手のひらが黄色い患者、黄疸じゃないかも
外来で「最近、手のひらが黄色い気がするんです」って相談されたことありませんか?僕も研修医のとき、最初は「え、黄疸?肝臓やばい?」って焦って採血オーダーしまくった記憶があります。でも結果は肝機能正常、ビリルビンも正常。なんだったんだ?ってなったんですよね。
実はこれ、**carotenoderma(カロテン血症)**っていう状態のことが多いんです。
カロテン血症ってなに?
簡単に言うと、血中のカロテノイド(β-カロテンとか)が増えすぎて皮膚が黄色くなる状態です。カロテノイドって脂溶性で、角質層に沈着しやすいんですよね。だから手のひらとか足の裏とか、角質が厚いところに黄色が目立つわけです。
原因として一番多いのは、やっぱりカロテンを多く含む食品の過剰摂取。ニンジン、カボチャ、サツマイモ、マンゴー、オレンジ…このあたりを毎日大量に食べてる人は要注意。1日30mg以上を長期間摂り続けるとカロテン血症になることがあるって報告されてます。
ちなみにこれ、1919年に報告された歴史ある病態で、第一次・第二次世界大戦中の食糧不足で野菜ばっかり食べてた人に多発したらしいです。
黄疸との見分け方
ここが臨床的に一番大事なポイントだと思います。
カロテン血症と黄疸の最大の違いは、眼球結膜が黄色くならないこと。角質層がない部分には沈着しないので、結膜や口腔粘膜は染まらないんです。黄疸だと白目が黄色くなるので、ここを見れば大体わかります。
あと、カロテン血症は手のひら、足裏、額、鼻先、鼻唇溝に集中するのも特徴的。全身が黄色くなるわけじゃないんですよね。
過剰摂取だけじゃない、代謝異常のサイン
ここからが落とし穴の話です。
「野菜の食べ過ぎでしょ」で終わらせちゃいけないケースがあります。カロテン血症は代謝異常のサインである可能性があるんです。
具体的には:
- 甲状腺機能低下症:カロテンからビタミンAへの変換が落ちる、高コレステロール血症も合併しやすい
- 糖尿病:同じく変換効率が悪い。糖尿病患者の多くは血清カロテン濃度が上昇してるけど、皮膚症状が出るのは10%くらい
- 肝疾患・ネフローゼ症候群:カロテンのクリアランスが低下
- 脂質異常症:脂溶性のカロテンが蓄積しやすい
つまり、「特に野菜を大量に食べてるわけでもないのに手のひらが黄色い」って患者さんには、未診断の代謝異常がないかスクリーニングしたほうがいいってことです。個人的には、甲状腺機能と空腹時血糖くらいは確認しておきたいなって思ってます。
神経性食思不振とpicaの話
あと、精神科領域との関連もあって面白いです。神経性食思不振の患者さんでカロテン血症の有病率が22%って報告があるんですよね。カロテンの必要量減少とか変換不全が関係してるみたい。
それから鉄欠乏性貧血のpicaでニンジンを大量に食べちゃうケースもあるらしいです。これは知らないと絶対気づけないやつ。
検査は必要?
正直、診断のために特別な検査は必要ないことが多いです。カロテン血症を測定すると250〜500mg/dlくらいになってることが多いけど、臨床的には「結膜黄染なし+手のひら黄色い+食事歴or代謝異常」で十分判断できます。
肝酵素は正常〜軽度上昇程度で、ビリルビンは正常。ここで黄疸を除外できれば、あとは代謝異常のスクリーニングをするかどうかって話になります。
Learning Points
- 手のひらが黄色い+結膜黄染なし=カロテン血症を疑う(黄疸との鑑別ポイント)
- 食事歴を聞いて、特に過剰摂取がなければ甲状腺・糖尿病・脂質異常をスクリーニング
- 良性の病態だけど、未診断の代謝異常のサインである可能性を忘れない
参考文献
- PMID: 38782811
- PMID: 34211929
- PMID: 30521299
- PMID: 41779869
- PMID: 24251193
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