技術系サークルを立ち上げた話
本記事はいちぴろ・エクスプローラ Advent Calendar 2025 Day 1の記事です。
本記事では、「いちぴろ・エクスプローラ」を立ち上げてから公認クラブになるまでの2年間を振り返りつつ、地方の情報系学生が技術に触れ続けるための場づくりについて書きます。
自己紹介
広島市立大学のいけぺ〜です。
大学ではIoTセキュリティやサプライチェーンセキュリティに関する研究を行っています。
広島市立大学の公認クラブ「いちぴろ・エクスプローラ」を2023年末に立ち上げ、昨年まで代表を務めていました。
本サークルの特徴
部員数は36名(2025年11月現在)で、所属学部は情報科学部が中心ですが、芸術学部の学生も4名所属しています。修士の学生も9名在籍しており、バランスの取れた構成となっています。
活動は主に、月3回の定例会、不定期の勉強会やLT会、プロダクト開発、外部講師を招いたワークショップなどです。
技術系サークルを立ち上げた経緯
きっかけは、2023年に参加した、セキュリティ・キャンプ 2023 全国大会でした。
セキュリティ・キャンプで学んだことなどは以下にまとめています。
その時の感想を以下のように書いています。
まず一番良かったことは、この分野が好きな受講生、チューター、講師の方々と交流できたことです。大学生になってすぐにオンライン講義になり、友達もTwitterで知り合った人や、部活が同じ人ばかりでした。研究室に配属される頃には対面授業が主になり、友人も増えましたが、技術的な話をする人はそこまで多くありませんでした。それが今回のセキュキャンに参加したことで、様々な分野に興味のある人と関わりを持てました。自分の好きなネットワーク関連の人は少なかったものの、普段見聞きしない分野が好きな人が多く、それに影響されて、いろいろ挑戦してみたい と思うようになりました。
当時の交流は、同じ研究室やSNSでの繋がりが中心で、分野もネットワークやネットワークセキュリティに偏っていました。それが、セキュリティ・キャンプで様々な分野に興味のある人と交流できたことで、自分の視野が大きく広がりました。私はもともと欲張りな性格で、面白そうなことには何でも手を出してみたいタイプです。セキュリティ・キャンプで聞いた話は全て「やってみたい」と思うようになり、他の分野にも積極的に挑戦したいという気持ちが強くなりました。
しかし、学内で同じように技術に興味を持つ学生と交流・情報交換できる場がなかったため、自分で技術系サークルを立ち上げることを決意しました。自分の専門分野を共有し合うことで、互いに刺激を受け、成長できる環境を作りたいと考えました。
設立から現在までにやってきたこと
活動内容を「組織づくり」、「定常活動」、「プロダクト開発」、「対外活動」の4つに分けて紹介します。
1. 組織づくり
初期メンバーの募集
2023年8月、セキュリティ・キャンプから帰ってすぐ、SNSや同期への声かけで仲間を募り始めました。
最初は数名でしたが、「技術的な話ができる場が欲しい」という思いに共感してくれる学生が徐々に増え、設立当初から10名以上のメンバーが集まりました。2023年11月には公式アカウントを開設し、活動を本格的にスタートしました。
公認クラブへの道のり
本学で公認クラブとして認められるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 2学部以上の所属
- 8名以上の正規部員
- 1年以上の活動実績
- 将来的に継続して活動が行われること
公認化されると、部室の貸与や助成金の交付などの支援を受けることができます。
この中で特にネックとなったのが「2学部以上の所属」でした。情報科学部以外の学生にも参加を呼びかけるため、デザインやUI/UXに関する内容も活動に盛り込み、芸術学部の学生にも興味を持ってもらえるよう工夫しました。ポスターでの掲示だけでなく、知り合いへの声掛けも積極的に行い、なんとか条件を満たすことができました。
2024年春にサークルとして申請を行い、翌年の2025年に公認クラブとして認められました。
促進チームの発足
幹部の負担軽減と、当事者意識の向上を目的として、2025年秋より促進チームを発足しました。設立まもないチームではありますが、タスクの分散や、忙しい時期のサポートなど、幹部の負担軽減に寄与しています。また、メンバーが主体的に活動に関わることで、部活全体のモチベーション向上にも繋がっています(繋がっていると信じています)。
2. 定常活動
定例会
日常的に部員間の交流を行うことが、知見の共有や技術力向上に繋がると考え、月3回の定例会を開催しています。定例会では、各自の近況報告や技術的な話題の共有、プロダクト開発の進捗報告などを行っています。
多くの部員が他の部活動やアルバイトと両立しているため、曜日固定ではなく、日にち固定で開催することで、参加しやすい環境を整えています。開催時間も一番活動が活発な(?)夜22時からに設定しています。
勉強会
基本的に勉強会を開催したい学生が名乗り出て企画・運営を行っています。現状月に1回程度の頻度で開催されています。
私自身が開催した勉強会は以下の通りです。
他にもk8sやBlenderなど、様々なテーマで勉強会が開催されています。
LT会
2~3ヶ月に1回の頻度でLT会を開催しています。技術系のテーマが多い一方、おすすめのキッチンスポンジや旅行体験記など、多様な内容のLTが行われています。
LT会の開催は新入生にお願いをしており、大学への手続きや当日の進行を経験してもらうことで、今後の勉強会企画へのステップとなることを期待しています。
3. プロダクト開発
主に学生生活を便利にすることを目的としたアプリケーション開発を行っています。以下はその一部です。
時間割アプリ
学生向けに、シンプルで使いやすい時間割アプリを開発しました。
弊学では、授業開始時に特定のページから出席確認を行うのですが、せっかく講義に出ても出席確認を忘れてしまう学生が多くいました。そこで、授業開始時に通知を送り、該当リンクへのアクセスを促す機能を実装しました。他にも、出席回数の管理や、授業ごとのToDoリスト機能、シラバス連携機能など、学生生活をサポートする多くの機能を搭載しています。
バスロケーションアプリ
くるけん という既存のバスロケーションサイトがありますが、広告が多い上に、2つのバス停が最寄りの本学では、それぞれの時刻表を比較する必要がありました。そこで、大学最寄りのバス停2つの情報を一括で確認できるアプリを開発しました。シンプルなUIで、広告もなく、使いやすいと好評です。
現在は、サイネージとして学内に掲出することを検討しています。また、デザイン面改修も進めています。
大学祭スタンプラリー
大学祭実行委員会と協力し、大学祭スタンプラリーのデジタル版の開発・運用を行いました。NFCタグを活用し、参加者が各ブースでスマートフォンをかざすことでスタンプを獲得できる仕組みを実装しました。これにより、紙のスタンプラリーに比べて管理が容易になり、参加者の利便性も向上しました。実際にアンケートでも高評価を得ることができ、大成功となりました。ぜひ来年以降も継続していきたいと考えています。
4. 対外活動
技育プロジェクト 学生団体パートナー
サポーターズ様との夕食会を機に、技育プロジェクト 学生団体パートナーに参加することになりました。学生団体交流会では、他大学の技術系サークルの方々と交流することができました。特にサークル運営に関する情報交換は今でも役立っています。
また、地理的に離れているためオンラインにはなりますが、他団体との交流会やLT会の開催のきっかけになりました。
Setory
NxTEND様主催の中四国発の学生エンジニアコミュニティ Setoryに大学サークルとして参加しています。
中四国は大学が点在しており、なかなか他大学の学生と交流する機会がありませんでした。私自身も中四国出身ではないため、地域にどのような大学やサークルがあるのか知らなかったこともあり、このコミュニティを通じた交流は非常に有意義でした。
合同ハッカソン
2025年7月には広島大学 HiCoderさんと合同でハッカソンを実施しました。広島地域には情報系の大学や、技術系のサークルがあまり多くなく、大学を超えた学生同士の交流は貴重な機会になりました。本ハッカソン以外にも合同LT会も開催しており、今後も継続的に交流を深めていきたいと考えています。
Hiroshima Digital Meet Up 2025
Setory参加を機に、「Hiroshima Digital Meet Up 2025」に参加しました。
このイベントは、広島県内の学生エンジニアが自作のプロダクトをメタバース空間でプレゼンし、地元IT企業の方々に見てもらうというものです。対面ではなくメタバース空間で行われる点や、学生がブースを出展して企業が回遊する形式なので、自分たちの成果物を主体的にアピールできる点が魅力でした。
いちぴろ・エクスプローラからは9名・8出展で参加し、企業投票による表彰では2位、3位、4位×2の計4つの賞を受賞しました。後日開催された懇親会では、実際に企業の方々からプロダクトへのフィードバックをいただいたり、広島のIT業界について話を聞くことができ、大変貴重な経験となりました。
ICTSC 2024 への参加
ICTトラブルシューティングコンテスト(ICTSC)は、全国の専門学校生・高専生・大学生・大学院生を対象とした、サーバー・ネットワークのトラブルシューティングや運用技術をチーム単位で競うコンテストです。
いちぴろ・エクスプローラからは5名で参加し、2回の予選を経て、推薦チームとして本戦に出場しました。本戦では2日間かけてネットワーク、サーバ、機材ネットワーク問題に挑戦しました。
結果は芳しくありませんでしたが、本戦に参加するまでの勉強会や、問題の振り返りを通じて、多くの知識と経験を得ることができました。また、他大学の学生との交流や、懇親会での協賛企業の方々との交流も非常に有意義でした。
振り返って
2年間を振り返って
我ながらここまで大きなサークルに成長させることができたなと感じています。
設立者・代表として、これだけ多くの学生が参加し、楽しみながら技術の話で盛り上がっている姿を見ると、「設立してよかった」と心から思います。
一方で、大変だったこともたくさんありました。特に、いかに部員に興味を持ってもらえるかを常に考えながら活動を企画するのは、今でも難しいと感じています。技術的な内容を扱いながらも、敷居を高くしすぎず、かといって物足りなくもならないようなバランスを取るのは簡単ではありませんでした。

課題と今後について
アクティブメンバーの減少や、世代交代の難しさなど、課題も多く残っています。
弊学には過去にも技術系サークル・コミュニティが存在しましたが、現時点では存続していません。技術系サークルが継続的に活動し続けることは非常に難しいと感じています。
最初に立ち上げた人やそれに賛同してくれた人は共通の目的意識や熱意を持っていますが、時間の経過とともにその熱意が薄れたり、メンバーの関心が変わったりすることがあります。また、新しいメンバーが入ってきても、既存のメンバーとの間で目的意識のズレが生じることもあります。
そのため、この記事で「なぜ、幅広い分野を学び、情報共有できる環境を作ったのか」を記録として残すことで、将来のメンバーがサークルの目的を再確認し、共通の目標に向かって活動を続けられるようにしたいと考えています。
私の考える、情報系の大学生がするべきこと
大学・大学院生の6年間で感じた、大事なことは以下のとおりです。
- 自身の興味に関わらず、幅広い分野の技術に触れること
- 触れてきた技術の関連性を理解すること
- 自分の好きな・得意な分野を伸ばすこと
- 情報を発信し、共有すること
全ての技術や分野は関わり合っており、単一の技術だけで完結することはほとんどありません。例えば、ネットワークセキュリティを学ぶ際には、ネットワークの基礎知識だけでなく、システム管理やプログラミング、さらには法律や倫理に関する知識も必要となります。そのため、幅広い分野の技術に触れ、その関連性を理解することが重要だと考えます。
また、AIの台頭により、多くの領域でAIによる代替が進むと考えられます。「広く浅く」だけでは価値を発揮しにくくなる一方で、特定の分野しか知らない「狭く深い」人材も、変化の激しい時代で生き残れないと考えます。幅広い知識で全体像を把握しつつ、自分の得意分野で深い専門性を持つ「T型人材」が求められていると感じています。
しかし、この「幅広い技術や人に触れる」という最初のフェーズが、地方では非常に難しいのが現実です。都市部であれば、勉強会やカンファレンス、企業主催のイベントなど、様々な技術に触れる機会が豊富にあります。一方、地方ではそのような機会が限られており、自分から積極的に動かなければ、新しい分野に出会うことすら難しい状況です。サークルがあっても、メンバーの興味分野が偏っていれば、結局は特定の技術しか触れられないままになってしまいます。
だからこそ、いちぴろ・エクスプローラでは「様々な分野に興味を持つ学生が集まり、互いの知見を共有できる場」を目指してきました。地方にいながらでも、幅広い技術や考え方に触れられる環境を作ること。それがこのサークルの存在意義だと考えています。
おわりに
長々と文章を書いてしまいましたが、結論、技術系サークルを立ち上げて本当に良かったと思っています。
部員のみんなには、このサークルを「自分の興味を広げる場」として、気軽に使ってもらえたら嬉しいです。勉強会を開いてもいいし、誰かの発表を聞くだけでもいい。何かに興味を持つきっかけになれば幸いです。
このアドベントカレンダーでは、部員たちがそれぞれの視点で記事を書いてくれます。ぜひ他の記事も読んでみてください。
余談1
大学入学直後にコロナ禍での外出自粛が始まり、本格的に大学に通うようになったのは学部3年からでした。そのため、自分自身が新歓イベントに参加した経験がなく、「新入生勧誘ってどうやるんだろう?」「新歓って何をするのが普通なんだろう?」という状態でサークルを立ち上げることになりました。手探りで進めてきたこともあり、もっとイベントを企画できたのではないかと少し後悔しています。
余談2
広島市立大学のTwitter(現X)界隈では、弊学のことを「いちぴろ」と呼ぶ人が多いです。
サークル名は略称が覚えやすいものが良いと思い、「いちぴろ・エクスプローラ」と名付けました。(某Internet Explorerをイメージしています)
IEと呼んでもらうつもりでしたが、「いちぴろ」という名前が(特に部外の人からは)定着しています。
余談3
ちょうど今日(2025/12/1)、アドベントカレンダーをLLMで書くくらいなら何も書かない方がいい。という記事を見かけました。概ね同意見で、特にアドベントカレンダーのような場には、LLMを使って無理に執筆するよりは、その人ならではの経験や体験を書くべきだと思います。
一方で、"アウトプットを始めるハードルを下げるためにLLMを使う"のは、むしろ良いことだと思っています。大事なのは、LLMを使うかどうかより、「自分の経験や考えがちゃんと乗っているか」だと考えています。(この記事も、文章の推敲にLLMの力を少し借りつつ、内容は自分の経験ベースで書いています。)
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