6. VLAN_基礎

はじめに

本日の研修では、ネットワークの基礎の中でも特に重要な「VLAN」について学んでいきます。講義の後は、実際に機器を操作するハンズオンも行いますので、しっかりと理解を深めていきましょう。

1. VLANとは？

VLANは「Virtual Local Area Network」の略で、「仮想的なローカルエリアネットワーク」です。 これは、物理的な接続に捉われずに、スイッチ内部で仮想的に複数のネットワークを作り出す技術です。

通常、ネットワークを分割する役割はルーターが担いますが、VLANを使えばスイッチでもネットワークを分割できるのです。

VLANの主な目的

• ブロードキャストドメインの分割: VLANの主な目的の一つは、ブロードキャストドメインを分割することです。 ブロードキャストドメインとは、ある端末から送信されたブロードキャストフレーム（ネットワーク内の全端末に届くフレーム）が到達する範囲のことです。VLANでネットワークを分割すると、ブロードキャストフレームは同じVLAN内にしか届かなくなり、不要なトラフィックを削減し、ネットワークのパフォーマンスを向上させることができます。
• セキュリティの向上: 部署ごとや役割ごとにVLANを分けることで、異なるVLAN間の通信を制限できます。これにより、機密情報へのアクセスを制御するなど、セキュリティを高めることができます。
• ネットワーク構成の柔軟性: 物理的な配線を変更することなく、ソフトウェアの設定でネットワーク構成を自由に変更できます。例えば、人事異動で社員が別の部署に移った場合でも、スイッチの設定変更だけで対応できます。

VLANの識別

VLANは、「VLAN ID」または「VLAN番号」と呼ばれる数値で識別されます。この番号は、1から4094までの範囲で設定できます。

2. VLANの基本的な仕組み

スイッチの各ポートに、どのVLANに所属するかを設定します。同じVLAN IDが設定されたポート同士は通信できますが、異なるVLAN IDが設定されたポート同士は、原則として直接通信できません。

3. ポートの種類

VLANを扱う上で重要なポートの種類が2つあります。

a. アクセスポート

アクセスポートは、特定の1つのVLANにのみ所属するポートです。 主に、コンピューターやプリンターなどのエンドデバイスを接続する際に使用します。アクセスポートに接続されたデバイスは、そのポートが所属するVLANのメンバーとなります。

設定例（イメージ）：

• ポート1～5をVLAN 10（営業部）に割り当てる
• ポート6～10をVLAN 20（開発部）に割り当てる

この場合、営業部のPCはVLAN 10に、開発部のPCはVLAN 20に接続され、お互いに直接通信することはできません。

b. トランクポート

トランクポートは、複数のVLANのデータを通すことができるポートです。 主に、スイッチ同士を接続する場合や、ルーターやサーバーなど複数のVLANと通信する必要があるデバイスを接続する際に使用します。

4. スイッチに接続してみよう

1台のスイッチにチーム全員のPCを接続し相互に疎通が通るか確認してみよう

5. 考察

なぜ通信が成立した？
実際にVLANがどのように設定されているかは、スイッチのコマンドで確認できます。例えば、Ciscoのスイッチでは show vlan というコマンドで、作成されているVLAN ID、VLAN名、および各ポートがどのVLANに所属しているかを確認できます。

SW# show vlan

6. VLAN設定の確認

show vlanを実行した結果から、なぜPC間の通信が成功したのかを考えてみましょう。
手元のshow vlanの実行結果を見てください。多くの情報が表示されていると思いますが、特に注目してほしいのは、「VLAN」の列と「Ports」の列です。

スイッチは、初期状態（箱から出して電源を入れただけの状態）では、すべてのポートが「VLAN 1」という名前のデフォルトVLANに所属しています。 show vlanの結果でも、VLAN IDが「1」、名前が「default」となっており、そこにポート（例: Fa0/1, Fa0/2, ..., Gig0/1など）がリストされているのが確認できるはずです。

皆さんがPCを接続したポートも、特に設定を変更していなければ、このVLAN 1に所属しています。

重要なポイントは、**「同じVLANに所属するデバイス同士は、互いに通信ができる」**ということです。VLANは、スイッチ内部で論理的にネットワークを分割する技術ですが、見方を変えれば「同じVLANは、同じネットワークセグメント（ブロードキャストドメイン）にいる」と考えることができます。

つまり、皆さんのPCはすべてVLAN 1という共通のグループに接続されたため、お互いに通信することができたのです。

もし、今後異なるVLANを作成し、ポートをそれぞれのVLANに割り当てていくと、異なるVLANに所属するPC間では、ルータなどL3の機器を介さない限り、通信ができなくなります。これは、VLANによってネットワークが論理的に分離されるためです。

6. ハンズオンに向けて

ここまでの説明で、VLANの基本的な概念や仕組みをご理解いただけたでしょうか？

この後のハンズオンでは、実際にスイッチを使ってVLANを作成し、ポートに割り当て、通信が分割されることを確認していきます。 また、トランクポートの設定も行い、複数のVLANをスイッチ間で中継する演習も行う予定です。