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インスリン/グルカゴンのバランスから理解するケトアシドーシス

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はじめに:ケトアシドーシスがわかりにくい

ケトアシドーシス(DKAやAKA)を教科書で読んでも、なぜか「腑に落ちない」。
そう感じたことはないでしょうか。

でも実は、**「インスリンとグルカゴンのバランス」**という観点で見ると、一気にクリアになってきます。まずは両者の役割から整理してみましょう。


🔵 インスリン:糖を使う/蓄える「同化」のホルモン

インスリンは、食後に膵β細胞から分泌されるホルモンで、血糖値が上昇したときに活性化されます。

主な働き

  • GLUT4を活性化 → 筋肉・脂肪細胞にグルコースを取り込む
  • 肝臓での糖新生とグリコーゲン分解を抑制
  • 余剰な糖をグリコーゲンや脂肪に変換して貯蔵
  • 脂肪分解(リポリシス)を抑制 → ケトン体産生を抑える

👉 エネルギーが足りているときには、細胞内に血糖を取り込んで、それを利用してエネルギーを産生します。エネルギーがさらに余っているときには、グリコーゲンとして蓄積しておくわけです。


🔴 グルカゴン:足りない時に動員する「異化」のホルモン

空腹・ストレス・糖質不足などで血糖が下がったときに、膵α細胞から分泌されます。

主な働き

  • 肝臓でグリコーゲン分解と糖新生を促進 → 血糖上昇
  • 脂肪分解(リポリシス)を促進 → 肝で脂肪酸がケトン体へ変換される

👉 エネルギー産生が足りていないときには、ケトン体を作成してエネルギー源の代替としたり、ケトン体を大量には使えない臓器にはグリコーゲンを分解して糖を供給したりします。

※グリコーゲンを分解して糖ができても、インスリンの作用が弱ければ取り込まれないのでは?と思うかもしれません。その通りです。ただ、体にはさまざまな糖輸送体があり、インスリン非依存に血糖を取り込むシステムも存在しています。

臓器・組織 ケトン体利用 備考
✅(可能) 長期飢餓で主エネルギーに(最大60%)
心筋・骨格筋 ✅(高利用) 脂肪酸・ケトン体を柔軟に併用
肝臓 ❌(不可) ケトン体産生はするが利用はできない
赤血球 ❌(不可) ミトコンドリアがないため利用不可
腎髄質 ❌(限定的) グルコース依存性が高い

🧪 ケトアシドーシスとは?

ケトン体が必要以上に作られすぎて、血中に蓄積し、pHが下がる病態。

インスリン作用の低下により、グルカゴンが相対的に優位となり、リポリシス → ケトン体産生が過剰になった状態です。
この状態になっている時は、必ずインスリン/グルカゴンのバランスが破綻しています。
呼吸性代償が追いつかなくなると、代謝性アシドーシスとして臨床的に現れてきます。


🧬 DKA / AKA / 飢餓性ケトアシドーシスの違い

病態 原因 インスリン ケトン過剰の理由
DKA 1型糖尿病、2型重症 ⬇︎ or ⬇︎⬇︎ 絶対的インスリン不足 or インスリン抵抗性上昇
AKA アルコール過剰+低栄養 ⬇︎ グルカゴン優位+肝臓NAD⁺低下
飢餓性 長期絶食 ⬇︎ 低インスリン・高グルカゴンの正常反応が過剰化

DKAでは糖尿病が背景にあり、インスリンの絶対欠乏 or インスリン抵抗性によってインスリン/グルカゴン比が低下してしまいます。
AKAや飢餓性ケトアシドーシスでも、栄養状態が悪いためにインスリン産生が低下し、グルカゴンが相対的に優位になります。

この仕組みがわかると、病態のマネージメントの本質が見えてきます。
DKAではインスリンが必要になりますが、AKAや飢餓性ケトアシドーシスでは本当にインスリンが必要なのか――ここが見極めポイントになります。

DKAの場合は、インスリンが絶対的に少ないか、あるいはインスリン抵抗性によって量が相対的に足りない状態になっています。
体は出せる限界までインスリンを分泌していますが、それでも足りない。
そのため、外部からインスリンを補充する必要があるわけです。

一方でAKAや飢餓性ケトアシドーシスでは、栄養状態が悪いために、あえて体がインスリンを出していない状態といえます。
つまり、栄養状態が回復すれば、自然とインスリンも分泌されるようになります。
こういった患者さんでは、Refeeding症候群やビタミンB1欠乏には注意が必要ですが、基本的にはインスリン投与ではなく「栄養を入れる」ことが大切です。


まとめ

ケトアシドーシスの状態はいずれもインスリン/グルカゴンのバランスが破綻しているものですが、
そのバランスがどうして破綻しているのかを考えることで、治療の本質が見えてくるように思います。

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