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AI に時間感覚を実装する Antigravity の SKILL.md:Knowledge Cutoff Awareness

に公開

はじめに:なぜ AI は「今」を否定するのか?

大規模言語モデル(LLM)は、学習データがカットオフされた時点(例:2024年)で時間が止まっています。そのため、ユーザーが「2026年の最新トレンド」を聞いても、AI にとっての現実は過去にあるため、以下のような不整合が起こります。

  1. 古い情報を自信満々に答える(ハルシネーション(Hallucination/幻覚))
  2. 最新の事実を「それは架空の設定です」と否定する事実のフィクション化

これを解決するには、エージェントに「時計」を持たせ、「今の自分の知識は古いかもしれない」というメタ認知(Metacognition) を与える必要があります。今回は Google Antigravity の標準機能である Agent Skills を使い、これを実装します。


1. 実装:knowledge-cutoff-awareness

今回作成したスキルは、以下のリポジトリで公開しています。

アーキテクチャ(Architecture)

Antigravity のエージェントは .agent/skills/ 配下にある SKILL.md を読み込み、自分にどのような「道具」が備わっているかを認識します。

今回は、OS 間の差異(Linux の date -d と Mac の date -v の違いなど)を吸収するため、Node.js でクロスプラットフォームな日付取得スクリプトを作成しました。

1. SKILL.md(エージェントへの説明書)

これがエージェントに対するインターフェース(Interface)定義です。「日付を知りたいときはこのコマンドを叩け」と指示しています。
※v1.0.1 より、Gemini CLI のグローバルインストールなどにも対応できるよう、スクリプトの実行パスはスキルディレクトリからの相対パス(scripts/...)で記述しています。

https://github.com/imkohenauser/knowledge-cutoff-awareness/blob/main/.agent/skills/knowledge-cutoff-awareness/SKILL.md

2. get_date.js(実体コード)

「明日」「2週間前」といった相対計算を処理し、常に ISO 8601 形式で現在時刻を返すスクリプトです。(v1.0.1 にて、実行性を担保する Shebang を追加しています)

https://github.com/imkohenauser/knowledge-cutoff-awareness/blob/main/.agent/skills/knowledge-cutoff-awareness/scripts/get_date.js

※解説用にコードを一部簡略化しています(キーワード処理の詳細など)。完全な実装はリポジトリを参照してください。


2. 検証:スキルの有無で「思考」はどう変わるか?

実際にこのスキルを導入した場合と、していない場合で、同じプロンプト(おすすめのAIツールは?)に対する挙動を比較しました。

Before:スキルなし (Default)

エージェントは自分の学習データ(過去)のみを参照して回答を作成します。


Before: スキルなし。思考プロセスが発生せず、過去の学習データのみに依存して回答している

User: おすすめのAIツールは?
AI: (思考なし)
AI: Cursor: Since you are likely using it right now! ...

Antigravity を使っているのに「Cursorをお使いですね!」と幻覚を見ています。また、紹介されるツールも 2024〜2025 年時点の古い情報がベースです。

After:スキルあり (KCA Installed)

ここが重要です。ユーザーは「検索して」とも「日付を確認して」とも言っていませんが、エージェントの思考ログ(CoT)には劇的な変化が現れました。


After: KCA導入後。思考プロセス内で現在日付を確認し、情報の鮮度を意識して検索を行っている

思考ログの分析

  1. Awareness (自覚):
    Considering Time Constraints(時間の制約を考慮する)
    →「おすすめを聞かれた以上、情報の鮮度が重要だ」と自律的に判断。
  2. Tool Use (道具の使用):
    Analyzed SKILL.md
    → 自分のスキルを確認し、日付を取得。
  3. Grounding (アンカーの確立):
    Confirming the Date ... which is 2026-02-15
    「今は2026年だ」と認識。 ここで「自分の知識(〜2025年)は古い」というメタ認知が成立します。
  4. Action (行動変容):
    Searched web for "best AI tools 2026 recommended"
    → 検索クエリに自動的に "2026" が付与されました。

最終的な回答

結果として、AI は以下の最新トレンドを含んだ回答を生成しました。

  • ChatGPT (o3 / GPT-5.1)
  • n8n (Agentic AI)
  • Deep Research 機能

詳細な検証レポート(英語)は、以下のリンクから確認できます。

Performance Comparison Summary (GitHub)


3. 導入方法

Gemini CLI 環境の場合(v1.0.1〜)

Gemini CLI をご利用の場合は、組み込みのコマンドを使用して直接インストールできます。

# ワークスペーススコープ(現在のプロジェクト)にインストール
gemini skills install https://github.com/imkohenauser/knowledge-cutoff-awareness.git --scope workspace

# すべてのプロジェクトで使用するためにグローバル(ユーザースコープ)にインストール
gemini skills install https://github.com/imkohenauser/knowledge-cutoff-awareness.git

Antigravity IDE 環境の場合

プロジェクトのルートディレクトリで以下のコマンドを実行します。

方法A: npm 経由でインストール(推奨)

npm install git+https://github.com/imkohenauser/knowledge-cutoff-awareness.git
npx knowledge-cutoff-awareness-install

これで、スキルが .agent/skills/knowledge-cutoff-awareness にインストールされます。

方法B: git clone で直接配置

skills ディレクトリにリポジトリを直接クローンすることもできます:

mkdir -p .agent/skills
git clone https://github.com/imkohenauser/knowledge-cutoff-awareness.git .agent/skills/knowledge-cutoff-awareness

おわりに

「日付を知る」。たったこれだけのことですが、AI/自律型エージェントにとっては、自分が「いつ」の存在で、目の前のユーザーが「いつ」生きているのかを理解するための重要なアンカーとなります。

Antigravity の Skills は、単なる関数呼び出しではなく、エージェントの「認識」を拡張する手段です。ぜひ、あなたのエージェントにも時計を持たせてください。

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