Claudeに自分専用の秘書を育てさせる — GitHub × Claude Code で AI の長期記憶を作る
Claudeに自分専用の秘書を育てさせる — GitHub × Claude Code で AI の長期記憶を作る
はじめに:賢いのに、毎回初対面
ChatGPTやClaudeを使って「やっぱりAIは賢いな」と感じた次の瞬間、こんな経験をしたことはないだろうか。
翌日また開いて同じ話題を続けようとすると、昨日のことをすっかり忘れている。自分の職種も、抱えている悩みも、大切にしている価値観も、ゼロから説明しなければならない。
これはAIが「バカ」なのではなく、記憶の置き場所がないせいだ。逆に言えば、置き場所さえ作れば、AIはどんどん育てられる。この記事では、GitHub private リポジトリをAIの長期記憶として使い、Claude Code と連携させる方法をハンズオン形式で紹介する。
1. コンテキストとは何か——AIの出力を決めるのはモデルより「文脈」
「GPT-4とClaudeどっちが賢い?」という議論をよく見るが、実はモデルの差よりもコンテキスト(文脈)の差のほうが出力品質に大きく影響する。
同じClaudeでも、何も知らない状態と、あなたのことを詳しく知っている状態では、回答の質がまったく違う。
Before(何も知らない状態)
あなた: 転職について相談したい。
Claude: 転職を考えているのですね。まず現職での不満点を整理し、転職の軸を明確にしましょう。業界研究や自己分析も重要です……
一般論しか返ってこない。これはClaudeが悪いのではなく、あなたのことを何も知らないからだ。
After(あなたの情報を読み込んだ状態)
あなた: 転職について相談したい。
Claude: 現在の状況を踏まえてお話しすると、〇〇業界でのキャリアを積んできた中で、「人の意思決定に関わる仕事がしたい」という価値観を持っていますよね。今の会社では裁量が小さいと感じているとのことなので……
自分の職種・価値観・悩みを前提に、具体的なアドバイスが返ってくる。
この差を生み出すのが、コンテキストの設計だ。
2. 仕組みの全体像
今回作るのは、こういう構造だ。
あなた ←→ Claude Code ←→ GitHub private repo
├── CLAUDE.md(Claudeへの指示)
├── master_profile.md(あなたの自己理解)
└── domains/(テーマ別ログ)
- GitHub private repo = AIの長期記憶置き場。あなたのことを書いたファイルを置いておく。
- Claude Code = その記憶を読み書きする手。GitHubのファイルを読み込んで、会話の中でアップデートしてくれる。
- CLAUDE.md = Claudeへの指示書。このファイルをリポジトリに置くだけで、Claudeが毎回自動で読んで動作を調整してくれる。
なぜ Claude Code なのか
「OpenAI の Codex でも同じことができるのでは?」と思うかもしれない。技術的にはファイルの読み書きやコミットはどのAIエージェントでもできる。
ただ、この使い方において Claude Code が優れている理由が一つある。CLAUDE.md の自動ロードだ。
リポジトリのルートに CLAUDE.md というファイルを置くだけで、Claude Code はセッションを開くたびに自動でそのファイルを読み込み、書かれた指示・ルール・参照優先順位に従って動いてくれる。「このリポジトリを開いたら必ず master_profile.md を読め」「推測を事実として書くな」といった指示を一度書いておけば、毎回伝え直す必要がない。
Codex はコードを書くことに特化した設計で、「自分のことを話して育てる」という会話・自己理解の文脈はあまり得意ではない。「秘書として育てる」体験の質という点では、Claude Code の方が自然だ。
必要なものはこれだけだ。
- Claude Pro($20/月)
- GitHub 無料アカウント
3. ハンズオン
Step 0: 事前準備 — アカウントを2つ用意する
このステップでやること: 必要なサービスに登録する。すでに持っている場合はスキップしてOK。
GitHubアカウントを作る(無料)
GitHubとは、ファイルをインターネット上に保存・管理できるサービスだ。今回はここをAIの「記憶の引き出し」として使う。
- github.com をブラウザで開く
- 右上の「Sign up」をクリック
- メールアドレス・パスワード・ユーザー名を入力して登録する
- メールで届いた確認コードを入力して完了
Claude Proアカウントを作る(月$20)
Claude Codeを使うにはClaude Proへの登録が必要だ。
- claude.ai をブラウザで開く
- アカウントを持っていない場合は「Sign up」から登録する
- ログイン後、画面左下の「Upgrade to Pro」をクリック
- クレジットカードを入力して月額プランに登録する(月$20 ≒ 約3,000円)
Step 1: GitHubにリポジトリを作る
このステップでやること: AIの記憶を置くための「引き出し」を作る。
「リポジトリ」とは、GitHubの中にある「フォルダ」のことだ。ここに自分の情報を書いたファイルをどんどん保存していく。
- github.com にログインする
- 画面右上の「+」ボタンをクリックする
- 表示されたメニューから「New repository」をクリックする
- 以下のように入力・設定する
-
Repository name(リポジトリ名):
my-ai-secretaryと入力する(好きな名前でもOK) - Description(説明):空欄のままでOK
- Visibility(公開設定):必ず「Private」を選ぶ ← ここ重要!
- 「Add a README file」にチェックを入れる
-
Repository name(リポジトリ名):
- 一番下の「Create repository」ボタンをクリックする
これで引き出しができた。
Step 2: Claude CodeとGitHubを接続する
このステップでやること: ClaudeにGitHubの「引き出し」を持たせる。
- claude.ai/code をブラウザで開く
- 画面左下のアイコン(人物マークなど)をクリックする
- 「設定」をクリックする
- 「コネクタ」をクリックする → 「コネクタはカスタマイズに移動しました」と表示される場合はそこをクリック
- 「WEB」のコネクタ一覧の中から「GitHub」を選択する
- GitHubの認証画面が開くので「Authorize」(許可する)をクリックする
- リポジトリ選択の画面が出る
- 「Only select repositories」を選ぶ(全部渡す必要はない)
- 「my-ai-secretary」を選択する
- 「Install & Authorize」をクリックする
- Claude Code の画面に戻り、リポジトリ一覧から「my-ai-secretary」を選んで開く
これでClaudeがGitHubの引き出しを読み書きできる状態になった。
Step 3: 「秘書リポジトリを設計して」と頼む
このステップでやること: Claudeにファイル構造を丸ごと作ってもらう。
難しいことは何もしなくていい。以下の文章をそのままコピーして、Claude Codeのチャット欄に貼り付けて送信するだけだ。
このGitHubリポジトリを、あなた(Claude)が私の長期記憶として活用するための「秘書リポジトリ」として設計してください。
以下のファイルを作成してください:
1. CLAUDE.md — 以下の内容をそのままコピーして作成してください
2. README.md — リポジトリの構造・ルール・ファイル一覧の説明
3. master_profile.md — 私の自己理解・価値観・前提情報を蓄積するファイル(今は空でOK)
4. domains/ ディレクトリ配下にwork.md、life.md を作成(今は空でOK)
---
CLAUDE.md の内容:
# 秘書リポジトリ設定
## 参照ファイル
1. master_profile.md — 私の自己理解の正典。セッション開始時に必ず読む
## 行動ルール
- 推測を事実として書かない
- 流動的な情報には [FLOW] タグをつける
- master_profile.md は明示的な依頼がない限り直接編集しない
- 情報を追記するときは差分案を先に提示する
---
送信すると、Claudeが自動でファイルを作りはじめる。画面にいろいろな文字が流れるが、そのまま待つだけでOK。1〜2分で完了する。
完了すると、GitHubのリポジトリにこんな構造ができているはずだ。
my-ai-secretary/
├── CLAUDE.md ← Claudeへの指示書(次回から自動で読み込まれる)
├── README.md ← リポジトリの説明書
├── master_profile.md ← あなたの自己理解を蓄積する場所
└── domains/
├── work.md ← 仕事関連のログ
└── life.md ← 生活・趣味関連のログ
Step 4: まず、何も知らないClaudeと話してみる
このステップでやること: 「記憶なし」の状態を自分で体感しておく。
リポジトリはできたが、master_profile.md はまだ空だ。つまり今のClaudeはあなたのことを何も知らない。
この状態で一度話しかけてみよう。
転職について相談したい。
一般論が返ってくるはずだ。「まず現職への不満点を整理して…」「自己分析が大切です…」。
この「何も知らない感じ」を覚えておいてほしい。 Step 6 で同じ質問をしたとき、どれだけ回答が変わるか——それが今回体験するΔだ。
Step 5: 自分のことを話してAIを育てる
このステップでやること: Claudeと話して、自分の情報をファイルに蓄積する。
まず以下のプロンプトをそのままコピーしてチャット欄に貼り付けよう。これが「秘書を育てる」スタートダッシュだ。
私のことを知るために、以下のテーマについて一つずつ質問してください。
回答をもとに master_profile.md への追記案を作ってください。
テーマ:
1. 仕事・職業(答えられる範囲で。職種・業界・役割など)
2. 仕事の価値観(やりがいを感じる瞬間、大切にしていること)
3. 趣味・好きなこと
4. 最近関心を持っていること、または悩んでいること
5. 自分を一言で表すとしたら
一度に全部聞かず、一つ答えたら次の質問を出してください。
Claudeが一問ずつ聞いてくれるので、思いつくままに答えていけばいい。全部答え終わったら、Claudeが master_profile.md への追記案をまとめて出してくれる。
「Webエンジニアをやっています。SaaSのtoB向けプロダクト開発が多くて、最近はAIをプロダクトに組み込む仕事に関わっています。人の意思決定に関わる仕事が好きで、数字より『誰かの選択が変わった』と感じる瞬間にやりがいを感じます。副業でAI活用の勉強会を月1回開いています。」
するとClaudeが話した内容を整理して、master_profile.md への追記案を出してくれる。
## 職業・キャリア [FIXED]
- Webエンジニア(toB向けSaaSプロダクト開発)
- 直近はAI組み込み案件に従事
## 仕事の価値観 [FIXED]
- 「数字より誰かの選択が変わった瞬間」にやりがいを感じる
- 人の意思決定に関わる仕事を好む
## 副業・活動 [FLOW]
- AI活用の勉強会を月1回主催
内容を見て「合ってる」と思ったら、「反映して」と送信する。するとClaudeが自動でGitHubのファイルに保存してくれる。
Step 6: 別のセッションで「自分を知っているAI」を体験する
このステップでやること: 長期記憶が本当に機能しているか確かめる。これがクライマックス。
まず大事なことを説明する。
- ChatGPTやClaudeは、ブラウザのタブを閉じると会話の記憶がリセットされる
- でも今回GitHubに保存したファイルはタブを閉じても消えない
- つまり次に開いたとき、Claudeはファイルを読んで「あなたのことを知っている状態」で始められる
これを実際に体験してみよう。
- 今開いているClaude Codeのタブを閉じる
- 新しいタブで claude.ai/code を開く
- リポジトリ一覧から「my-ai-secretary」を選んで開く
- 以下をそのままチャット欄に送信する
転職について相談したい。
ClaudeはまずGitHubから CLAUDE.md と master_profile.md を読み込んでから回答してくれる。
この回答が、記事の冒頭で見た「Before」とまったく違うはずだ。
Webエンジニアとして積み上げてきたキャリアを踏まえると、「人の意思決定に関わる仕事がしたい」という価値観が転職の軸になりそうです。SaaSのtoB開発の経験と、月1回のAI勉強会で培ったコミュニティ運営のスキルは、……
会話はリセットされた。でも、あなたのことは覚えている。これが「記憶のあるAI」だ。
4. 発展:もっと育てるために
基本の仕組みができたら、以下のような使い方でどんどん育てられる。
-
domains/ にテーマ別ログを増やす
domains/finance.md(家計メモ)、domains/reading.md(読書ノート)、domains/work.md(仕事の振り返り)など、テーマごとにファイルを分けると整理しやすい。 -
「今日の相談をまとめて保存して」
会話の区切りに頼むだけで、Claudeが会話を要約してGitHubに保存してくれる。これを積み重ねると、過去の自分の判断が全部残る。 -
CLAUDE.md をカスタマイズする
「財務の話をするときは必ずdomains/finance.mdを参照して」「提案するときは箇条書きで3つ以内に絞って」など、Claudeの動作を細かく制御できる。指示の粒度はあなた次第。 -
ChatGPTや他のAIとの連携
リポジトリはテキストファイルの集まりなので、ChatGPTのカスタム指示にコピペしたり、他のAIに読ませることもできる。一度整備すれば、どのAIでも「自分を知っているモード」で使える。
まとめ
コンテキストを蓄積する場所を作れば、AIは毎回育ち続ける。
セッションをまたいで「あ、覚えてる」と感じる瞬間。master_profile のファイルが少しずつ厚くなっていく過程。同じ質問をしたときの回答が、先週と今週で明らかに違う感覚。
あるとき、コンサルしてくださっている先生から「Δを感じたい」という言葉を聞いた。その瞬間、自分がコーヒーや植物や音楽に惹かれてきた理由が一気に腑に落ちた気がした。変化を感じて、その差分を観測する楽しさ。AIとの関係もそれと同じだと思う。
ぜひ、自分だけのΔを育ててみてほしい。
このリポジトリ構造は、筆者が実際に運用している設計をベースにしています。
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