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【インタビュー】AI時代の開発最前線へ-CTOが語る Jicooの技術戦略・組織・エンジニアの未来

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今回は、JicooのCTOである小林さんに、Jicoo技術戦略や開発組織の未来、そして今まさに変化の渦中にあるAI技術への取り組みについて、詳しくお話を聞きました。
この記事では、小林さんのこれまでの歩みから、TypeScriptやDDDといった技術選択の背景、AI時代を見据えた開発体制、エンジニアの成長環境、そして私たちがどんな仲間を求めているかまで、率直に語ってもらっています。
技術の力で世の中に大きなインパクトを与えたいと考えているエンジニアの皆さん、そして私たちの挑戦に興味を持ってくださる全ての方に、ぜひ読んでいただければ幸いです!

目次

  • インタビューされた人
  • インタビューした人
    1. スタートアップ初期メンバーの経験を経てJicooへ。技術トップが見据えるもの
    1. なぜTypeScriptとDDD?少数精鋭で成果を出す技術の選択
    1. CTOはアーキテクトに注力。権限移譲で進化する開発組織
    1. 裁量とプロダクト思考で成長を加速。キャリアは自ら切り開く
    1. 文化は「ユーザーファースト」。オープンな議論でベストを探る
    1. AIがコード7割記述も。リアルなAI活用と変化への挑戦
    1. AI時代の生存戦略:鍵は「指示」「レビュー」「伝達」スキル
    1. 求める仲間:プロダクト思考、AIへの興味、そしてチームで動ける人

インタビューされた人

小林春彦(CTO)
ヤフー(株)でソーシャルサービスの開発ヤフー全体で利用されるミドルウェアの立ち上げ・開発を経てRealNetworksではリードエンジニアとして活躍。2014年8月よりスペースマーケットで1人目のエンジニア、CTLとしてマザーズ上場に貢献。2021年4月、ジクー(株)へ参画。

インタビューした人

豊濱 吉庸(技術顧問)
1999年にソフトバンク株式会社に入社後、半年で子会社のヤフーに転籍。Yahoo!スポーツなどの速報系メディア、地域サービス系コンテンツなどを担当し、2012年からはテクニカルディレクターとして、部署全体のシステム統括を行う。 その後リクルートライフスタイル、ぐるなび、JTBを経て2020年11月にディップ株式会社のCTOに就任。退任後、Jicooに技術顧問として参画。

大角 萌寧(デザイナー)
コンサルティング会社にて、一人目のインハウスデザイナーとしてデザインチームのリーダーを務め、様々なスタートアップの支援に貢献。自社プロダクト開発に加え、サイト制作や採用ピッチ作成など、クライアントワークも幅広く担当。2024年ジクー(株)へ参画。

1. スタートアップ初期メンバーの経験を経てJicooへ。技術トップが見据えるもの

—— まず最初に、小林さんご自身のキャリアとビジョンについてお伺いできますでしょうか?

小林: はい。2005年にヤフー株式会社に新卒で入社し、そこから約20年間、技術特化型のエンジニアとしてキャリアを積んできました。
主にテックリードやチーフテックリードといった役職を担当し、技術のスペシャリストとして働いてきたという感じです。マネジメントや組織運営にも携わることがありましたが、エンジニアリングマネージャーを兼務する形が多かったですね。

今のリーダーシップに影響を与えた重要な経験としては、前職の初期フェーズのスタートアップでの経験が挙げられます。一人目のエンジニアとして入社し、最終的にエンジニア20名ほどの組織になり、東証マザーズ上場も経験しました。その中で、組織の成長する事で起きる課題の対応や、大規模プロジェクトの技術責任者としての成功経験・失敗経験など、多くのことを学びました。チームで成果をあげる喜びが、現在の仕事につながっていると感じています。

2. なぜTypeScriptとDDD?少数精鋭で成果を出す技術の選択

—— 現在の技術スタックとアーキテクチャの方針、それがどのように決まったのかについて教えていただけますか?

小林: 現在の技術スタックは、Web版、Android、iOS、Macの全てをTypeScriptで統一しています。
これは、少ないリソースで全てのプラットフォームに対応できる効率性を重視した技術選定の結果です。また、フロントエンドとバックエンドのエンジニアがお互いの領域に影響を与えやすく、担当領域を越境してコードに触れるようにするためでもあります。
アーキテクチャには、ドメイン駆動設計(DDD)をベースとしたオニオンアーキテクチャを採用しています。コード量が増えるという側面はあるものの、レイヤー間の依存ルールを守ることで、将来的なリファクタリングを容易にすることを重視しています。インフラに関しては、創業当初からGoogle Cloudを利用し、他のSaaSも組み合わせながら設計しています。

—— アーキテクチャの強度について、レイヤー違反などはどの程度厳格に守られていますか?

小林: レイヤー違反は全てコードレビューで指摘しています。どうしても避けられない場合はありますが、原則遵守しています。
サービスやユースケースごとに書く内容を厳格に決めているわけではありませんが、ドメイン層からプレゼンテーション層を直接呼び出す等の違反は禁止しています。

3. CTOはアーキテクトに注力。権限移譲で進化する開発組織

—— これまでのご経験を踏まえ、今後3年から5年で、Jicooの技術部門はどのように進化していくとお考えでしょうか?

小林: 現在、数名のエンジニアがおり、マネジメントは私一人で行っていますが、段階的にエンジニアの数を増やしていく予定です。それに伴い、徐々にテックリードやエンジニアリングマネージャーのような方を育成していきたいと考えています。現在は私がマネジメントからコードの管理まで行っていますが、今後3年から5年で 技術の責任はテックリードに、メンバーの成長や組織の仕組み作りはエンジニアリングマネージャーに移譲していくことで、組織全体の基盤を整えたいと思っています。

—— 組織体制を移譲していきたい、という部分に関して、マネジメントと技術的なレイヤーのどちらを優先的にメンバーに移譲していきたいとお考えですか?

小林: 基本的にマネジメントを移譲したいと考えています。私自身はやはりアーキテクトとしてやっていきたいという思いが強くあります。もちろん技術選定なども移譲していきますが、一番大きい方針は現状私が決めていますが、コア部分も含めてどんどん移譲していきたいと思っています。

4. 裁量とプロダクト思考で成長を加速。キャリアは自ら切り開く

—— エンジニアの専門力開発やスキルアップのために、どのような機会を提供されていますか?

小林: プロダクトの設計を意識的に担当してもらうことで、エンジニアのスキルアップを促進しています。
最初はシニアエンジニアのサポートを受けながらシステム設計を行いますが、早い段階でデータベース、API、フロントエンド全てをフルスタックに設計・開発ができるのでSaaSをゼロイチで作る方法が学べる環境を提供しています。
またAIコード生成のプロンプトを共有し、この実装するならこういうデザインパターンが使えるね、といった事も最近はよくやっていて、チーム全体のコード品質の向上も期待しています。

—— かなり広い裁量で仕事をすることができるんですね。

小林: はい。代表も元エンジニアであるため、エンジニアからの提案がしやすい文化も特徴です。プロダクト思考を持つエンジニアが活躍できる機会が多いと思います。

—— Jicooに入社したエンジニアは、どのようなキャリアパスを描くことができるでしょうか?

小林: 基本的にはスペシャリストとマネジメントの2つのキャリアパスがあると考えています。
スペシャリストとしては、テックリード、シニアテックリード、そしてCTOを目指す道
マネジメントとしては、エンジニアリングマネージャー、シニアエンジニアリングマネージャー、VPといった道があると考えます。

—— まだ人数が少ないとのことですが、キャリアに対するサポート体制はどのようなものがありますか?また、Jicooにフィットするエンジニアはどんな方だと考えていますか?

小林: 正直なところ、まだ大企業のような手厚いキャリアサポートは整備されていません。逆に言うと、自分でキャリアを切り開いていける意欲のある方に来ていただけると非常に嬉しいです。
そのような方には、CTOなどのポジションに挑戦するチャンスも多いと思います。スタートアップなので、自身の専門領域を超えた幅広い業務に携わる覚悟も必要となります。重要なのは、変化に対応し、自ら成長していける人材であるということです。

5. 文化は「ユーザーファースト」。オープンな議論でベストを探る

—— Jicooのエンジニアチーム全体の文化や、大切にしている価値観についてお聞かせください。

小林: エンジニアチーム全体の文化として、ユーザーファーストの精神が強く根付いています。ユーザーに価値をいち早く届けることを重視し、単に開発するだけでなく、「どうすればもっと便利になるか」を第一に考えています。
そのため、エンジニアが自発的にデモをしてQA完了後すぐにリリースする事を意識しています。 また、誰からの意見もオープンに取り入れる姿勢があり、ディスカッションを通じてベストな選択肢を探ることを心がけています。これは、弊社の「Move fast」「Simplify」「Be an Entrepreneur」といったバリューとも共通しており、エンジニアチームも同様の価値観で行動しています。

—— 組織全体の価値観が、エンジニアチームにもしっかり根付いているんですね。

小林: そうですね。常に意識して開発を進めています。

6. AIがコード7割記述も。リアルなAI活用と変化への挑戦

—— エンジニアチームが現在取り組んでいる技術的な課題はありますか?

小林: 現在、最も大きい技術的な課題は、AI技術による開発スタイルの急速な変化にどう対応していくかという点です。
既に、コードの7〜8割をAIが記述するような状況も生まれており、AIを最大限に活用し、生産性と品質を向上させることが重要なテーマとなっています。チームとしても、AIを使いこなすためのノウハウを共有し、メンバーからの提案も積極的に求めています。

—— AI技術の進化は目覚ましいですが、Jicooでは具体的にどのようにAIを活用されていますか?

小林: 実際の活用事例としては、昨年末頃からCursorやGitHub CopilotなどのAIツールを活用したペアプログラミングが多いです。私自身も7割程度はAIがコードを書いているような状況です。
また、Figmaのデザインデータからのコード自動生成も活用しています。その他、説明資料などのドキュメント作成の叩き台やメール作成のサポートにもAIを利用しています。試験的な導入としては、AIエンジニアによるサービスのデバッグ、ヘルプ作成、QAなども始めています。

7. AI時代の生存戦略:鍵は「指示」「レビュー」「伝達」スキル

—— 今後、AI技術はどのように進化し、Jicooの開発にどのような影響を与えるとお考えですか?

小林: 今後1〜2年で、AIによるコード生成の割合は9割程度になるのではないかと予想しています。その際に重要となるのは、AIが生成したコードを適切にレビューできるエンジニアの存在です。
AIへの適切な指示(プロンプト)作成能力
生成されたコードの品質を見極める力
そしてコアな部分をしっかりと設計する基礎的なエンジニアリングスキル
が求められます。また、AIに対して意図を正確に伝えるコミュニケーション能力(テキストベース)も重要になります。
AIが自走しやすいようにテストや静的解析ツールなど、AIを効率的に活用するための環境構築も重要になると考えています。

—— では、これから入社するエンジニアに対して、AIに関してどのような知識や経験を期待されますか?

小林: やはり日頃からAIに触れていることが重要だと考えています。海外の最新AIサービスをウォッチし、その内部ロジックを想像できるような技術力を持っている方を求めていますね。例えば、DevinやCursorがどのように動いているのかを理解できるような方は非常に強いと思います。

8. 求める仲間:プロダクト思考、AIへの興味、そしてチームで動ける人

—— それでは最後に、これからJicooへの入社を検討しているエンジニアの方に向けて、求める人物像やスキルについて改めてお聞かせいただけますでしょうか?

小林: 最も重要なのは、プロダクト思考を持つ人材です。自らデモを作成し、サービスをより良くするためのアイデアを発信できるような人を求めています。
また、AIに関する深い知識、日頃からAIを活用した開発経験も重視します。そして、スタートアップという環境柄、開発だけでなく、カスタマーサクセスなど様々な役割のメンバーと連携する機会が多いため、高いコミュニケーション能力とチームワークも不可欠です。周囲を巻き込み、協力して目標を達成できる人材を求めています。少しでも興味を持ったら、まずはカジュアル面談でお話させていただけたらと思います。

—— コミュニケーション能力は、技術力と同じくらい重要ということでしょうか?

小林: はい。一人で開発することはなくデザイナーやプロダクトマネージャーと一緒に仕事をするので、コミュニケーション能力は非常に重要だと考えています。それに加えて、もちろん技術力も必要です。

—— 変化のスピードが速い現代において、対応力も重要になりますね。

小林: その通りです。エンジニアはAIによる変化が激しい時代に突入し、過去10年以上蓄積してきた開発スキルをどんどんアンラーニングして、新しい手法を学んでいく必要があります。
それができる適応能力と学習意欲のある方を求めています。

—— 本日はありがとうございました!

小林: こちらこそ、ありがとうございました!

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