システムのカスタマイゼーションとの向き合い方について考えてみた
はじめに
如何にシンプルに。
ここ最近特に考えていることですが、現実問題どうしても複雑になってしまうことが多く、悩ましい毎日を過ごしています。
これまでのエンジニアという経歴を踏まえ、システムのカスタマイゼーションに関して、調べてまとめてみました。
批判等したい訳ではなく、より生産性をあげ、生成AIなどを中心とするAIと共創し、ワクワクする未来になるよう、何かの気づきや議論のきっかけになれば幸いです。
そのような問題意識のもと、最近気になった事例から考えてみたいと思います。
2024年春、日本の食品業界において、大手メーカーがSAP S/4HANAシステムの導入で課題に直面し、一部商品の出荷に影響が生じる事例がありました¹。この事例は、多くの日本企業が抱えるシステム導入時のカスタマイゼーションに関する課題を考える良い機会となりました。
投資額は当初予定から増加し、プロジェクト期間も延長となりました。この背景には、標準的なシステムに既存の業務プロセスを適合させる際の複雑さがあったと考えられています。
日本のデジタル競争力の現状
IMDが発表した2024年のデジタル競争力ランキングにおいて、日本は67カ国中31位という結果でした²。特に「ビジネスの俊敏性」「上級管理職の国際経験」「デジタル/技術的スキル」の3項目では改善の余地が大きいことが示されています。
労働生産性においても、OECD加盟国中で上位に位置しておらず(日本生産性本部、2023年)³、向上の必要性が指摘されています。経済産業省のDXレポート(2018年)によると、日本企業のIT予算の約80%が既存システムの保守・運用に使用され、新規開発への投資は20%程度となっています⁴。
成功事例から学ぶポイント
一方で、システム導入を成功させている企業も存在します。横河電機は、SAP Concurの導入により年間約2,400万円の業務効率化効果を実現し、経費精算業務で大幅な時間短縮を達成しています⁵。千代田化工建設も、国内エンジニアリング企業として初めてSAP ERPを本格導入し、約1年8ヶ月で稼働させています⁶。
これらの成功事例に共通するのは、システムの標準機能を積極的に活用し、必要に応じて業務プロセスをシステムに合わせる柔軟なアプローチです。
AI・生成技術の活用状況
経済産業省が2024年6月に発表した「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方」⁷では、日本企業の組織的な生成AI活用について、さらなる取り組みの必要性が示されています。McKinsey調査(2024年)では世界企業の生成AI定期利用率が65%に達している一方⁸、総務省調査(2024年)によると日本企業で生成AIの積極活用方針を示すのは16%という状況です⁹。
「2025年の崖」への対応
経済産業省のDXレポート(2018年)では、日本企業の多くにレガシーシステムが存在し、適切な対応が行われない場合、2025年以降に大きな経済的影響が生じる可能性が指摘されていました⁴。
日本企業のIT投資は売上高比で平均1.0~1.15%程度(野村総合研究所、ガートナー調査)¹⁰と、北米企業の3.3%、欧州企業の2.6%(ガートナー国際比較)と比較すると改善の余地があります。
課題解決に向けた提案
1. バランスの取れたカスタマイゼーション
システム導入時には、標準機能の活用と必要なカスタマイゼーションのバランスを適切に取ることが重要です。全てを標準機能に合わせる必要はありませんが、本当に必要なカスタマイゼーションを見極めることが求められます。
2. 戦略的IT投資の視点
IT投資を単なるコストではなく、競争力向上のための戦略的投資として位置づけることが重要です。ROIの測定方法を明確にし、中長期的な視点で投資判断を行うことが求められます。
3. 内製化能力の向上
外部ベンダーとの適切な協業を維持しながら、社内でのIT理解と開発能力を段階的に向上させることで、より柔軟で効率的なシステム運用が可能になります。
4. 経営層のコミットメント
デジタル変革を成功させるためには、経営層が明確なビジョンを示し、組織全体での取り組みをリードすることが不可欠です。
まとめ
日本企業がデジタル競争力を向上させるためには、システム導入時のアプローチを見直し、グローバルスタンダードを適切に活用する柔軟性を持つことが重要です。これは日本企業の強みを否定するものではなく、むしろその強みを最大限に活かすための基盤づくりと言えるでしょう。
成功している企業の事例を参考にしながら、自社の状況に応じた最適なアプローチを見つけることが、持続可能なデジタル変革の鍵となると考えています。
参考文献・情報ソース
¹ 日経xTECH「『S/4HANA』への切り替えでトラブルの江崎グリコ、1カ月経過も商品の出荷停止続く」(2024年5月)
² IMD World Digital Competitiveness Ranking 2024
³ 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2024」
⁴ 経済産業省「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」(2018年9月)
⁵ SAP Concur導入事例:横河電機株式会社
⁶ アビームコンサルティング「千代田化工建設のSAP ERP導入事例」
⁷ 経済産業省「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方2024」(2024年6月)
⁸ McKinsey & Company「The state of AI in early 2024: Gen AI adoption spikes and starts to generate value」
⁹ 総務省「令和6年情報通信白書」生成AI利用状況調査(2024年)
¹⁰ 野村総合研究所「IT活用実態調査2024」、ガートナージャパン「IT投資動向調査」
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