるエンジニアリングマネージャーという言葉の生まれから現在まで、その中心に居続けた広木さんだからこそ話せる、素晴らしい内容でした。
特に共感したのはエンジニアリングマネジメントの4つのPとそれに対しての向き合い方。EMの責務として
- People Management
- Product Management
- Project Management
- Platform Management
の4つを挙げてそれぞれに対しての深堀りをしつつ、すべてを自分一人でする必要はなく必要あれば「調達」するべきとお話されてました。
我々としても、日々管理職の皆さんを支援したり、お話をしていて管理職・マネージャーの方の職務領域が非常に広いと感じています。そしてそれよりも課題なのはそれを「すべて管理職が自分でやるべきだ」という認識が非常に強く持たれていることだと思っています。
これは書籍「罰ゲーム化する管理職」の中でもパーソル総研の小林先生が「筋トレ発想」として指摘していたりもするのですが、上記のような認識を周囲や上司、そして管理職本人も持っていたりします。
人材の多様化も進んでいる、ビジネスや業務の不確実性も上がっている、そんな状況で一人の管理職が何でもかんでもやりきる、という世界線に限界が来ている。しかし管理職となると「それをやりきってこそ管理職」という風潮がまだまだありますよね。そこに 「スーパーマンにはならなくていい」「必要あればケーパビリティを調達しましょう」という考え方を注入できるともっともっと事業や組織をサステナブルに成長させることができると思っています。
シンプルですが力強いスライド
我々としても、マネジメントに必要な要素を分解し、アウトカムを達成するために必要に応じて他の人間やテクノロジー・AIにどんどん「移譲」していく考え方が今後もっと重要になってくると考えており、そういった点このお話には強く共感しました。
また、広木さんのお話の中でもコーチングについての言及がありました。広木さんの著書「エンジニア組織論への招待」の中でもコーチングについての言及があった認識があり、エンジニア界隈でコーチングの認知度が非常に高いのも、それも一つの要素だと思っており非常に感謝しています。
mentoもコーチングの会社として、マネジメント層の対話スキルとして、コーチングの一つ一つのテクニックは非常に重要だと思っています。ただ、iwashiさんのクロージングkeynoteにもあったように、中途半端にコーチングテクニックを使うと、不快感があったり、逆にコミュニケーションが上手くいかないのも事実です。
自分自身はコーチではないのですが、何よりも重要なのはテクニックの前に「目の前のメンバーに100%の関心を向け、全力で向き合うこと」「相手の話を全力で"聴く"こと」というマインドセットだと思っています。
そしてこれをどういう状態なのかを理解する一番手っ取り早い方法は「自分がプロのコーチからコーチングを受ける」ことです。どうしてもポジショントークのように聞こえてしまうかと思うのですがこれは事実です。
もしコーチング的な関わりやスキルにピンときていない方がいれば、体験だけでも良いので一度プロコーチからコーチングを受けて見ることをおすすめします。
Potential EM 制度を始めた理由、そして2年後にやめた理由
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estieさんでVPoEを務める@hoyo1111さんのPotential EMという制度についての発表でした。
私も普段から様々なフェーズの組織の話を聞きますが、やはりどこも「マネージャー不足」で困っていることが多いです。その課題に対して、Ptential EMというトライアルで登用できる制度を作って間口を広げていたestieさんの取り組みは業界敵全体に対しても非常に知見に溢れた内容だったと思います。
下でも述べるのですが、エンジニアが抱えるキャリアの問題として「プレイヤー vs マネージャー」みたいな語り尽くされてきた論点がありますよね。自分自身もこれで少し悩んだ時期があったのですが、いざどちらも経験してみると双方の経験が双方のスキルに活きる部分があり、お互いはトレードオフの関係性ではなく補完関係にあると気づくに至りました。
が、一般的にはマネージャーは気軽にできるものではなく、そちらを体験するハードルが高いのでこれを身を以て実感するというのが誰しもができるものではありません。そういった観点でこのようなマネージャーやその業務の敷居を下げる取り組みがあることが、エンジニアのキャリア支援のためにも重要だと感じました。
Two Blades, One Journey: Engineering While Managing
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スマートバンクでEMを務める@ohbaryeさんによる発表、これも非常に共感ポイントが高い内容でした。
まず、EMやその周辺における課題をマクロとミクロで分けて整理を図式化しており、自分としても肌感としては感じていたことが構造として理解でき、ハッとされる瞬間でした。
と同時に、同じような事象がEM以外の管理職でも起きているんだなと感じました。マネージャーの負荷が高くなることで、マネージャーのなり手からすると「このままマネージャーになって良いのだろうか」という不安が芽生える。それがマネージャー不足に繋がり、結果として更にマネージャーの負荷が増える、という負のサイクルが回っていると認識しています。
そういう意味で先程のPotential EMの件と同様、マネージメントとプレイヤーというものをあまり不可逆なものに捉えない認知や仕組みが広がっていけば良いなと思っています。「EMだからこそ技術を伸ばせた」 というohbaryeさんの言葉は僕自身も勇気をもらいましたし、世の中の「マネージャーになろうか迷ってる」エンジニアにとっても一歩を踏み出すきっかけを与える重要な経験談だと感じました。
サバイバルモード下でのエンジニアリングマネジメント
資料は準備中とのことです!
Kyash VPoEのこにふぁーさんの発表でした。
会社や事業として非常に難しい状態(=サバイバルモード)でのエンジニアリングマネジメントにおける、マインドセットや注意点、Tipsまで含めこにふぁーさんの実体験に基づいて赤裸々に語られていました。
僕も会社経営をする立場の人間として非常に勉強になりましたし、多くの問いをいただいた内容でした。
特に、不安を紛らわす1on1をしない、というのは個人的には非常に刺さった一言でした。とにかくケアをする、フォローするというのはマネージャーとしては必要なアクションを取れている感覚になりがちですが、「本来頭を使うべきは過度な観察ではなく課題の解決」というのは本当にその通りだなと思いましたし、我が身を振り返るきっかけにもなりました。
フォローではなく、フォローが必要になってしまう構造を変える。 それは往々にして、売上を非連続に伸ばす、組織構造を変える、プロダクト戦略の変更等、ボトムアップでは起こしにくいものだったりする。だからこそ、能力も権限もセットで持っているマネジメントレイヤーがそれを変えにいかなければならない。 というような理解をしていて、自分のマネジメントの指針になりそうです。
マネージャーのスキルが体系化されにくかったり、各会社に閉じたものになりがちな理由として、「マネージャーの生々しい仕事、大体社外に話せない」問題ががあると思っています。そんな中、当事者としてのリアルなドロドロとした手触りを残しつつ、社外にきちんと発信できるところにこにふぁーさんの強さを改めて感じましたし、EMにのみならずすべての管理職に言える普遍的な内容だったので世の中のマネジメントを一歩進めるような素晴らしい発表だったと感じました。
ブース
当日は公演を聞いている以外はブースに立っていました。全体で約100名近くの方がブースに来てくださり、色々お話ができて非常に勉強になりました。
弊社のコーチングについてや、今後のマネージャー支援の構想にも興味を持ってくださる方が多くこの領域の関心の高さに驚くとともに、自分たちが進んでいる方向性が正しいものだと改めて確信に至る時間でもあり、改めてこの場でみなさんとお話できてよかったなと感じています。
また、これはそれと同じくらい、もしかしたらそれ以上に重要だと思っているのですが、こういった機会で 「自分の会社のことを会社の代表として説明する」経験 を得られるのは非常に重要だと感じています。自分自身が持っている認知を見つめ直すキッカケにもなりますし、より会社やサービスの魅力を上手に伝える訓練を何十回とトライできる経験はなかなかないものです。さらにいうと通常そういった機会はカジュアル面談や商談等になり、機会として特定のメンバーに寄りやすい構造にあります。その点で、全員が気軽にエレベーターピッチをトライできるというのは、ブース運営の大きな副産物でした。
終わりに ~採用加速中!!~
冒頭にも述べましたが、今回素晴らしい機会をいただき、充実感を持って1日を終えることができました。惜しむべきことがあるとすれば、このブログの公開が翌日でできなかったことと、当日登壇できなかったことなので次回は必ずリベンジしたいと思います。
当日ブースでお話していたmentoのマネージャー支援のプロダクトの構想については、実はまだ対外的に詳細はオープンにしているものではないのですが、開発自体は足元で大きく動き始めています。エンジニア採用も絶賛募集中です。
一緒に作ることに興味がある、どんなものを作ろうとしているか聞いてみたい、転職は考えてないけど構想に興味がある等、少しでも興味があればぜひ一度お話させていただきたいと思っているので、お時間いただけたら幸いです。以下が私のspirなので空いているところに予定入れていただいて大丈夫です!(もちろん私宛にDMいただいても大丈夫です!)
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