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1. 簡易ネットワーク構築編

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新卒向けネットワーク研修:簡易ネットワーク構築編

はじめに

この研修では、ネットワークの基本的な概念を理解し、実際に簡単なネットワークを構築するスキルを身につけることを目指します。PC同士の接続から始め、ルーターを用いた異なるネットワーク間の接続までを扱います。

1. 最小構成のネットワーク構築:PC同士の接続

1.1 物理的な接続

  • ネットワーク通信の第一歩は、機器同士を物理的に接続することです。
  • 今回は有線LANケーブルを用いた接続方法を学びます。
  • LANケーブルには主に「ストレートケーブル」と「クロスケーブル」の2種類があります。
    • ストレートケーブル: 両端のピン配列が同じ。異なる種類の機器(例:PCとスイッチ)を接続する際に使用します。
    • クロスケーブル: 送信(TX)と受信(RX)のピンが交差(クロス)している(例:1↔3, 2↔6)。同じ種類の機器(例:PCとPC、ルーターとルーター)を接続する際に使用します。
  • LANポートにはMDIMDI-Xの2タイプがあります。
    • MDI (例: PC、ルーター)
    • MDI-X (例: スイッチ、ハブ)
    • MDIとMDI-Xの接続にはストレートケーブルを使用します。
    • MDI同士、MDI-X同士の接続にはクロスケーブルを使用します。
  • 演習: 2台のPCをクロスケーブルで接続します。

1.2 接続確認

  • リンクランプ: 接続されたポートのランプが点灯・点滅しているか確認します。
  • OSでの確認 (Windows):
    • ネットワークアダプタの状態を確認します。「ネットワーク ケーブルが接続されていません」と表示されていなければ、物理的には認識されています。
    • ipconfig コマンド: コマンドプロンプトで実行し、IPアドレス関連情報が表示されるか確認します。接続されていない場合は「メディアは接続されていません」と表示されます。

1.3 IPアドレスの設定

  • 物理的に接続しただけでは通信できません。ネットワーク上の住所であるIPアドレスが必要です。
  • IPv4アドレス: 32ビットの数値で、通常8ビットごとに区切り、10進数で表記します (例: 192.168.1.1)。
  • プライベートIPアドレス: LAN内で自由に使用できるIPアドレスの範囲です(例: 192.168.0.0192.168.255.255)。インターネット接続には、NAT/NAPTによってグローバルIPアドレスに変換されます。
  • DNS: URL(例: www.google.com)をIPアドレスに変換する仕組みです。 nslookup コマンドで手動で名前解決を確認できます。
  • 演習: 各PCに手動でIPアドレスとサブネットマスクを設定します。
    • PC1: 192.168.1.1, サブネットマスク 255.255.255.0
    • PC2: 192.168.1.2, サブネットマスク 255.255.255.0
    • Windowsでの手動設定手順を確認します。
  • DHCP: IPアドレスなどを自動で割り当てる仕組みです。

1.4 疎通確認

  • ping コマンド: 相手のIPアドレスを指定して実行し、通信できるか確認します。
  • 演習: PC1からPC2へ ping 192.168.1.2 を実行し、応答があるか確認します。

2. ネットワーク同士の接続:ルーターの役割

2.1 IPアドレスの構造とサブネットマスク

  • IPアドレスは「ネットワーク部」と「ホスト部」に分かれます。
  • サブネットマスク: IPアドレスのうち、どこまでがネットワーク部でどこからがホスト部かを示す値です。IPアドレスとセットで設定します。
    • 例: IPアドレス 192.168.1.1、サブネットマスク 255.255.255.0 の場合、192.168.1 がネットワーク部、最後の .1 がホスト部です。
  • CIDR表記: サブネットマスクを / に続くビット数で表現します (例: 192.168.1.1/24)。
  • 同じネットワークに属する機器は、ネットワーク部が同じで、ホスト部が異なります。
  • ネットワークアドレス: ホスト部がすべて0のアドレス (例: 192.168.1.0/24)。
  • ブロードキャストアドレス: ホスト部がすべて1のアドレス (例: 192.168.1.255/24)。

2.2 異なるネットワーク間の通信

  • ネットワーク部が異なる機器同士は、直接通信できません。
  • ルーター: 異なるネットワーク間を中継(ルーティング)する機器です。

2.3 ルーターを用いた接続

  • 物理接続: PCとルーター、ルーター同士を接続します。接続するポート(インターフェース)とケーブルの種類(ストレート/クロス)を確認します。
  • IPアドレス設定: ルーターの各インターフェースに、接続されるネットワークに属するIPアドレスとサブネットマスクを設定します。
  • デフォルトゲートウェイ: PCが他のネットワークと通信する際の「出口」となるルーターのIPアドレスです。PC側に設定します。
  • 演習: PC1 (192.168.1.1/24) と PC2 (192.168.10.2/24) をルーターを介して接続します。
    • PC1 GW: 192.168.1.254
    • PC2 GW: 192.168.10.254
    • Router I/F 1: 192.168.1.254/24
    • Router I/F 2: 192.168.10.254/24

3. ルーターの基本設定 (Cisco IOS)

3.1 ルーターへのアクセス

  • コンソール接続: 初期設定やトラブルシューティング時に、コンソールケーブルでPCと直接接続します。
  • リモート接続 (Telnet/SSH): ネットワーク経由で接続します(事前のIP設定が必要)。

3.2 基本的なモード

  • ユーザーモード (Router>): 基本的な確認コマンドのみ実行可能。
  • 特権モード (Router#): 全ての確認コマンド、設定モードへの移行が可能。 (enable で移行)
  • グローバルコンフィギュレーションモード (Router(config)#): デバイス全体の設定。 (configure terminal で移行)
  • インターフェースコンフィギュレーションモード (Router(config-if)#): インターフェースごとの設定。 (interface <インターフェース名> で移行)
  • モード間の移動: enable, configure terminal, interface <IF名>, exit, end など。

3.3 基本設定コマンド

  • ホスト名設定: hostname <ホスト名> (グローバル)
  • DNSルックアップ無効化: no ip domain-lookup (グローバル)
  • インターフェースへのIP設定: ip address <IPアドレス> <サブネットマスク> (インターフェース)
  • インターフェース有効化: no shutdown (インターフェース)
  • 設定確認:
    • show running-config: 現在動作中の設定
    • show ip interface brief: インターフェースの状態
  • 設定保存: copy running-config startup-config または write memory (特権)
  • 設定初期化: erase startup-config して reload (特権)

3.4 ルーティングテーブル

  • ルーターは、宛先IPアドレスを見て、ルーティングテーブルに従ってデータを転送します。
  • ルーティングテーブル確認: show ip route (特権)
  • ルーターは、自身が直接接続されているネットワークの情報(Connected) を自動的にルーティングテーブルに登録します。
  • ルーティングテーブルに載っていないネットワーク宛の通信は転送できません。

4. 複数のルーターを経由する通信

  • インターネットは、多数のネットワーク(AS: 自律システム)がルーターで相互接続されたものです。
  • 複数のルーターを経由する場合、各ルーターが宛先ネットワークへの経路を知っている必要があります。

4.1 ルーティングの方法

  • スタティックルーティング: 管理者が手動で経路情報を設定します。小規模ネットワーク向きです。
  • ダイナミックルーティング: ルーティングプロトコル(RIP, OSPF, BGPなど)を使い、ルーター同士が経路情報を交換し、自動的にルーティングテーブルを作成・更新します。

4.2 スタティックルーティングの設定

  • コマンド: ip route <宛先ネットワークアドレス> <サブネットマスク> <ネクストホップIPアドレス> (グローバル)
    • ネクストホップ: 宛先ネットワークへ到達するために、次にパケットを送るべき隣接ルーターのインターフェースIPアドレス。
  • 演習: 2台のルーター (RT1, RT2) を接続し、PC1からPC2へ通信できるようにスタティックルートを設定します。
    • RT1 に、PC2が属するネットワーク (192.168.103.0/24) への経路として、RT2 のIPアドレス (192.168.102.2) をネクストホップとして設定します。
    • RT2 にも同様に、PC1が属するネットワーク (192.168.101.0/24) への経路として、RT1 のIPアドレス (192.168.102.1) をネクストホップとして設定します(Pingの応答を返すために必要)。
  • 設定後、show ip route でスタティックルート(S で表示される)が追加されたことを確認し、ping で疎通確認を行います。

まとめ

  • 通信の基本は物理接続とIPアドレス設定。
  • 異なるネットワーク間の通信にはルーターが必要。
  • ルーターはルーティングテーブルに基づいてデータを転送する。
  • ルーティングテーブルに経路情報を載せる方法として、スタティックルーティングとダイナミックルーティングがある。
  • 基本的なCisco IOSコマンド(モード移動、IP設定、確認、保存など)を習得する。

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