AIを活用したPRD生成 — Gemini Gemで実現するプロダクトマネージャー不在のヒアリング
こちらの記事は、Luup Advent Calendar 2025の22日目の記事です。
はじめに
社内向けプロダクト開発チームのプロダクトマネージャーの渡部です。
本記事では、Google Geminiの「Gem」機能を活用して、プロダクトマネージャー(PdM)が介在しなくても質の高いPRD(プロダクト要求仕様書)を作成できる仕組みを構築した取り組みについてご紹介します。
背景:社内ツール開発における課題
Luupでは、バッテリー交換や車両修理などのオペレーション業務を支える社内ツールを複数運用しています。これらのツールに対する改善要望は、実際にツールを使う現場の各部署から日々寄せられます。
しかし、要望をそのまま開発に着手すると、以下のような問題が発生しがちでした。
- 「欲しい機能」の背景にある本質的な課題が不明確なまま開発を進めてしまう
- 初期リリースのスコープが膨らみすぎる
- 他部署への影響に気づかないまま実装が進む
- PdMによるヒアリングと深掘りに多くの工数がかかる
これらの課題を解決するため、私たちはAIを活用したアプローチを試みました。
Gemini Gemとは
Luupでは、全従業員を対象にGemini Enterpriseを導入しており、社内の情報が保護された環境でGeminiを活用できます。GemはGoogleのAI「Gemini」の機能で、特定のタスクに特化したカスタムAIアシスタントを作成できます。カスタム指示(プロンプト)と知識ベース(ドキュメント)を設定することで、専門的な対話が可能なAIアシスタントを構築できます。

Gemの設定画面。カスタム指示と知識ベース(PDFなどのドキュメント)を設定できます。
設計思想をAIに叩き込む
私たちは、以前の記事「運用を支える内製システム開発の優先度をどう考えるか」で紹介したプロダクト開発の設計思想をGemのプロンプトに組み込みました。
具体的には、以下のような原則をAIに理解させています。
- 欲しい機能ではなく、解決したい課題を明確にする
- 顕在化している課題のみを解決対象とする
- 一度に1つの課題に集中する
- 7割の仕様でまずリリースし、運用しながら改善する
さらに、社内ツールの仕様書、データベース構造、各部署の業務内容などのドキュメントを知識ベースとして追加し、Luup固有の文脈を理解できるようにしました。
AIによるコーチング型ヒアリング
このGemは、単に質問に答えるのではなく、「壁打ち相手」として機能します。改善要望を持つ担当者がGemと対話することで、以下のようなプロセスが自然と進みます。
- 課題のヒアリング:まず自由に困っていることを話してもらう
- 課題の本質を問う:「その課題は誰が、いつ、どのくらいの頻度で困っているか」といった質問で深掘りする
- 解決策を最小化する:「7割の完成度で今すぐリリースするなら、どんな機能が必要か」と問いかける
- PRDの項目を言語化する:対話内容をPRDフォーマットに落とし込む
導入効果
運用開始から約3か月で、PdM以外の実際にツールを使う部署によって4つのPRDが作成されました。
印象的だったのは、当初「スプレッドシートで行っている全オペレーションをシステム化したい」という大きな要望から対話が始まったケースです。Gemとの対話を通じて、チーム内で「初期リリースで本当に全部必要か」という議論が自然と始まり、当初は気づいていなかった他部署の作業への影響にも自主的に気づくことができました。
従来であればPdMがヒアリングして深掘りしないとわからなかった点が、あらかじめチーム内で議論され尽くされた状態からPdMへの相談がスタートするようになりました。これにより、PdMの工数削減とチーム間のコミュニケーションの往復回数の大幅な削減を実現し、実装までのスピードが高速化しました。
おわりに
AIを「答えを出すツール」ではなく「思考を促すコーチ」として活用することで、プロダクト開発の上流工程を効率化できることがわかりました。今後もAIを活用した開発プロセスの改善に取り組んでいきたいと思います。
Luupでは、一緒に開発してくださるソフトウェアエンジニアを積極的に募集しています。カジュアル面談も実施しておりますので、ぜひお気軽にお声掛けください。
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