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ツリー階層の情報検索がなぜダメなのかを考える

2025/02/16に公開

はじめに

昨今では、Windows のスタート メニューや Outlook の階層型アドレス帳に代表されるようなツリー階層の情報検索に変わって、シンプルなテキスト検索が主流になりつつあります。一方、ツリー階層の情報検索がわかりやすいということでこだわり続ける方も数多くみられるようです。今回は、なぜツリー階層の情報検索がよくないのかを考えてみます。

具体例

例として都道府県を選択する UI を取り上げます。都道府県は 47 あるので一覧から選択するのは大変です。なので、まずは地方を選択し、それから都道府県を選択できるようにします。最初に表示される選択肢は以下のようになります。

  • 東北・北海道
  • 関東
  • 中部
  • 近畿
  • 中国
  • 四国
  • 九州・沖縄

ここであなたは「三重県」を選択したいと考えます。どれを選択すればいいでしょうか。

日本に長く住んでいる人であれば「中部」または「近畿」を選択します。そしておそらく選択したあとに表示される都道府県のリストに「三重県」がないことに気づきます。結局、前の質問に戻り、別の地方を選択するという無駄な作業が発生します。

もしあなたが日本に詳しくない外国人だった場合はどうでしょうか。「三重県」が日本のどの位置にあるかを知らないので、全部の地方を探索的にたどっていくことになります。これは大変な労力です。「三重県」であればまだよいですが、もし「大分県」を探している場合、上からすべての地方を探していったら、最後には相当フラストレーションが溜まっていることでしょう。人によっては途中で諦めてしまいそうです。

ここでの本論は「三重県」がどの地方に属するかということではありません。大事なのは、「三重県」というキーワードに対して、それがどこに位置するかといったコンテキストをユーザーに要求するという点です。サービスを提供する側は、ユーザーがコンテキストを理解することを前提で考えています。しかし、日本に詳しくない外国人の例でもわかるように、実際のところユーザーはコンテキストを理解できません。また詳しい人であっても間違える可能性があります。ツリー階層は、知っている人には便利であるが、知らない人には不便であるという仕組みなのです。サービスを提供する側は「知っている」ので、便利だと誤解し、ユーザーに不便を強いているということになります。

ほかの例を考えてみます。あるサービスを使っていてトラブルがありサポートに問い合わせるとします。サイトを見ると FAQ がありますが、カテゴリーから選択していく形式です。トラブルに該当するカテゴリーがわからなくて困ったことはないでしょうか。あるいは、電話で問い合わせたときに、自動音声サービスから該当する項目の番号を押すように求められて困ったことはないでしょうか。ほとんどの場合、ユーザーはそのサービスに詳しくありませんし、トラブルの内容を分析できません。なのにまずユーザーにカテゴリーを選べと迫るのは不親切と言わざるを得ません。

プロジェクトに新しく参加した人が目的のファイルがどこにあるかわからずに困ることがあります。いくらきれいにフォルダー階層を作ったり、わかりやすいフォルダー名にしたとしても、そもそもフォルダー階層がどうなっているのかを知らないのではどうしようもありません。

おわりに

ツリー階層が絶対にダメというつもりはありません。コンテキストを理解している人にとっては使いやすいのは間違いありません。しかし、コンテキストを理解していない人には使いづらいというのは考慮する必要があります。また、データ構造として整理することを否定するわけではありません。ペルソナをきちんと定義して、適切な UI/UX を設計することが大事です。

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