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FoundingAgent - AIが導く創業計画書作成支援

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FoundingAgent - AIが導く創業計画書作成支援

はじめに

創業融資を受けるために必要な「創業計画書」。初めての起業家にとって、何をどう書けばいいか分からず、大きな壁となっています。FoundingAgentは、Google CloudのVertex AIを活用し、AI対話で事業内容をヒアリングしながら、あなた専用の創業計画書を作成支援するWebアプリケーションです。

概要

  • 作ったもの: 日本政策金融公庫の創業計画書作成を支援するAIエージェント
  • 技術スタック: FastAPI + Vertex AI (Gemini 2.0 Flash Lite) + Cloud SQL (MySQL) + Cloud Run
  • 主な機能:
    • AI対話による10項目のヒアリング
    • 9業種の記入例を自動表示
    • Excel形式でダウンロード(公式テンプレート対応)
    • AI検証による整合性チェック
  • 成果: 作成時間を約半分に短縮、無料で誰でも利用可能

背景:創業融資の壁

創業計画書とは

日本政策金融公庫で創業融資を受けるには、「創業計画書」の提出が必須です。この書類には、以下の10項目を具体的かつ説得力のある形で記載する必要があります。

  1. 創業の動機
  2. 経営者の略歴等
  3. 取扱商品・サービス
  4. 取引先・取引関係等
  5. 従業員
  6. お借入の状況
  7. 必要な資金と調達方法
  8. 事業の見通し(月平均)
  9. 自由記述
  10. 経営者保証に関する特則の適用

初めての起業家が直面する課題

創業計画書は、単なる「記入」ではなく、「説得力のあるストーリー」を描く必要があります。しかし、初めての起業家にとっては:

  • 何を書けばいいか分からない: 各項目にどの程度の具体性が必要か不明
  • 記入例が参考にならない: 書籍やWebの一般的なサンプルでは、自分の事業に合った内容を引き出せない
  • 有料コンサルは高額: 専門家に依頼すると数万円かかる

結果として、創業計画書の作成に3-5日かかり、それでも内容に不安を抱えたまま提出するケースが多いのが現状です。


ソリューション:FoundingAgent

もし、AIが寄り添ってくれたら?

FoundingAgentは、AIが起業家に寄り添い、対話形式で事業内容を引き出しながら、創業計画書を作成支援します。

3つの特徴

1️⃣ あなたを理解するAI

Vertex AIのGemini 2.0 Flash Liteを使用し、事業内容をヒアリング。10項目を一つずつ対話形式で質問し、回答に基づいてドラフトを提案します。AIが文体と粒度を学習しているため、そのまま使える品質のテキストを生成します。

AIとの対話例:

AI: 「創業の動機についてお伺いします。なぜこの事業を始めるのですか?」
ユーザー: 「地方の中小企業向けにSaaS型業務効率化ツールを提供したい」
AI: [ドラフト提案] 「地方の中小企業では、業務効率化のためのITツールが...」

2️⃣ 9業種の記入例を参考に

日本政策金融公庫の公式PDFから抽出した、9業種×10項目=90パターンの記入例をデータベースに格納。業種選択時に該当する記入例が自動表示され、文体や具体性の参考にできます。

対応業種:

  • ソフトウェア業
  • 洋風居酒屋
  • 美容業
  • 中古自動車販売業
  • 学習塾
  • 内装工事業
  • 婦人服・子供服小売業
  • 歯科診療所
  • 介護サービス業

3️⃣ AI検証で安心

作成した計画書をAIが2段階で検証:

  • セクション単位: 各項目の整合性、必須情報の確認
  • 全体検証: 項目間の矛盾、論理的整合性のチェック

日本政策金融公庫の公式「セルフチェックリスト」も実装し、面談前の不安を解消します。


アーキテクチャ

システム全体図

技術スタック詳細

レイヤー 技術 選定理由
Frontend Jinja2 + HTMX SPAではなく、HTMLをサーバーサイドで生成し、HTMXで部分更新。シンプルで高速
Backend FastAPI (Python 3.12) 非同期処理のサポート、型ヒント、自動ドキュメント生成
AI Vertex AI (Gemini 2.0 Flash Lite) 高速レスポンス、低コスト、プロンプト設計の柔軟性
Database Cloud SQL (MySQL 8.0) マネージドサービス、自動バックアップ、高可用性
Deploy Cloud Run サーバーレス、自動スケーリング、従量課金

リージョン選択の工夫:

  • Vertex AI: us-central1 を使用(asia-northeast1はモデル選択肢が少ないため)
  • Cloud SQL / Cloud Run: asia-northeast1 を使用(日本からの低レイテンシ)

実装の工夫

5-1. プロンプト設計

業種別記入例の活用

9業種×10項目=90パターンの記入例をMySQLに格納し、プロンプトに動的に埋め込みます。

# app/services/gemini_service.py (簡略版)
example_content = get_example_content(industry_type, section_key)

prompt = f"""
あなたは日本政策金融公庫の創業計画書作成を支援するAIです。

# 参考記入例
{example_content}

# ユーザーの回答
{user_response}

# 指示
上記の記入例を参考に、ユーザーの回答を元にドラフトを作成してください。
"""

これにより、AIが文体(敬体/常体)や粒度(具体性のレベル)を学習し、高品質なドラフトを生成します。

一問一答の原則

10項目を一度に質問せず、一つずつ順番にヒアリングすることで:

  • ユーザーの認知負荷を軽減
  • 早期にドラフトを提示し、フィードバックループを短縮
  • 項目間の整合性を保ちやすい

マーカー制御でUI生成

AI検証時、フィードバックに[重要][確認]というマーカーをAIに付けさせ、フロントエンドでスタイリング:

# プロンプトでマーカー指示
"""
重要な指摘には [重要] を、軽微な確認事項には [確認] を付けてください。
"""
<!-- フロントエンドでマーカーをハイライト -->
<div class="feedback-item">
  <span class="marker-important">[重要]</span> 必須項目が未記入です
</div>

5-2. Excel出力

日本政策金融公庫の公式テンプレート対応

openpyxlを使用し、公式Excelテンプレートの特定セルに創業計画書のデータを転記:

# app/main.py (簡略版)
from openpyxl import load_workbook

template_path = "app/static/templates/startup_plan_template.xlsx"
wb = load_workbook(template_path)
ws = wb.active

# セルに転記
ws['B5'] = business_plan.motivation  # 創業の動機
ws['B10'] = business_plan.background  # 経営者の略歴
# ... 以下10項目すべて転記

和暦変換

ユーザーが西暦で入力した日付を、自動で和暦に変換:

from datetime import datetime

def to_japanese_era(date_str: str) -> str:
    date = datetime.strptime(date_str, "%Y年%m月")
    year = date.year

    if year >= 2019:
        era_year = year - 2019 + 1
        return f"令和{era_year}{date.month}月"
    elif year >= 1989:
        era_year = year - 1989 + 1
        return f"平成{era_year}{date.month}月"
    # ... 昭和、大正も対応

ZIP形式でダウンロード

Excelファイルと業種別記入例PDFを一つのZIPファイルにまとめてダウンロード:

import zipfile
from io import BytesIO

zip_buffer = BytesIO()
with zipfile.ZipFile(zip_buffer, 'w') as zip_file:
    zip_file.writestr("創業計画書.xlsx", excel_buffer.getvalue())
    zip_file.writestr(f"記入例_{industry_type}.pdf", pdf_data)

return StreamingResponse(
    BytesIO(zip_buffer.getvalue()),
    media_type="application/zip",
    headers={"Content-Disposition": "attachment; filename=founding_plan.zip"}
)

5-3. AI検証

2段階検証

第1段階: セクション単位の検証

  • 各項目作成時、必須情報が含まれているかチェック
  • 例: 「取扱商品・サービス」に価格情報が含まれているか

第2段階: 全体検証

  • 10項目すべて完成後、項目間の整合性をチェック
  • 例: 「必要な資金」と「事業の見通し」の数字が矛盾していないか

公式セルフチェックリストの実装

日本政策金融公庫が提供する「セルフチェックリスト」の項目をプロンプトに組み込み、AI検証時に自動チェック:

✓ 創業の動機は具体的に記載されているか
✓ 取扱商品・サービスの販売ターゲットは明確か
✓ 取引先・取引関係は具体的に記載されているか
✓ 資金繰りは現実的な数字か

5-4. 非同期処理

SQLAlchemyの非同期API

aiomysqlを使用し、データベースアクセスを非同期化:

from sqlalchemy.ext.asyncio import create_async_engine, AsyncSession

DATABASE_URL = "mysql+aiomysql://user:pass@host/db"
engine = create_async_engine(DATABASE_URL)

async def get_session():
    async with AsyncSession(engine) as session:
        yield session

FastAPIの非同期エンドポイント

すべてのエンドポイントをasync defで定義し、レスポンス速度を向上:

@app.post("/api/chat/{task_id}/message")
async def post_message(
    task_id: str,
    request: MessageRequest,
    db: AsyncSession = Depends(get_db)
):
    # 非同期でDB操作とAI呼び出し
    session = await get_session_by_task_id(db, task_id)
    response = await gemini_service.send_message(request.message)
    return {"response": response}

これにより、AI応答待ち時間中もサーバーが他のリクエストを処理でき、スループットが向上します。


3ステップで完成する創業計画書

STEP1: 業種選択 + AI対話

  1. 業種選択: 9業種から該当する業種を選択
  2. AI対話開始: AIが最初の質問「創業の動機」を投げかける
  3. ユーザー回答: テキストエリアに回答を入力
  4. ドラフト提案: AIがドラフトを提示、OKボタンで承認
  5. 進捗表示: 左側のタスクリストに✓マーク、次の項目が自動アクティブ

右側には業種別の記入例が自動表示され、参考にしながら回答できます。

STEP2: 編集 + Excel出力

  1. 計画書確認: 完成した10項目の創業計画書を一覧表示
  2. 編集モード: 「計画書を編集する」ボタンで、テキストエリアから直接修正可能
  3. Excelダウンロード: 「Excelでダウンロード」ボタンでZIPファイルを取得
    • 中身: 創業計画書Excel(公式テンプレート形式)+ 業種別記入例PDF

STEP3: AI検証 + 面談対策

  1. AI検証実行: 「面談対策」画面で全体検証を実行
  2. 検証結果表示: [重要]/[確認]マーカー付きでフィードバック
    • 例: [重要] 「必要な資金」と「事業の見通し」の数字に矛盾があります
  3. ビジネスサポートプラザ案内: 最寄りの支援機関情報も表示

これで、面談前の準備が完璧に整います。


成果とビジネス価値

4つの価値

1. 時間短縮

従来: 3-5日 → FoundingAgent: 1.5-2.5日(約半分に短縮)

AI対話により、各項目のドラフトが数分で生成されるため、大幅な時間短縮を実現。

2. コスト削減

有料コンサル: 数万円 → FoundingAgent: 無料

誰でも無料で利用でき、コンサルタント費用が不要。

3. 質の向上

AI検証により、見落としや矛盾を事前に発見。提出前に自信を持って内容を確認できます。

4. 柔軟性

試行錯誤・見直しが自由。データベースに保存されるため、何度でも書き直せ、過去のデータを見返しながら納得いくまで改善できる点が、従来の方法(紙やWordで一度書いたら終わり)との大きな違いです。

創業の民主化を実現

これまで、創業計画書の作成には専門知識や高額なコンサルタント費用が必要でした。FoundingAgentは、AIの力でこの壁を取り除き、すべての起業家に、最高のスタートを提供します


今後の展開とまとめ

今後の展開

  • 補助金申請に必要な資料作成支援
  • 金融機関から融資を受ける際の資料作成支援

まとめ

FoundingAgentは、Google Cloudの以下のサービスをフル活用したAgentic AIアプリケーションです:

  • Vertex AI (Gemini 2.0 Flash Lite): 高速で低コストなAI対話
  • Cloud SQL (MySQL 8.0): 業種別記入例データベース管理
  • Cloud Run: サーバーレスデプロイ、自動スケーリング

プロンプト設計、マーカー制御、非同期処理など、実装の工夫により、実用的なレベルの創業計画書を誰でも簡単に作成できるようになりました。

ハッカソン参加の感想

第4回 Agentic AI Hackathon with Google Cloudへの参加を通じて、Google CloudとVertex AIの強力さを実感しました。特に、Gemini 2.0 Flash Liteの高速レスポンスと柔軟なプロンプト設計により、ユーザー体験を大きく向上できたことが印象的でした。

起業の最初の一歩を、AIと共に。FoundingAgentが、日本のスタートアップエコシステムに貢献できることを願っています。


https://github.com/hideame/FoundingAgent

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