Web3.0の教科書 2章までのレビュー
レビューをするとBitcoinがもらえると聞いたので頑張ってみようかと思います。
インプレスより出版されているWeb3.0の教科書を引用しながら、内容の怪しい部分について指摘していきます。
本を執筆するというのは尊い行為であり、共にこの業界を盛り上げていきたい身としてはとても喜ばしい話であります。
私としては本件に関して炎上させるつもりは微塵もなく、世の中の人に対して正しい知識を伝えたいだけなのです。
本書の引用は手入力しているため、誤字や変換ミスがあった場合はご連絡ください。訂正いたします。
筆者ののぶめい氏(@nobu_mei)には事前に確認をとり、掲載の許可を頂きました。
序章
2014年には、暗号資産である「Ethereum」の開発プロジェクトでCTO(最高技術責任者)を務めていたGavin Wood氏が、プライバシーと分散を重視し、「Less Trust, More Truth(信頼ではなく真実)」を追求するWebとして、Web3.0の概念を提唱しています。
この一文だけを引用するのではWeb3.0について知らないひとはピンとこなかったです。Gavin Woodの思想を語るのであれば原文を引用した方が、なぜ分散とプライバシーを重要視しているかが伝わるので、本書の主張の理解がしやすくなると思いました。
そこで台頭してきたのがGAFA(Gogle, Apple, Facebook, Amazon)などのテックジャイアントです。(中略)
加えて「よいコンテンツ」のルールはGAFA次第で変わります。Google検索の仕様が度々変更されてきたことで、クリエイターがプラットフォームのルールに振り回されてきたのがWeb2.0の世界です。
ここのセクションの最後までで指摘しているのはGoogleの検索エンジンに対する指摘であり、他のGAFAは筆者の主張とは関係なさそうです。指摘がGoogleに対してのみであり主語をGAFAとするのは不適切。本書の主張通り、検索のアルゴリズムが不変である世界が理想だと仮定した場合、検索のアルゴリズムに特化したことで検索結果がまとめサイトで埋め尽くされ、目当ての情報に辿り着けなかった時代が再びやってくるわけですが、それがWeb3.0的には理想系なのでしょうか。
Webサービスごとに会員登録が必要になると、個人情報を何度も入力することとなり面倒だが、便利なサービスを使うためには仕方がない。
これはWeb2.0の弊害ではなく個人情報を取り扱う上での法的な制約事項によるところが大きく、Webに限った話ではないです。物理的なお店で会員証を作る時にも発生している課題かと。
ロシアのウクライナ侵攻により、ロシアがSWIFTから排除され、国際送金ができなくなりました。戦争を仕掛けたロシアは悪いかもしれませんが、ロシア国民が欧米の意向によって国際市場から締め出されるのは中央集権的です。これはどちらが良い悪いという話ではなく、社会生活を送る上で必要なインフラの供給が、誰かの善悪判断によって止められてしまう状況が危ういということです。ですので、「インフラは非中央集権=分散させよう」というのがWeb3.0の思想です。
ロシアがSWIFTから切断されたのは複数の国による合意であり、1国もしくは1企業によるものではないです。欧州委員会、フランス、ドイツ、イタリア、英国、カナダ、米国が合意した結果です。特に欧州委員会は27カ国から1国1委員が任命されている組織であり、全委員の絶対多数決により議決をとる合議により意思決定がされています。また、ベルギー法に基づく協同組合として、SWIFTは加盟金融機関によって所有されているため、中央集権ではなく分散しています。複数のステークホルダーの合意による意思決定を中央集権的と呼ぶのは筋が通らないかと。
世界全体がWeb2.0からWeb3.0へ移行する過渡期
P14では、「Web3.0はWeb2.0の進化版は誤解、Web2.0とWeb3.0は共存するもの。」と書いていますが、P15になった瞬間にWeb2.0からWeb3.0は共存ではなく移行するものとしているのは主張が一貫していない。
「ブロックチェーン技術を応用したサービス群をWeb3.0と定義」した冒頭ともズレている。
Web3.0は新しく生まれた技術ではなく、Web2.0(現在のインターネットの延長線上にあるものです。
「延長線上にある」は嘘ではないが誤解を招く表現。
セマンティックウェブの3.0が正当な延長線上であり、ここでいうWeb3.0はフォークに近い
Web1.0->Web2.0->セマンティックウェブ3.0(正当な進化系)
└ ブロックチェーンを使ったサービスであるWeb3.0の目指す世界像
Web3.0の階層(レイヤー)構造
OSI参照モデルとWeb3.0のレイヤー構造は似て非なるものであるため、横に並べると誤解を招きます。
DeFi, NFT, StableCoinは同じレイヤかと思います。何を軸にレイヤ分けしたのか
読み取れませんでしたが、スマコンで実装するアプリケーションなので同じレイヤかと。
1章
ブロックチェーンは所有を証明する技術
流石に簡素化しすぎかと。所有を証明するのはNFTやFTに限った一部のユースケースであり、ブロックチェーン全体に対しての解説としては不適切。
たとえば、デジタルデータで絵を描いた場合、これまでは誰かがあなたのデータを勝手に複製して配布することができました。これがデータを所有できるようになると、あなたの描いたデータはあなたの所有物になります。
自分で描いた絵は自分の所有物であることはブロックチェーンを使わずとも自明ですね。
複製データが配布されても元の所有者を証明できるので、それが偽物とわかります。
複製データから元の所有者を特定するのは不可能なため、誤解を生む表現です。
画像からNFTを特定することができれば実現できますが、今のところ現実的ではありません。
金(ゴールド)より有用なインフラのリスクヘッジ商品
インフラではなくインフレの誤記?
経済的に弱い立場にある国ほど、自国通貨を発行して維持コストを負担するより、供給量が固定されていて、世界中の人々は平等に使えるBTCを導入するインセンティブが高くなる。
経済的に弱い立場の国ほど自国通貨を発行して維持するコストを負担するのが大変であるのはその通りですが、本書で例に挙げているナイジェリア, 南アフリカ, アルゼンチン, ブラジルは国がBitcoinに対して推進的な政策を取っている国であるため、普及率が高いのであって、自国通貨が弱いからではないです。因果関係の証明されていないデータで自論を展開するのは良くない。
GDPランキングでナイジェリアは30位、南アフリカは31位、アルゼンチンは27位、ブラジルは12位であり、経済的に弱いというのはダウトです。
BTCの時価総額を1兆ドルと考えたとき、時価総額が近い企業はAmazonやTeslaが該当します。GAFAと呼ばれるビッグテックのうち、BTCはすでにFacebook(現Meta)を抜く規模に成長しています。BTCがバブルであるとすると、GAFAの時価総額もバブルということでしょうか。
いや、その理屈はおかしいw
BTCの時価総額と世界の資産との比較
P24でBitcoinの時価総額は1兆ドルと推定しているが、P25の図では1120億ドルとなっています。このままでは10倍も誇張に表現していることとなりますので、2017年の図であることを明記するべきです。
暗号資産バブルと言われた2018年初頭のBTC価格が200万円、2021年末で600万円に達しているので、当時と比較しても約3倍の規模に成長し、BTC単体での時価総額は1兆ドルほどとなっています。
大暴落した2022年を伏せるのは嘘は言っていないが本当のことも言っておらず、データの抽出期間に恣意的な情報操作を感じました。2023年1月29日時点の時価総額は4500億ドル程度です。
送金記録を暗号(匿名)化
図の中で送金記録を箱(ブロック)に詰めることを暗号化と呼んでいるようですが、Bitcoinは暗号化はしていないです。平文で記録されており、誰でも閲覧可能です。暗号化されていないので。そのため、これは技術的に誤った記述です。
- 暗号化技術
上記指摘を踏まえるとこ、このセクションでは暗号化技術に対して何も触れていないため、セクションタイトルが不適切です。
マイナーの収益モデルを数式化すると、次のようになります。
収益={(BTCの発掘の確率)-(電気代)-(マシンコスト)} x BTC価格
計算式がおかしい。確率から電気代を引いてはいけない。
正しくは、「BTCの採掘確率 x BTC価格 - 採掘に掛かったコスト」ですね。
造幣局のボタンひとつで簡単に資金を捻出する方法に流れて行きました。
造幣局が作っているのは硬貨です。紙幣ではないです。
国家の有事に資金が必要となった時、政府は増税で直接的に資金を調達するより、インフレを通じて間接的に資金を調達したい。
大東亜戦争割引国庫債券(通称戦時国債)によって資金調達がされました。
インフレが発生したのは戦後であり戦時中ではありません。戦後のインフレは戦時国債の価値を紙屑にしましたね。
第二次世界大戦の事例から学べる教訓は次のとおりです。(中略)
中央銀行の独立性は担保されない。世論が求めれば為政者は従う。
第二次世界大戦の頃はそうですが、現在はそうではありません。
法定通貨は刷られ続けることで、供給量が無限に増えて行きます。
法定通貨はmintする機能とburnする機能の両方を備えており、目標インフレ率になるよう様々な施策でコントロールしています。BTCのように過度な暴騰や暴落がなく安定することが法定通貨に求められるものです。
2章
企業がゲーム開発を行わなくなると、データの用途がなくなりますが、ゲームへの熱量の高いユーザーがゲーム開発を引き継ぎ、ゲームを存続させる事例も出てきています。
興味深い事例なのでソースが知りたいです!教えてください!
ユーザーの可処分時間を奪い合って競合に勝つために、プラットフォーマーたちはユーザーのデータを蓄積し、そのビッグデータをAIに分析させることで、ユーザーが好むコンテンツを提供するようにシステムを最適化させて行きます。結果、これらのデータはプラットフォーマーに「独占」されています。
独占せずに、むしろプラットフォーマー以外にデータが流用されたら個人情報保護、プライバシー保護、GDPRなどいろんな問題が奮発しますね。独占が悪みたいな論調ですが、企業の中に留めておかない場合の方がやばいかと...。
Web1.0でユーザーのものであったデータが、Web2.0でいつの間にか企業に独占され、Web3.0で解放されるのです。
個人でサーバ管理するのだるいからWeb2のプロバイダーの上で活動するようになったという歴史を無視してはいけないです。
不適切なコンテンツを掲示板に書き込まれたら削除しないといけないとか、不正アクセスや攻撃から守り続けないといけないとか。需要と必然性があって現代のWeb2の形態になったのを、企業が無理やり奪ったみたいな論調は歴史に反します。
また、この戦いに勝利することは、暗号学の40年来の歴史における悲願です。
そうなんです?情報源を知りたいですね。
ちなみにブロックチェーンで暗号処理は使わないです。電子署名は使いますが。
zk-rollupくらいじゃないですかね。暗号処理を使ってるの。
SDGsをはじめとする社会正義を企業に求める風潮は、Web2による不自由なインターネット、格差社会、監視される社会、中央集権からの抑圧、不透明な倫理観などへの反発が根底にあります。
ないです。これ本当に感じてるの?中央集権から抑圧され監視されながらインターネットして不自由を感じてるの?マジで?
Google検索で日本の個人投資家の人数を調べると、約5600万人と出ます。これは日本の人口の約半分です。株式は資金調達ができる便利なものですが、購入できる人は日本に半分しかいないことになります。
これ延人数です。1人で10講座持っていれば10人にカウントされます。ちゃんと情報源の資料は読みましょう。総人口が1億2508万2千人の国で、口座を持てない未成年もいる中で総人口の半数近くが個人投資家なのはおかしいです。
フィッシング詐欺やハッキングなどで起こる、「料金の支払い先が変更されている」「料金を支払ったのに商品が送られてこない」などといった事態は、プログラムが改竄できなければ発生しません。
フィッシング詐欺は偽サイトを構築して誘導するので、そもそもオリジナルのサイトを改竄する必要がないですね。
この手続きを人間が行うと、人的ミスが発生するリスクがあり、プログラムで自動化するだけではハッキングのリスクもあるので、スマコン化した方が安全です。
スマコンにするとハッキングされないと誤読を誘発する文章。スマコンもハッキングされて資金流出してますね。The DAO事件とか。
これまでのプログラムはスマコン化されていなかったので、「企業が法」の状態でした。ただ実際、企業は法で罰せられるので、企業より法の方が上です。一方でスマコンは改竄が不可能です。これにより、取引に問題があって法が罰しようとしても、取引に介入できません。こういったことから、Web3.0では方よりスマコンの法が上と考えることもできます。
Code is Lowはスマコンで記述されたプログラムは法よりも重いとする考え方
いや、法が最重要です。
法はスマコンに直接介入する必要はなく、当事者に対してスマートコントラクト外で制裁を加えてきます。
Discussion
誤変換かと思いますが、
これは、下記かと思います。
ご指摘ありがとうございます。訂正いたしました。
原文をすべて読んでないので自信がないんですが、もしかして「造幣局が作っているのは貨幣です。資金ではないです。」という意味でしょうか?
そのような認識であっていると思います。