怒れるAIサービス「IKAI(イカイ)」@AIハッカソン

イカイ、異界、遺戒。この名を聞いて、何を思い描くだろうか。
このサービスは、AIによる怒りの再現。怒髪冠を衝くようなAIの異界。その扉を開くのがこのサービスだ。もしかすると、信じがたい世界の誘いかもしれない。
怒れるAIサービス「IKAI(イカイ)」のプロジェクト概要
最近社会人になったばかりの方、今絶賛若者で社会人なるために頑張っている方、叱られていますか?
近年、若者の「叱られ離れ」が進んでいるようで、すこし怒っただけで会社に来なくなってしまうという事象が発生している。そのため、叱られ不足の人が本当に怒られる前に、怒られる練習をする、それがこのサービスの意義となる。
加えて、このサービスを作る発想のもととなったのは、前回のハッカソンで開発した「シゴットニア」に端を発する。「シゴットニア」では、「何かになりたい」という希望のきっかけとなり、その後、自身で定めた仕事に挑戦したときに「怒られる」という事象を事前に経験するために、この「IKAI」を開発した。
詰まるところ、人が社会人になっていく流れを序破急によって表現し、「シゴットニア」が「序」で、次いで、この「IKAI」が「破」となるわけだ。
ターゲット
このサービスの主なターゲットは二種類。
- 叱られ不足の若者:少しでも怒られると萎縮してしまうような若者が、実際にどういうことを具体的に怒られるのだろうか?怒られたとき、自分自身がどういう感情になるのだろうか?そういう感情をしっかりと向き合いたい方に向けている。
- 叱り方が分からない人:かつて叱られ不足の人が成長して、部下や生徒を持ったり、昨今のハラスメント事情で、どのような怒り方が最適であるかを見定めたいと考えている方に向けている。
以上のように「怒り」「叱り」という感情を揺さぶられるような感情に対して、向き合うことを目的としたサービスだ。そのため、サービスを使用した先にあるゴールとしては、上司や教師に怒られたときの対処法や精神的な安定を保つための耐性を高めたり、部下や生徒への怒り方を是正したり怒られた側の気持ちを指導者側として実感することにある。
主な機能の紹介
読者諸氏は「怒る人」と聞いて、「誰」を思い浮かべるだろうか。
やはり、空き地の横に住んでいて非常に高い頻度で縁側のガラス窓を破壊され怒りを露わにする神成氏であったり、ご子息の素行の悪さに対して近隣住民にも聞こえるように怒りをぶつける磯野氏であるかもしれない。このように国民的に親しまれた怒りの象徴である御仁方に共通していることは、何か。
そう、「雷」だ。
このサービスは、ボルト(雷の矢、いかずち)という単位で、ユーザーへの怒りが降り注ぐ。さらにボルトを調整するために怒りのボルテージ調整が可能になっている。
| 機能 | 説明 |
|---|---|
| ワーク | ユーザーは文章作成やプログラミングをサービス上で行うことができる。 |
| ボルト | ユーザーが記述した文章やプログラムに対して送られる怒りのメッセージ。 |
| ボルテージ | ボルトの怒り度合いの調整機能。 |
更に、「怒り」は議論ではないため、ディスカッション機能を有しているわけではないが、それぞれのボルト(怒りメッセージ)に対して、常に一度のみ返答を行うことができる。
システムアーキテクチャ
IKAIは、NuxtをベースにCodeMirrorを用いたエディター機能を実装し、Pulumiでインフラを構築。ローカルの開発環境では、DockerとVS Codeを使用した。
- Webアプリケーション: TypeScriptでNuxtとPrimeVueを採用。エディターにはCodeMirrorを採用。
- データストレージ: 試験的サービスでもあるためSQLiteを用いて、ORMは、Drizzle ORMを採用。
- Webコンテナ: プログラム実行機能にはWASMによるWebContainersを採用。
ユーザー操作時のシステムの流れは以下の通り。
クラウドインフラはGoogle CloudのCloud RunやVertexAIを活用し、デプロイはPulumiを使用して、アプリケーション本体と同一の言語(TypeScript)で技術の統一を図った。
動画(紹介、デモ)
最後に
昨今、ハラスメント需要の高まりから、講義はもちろんのこと、各人のハラスメントに対する意識が変わりつつある。だが、そのほとんどが過剰な意識の果てにあるものであり、本来必要とされているような言動の放棄や、いささか過敏に示されるものが多く存在する。個人的には、その一つが怒りであるように思う。それぞれが何かを警戒し、他者との関係性を最小単位まで抑制し、喜怒哀楽などの感情を希薄に保つことが増えているように感じている。
そのような世界の中で、特に怒りは、状況の打破、危険性の発露など、人にとって不可欠な感情であると考えている。しかし、叱られたくないことや、やさしさだけを求められているような世界において、誰も怒ることなく、真の危険性や気にしなければならないことが知らされなくなり、更に最悪な状況を招くかもしれない。そのような世界は正しいとは自信をもって言うことができない。
結果として、今回、怒りにまつわるサービスを考案したわけだが、今は見えない、遠く先の未来では、AIやそれ以外での便利な仕組みによって、人は感情をなくしてしまうかもしれない。ただでさえ、現代の飽和したサービスの中で、ドーパミン中毒が危険視されているため、今後さらに人類は非労働性と快楽性への重視を強く好むかもしれない。そうなると、人間関係はさらに希薄さを極め、個人の感情は平坦化してしまうような未来も考えられる。
昨今のAIを中心とした利便性の裏には何が隠れているのか。便利で簡略化されるサービスを開発することや、エンドユーザーへの中毒性を高め依存状態を作るようなマーケティングの結果として、我々は進歩できているのだろうか。人を人として健全に保つことができるそんなサービスが増えてくることを切に願っている。
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