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Claude Code生みの親・Boris Chernyが語る「AI時代の新しい働き方」

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本記事は、科技系ポッドキャスト司会者Greg Isenberg氏によるBoris Cherny氏へのインタビュー動画を基に構成しています。

動画リンク: YouTube - Greg Isenberg × Boris Cherny インタビュー

動画を視聴する(42分):

Greg Isenberg × Boris Cherny インタビュー

👆 クリックしてYouTubeで視聴: Greg Isenberg × Boris Cherny インタビュー


はじめに ― 100%AIでコードを書く男

「過去2ヶ月間、私が提出したコードは100%AIが書いたものです。一行たりとも手で書いていません。」

この衝撃的な告白をしたのは、AnthropicでClaude Codeを開発した**Boris Cherny(ボリス・チェルニー)**氏です。2026年1月、科技系ポッドキャスト司会者のGreg Isenberg氏との42分間のインタビューで、Boris氏は自身のワークフローを惜しみなく公開しました。この動画は瞬く間にエンジニアコミュニティで話題となり、関連するX(旧Twitter)の投稿は約10万回の転送・保存を記録しました。

Greg Isenberg氏はインタビューの冒頭でこう語っています。

「これを使いこなせれば、地球上の99%の人を追い越せる。」

Anthropic CEOのDario Amodeiとの会話で「年末には誰もコードを手書きしなくなる」と予言していたBoris氏ですが、今やその言葉を自ら体現しています。この記事では、Greg Isenberg氏とのインタビューを中心に、Boris氏の実践的なワークフローと「AIを指揮する技術」という新しい働き方の哲学を解説します。

Claude Codeとは?
Anthropicが提供するターミナルベースのAIコーディングツールです。自然言語でコードの生成、編集、Git操作などが可能です。

公式サイト: anthropic.com/claude-code


Boris Chernyとは何者か

Boris Cherny氏は、O'Reillyから出版された名著『Programming TypeScript』の著者として、TypeScriptコミュニティでは以前から知られた存在でした。Facebook、ベンチャーキャピタル、アドテック企業などでエンジニアとプロダクトリーダーを務め、サンフランシスコTypeScript Meetupの主催者としても活動してきました。

その彼が2024年9月、Anthropicで「サイドプロジェクト」としてClaude Codeの開発を始めます。当初は社内でも「使い物にならない」と言われていたそうですが、2025年3月のSonnet 4とOpus 4のリリースを境に状況が一変。モデルの能力が閾値を超えた瞬間、Claude Codeは爆発的に普及し始めました。

現在、Claude CodeはUber、Netflix、Spotify、Salesforce、Accenture、Snowflakeなど世界的企業で採用されています。さらに驚くべきことに、Anthropicのエンジニアの生産性はClaude Codeの導入により約70%向上したと報告されています。楽天ではフィーチャーのリリース期間が24日から5日へと79%短縮されました。

そしてClaude Coworkは、彼のチームがわずか1週間半で構築したものです。もちろん、Claude Code自身を使って。


Boris流ワークフローの核心 ― 5つの黄金ルール

Boris氏のワークフローは「意外とシンプル」だと本人は言います。しかし、そのシンプルさの中に、AI時代の開発の本質が詰まっています。

1. 並列処理の徹底 ― 一人で「AI軍団」を指揮する

「私はAIが働いている間、傍で待っていたりしません。5〜10個のタスクウィンドウを同時に開いています。」
― Boris Cherny(インタビュー動画より)

Boris氏の日常は、まるで交響楽団の指揮者のようです。ターミナルで5つのClaudeセッションを並列実行し、タブに1〜5の番号を振って管理。さらにclaude.aiのWebブラウザでも5〜10個のセッションを同時に走らせます。

各ローカルセッションは独立したgit checkoutを使い、コンフリクトを防止。&コマンドと--teleportオプションを使えば、ローカルとWeb間でセッションを受け渡すことも可能です。

これは「マルチスレッドタスクマネージャー」としての新しいエンジニア像を体現しています。

2. 最高のモデルを妥協なく使う

「私はOpus 4.5とThinkingモードを常に使っています。これは私が使った中で最高のコーディングモデルです。」
― Boris Cherny(インタビュー動画より)

多くの人がコスト削減のために小さいモデルを選びがちですが、Boris氏はこれを「誤り」だと断言します。確かに単価は高いですが、Opus 4.5は一度で正確に仕事を完了させるため、やり直しが激減します。結果として、トークン消費も時間も節約できるのです。

Sonnetより大きく遅いにもかかわらず、ステアリング(指示の修正)が少なく済み、ツール使用も上手いため、最終的にはより速い――これがBoris氏の結論です。

3. 計画モード(Plan Mode)を徹底活用

「計画が良ければ、コードは良い。(Once the plan is good, the code is good)」

Boris氏のセッションの大半は「計画モード」から始まります。Shift+Tabを2回押すことで計画モードに入り、AIと何度も往復しながら実装計画を練り上げます。

計画が完璧になったら、「auto-accept edits mode」に切り替え。すると、Opus 4.5はほとんどの場合、一発でコードを完成させます。

この「計画を練ってから動く」哲学は、古くから伝わる戦略の基本にも通じるものがあります。

4. CLAUDE.mdでチームの「第二の脳」を構築

Boris氏のチームは、プロジェクトのルートディレクトリにCLAUDE.mdというシンプルなテキストファイルを置いています。

Claudeが間違いを犯したら、「次回はこうしないで」という指示をこのファイルに追記。特殊なコーディング規約があれば、それも書き込みます。現在、彼らのCLAUDE.mdは約2,500トークンの分量です。

# CLAUDE.md の例
- テストファイルは必ず `__tests__` フォルダに配置すること
- console.log() はプロダクションコードに残さないこと
- API呼び出しには必ずエラーハンドリングを入れること
- 型定義は明示的に記述し、any の使用は避けること

Claudeは毎回このファイルを読んでから作業を開始するため、同じミスを繰り返しません。これはチーム全体の「暗黙知」をAIに伝える仕組みであり、時間が経つほどシステムが賢くなる「複利効果」を実現しています。

5. AIに「目」を与えて自己検証させる

「画家が目隠しをして絵を描けないように、コードを書くAIも結果を見る必要があります。」
― Boris Cherny(インタビュー動画より)

Boris氏は、Claudeに自分の成果物を検証する手段を与えることを「最も重要なこと」と位置づけています。Chrome拡張機能をインストールし、AIがブラウザを開いて実際のUIをテストできるようにします。

このフィードバックループがあれば、最終成果物の品質は2〜3倍向上するとBoris氏は断言します。

詳細はインタビュー動画で確認できます:
YouTube - Greg Isenberg × Boris Cherny(該当箇所)


実践デモ ― Coworkが魔法を見せる瞬間

Greg Isenberg氏とのインタビューの中で、Boris氏は実際に画面を共有し、Coworkのデモを披露しました。そのシナリオは驚くほど実用的でした。

レシート処理:AIが「逆質問」してくる

デスクトップに散らばったレシートの画像ファイル。Boris氏はCoworkに「これらのファイルを、レシートの日付に合わせてリネームして」と指示します。

するとCoworkは作業を始めますが、1枚のレシートの日付が不鮮明なところで手を止め、逆に質問してきました。「このレシートは読み取れません。スキップしますか、それとも手動で指定しますか?」

これが「Reverse Elicitation(逆向きの引き出し)」です。AIが不確実なことを勝手に推測せず、人間に確認を求める。これこそが信頼できるAIの振る舞いです。

Google Sheetsへの自動転記

Boris氏が「これらのレシートを表にして」と指示すると、Coworkは数秒でCSVファイルを生成しました。しかし彼はさらに「ローカルじゃなくてGoogle Sheetsに入れて」と追加要求。

すると、Coworkは自らChromeブラウザを起動(ユーザー許可の上で)、Google Sheetsにログインし、新規スプレッドシートを作成、データを入力していきました。途中でフォーマットエラーが発生しましたが、Boris氏が何か言う前にCowork自身がそれに気づき、修正を始めました。

Slackでの自動リマインド

さらに印象的だったのは、職場での応用例です。Coworkにチームの進捗表を監視させ、未入力の項目があれば、担当エンジニアにSlackで自動的にリマインドを送る。以前はプロジェクトマネージャーが一人ひとり声をかけていた作業が、完全に自動化されました。


開発者が今すぐ真似できる実践テクニック

Boris氏のワークフローから、すぐに実践できるテクニックを紹介します。

Slash Commandsでルーティンを自動化

Boris氏は毎日何十回も繰り返す作業をSlash Commandsとして定義しています。例えば/commit-push-prは1日に数十回実行されます。

# .claude/commands/commit-push-pr.md の例
---
description: 変更をコミットしてPRを作成
---
現在のgit statusを確認し、変更をコミットして、
適切なタイトルでPull Requestを作成してください。

これらのコマンドは.claude/commands/ディレクトリにチェックインされ、チーム全員で共有できます。

PostToolUse Hooksでフォーマットを自動修正

Claudeが生成するコードは「ほとんど」正しくフォーマットされていますが、残り10%の問題でCIが失敗することがあります。Boris氏はPostToolUse Hookを設定し、Claudeがコードを書くたびに自動でフォーマッターを走らせています。

権限管理は慎重に

--dangerously-skip-permissionsオプションは使わない。代わりに/permissionsコマンドで、安全なbashコマンドだけを事前に許可します。これらの設定は.claude/settings.jsonに保存され、チームで共有されます。

GitHubでの「@Claude」召喚術

コードレビューで問題を見つけたら、コメント欄で@Claudeをメンションするだけ。AIが自動的に修正を実施し、ブランチにプッシュしてくれます。CLAUDE.mdの更新も同様にリクエストできます。

Boris氏の30日間の実績: 259件のPR、497コミット、40,000行の追加、38,000行の削除。

指標 数値
Pull Requests 259件
コミット数 497
追加行数 40,000行
削除行数 38,000行
期間 30日間

Boris氏のワークフローの詳細は公式ベストプラクティスで確認:
Anthropic - Claude Code Best Practices


まとめ ― AI軍団を「指揮」する時代へ

Boris Cherny氏のメッセージは明確です。

「手動でコードを書く時代は終わりました。今のゲームのルールは、誰がAI軍団をうまく指揮できるか、です。」
― Boris Cherny(インタビュー動画より)

彼の働き方は、もはや「プログラマー」というより「AIオーケストレーター」と呼ぶべきものです。複数のAIセッションを並列で走らせ、計画を練り、検証の仕組みを与え、チームの知識を蓄積していく。

もしあなたがこの新しい時代に適応したいなら、まずは小さな一歩から始めてみてください。

  1. CLAUDE.mdファイルを作る ― AIの失敗を記録し、学習させる仕組みを導入
  2. 計画モードを試す ― いきなりコードを書かせず、まず計画を練る習慣をつける
  3. 並列作業を意識する ― AIが「考えている」間、別の作業に移る

未来の働き方は、複雑なツールを自分で学ぶことではなく、特定のスキルを持ったAI Agentを「雇う」ことになるでしょう。AutoCADの図面から経費精算まで、あらゆる作業がAIによって処理される時代。

その時代は、すでに始まっています。


参考資料

主要な情報源

公式ドキュメント

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