クラウド・バイ・デフォルト原則 とは?
執筆日
2025/12/06
執筆背景
社内メンバーと雑談していた際、「クラウド・バイ・デフォルト原則」という言葉を耳にしました。
普段からクラウドサービスを利用する機会は多いものの、「原則」としてどう位置づけられているのか、またその背景や具体的な運用ルールについては詳しく知らなかったため、改めて調べてみることにしました。
参考資料
- デジタル庁「クラウド・バイ・デフォルト原則」比較表
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/44df7733-3df2-4e47-bf0b-85c0353c20c7/be30e34e/20250527_meeting_executive_comparative_table_12.pdf
クラウド・バイ・デフォルトとは?
「クラウド・バイ・デフォルト原則」とは、
新しいシステムの導入や既存システムの刷新を検討する際、まずクラウドサービスの利用を第一候補として考えるという方針です。
従来は自社でサーバーを保有・運用するオンプレミス型が主流でしたが、クラウドサービスの普及・進化に伴い、クラウドを「標準」として選択することが推奨されています。
この原則は、単なるコスト削減だけでなく、組織の柔軟性や技術革新への対応力を高めるための戦略的な考え方です。
なぜクラウドを第一候補にするのか?
クラウドサービスを優先する理由は多岐にわたります。主なメリットは以下の通りです。
-
効率性の向上
必要なリソース(サーバー、ストレージ、ネットワーク等)を即座に利用できるため、システム導入や運用開始までのリードタイムが大幅に短縮されます。
また、運用・保守の自動化や省力化も進み、担当者の負担軽減につながります。 -
セキュリティ水準の向上
クラウド事業者(CSP)は、最新のセキュリティ技術や監査体制を整備しており、個別の企業が自前で対策するよりも高い水準を維持しやすいです。
定期的なアップデートや脆弱性対応も迅速に行われます。 -
技術革新対応力の向上
AI、IoT、ビッグデータなど、最新技術をすぐに活用できる環境が整っています。
新しいサービスや機能が次々と追加されるため、競争力の維持・強化にも役立ちます。 -
柔軟性の向上
業務量や利用状況に応じてリソースを簡単に追加・変更できるため、急な需要増や災害時にも柔軟に対応可能です。
地理的な冗長化やバックアップも容易です。 -
可用性の向上
24時間365日稼働しやすく、障害発生時も迅速な復旧が期待できます。
SLA(サービスレベルアグリーメント)による稼働保証も明確です。
クラウド導入時の課題・注意点
クラウド移行には多くのメリットがありますが、以下のような課題も存在します。
-
既存システムとの互換性
レガシーシステムや特殊な業務要件がある場合、クラウド移行が難しいケースもあります。
移行計画や段階的な対応が必要です。 -
コスト管理
初期費用は抑えられるものの、利用状況によってはランニングコストが増加することも。
適切なリソース管理やコスト最適化が重要です。 -
運用体制の見直し
クラウド特有の運用・監視体制や、セキュリティポリシーの再設計が求められます。
社内のスキルアップや教育も必要です。 -
データの所在・ガバナンス
データがどこに保存されるか、法令遵守やガバナンスの観点からも確認が必要です。
適用されるクラウドサービスについて
クラウドサービスの選定については、まず「ガバメントクラウド」の利用が原則とされています。
ガバメントクラウドを利用しない場合は、セキュリティの観点から、ISMAPクラウドサービスリストまたはISMAP-LIUクラウドサービスリストに登録されたサービスを選ぶことが求められています。
2025年12月2日時点で、以下の5つが主要なクラウドサービスとして登録されています。
- AWS(Amazon Web Services)
- GCP(Google Cloud Platform)
- Azure(Microsoft Azure)
- Oracle Cloud
- さくらのクラウド
参考資料:
また、複数のクラウドサービスを組み合わせて利用する「マルチクラウド」も認められており、用途や要件に応じて柔軟な選択が可能です。
クラウド・バイ・デフォルト原則の国内動向
-
日本国内の動向
デジタル庁を中心に、行政機関や自治体でクラウド・バイ・デフォルト原則の導入が進んでいます。
公共システムの刷新や新規開発時には、原則としてクラウドサービスが選定される流れです。
まとめ・所感
クラウド・バイ・デフォルト原則は、単なる技術選定の話ではなく、組織の業務効率化やセキュリティ強化、そして将来の技術革新への柔軟な対応力を高めるための重要な方針だと感じました。
一方で、クラウド移行には既存システムとの互換性やコスト、運用体制の見直しなど、検討すべき課題も多くあります。
今後は、クラウドのメリット・デメリットを正しく理解し、組織の目的や状況に合わせて最適な選択ができるよう、知識を深めていきたいと思います。
Discussion