日本のSaaS 100社のMCP・API対応状況を調べてまとめた【2026年4月版】
日本のSaaS 100社のMCP対応状況を調査した — AIエージェントから見た現実
はじめに
最近、Claude CodeやCursorなどのAIエージェントを使って、日本のSaaSと連携した業務自動化を試みる機会が増えました。
MCP(Model Context Protocol)— AnthropicがオープンソースとしてリリースしたAIエージェント向けの接続規格 — のSDKダウンロード数は月間9,700万を超え、世界で17,000以上のMCPサーバーが公開されています。
ところが、実際にAIエージェントに「freeeで請求書を作って」と頼むと、こんなことが起きます。
- まずfreeeにMCPサーバーがあるのか検索する(1回目)
- GitHubのREADMEを読んで機能を推測する(2回目)
- 楽天と連携したいのでまた検索する(3回目)
- 技術記事を複数読んで制約を把握する(4回目)
- 2つのMCPの組み合わせ方をゼロから推論する(5回目)
- 日付フォーマットの不一致でエラー → やり直し
約10,000トークンを消費して、しかも成功するとは限らない。
公式MCPレジストリ(registry.modelcontextprotocol.io)を確認しても、日本のSaaSはほとんど登録されていない。エージェントが日本の業務SaaSを効率的に見つけて使う手段が、そもそも存在しない。
「本当にそうなのか?」を確かめるために、日本の主要SaaS 100社のMCP/API対応状況を調査しました。
調査方法
- 対象:日本企業が業務で使う主要SaaS 100社
- 調査期間:2026年4月
- 調査内容:MCP対応状況(公式/第三者/APIのみ/なし)、API仕様、認証方式、制約事項
- 情報源:公式ドキュメント、GitHub、npm、公式レジストリ、開発者コミュニティ
各サービスを以下の4段階で分類しました。
| ステータス | 意味 |
|---|---|
official |
サービス提供元が公式にMCPサーバーを公開 |
third_party |
第三者がMCPサーバーを開発・公開 |
api_only |
MCPサーバーはないが、REST API等が公開されている |
none |
API自体が一般公開されていない |
調査結果サマリー
MCP対応状況の全体像
| ステータス | 社数 | 割合 |
|---|---|---|
公式MCP (official) |
約20社 | 20% |
第三者MCP (third_party) |
約15社 | 15% |
APIのみ (api_only) |
約45社 | 45% |
手段なし (none) |
約20社 | 20% |
日本のSaaS 100社のうち、AIエージェントがMCP経由で直接連携できるのは約35%。残り65%はMCPサーバーが存在しない。
ただし、APIが公開されている45社についてはエージェントがAPI直接で連携可能です。MCPはないけれど、接続方法と認証情報がわかれば使える。
カテゴリ別の対応状況
| カテゴリ | 主なサービス | MCP対応状況 |
|---|---|---|
| 会計・財務 | freee, Money Forward, 弥生, Misoca | ◎ 最も充実。freeeは5ドメイン対応 |
| 人事・労務 | SmartHR, KING OF TIME, Jobcan | △ APIは充実だがMCPは少ない |
| プロジェクト管理 | Backlog, kintone, Redmine | ◎ kintoneが最も積極的 |
| コミュニケーション | Chatwork, Slack, LINE WORKS | ○ Chatwork公式MCP、Slack MCP対応 |
| EC・コマース | Shopify JP, BASE, 楽天, Amazon JP | △ 第三者MCPが中心 |
| 法務・契約 | CloudSign, GMOサイン, LegalOn | ✕ 全滅。MCP対応ゼロ |
| CRM・営業 | Sansan, HubSpot JP, kintone | ○ Sansan公式MCP対応 |
| マーケティング | SendGrid, Mailchimp JP | △ グローバルMCPはあるが日本特化なし |
注目すべき発見
1. freeeが最も包括的
freeeは2026年3月にMCPサーバーをOSS公開し、さらにリモート版(URL接続のみ)も提供開始。会計・人事労務・請求書・工数管理・販売の5ドメイン、約270のAPIをMCPツール化。日本のSaaSで最もMCPに積極的です。
2. サイボウズ(kintone + Garoon)がMCPに積極的
kintoneは公式MCPサーバーを提供し、プラグインエコシステムとの連携も進んでいます。日本企業のハブツールとしてのポジションを活かしている。
3. Money Forwardが攻めている
2026年3月にリモートMCPを全プランに開放。freeeとのMCP競争が始まっています。
4. 法務・契約セクターは完全にMCP未対応
CloudSign、GMOサイン、LegalOn、いずれもMCPサーバーなし。APIは一部公開されていますが、電子署名という性質上、セキュリティ要件が厳しく、MCP対応が遅れている可能性があります。
5. 公式MCPレジストリへの日本SaaSの登録はほぼゼロ
registry.modelcontextprotocol.io に登録されている日本のSaaSは調査時点でほとんどありません。GitHubやnpmにMCPサーバーが存在していても、公式レジストリに登録されていないケースが多い。エージェントから「見えない」状態です。
AIエージェントにとって何が問題か
エージェントの視点で見ると、3つの構造的な問題があります。
発見の問題。 MCPサーバーがGitHubの個人リポジトリに散在していて、一元的に探せない。公式レジストリにも日本のSaaSはほぼ登録されていない。
評価の問題。 MCPサーバーを見つけても、何ができるのか、認証はどうするのか、レート制限はあるのか、既知の問題は何か、がREADMEを読み込まないとわからない。機械可読な形で構造化されていない。
組み合わせの問題。 「freeeで仕訳を作って、Chatworkに通知する」のような複数サービスの連携パターンが、どこにもまとまっていない。エージェントは毎回ゼロから設計する必要がある。
KanseiLinkを作った
この調査結果を元に、AIエージェントが日本のMCP/APIを効率的に探して使えるMCPサーバーを作りました。
KanseiLink — エージェント向けのMCPインテリジェンスレイヤー
何ができるか
-
search_services("請求書処理")→ freee, Money Forward, Misocaが関連度順で返る -
get_recipe("invoice-processing")→ 実行順序、データマッピング、既知の注意点が構造化データで返る -
get_service_detail("freee")→ 認証方式、レート制限、カテゴリ、API URL、全部入り -
report_outcome(...)→ 成功/失敗の結果を記録。次のエージェントの学びになる -
get_insights("freee")→ 過去のエージェントの利用統計・成功率・よくあるエラー
数字で見る効果
| KanseiLinkなし | KanseiLinkあり | |
|---|---|---|
| 必要な検索回数 | 5回以上 | 1回 |
| 消費トークン | ~10,000+ | ~300 |
| エラー遭遇率 | 高い(事前情報なし) | 低い(既知の注意点が事前にわかる) |
使い方
Claude Code / Cursor / Windsurf などのMCPクライアントに追加するだけ:
{
"mcpServers": {
"kansei-link": {
"command": "npx",
"args": ["@kansei-link/mcp-server"]
}
}
}
対応状況
- 100サービス / 18カテゴリ / 25レシピ / 18 APIガイド / 7ツール
- MCP対応サービスもAPI-onlyサービスも両方カバー
- 日本語キーワード検索対応
- PIIマスキング機能搭載(個人情報の自動検出・除去)
リンク
- GitHub: github.com/kansei-link/kansei-mcp-server
- npm: @kansei-link/mcp-server
- ライセンス: MIT
MCP/API混在レシピという新しい形
KanseiLinkの特徴の一つは、MCP経由のステップとAPI直接のステップが混在するレシピを提供していることです。
例えば「入社手続き自動化」のレシピ:
Step 1: SmartHR API → 従業員登録(api_only — REST直接)
Step 2: freee MCP → 給与マスタ登録(official — MCP経由)
Step 3: KING OF TIME API → 勤怠アカウント作成(api_only — REST直接)
Step 4: Chatwork MCP → チームに通知(official — MCP経由)
MCPサーバーだけを扱うカタログでは、Step 1とStep 3が「対象外」になって、レシピが成立しません。KanseiLinkはAPIのみのサービスも構造化情報を持っているので、エージェントが「MCPで繋げるもの」と「APIで直接叩くもの」を組み合わせた現実的なワークフローを実行できます。
今後
- サービスの追加・更新は継続的に行います
- エージェントからの
report_outcome(利用結果フィードバック)を蓄積して、レシピの成功率や注意点を動的に改善していきます - リモートMCPサーバー版(HTTP transport対応)も準備中です
フィードバック、Issue報告、プルリクエスト歓迎です。
おわりに
日本のSaaS 100社を調査してわかったのは、MCPエコシステムはまだ初期段階ということです。公式MCP対応は20%、APIのみが45%、手段なしが20%。さらに公式レジストリへの登録もほぼされていない。
一方で、freee、kintone、Money Forwardのように積極的にMCP対応を進めている企業もある。この流れは加速するでしょう。
AIエージェントが日本の業務を本当に自動化するためには、「何があるか」「どう使うか」「何に注意するか」が構造化されている必要があります。KanseiLinkがその一助になれば幸いです。
試してみて、感想を聞かせてください。
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