Claude CodeでClauto Develop
~Claude Code × スペック駆動開発の実践フレームワーク~
0. はじめに
Claude Code は強力なCLIツールですが、実務で使いこなすには「とりあえず使ってみよう」というレベルではなく、より体系的で実践的なアプローチが求められるようになってきています。
私自身のClaude Codeを使った開発経験を基に、Claude Code × スペック駆動開発の実践フレームワークを「Clauto Develop」という形でまとめ、GitHub(clauto-develop)に公開しました。
「Clauto」というのは、「Claude」と「玄人」(エキスパート、プロフェッショナルという意味で)を掛け合わせた言葉遊び(play on words)の造語です。
このフレームワークは、Claude Code の開発者 Boris Cherny 氏が提唱する「7つのベストプラクティス」を、スペック駆動開発(SpecDD) の思想で体系的にまとめたものです。
このフレームワークを使えば、Claude Codeを使ったAI駆動開発を「PoC」から「実務」へとレベルアップさせることができます。
ここでは、GitHubプロジェクト clauto-develop の詳細を説明する前に、AIと人間が高度に連携するための実践的フレームワークを解説します。
1. なぜ今、フレームワークが必要なのか?
Claude Code は「Agentic Coding(自律的コーディング)」を可能にしますが、そのまま使うと以下のような問題に直面します。
- コンテキストの爆発: 長時間のセッションでAIが指示を忘れ、品質が劣化する
- Vibe Coding(雰囲気コーディング): 明確な設計なしにコードを生成し、バグの温床になる
- 一貫性の欠如: プロンプトの書き方によって成果物の品質がバラつく
これらを解決するのが、スペック駆動開発(SpecDD) の導入です。「仕様(Spec)を定義し、計画(Plan)を立て、実装(Impl)する」というプロセスを強制することで、AIの自律性を制御可能なものにします。
2. Boris Cherny の13のプラクティス
Claude Code の生みの親である Boris Cherny 氏は、2026/1/3のx.comのポストで13のTipsを投稿しました。
Clauto Developでは、このTipsも意識して、開発が進められるようにしています。
-
複数 Claude セッションの並列運用:
ターミナルで複数の Claude を同時に走らせ、タブ番号管理と通知で効率的に切り替える -
ローカル・Web・モバイルの併用:
ターミナル版と Web 版(さらにモバイル)を並行利用し、作業内容に応じて柔軟にセッションを移動する -
最高性能モデルの一貫使用:
Smallモデルに切り替えず、最も高性能なモデル(Opus 4.5)を使い続けることで総合的な生産性を最大化する -
Project Memory(CLAUDE.md)の徹底管理:
チームで共有する CLAUDE.md を Git 管理し、失敗事例やルールを随時追記して AI の長期記憶とする -
コードレビューでの知識蓄積:
PR レビュー時に CLAUDE.md への追記を促し、学びをチーム全体に還元する仕組みを作る -
Plan Mode の常時利用:
まず Plan Mode で詳細な計画を作らせ、人間が納得してから自動実装に進める -
Slash Command による内製ワークフロー自動化:
繰り返し使う作業を Slash Command 化し、プロンプトの再入力を不要にする -
Subagent の活用:
コード簡略化や検証など、頻出作業を専用サブエージェントに任せる -
PostToolUse Hook による自動整形:
最終的なコード整形をフックで自動化し、CI でのフォーマットエラーを防ぐ -
安全な権限制御の事前設定:
危険なスキップ設定は使わず、安全なコマンドのみ事前許可して中断を減らす -
外部ツールとの深い統合:
Slack、分析ツール、エラーログなどを AI が直接操作できる環境を整える -
長時間タスクの自動検証:
バックグラウンドエージェントやフックを使い、完了後の自己検証を自動化する -
検証ループの設計を最重要視:
テストや実行確認など、AI が自分の成果を検証できる仕組みを用意し品質を飛躍的に高める
3.「Clauto-Develop」フレームワークの機能
このプロジェクトでは、スペック駆動開発(SpecDD)の流れに沿って、上記のベストプラクティスを踏まえたAI駆動開発が行えるように、Claude Code の使い方を提示します。
Claude Code には、スラッシュコマンド(Slash Commands)、スキル(Skills)、サブエージェント(Sub-agents) という3つの拡張機能があります。clauto-develop では、これらの機能を活用したカスタム設定をパッケージ化して提供しています。
3-1. スラッシュコマンド(Slash Commands)
スラッシュコマンドは、対話の中で呼び出せるショートカットです。
Claude Code 公式コマンド
Claude Code には、以下のような組み込みコマンドが用意されています。
| コマンド | 機能 |
|---|---|
/help |
ヘルプを表示 |
/clear |
会話をリセット |
/compact |
会話を要約してコンテキストを圧縮 |
/cost |
現在のセッションのコストを表示 |
/config |
設定パネルを開く |
/mcp |
MCP(Model Context Protocol)機能にアクセス |
カスタムコマンド(clauto-develop 提供)
clauto-develop では、スペック駆動開発のプロセスを標準化するための13種類のカスタムコマンドを提供しています。
| コマンド | 機能 | SpecDD上の役割 |
|---|---|---|
/spec:init |
仕様書テンプレートを生成 | 定義(仕様の明確化) |
/spec:review |
仕様書の品質をチェック | 定義(品質保証) |
/plan:make |
仕様書に基づき実装計画を策定 | 計画(手順の合意) |
/impl:run |
計画に沿ってコードを実装 | 実装(自律コーディング) |
/qa:full |
テスト設計・実行・結果整理を一括実行 | 検証(品質保証) |
/git:commit |
規約に沿ったコミットログを作成 | 完了(履歴管理) |
/git:pr |
プルリクエストを作成 | 完了(レビュー依頼) |
/gh:commit-push-pr |
コミット→プッシュ→PR作成を統合実行 | 完了(統合ワークフロー) |
カスタムコマンドは ~/.claude/commands/ にMarkdownファイルとして配置することで、どのプロジェクトでも利用できます。
3-2. スキル(Skills)
スキルは、特定のタスクに関するノウハウや手順をひとまとめにした「知識パック」です。
Claude Code 公式機能
Skills は Claude Code の公式機能で、以下の特徴があります。
- 自動適用: Claudeがユーザーの依頼内容を分析し、関連するスキルを自動的に選択・適用
- プログレッシブディスクロージャー: 必要な情報のみを段階的に読み込み、コンテキストを効率的に使用
- モジュール化: 指示、スクリプト、リソースをフォルダ単位で管理
スキルは .claude/skills/ または ~/.claude/skills/ ディレクトリに SKILL.md ファイルとして配置します。
カスタムスキル(clauto-develop 提供)
clauto-develop では、開発プロセスの品質を標準化するための9種類のカスタムスキルを提供しています。
| カテゴリ | スキル名 | 目的 |
|---|---|---|
| 仕様 | spec-reviewer |
仕様書のレビュー基準 |
| 設計 | architecture-reviewer |
アーキテクチャレビュー |
| 実装 | coding-standards |
コーディング規約の適用 |
| テスト | test-author |
テスト作成パターン |
| デバッグ | debug-triage |
デバッグ手法 |
| レビュー | pr-reviewer |
PRレビュー基準 |
| セキュリティ | security-baseline |
セキュリティチェック |
| 依存関係 | dependency-change-reviewer |
依存関係変更のリスク評価 |
| リリース | release-notes-writer |
リリースノート作成 |
スキルは、ユーザーが明示的に指定しなくても、Claudeがタスク内容から判断して自動的に適用します。例えば、「このコードのセキュリティをチェックして」と依頼すると、security-baseline スキルが自動適用されます。
3-3. サブエージェント(Sub-agents)
サブエージェントは、特定の役割を持つ専門家として振る舞うエージェントです。
Claude Code 公式機能
サブエージェントは Claude Code の Task ツールを通じて利用できる公式機能です。メインの会話とは独立したコンテキストで動作し、調査や分析などの複雑なタスクを自律的に実行します。
- 独立したコンテキスト: メイン会話のコンテキストを消費せずに動作
- 専門的な役割: 特定の視点や責任範囲を持って作業
- 成果物の引き継ぎ: 調査結果や分析レポートをメイン会話に返却
カスタムサブエージェント(clauto-develop 提供)
clauto-develop では、スペック駆動開発の各フェーズに対応した10種類のカスタムサブエージェントを提供しています。
| エージェント | 役割グループ | 担当フェーズ |
|---|---|---|
req-analyzer |
Planner | 要求分析、要件定義 |
spec-planner |
Planner | 技術仕様書の作成 |
tech-leader |
Designer | 技術選定、アーキテクチャ設計 |
frontend-designer |
Designer | UI/UX設計、コンポーネント設計 |
backend-designer |
Designer | API設計、DB設計 |
code-builder |
Builder | コード実装、テスト作成 |
code-reviewer |
Reviewer | コードレビュー、品質チェック |
code-debugger |
Reviewer | バグ調査、修正 |
code-guide |
Guide | コードベースの案内、説明 |
general-purpose |
Guide | 汎用タスク対応 |
カスタムサブエージェントは .claude/agents/ ディレクトリにMarkdownファイルとして配置します。
3-4. スキルとサブエージェントの併用
スキルとサブエージェントは、それぞれ異なる目的で設計されており、併用することでより効果的な開発が可能になります。
| 観点 | スキル | サブエージェント |
|---|---|---|
| 起動方法 | 自動(Claude判断) | 自動/手動 |
| コンテキスト | メイン会話内 | 独立したコンテキスト |
| 用途 | 知識・ルールの適用 | 調査・分析タスク |
併用例:
[ユーザー] code-reviewer としてこのPRをレビューして
→ code-reviewer サブエージェントが起動
→ pr-reviewer スキルが自動適用(レビュー基準)
→ security-baseline スキルが自動適用(セキュリティ観点)
→ coding-standards スキルが自動適用(コーディング規約)
サブエージェントが「何をするか」を決め、スキルが「どのような基準で行うか」を提供するという関係になります。
4. 実践チュートリアル:ECサイト構築開発フロー
clauto-develop のフレームワークでは、ECサイト構築を題材にしたチュートリアルを用意しています。
ここでは、おおまかな流れを説明します。
Step 0: 準備
プロジェクトのルートに clauto-develop の設定ファイル(.claude/ ディレクトリ等)が配置されていることを前提とします。
Step 1: 仕様の策定(/spec:init)
まずはコードを書かず、仕様を固めます。
> /spec:init
> ユーザーがメールアドレスとパスワードでログインできる機能を実装したい。
> セキュリティ要件として、パスワードは8文字以上、ロックアウト機能も必要。
Claudeの動作:
-
spec-plannerサブエージェントが要求を分析 -
spec-reviewerスキルの基準に従って仕様書を作成 -
docs/specs/login-feature.mdを生成(ユースケース、エラーハンドリング、DBスキーマ変更案を含む)
Step 2: 計画の立案(/plan:make)
仕様書が承認されたら、実装計画を立てます。
> /plan:make docs/specs/login-feature.md を実装するための計画を立てて。
Claudeの動作:
Plan Mode でタスクリストを提示し、ユーザーの合意を求めます。
- DBマイグレーション作成
- APIエンドポイント実装
- フロントエンド実装
- テストコード作成
Step 3: 実装と検証(/impl:run & /qa:full)
ここからはAIが自律的に動きます。Boris氏のベストプラクティスに従い、テスト駆動で進めます。
> /impl:run バックエンドのバリデーションロジックと、そのユニットテストを書いて。
実装が完了したら、検証コマンドを実行します。
> /qa:full
Claudeの動作:
-
code-builderサブエージェントが実装を担当 -
coding-standardsスキルに従ってコードを生成 - 自動的にテストランナーを起動
- エラーが出れば、それを読み取って修正案を提示・適用(Verification Loop)
Step 4: レビューとコミット(/git:commit)
全てのテストが通ったら、作業を保存します。
> /git:commit
Claudeの動作:
- 変更内容を解析し、規約に沿ったコミットメッセージを生成
-
code-reviewerサブエージェントによるセルフレビューも可能
5. まとめと次のステップ
clauto-develop は、Claude Code を単なる「賢いツール」から「最高の開発エージェント」へと進化させます。
- 仕様ファースト: AIの暴走を防ぎ、手戻りを最小化
- ベストプラクティスの自動化: Boris Cherny氏の知見を意識せずとも実践できる
- 拡張性: 自社の開発ルールに合わせてカスタムコマンド・スキル・エージェントを追加可能
このフレームワーク導入により、エンジニアは「AIツールの使い方」を試行錯誤する時間から解放され、「どのようなソフトウェアを作るべきか」という本質的な設計と意思決定に集中できるようになります。
まずはリポジトリをクローンし、テンプレートをコピーするところから始めてみましょう。
# リポジトリをクローン
git clone https://github.com/K-Suzumura/clauto-develop.git
cd clauto-develop
# カスタムコマンドをインストール
mkdir -p ~/.claude/commands
cp global-commands/*.md ~/.claude/commands/
# カスタムスキルをインストール
mkdir -p ~/.claude/skills
cp -r global-skills/* ~/.claude/skills/
詳細なセットアップ手順とECサイト構築チュートリアルは、GitHub(clauto-develop)リポジトリの framework-docs/ ディレクトリを参照してください。
Discussion
公開したばかりですが、v2.1.3で「Slash Commands」と「Skills」が統合されるようなので、それに合わせて更新が必要ですね。 merging of "slash commands" and "skills."