業務効率化(DX)を成功に導く”改革発起人”と”デジタル参謀”という2つの役割
はじめに
どこの会社でも「業務効率化」や、最近では「DX化」といった言葉が聞かれ、業務そのものを変えるような大きな変革が求められることが増えてきたように感じます。
こういった業務効率化(DX化)を前に進めていくには、少し似ているようで、実は異なる2つのタイプの人材が必要なのではないか、というのが私の持論です。
ひとりは"今の現状をどうしても変えたいと思っている人"。
今の業務に強い不満があったり、忙しさのあまり「このままではいけない!!」と感じていたり。つまり、変革への"情熱"がある人です。ここでは仮に「改革発起人」と呼ぶことにします。
そしてもうひとりは、"業務を変えられるスキルと知識のある人"。
社内で導入されているツールに詳しかったり、どうすれば効率化できるのかを知っていたり。つまり、"デジタルに詳しい人"です。こちらは「デジタル参謀」と名付けましょう。
(実力はまだまだだと自覚したうえでの話ですが)私の社内での立ち位置は、後者の”デジタル参謀”にあたるかと思います。
今回は、この2つの役割がなぜ必要なのか、そしてこの2人がタッグを組むことで、いかにして業務効率化が大きく進むのかについて、私自身の経験を交えながらお話ししたいと思います。
なぜ”改革発起人”と”デジタル参謀”の2人が必要なのか
もちろん、情熱があってデジタルにも詳しい、というのが理想的な人材であることは間違いありません。
しかし、現実にはそのようなスーパーマンはなかなかいないのではないでしょうか。
なぜなら、現状を変えようとすると、
- どう変えるかの構想を練る
- そのための方法やツールを調べる
- 最適と思われる方法以外の選択肢とも比較検討する
- 現状の課題と解決策を整理し、資料にまとめる
- それを周りに説明して納得させる
- 解決策を実際に講じる(ツール作成など)
- 導入後のフィードバックを集めながら改善する
といった、非常に多くのステップをひとりでこなす必要があるからです。これは、あまりにも現実的ではありません。
そこで、”改革発起人”と”デジタル参謀”のふたりの人間がいると、話がスムーズに進みはじめます。
”改革発起人”は現場の担当者であることが多く、日々の業務に追われているため、デジタルの知識をじっくりと蓄える時間がない場合がほとんどです。「何とかして変えたい」と強く思いながらも、結局は目の前の運用を続けるしかないと感じている、そんな人です。彼らには、現状に対する強い問題意識と、"変えるためなら努力を惜しまない"という熱い想いがあります。
一方で、”デジタル参謀”も現場の人間であることに変わりはありません。しかし、自分の身の回りの課題については、自身の権限の範囲で解決済みであることが多いです。他の人や部署が非効率なやり方をしているのを見ても「もっと簡単な方法があるのにな」と思いつつ、見て見ぬふりをしていることも。自分の得意な分野になると途端によくしゃべる、ちょっとオタク気質な人、と言えるかもしれません(これは私だけかもしれませんが…)。
熱い想いとクールなスキルが交わるとき
「現状を変えたい!!そのためのスキルがあるなら、自分が先頭に立って進めるのに!!」と願う熱い”改革発起人”。
「なんで、もっと簡単なこの方法でやらないんだろう?」と少し離れたところから見ているクールな”デジタル参謀”。
このふたりが出会い、タッグを組むことで、止まっていた歯車が大きく動き出します。
改革発起人が描いた構想を、デジタル参謀が実際のツールに落とし込んでいく。私の場合は、Google Apps Script(GAS)でコーディングをしていくことになります。改革発起人の熱い想いを、デジタル参謀が具体的な形にしていくのです。
ただ、ここで少し難しいのが、社内の業務効率化は、専門のSEが入って行うようなシステム開発とは少し違うという点です。どうしても”運用でカバーする”側面が多く出てきてしまいます。
例えば「英数字は半角で入力してください」とか「このセルには何も記入しないでください」といった、本当に些細なルールのことです。
現場でツールをうまく機能させるには、この些細なルールを守ってもらうことが、実はものすごく重要になってきます。ルールが守られないと、予期せぬエラーでツールが止まってしまうことが増えるからです(もちろん、できるだけそうならないようにコーディングで工夫はするのですが限界はあります)。
正直なところ、デジタル参謀は、この”ルールを守らせる活動”にあまり興味がありません。ツールを作ることや、その過程での学び自体が楽しいのであって、よその部署の業務を改善し、定着させることへのモチベーションは、改革発起人ほど高くないのです。
そこで力を発揮するのが、開発したツールの構想を深く理解している”改革発起人”です。彼らが先頭に立ってマニュアルを作成し、説明会を開き、現場のメンバーにルールを徹底させていく。これもまた、現場の事情をよくわかっていないメンバーを理解させる、非常にパワーのいる仕事です。
このように、理想に燃える”改革発起人の情熱"と、”デジタル参謀のスキル"、その両方が揃って初めて、業務効率化は本当の意味で成功するのだと思います。
まとめ
以前、幸運にも優秀な改革発起人と出会い、デジタル参謀として、とある事業部を横断するツール開発に携わったことがあります。
改革発起人が、開発に至るまでの各部署の困りごとを本当に丁寧にヒアリングしてくれたおかげで、私はGASでのコーディングに集中することができました。もちろん、丁寧なヒアリングのせいで要望が多くなり、コーディングは想像以上に大変だったのですが…
結果として、導入当初は少し嫌がっていた現場の皆さんも、ツールの便利さに気がついてくれたようで、今では問題なく定着していると聞いています。たまにエラーが出てメンテナンスをすることもありますが、改革発起人が作ってくれた丁寧なマニュアルのおかげで、ユーザーの皆さんがルール通りに作業してくれるので、致命的なエラーはほとんどありません。
この記事を読んでくださっているあなたは、熱い”改革発起人”タイプでしょうか。それとも、少しクールな”デジタル参謀”タイプでしょうか。
もし、あなたの会社で業務効率化(DX化)の話が出たときには、あなた自身がどちらかの役割を担うだけでなく、もうひとりのパートナーを見つけてチームを編成することを、心からオススメします。
どちらでもないいけれども、業務効率化(DX化)のミッションを受けた場合は、ふたりを見つけるところから始めてみてはいかがでしょうか?
あなた自身がどちらかの役割を担うにしても、ミッションとしてこの2人を探すにしても、大切なのは"チームで取り組む"という視点です。そうすれば、きっとひとりでは見えなかった景色が見えてくるはずです。
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