Encraft #22 「AIプロダクトを支えるアーキテクチャ設計 ー理論と実践」開催レポート
こんにちは、Engineer Enablerを担当している三木です。
ナレッジワークにおける技術ブランディング活動全般を担当しています。
本記事では、2025年12月23日に開催されたEncraft #22「AIプロダクトを支えるアーキテクチャ設計 ー理論と実践」のイベントレポートをお届けします。ぜひ最後までご覧ください。

Encraftとは?
Encraft(エンクラフト)は、株式会社ナレッジワークが提供する「Enablement」と「Craftsmanship」をテーマにした勉強会シリーズです。技術にこだわりを持つ人々が集い、実践知を共有しながら「できること」を増やしていく場をつくりたいという思いで運営しています。オフライン参加が難しい方向けに、YouTubeでのライブ配信・アーカイブ公開も行っています。
過去の開催レポートはこちらからご覧いただけます。
イベント概要
Encraft #22「AIプロダクトを支えるアーキテクチャ設計 ー理論と実践」は、生成AI・AIエージェントを本番プロダクトで運用するためのアーキテクチャ設計をテーマに開催されました。

生成AIの活用が一気に実用フェーズへ進む一方で、モデル選定・バックエンドの再設計・データ基盤の鍛え込み・組織横断での連携といった意思決定は、理論だけでは語りきれない複雑さを伴います。
今回は、ナレッジワーク・LayerX・UPSIDER の3社からエンジニア・PdMが登壇、AIプロダクト開発の「リアルな現場知」を複数の切り口から共有する回として実施しました。
オンライン・オフラインのハイブリッド開催となり、AIを組み込んだシステム設計に従事している・関心のあるソフトウェアエンジニア、テックリード、アーキテクト、エンジニアマネージャーなど、幅広い層の方にご参加いただきました。
[セッション1] Knowledge Work の AI Backend
mayah(株式会社ナレッジワーク CTO)

最初にナレッジワークのCTOであるmayahが登壇。マルチプロダクト環境におけるAI実行基盤の設計思想を紹介しました。AIを単なる追加機能ではなく共通基盤として位置づけ、各プロダクトから独立した実行レイヤーを切り出すことで、プロダクト横断でのデータ活用と安定運用を実現しています。技術的には、Protobufによるツール定義の標準化が特徴的で、認証・認可を含めた設計により、安全性を保ちながらAI機能を拡張できる構造が示されました。また、外部フレームワークに依存せずLLMのSDKを直接利用することで、実装のシンプルさと開発スピードを両立しています。
モデルの進化に振り回されないよう、AIを動かすためのバックエンド構造へ投資する姿勢から、「AI時代のSaaSにおいてバックエンド設計がプロダクトの持続性を左右する」というメッセージが強く伝わるセッションでした。
[セッション2] AI Agent のためのバックエンドアーキテクチャを考える
izumin さん(株式会社LayerX バクラク事業部 スタッフエンジニア)

続くizuminさんのセッションでは、LLMやAIエージェントの登場によってバックエンド設計の前提がどのように変わるのかが解説されました。
従来のAI機能は、人間の定義した処理フローで動作していたのに対し、AIエージェントは自律的に判断し実行時に分岐を決める存在であり、制御フローの中心を担うようになります。これにより、API設計も発想を転換し、リソース単位ではなくユースケース単位でツールを提供し、最小限のコンテキストを渡すことが重要である、と述べられました。
あわせて、複数のエージェントを支えるアーキテクチャとして「Backends for Agents(BFA)」の考え方が紹介され、エージェントを前提としたバックエンド設計の重要性が強調されました。アーキテクト・テックリード層にとって特に示唆の多いセッションだったのではないでしょうか。
[セッション3] タスク管理ツールがAIの「がくしゅうそうち」に化けるまで ―「成果物レビュー」の導入でAIの評価・改善をプロダクトに埋め込む
Kiyoto Ryuman さん(株式会社UPSIDER AI事業部 PdM)

このセッションでは、UPSIDERでの事例を通じて、AIを「作って終わり」にしないためのプロダクト設計が具体的に語られました。AIの成果物を人がレビューし、その結果を改善につなげる仕組みを、業務フローとしてプロダクトに組み込んでいる点が印象的でした。特に、成果物レビューを単なる運用ではなく、AIを育てるための学習装置として設計している点に、実践的な知見が詰まっていました。
AIの評価・改善をプロダクトの責務として捉える視点は、生成AI時代のSaaS開発において非常に示唆に富む内容でした。
※UPSIDER TECH BLOGでも本セッションに関するレポートを公開いただいています。ぜひご覧ください。
タスク管理ツールがAIの「がくしゅうそうち」に化けるまで Encraft #22 レポート
[セッション4] ソフトウェアエンジニアとAIエンジニアの役割分担についてのある事例
yamaryo(株式会社ナレッジワーク ソフトウェアエンジニア)

最後に、ナレッジワークからはもう1セッション、技術の話題から視点を変え、AIプロダクト開発を支える組織的な観点についてお話ししました。AI商談記録の開発・運用を通じて、ソフトウェアエンジニアとAIエンジニアの役割分担がプロダクトのフェーズに応じてどのように変化してきたのかが紹介されました。特に、運用フェーズに入るにつれて職種の境界を越えた協働が重要になっていく点は、多くのAIプロダクトに共通する課題だと感じました。
AIプロダクト開発における組織設計のリアルを知ることができる、実践的なセッションでした。開発チームを率いるマネージャーの方はぜひご覧ください。
参加者の声(抜粋)
- AIプロダクトへの開発をこれから進めるフェーズでこれから先直面する可能性のある問題や開発時に意識するべきことを知れて有意義な時間でした。
- 色々な会社での取り組みを知ることで、たくさん自分でも取り組みたいと思えるものがありました。
- 全体を通して、具体的な現場課題を踏まえたご知見や、実施されてきた改善策について多角的にお話を伺うことができ、大変参考になりました。
- AIを組み込んだプロダクトを作ってみたくなりました。

本編終了後は、オフライン参加者による懇親会も行い、活発な交流が生まれました
Triple-WIN アンケート
Encraftでは、参加者のアンケート回答数に応じて、ナレッジワークがOSSプロジェクトへ寄付を行う 「Triple-WIN アンケート」という取り組みを実施しています。
今回の Encraft #22 では、25名の方にアンケートをご回答いただき、8ドル × 25名 = 合計200ドルを FFmpeg に寄付しました。ご回答いただいた皆さま、ありがとうございました。

なお、これまでの寄付実績はこちらからご覧いただけます。(注:Open Collectiveを通して行ったもの)
まとめ
今回の Encraft #22 は、AIプロダクトを「どう作るか」だけでなく、「どう支え、どう育て続けるか」まで踏み込んだ内容が共有されるイベントとなりました。
AI時代のアーキテクチャ設計は、単なる技術選定にとどまらず、プロダクトの成長や、エンジニア組織の構造や役割と密接に結びついています。各社の実践から、その複雑さと向き合うためのヒントを持ち帰れる、非常に濃度の高い時間でした。
次回のEncraftもご期待ください!
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