電子カルテ要件定義備忘録
電子カルテ要件定義備忘録:情報量が多すぎる画面とどう向き合うか
最近、電子カルテの要件定義者としてプロジェクトに入ったのですが、学びがかなり多いです。
業務システムの経験はあっても、電子カルテは「1画面に載せる情報量」の前提が違いすぎて、最初は素直に圧倒されました。
この記事では、電子カルテのあるあるでもある
「表示すべき情報量が多い問題」を、要件定義としてどう解くかを備忘録的にまとめます。
そもそも:電子カルテは1画面の情報量が多くなりやすい
電子カルテの画面って、だいたい最初にこう思います。
「情報、多すぎない……?」
- 患者識別情報
- 既往歴・アレルギー
- 検査結果
- オーダー状況
- 注意事項・アラート
- さらに職種ごとの見たい情報
しかも、単に「あったら便利」ではなく
安全面・運用面で“見えてないと困る”情報が普通に多いのが難しさです。
なので、要件整理でいきなり「削る」方向に振ると破綻しやすい。
まずは「情報量が多いのは前提」と置いた方が進めやすいなと感じています。
また、この話は単純に患者カルテ画面に限った話ではなく患者様の情報を横断した一覧面には同じ問題が起きる可能性が高いです。
解き方①:最初に「誰の画面か」を決める(役職・職種の整理)
情報量を扱う上で、一番効いたのはここでした。
その画面、誰が主に使う画面?
これが曖昧だと、要件がこうなりがちです。
- 医師も見る
- 看護師も見る
- 事務も見る
- だから全部載せる
結果、情報が増え続けて画面が破綻します。
逆に、ここを決めると要件が一気に整理できます。
- 医師の意思決定が主目的の画面
- 看護師の実施・確認が主目的の画面
- 事務の請求・確認が主目的の画面
…みたいに主役を決めると、
- 常に表示すべき情報
- 必要な時に参照できればよい情報
- 必要な時に参照できればよい情報
- 別の画面でよい情報
が自然と分かれて、情報量を無理なく絞り込めます。
要件定義・要件整理のごく基本的な話ではあるのですが、
「患者様の情報」という1つの情報を、さまざまな職種が共有して見る場面では、ここを整理しないまま進めてしまいがちです。
解き方②:情報を“レイヤー”で定義する(常時表示 / 補助情報 / 詳細)
次に効いたのが、画面上の情報を“レイヤー”で分けて要件化することです。
- 常時表示:患者識別、致命的アラートなど(見逃しが許されない)
- 補助情報:略語の意味、注意の背景、判断の根拠など(必要な時だけ見たい)
- 詳細:履歴・全文・原データなど(深掘りしたい時だけ)
要望を聞くと、つい「じゃあここにも表示しましょう」と
全部を常時表示に載せていきがちですが、
それを続けるとレイアウトがすぐに破綻します。
そこで重要になるのが、
「この情報はどのレイヤーに置くのか?」を最初から決めておくことです。
画面を開いた瞬間に必ず目に入っていてほしいのか
必要な人だけが、必要な時に見られればよいのか
もっと深掘りしたい時にだけアクセスできればよいのか
といった粒度で整理しておくと、
“全部を常時表示に乗せない”ための基準が自然と決まってきます。
このセクションではあくまで「情報をレイヤーで切り分ける」という考え方まで。
具体的に「では、そのレイヤーごとの情報をどう見せるか/増やすか」は、
次のセクションで掘り下げていきます。
解き方③:それでも情報を増やす時の“増やし方”を選ぶ
役役職・レイヤーで整理しても、現実として「補足情報を増やしたい」場面はあります。
ただ、画面サイズや文字サイズには制約があり、
文字を最小サイズまで詰めれば情報量はいくらでも載せられますが、もちろんそういうわけにもいきません。
そのときは、まず次の三択で考えると整理しやすくなります。
1) 常時表示にする
見逃しが命取りになる情報や、
画面を開いた瞬間に必ず目に入っていてほしい情報は、迷わずここです。
- 患者識別情報
- 致命的なアラート
- 直近の重要ステータス
など、「気づかなかった」が絶対に許されないものは常時表示に残します。
2) アイコンで情報を“共通の記号”にまとめる
テキストで書くと情報量が増えすぎるものは、
意味の定義されたアイコンに共通化するのが有効です。
- アレルギーあり
- 感染症リスクあり
- 要注意患者
など、「状態そのもの」はアイコンで圧縮し、
詳細は後述のツールチップなどに逃がすイメージです。
画面上のノイズを減らしつつ、「重要な状態があること」は一目で伝えられます。
3) ツールチップで詳細を出す
アイコンやラベルにマウスオーバー/フォーカスしたときにだけ、
詳細説明を出すパターンです。
- 略語の正式名称
- 注意の背景や補足説明
- 判断の根拠となる一言コメント
など、「常時読む必要はないけれど、気になったときに知りたい情報」に向きます。
ここで重要なのが、アフォーダンスです。
「ここにカーソルを合わせれば/タップすれば、何か出てきそう」と
ユーザーが直感できる見た目になっている必要があります。
逆に、「あ、ここにフォーカスを合わせればこの情報が出るのね」と、一部の人だけが分かる状態だと、
その人に依存した属人的なシステムになってしまいます。
- 「i」「?」アイコンなどの情報マーク
- 下線付きテキストやバッジ表示
- ホバー/フォーカス時のカーソル変化
といった工夫で、「隠れているが、情報があること」はきちんと伝えておきます。
この三択でカバーしきれない量や種類の情報が出てきた場合は、
- 詳細パネル(右ペイン/サイドバー)
- 折りたたみ(アコーディオン)
- 要点+詳細リンク(別タブ/詳細画面)
- ビュー切替(医師ビュー/看護ビューなど)
といった追加の選択肢もありますが、
まずは「常時表示/アイコン/ツールチップ」の三段構えで設計してみると、
レイアウト崩壊を防ぎつつ情報量をコントロールしやすくなります。
まとめ:情報量が多い問題は「削る」より「整理して増やす」
電子カルテの要件定義に入ってみて、
「情報量が多い問題」への向き合い方は、今のところこんな整理になりそうだと感じています。
-
まず 誰の画面か(役職 / 職種) を決める
- 主役を決めることで、「本当にこの画面で見るべき情報」が絞られる
-
次に 情報を レイヤー(常時 / 補助 / 詳細) で定義する
- 要望をそのまま全部“常時表示”に載せないための基準を先に決めておく
-
それでも増やすなら、まずは
「常時表示 / アイコンでの共通化 / ツールチップでの詳細表示」の三択 で考える- 絶対に見逃せないものは常時表示
- 状態そのものは意味の定義されたアイコンに圧縮
- 補助説明や背景は、アフォーダンスの効いたツールチップで必要なときだけ見せる
情報量は、“とにかく減らす”だけが正解ではなくて、
誰のための画面か・どのレイヤーの情報か・どの見せ方を選ぶかを整理したうえで、
必要であれば「安全に増やす」ことも含めて設計していくのが、
電子カルテらしいバランスの取り方なのかなと思いました。
(また現場での学びが増えたら、このまとめもアップデートしていきます)
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