ChatGPT経験者のためのMicrosoft Foundryワークフロー実践ガイド【ノーコード】
はじめに
「ChatGPT、便利だけど…毎回同じこと打ってる気がする」
「昨日はうまくいったのに、今日は微妙な答えが返ってきた」
「これ、毎回自分が判断しないとダメ?」
もしあなたがこんなモヤモヤを感じたことがあるなら、それはとても自然な成長段階です。
ChatGPTは「考える相棒」としては優秀ですが、
- 毎回同じ作業を
- 安定した品質で
- 他の人でも同じように
実行したい場合、単体AIだけでは限界があります。
本記事では、Microsoft Foundry(旧 Azure AI Studio)のワークフロー機能を使い、
「AIに仕事を任せても大丈夫な状態」
を作る方法を、
初心者の頭の中をそのまま言語化しながら解説していきます。
想定読者
- ChatGPTで業務改善を少しやったことがある
- プロンプトは書けるが、毎回考えるのがしんどい
- 「自動化したいけど、プログラミングは不安」
コードは一切書きません。画面操作だけで進めます。
この記事のゴール(最終的にこうなります)
読み終わる頃には、あなたの頭の中はこう変わっています。
❌「AIにどう聞くかを毎回考える人」
✅「AIがどう動くかを設計する人」
そのために、3段階で進めます。
- 基本編:一直線のワークフローで「動く感覚」を掴む
- 応用編:AIの判断で処理が分かれる体験をする
- 実践編:人が安心して任せられる設計を理解する
なぜ「ワークフロー」が必要なのか?
ChatGPTで全部やればよくない?
最初は、誰でもそう思います。
でも実務で使い始めると、こんな壁に当たります。
- 出力の基準が日によって変わる
- どこで失敗したか分からない
- 他の人に説明できない
これはAIが悪いのではなく、設計が存在しないのが原因です。
ワークフローは、
「AIにどう考えさせ、どう判断させ、どこで止めるか」
を目に見える形で固定します。
単体AIとワークフローの違い
単体AIとワークフローの比較を表にしました。お試しで業務を改善するなら単体AI、本格的に自動化や会社で運用、品質を担保したい場合はワークフローの導入がおすすめです。
| 評価項目 | 単体AI(ChatGPT等) | ワークフロー型AI(Foundry) |
|---|---|---|
| 出力の一貫性 | ⚠️ 低い 同じプロンプトでも日によって結果が変わる |
✅ 高い 定義されたプロセスに従うため安定 |
| 品質管理 | ⚠️ 困難 手動でチェックが必要 |
✅ 自動化可能 評価ノードで品質基準を適用 |
| 複雑な処理 | ❌ 不向き 長いプロンプトが必要で管理困難 |
✅ 得意 処理を分割して段階的に実行 |
| エラー検出 | ❌ 難しい どこで問題が起きたか不明瞭 |
✅ 容易 各ノードでログが残り特定可能 |
| メンテナンス性 | ⚠️ 低い プロンプト全体を書き直す必要 |
✅ 高い 問題のあるノードだけ修正可能 |
| 再利用性 | ⚠️ 限定的 プロンプトのコピペ運用 |
✅ 高い ワークフローをテンプレート化 |
| チーム共有 | ❌ 困難 属人化しやすい |
✅ 容易 可視化されたフローを共有 |
| 学習コスト | ✅ 低い すぐに使い始められる |
⚠️ やや高い 初期設定に時間がかかる |
| 初期コスト | ✅ 低い アカウント作成のみ |
⚠️ やや高い Azure環境の構築が必要 |
| スケーラビリティ | ❌ 低い 手動実行が前提 |
✅ 高い 大量処理の自動化が可能 |
💡 ポイント
ワークフローは「賢くする仕組み」ではなく
安心して任せるための仕組みです。
Part 1:Azure 環境構築
Azureって聞くだけで難しそう…
大丈夫です。
今回はボタンを押すだけで終わります。
ステップ1-1: Azureアカウントの準備
- Azure Portal にアクセス
- Microsoftアカウントでサインイン(持っていない場合は新規作成)
- 初回利用の場合、無料クレジット($200)が付与されます
ステップ1-2: Microsoft Foundryのプロジェクトを作成
- Azure Portal の検索欄に「Azure AI Foundry」を入力して検索
- Microsoft Foundry画面で「リソース作成」をクリック
- 以下を入力し、Microsoft Foundryを作成
- リソースグループ:
ai-workflow-tutorial - 名前:
workflow-tutorial - リージョン:
Japan East
- リソースグループ:
- 「作成」をクリック
✅ チェックポイント: 左側メニューに「エージェント」「ワークフロー」「ツール」などのメニューが表示されればOKです。
Part 2:ワークフローを作る前の超重要概念
エージェント?ツール?ナレッジ?
ワークフローを構築する前に、3つの重要な概念を理解しましょう。これらは、レゴブロックのように組み合わせることで、複雑な自動化を実現する部品となります。
| 要素 | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| エージェント | AIワーカー。特定の役割と指示を持つ | 「ニュース収集係」「要約担当」 |
| ツール | エージェントが使える機能 | Web検索、ファイル読み込み、翻訳 |
| ナレッジ | エージェントに与える独自データ | 社内マニュアル、製品カタログ |
ChatGPTとの最大の違いは
役割を固定できることです。
Part 3:直線型ワークフロー
いきなり分岐とか無理そう…
安心してください。
まずは一本道です。
ゴール
- トピックを入れる
- AIが調べる
- 要約が返る
用語の理解ポイント
- ノード = 作業ステップ
- 線 = データの流れ
「AIの考えを分解している」感覚が掴めればOK
ここからは実際にワークフローを構築していきます。まずは最もシンプルな「直線型」から始めましょう。一つひとつのステップが順番に実行される基本パターンを体験することで、Foundryの操作に慣れていきます。
ゴール:業界ニュース自動収集・要約システムの構築
毎朝、AI業界の最新ニュースを自動で収集し、要約を生成するワークフローを作ります。
3-1: リサーチエージェントの作成
- 左側メニューから「エージェント」をクリック
- 「新しいエージェントを作成」をクリック
- 以下の設定を入力:
-
名前:
news-researcher(ニュースリサーチャー) -
指示:
あなたは業界ニュースの収集と要約を専門とするリサーチャーです。 与えられたトピックについて、Web検索を使って最新情報を収集し、 3〜5つの要点にまとめて簡潔に報告してください。 -
モデル:
GPT-4.1(推奨)
-
名前:
- 「ツール」セクションで「Web検索」を有効化
- 「保存」をクリック
これでWeb検索をするAIエージェントが作成されました。
3-2: 作成するワークフローの説明
ここでは作成するワークフローを図解で説明します。
ビジュアルデザイナー画面で、以下の2つのノードを設定します:
3-3: ワークフローの作成
- 左側メニューから「ワークフロー」をクリック
- 「+作成」→「空白のワークフロー」をクリック
- 「Start」ノードの右側にある「+」をクリック
- 「呼び出す」項目から「エージェントの呼び出し」をクリック
- 「エージェントの呼び出し」を選択し、「エージェントを選択」で「
news-researcher」をクリック - 「完了」をクリック
- ワークフロー名に
daily-news-digestを入力して保存
これでワークフローが完成しました。
3-3: テスト実行
- 画面上部の「プレビュー」タブをクリック
- テキストボックスに入力:
2026年1月のAI業界の主要ニュース - 「実行」をクリック
- 結果が表示されることを確認
✅ 成功の目安: Web検索結果を基にした3〜5つの要点がまとまった形で出力されます。
了解です。
「Microsoft Foundry(プレビュー)」の最新UI前提で、読みやすく・実践向けにリライトします。
(構成は活かしつつ、「実際に迷いやすい点」を補強しています)
Part 4:条件分岐ワークフロー(45分)
直線的なワークフローに慣れてきたら、次は 条件分岐(Conditional Branch) に挑戦しましょう。
AIの判断結果をもとに処理を分岐させることで、「ただの自動化」から 状況に応じて振る舞う“賢い自動化” を実現できます。
このパートでは、Microsoft Foundry(プレビュー)のワークフロー機能を使って、
問い合わせ内容をAIが分類し、適切な担当エージェントに振り分ける仕組み を作ります。
業務フローをAI用に設計し直すことでAIが自律的に業務を実行してくれます。
ゴール:問い合わせ自動振り分けワークフロー
ユーザーからの問い合わせを以下の3種類に分類し、自動で処理を分岐させます。
- product:製品の機能・仕様に関する質問
- support:技術的なトラブル・不具合対応
- sales(その他):価格、契約、見積もりなど
作成するワークフロー全体像
4-1:3つのエージェントを作成する
① 分類エージェント(中核)
問い合わせ内容を読み取り、カテゴリを1つ返すエージェントです。
-
名前:
inquiry-classification-ai -
指示:
ユーザーの問い合わせ内容を分析し、以下のカテゴリに分類してください。 - product: 製品の機能や仕様に関する質問 - support: 技術的な問題やトラブルシューティング - sales: 価格、契約、見積もりに関する質問 必ず次の形式で回答してください。 カテゴリ: product / support / sales
👉 ポイント
後続の条件分岐で文字列判定を行うため、
出力形式を固定することが重要です。
② 製品情報エージェント
-
名前:
product-specialist -
指示:
製品の機能や特徴について、専門的かつ分かりやすく説明してください。
③ 技術サポートエージェント
-
名前:
technical-support -
指示:
技術的な問題を解決するため、ステップバイステップで対処法を案内してください。
4-2:分岐ワークフローを構築する
全体のワークフローのイメージはこちらになります。
分類するエージェントを設定
- 「+」をクリック
- 「エージェントの呼び出し」をクリック
- 「エージェントを選択」で「
inquiry-classification-ai」を選択 - 「エージェント出力メッセージを指定した名前で保存」で「新しい変数の作成」をクリックし、「
Local.classificationResult」と入力 - 「完了」をクリック
Startのノードに紐づけられたAIエージェントが完成
文字列への変換
AIエージェントが出力した構造データを文字列に変換します。
- 作成したエージェントの右側にある「+」をクリック
- 「データ変換」の項目から「変数の設定」をクリック
- 「Set variable」で「新しい変数の作成」をクリックし、「
Local.result」と入力 - 「To value」で「
First(Local.classificationResult).Text」と入力 - 「完了」をクリック
補足
First(Local.classificationResult).Textについて
AIエージェントが返した「テーブル形式やリスト形式のデータ」から、特定の「テキストデータ」を取り出す処理です。
具体的には以下のような分解になります:
-
Local.classificationResult:AIエージェント(分類モデルなど)から出力された結果全体を指します。通常、これは複数の候補や属性(分類ラベル、スコアなど)を含むレコードのリスト(配列)として保持されています。 -
First(...):そのリストの中にある「最初の一件」を抽出する関数です。 -
.Text:抽出した一件のデータの中から、実際の分類結果などが格納されている「Text」というプロパティ(フィールド)の値を文字列として取得します。
If/Elseの設定
渡されたカテゴリーをもとに別の処理ができるようにします。
- 「変数の設定」の右側にある「+」をクリック
- 「フロー」の項目から「If/Else」をクリック
- 「If」ノードをクリック
- 「条件 1」に「
"product" in Local.result」を入力し、「完了」をクリック - 「If/Else条件」ノードの右側にある「+」をクリックし、「Else If」ノードを表示
- 「Else If」ノードの条件に「
"support" in Local.result」を入力、「完了」をクリック
これでカテゴリー別に処理ができるようになりました。
製品情報エージェントの実装
- 「If」ノードの右側にある「+」をクリック
- 「呼び出す」項目から「エージェントの呼び出し」をクリック
- 「エージェントを選択」で「
product-specialist」を選択 - 「完了」をクリック
カテゴリーが「product」だった場合は「product-specialist」が動作するようになりました。
技術サポートエージェントの実装
- 「If Else」ノードの右側にある「+」をクリック
- 「呼び出す」項目から「エージェントの呼び出し」をクリック
- 「エージェントを選択」で「
technical-support」を選択 - 「完了」をクリック
カテゴリーが「support」だった場合は「technical-support」が動作するようになりました。
固定文の実装
- 「Else」ノードの右側にある「+」をクリック
- 「基本情報」項目から「メッセージの送信」をクリック
- 「Message to send」に「
営業担当から24時間以内にご連絡いたします。お問い合わせありがとうございます。」と入力 - 「完了」をクリック
ワークフローの実行
- ワークフローが完成したら画面右上にある「保存」をクリック
- ワークフロー名に「
classification-workflow」と入力 - 画面右上の「プレビュー」をクリック
これでプレビュー画面が表示され、ワークフローの動作を確認できるようになりました。
4-3:テスト実行
ここではプレビュー画面で動作できるか確認します。
テスト①
御社の製品は何人まで同時利用できますか?
→ 製品エージェントが応答
テスト②
ログインできなくなりました。どうすればいいですか?
→ 技術サポートが応答
テスト③
年間契約の見積もりをお願いします
→ 営業メッセージが表示
Part 5:実践編 ― 品質評価フローの組み込み(約60分)
「AIに任せたけど、本当にこのまま業務で使って大丈夫?」 「変な回答が出たらどうなるの?」 「結局、人はどこで確認すればいいの?」
この Part 5 では、AIを“一発勝負で使わない”ための設計を学びます。 単に回答を生成するだけでなく、
- AIが自分の出力を評価する
- 点数が低ければ自動で改善する
- 最後は人が確認してから完了する
という 実務で安心して使えるワークフロー を構築します。
ゴール:90点未満は自動改善、人が最終確認する
5-1:AIエージェントを作成
業務レポート生成AI
- 名前:
content-generator - 指示:
あなたは業務レポートを作成するアシスタントです。
与えられた情報をもとに、分かりやすく論理的な文章を作成してください。
メモ: 完璧な指示は不要です。後で評価・改善します。
レポート評価AI
- 名前:
quality-reviewer - 指示:
You must respond in JSON format.
以下の文章を100点満点で評価してください。
{{article_text}}
出力は必ず JSON として返してください。
レポート改善AI
- 名前:
content-improver - 指示:
評価コメントを参考に、文章を改善してください。
5-4:ワークフロー全体
ここからはワークフローを実装していきます。
5-5 ワークフローの実装手順
ここからはワークフローの図解をもとに実装していきます。
レポート生成
- 「Start」の右側にある「+」をクリック
- 「エージェントを選択」で「
content-generator」を選択 - 「エージェント出力メッセージを指定した名前で保存」で「新しい変数の作成」をクリックし、「
Local.article_text」と入力 - 「完了」をクリック
レビュー
- 「
content-generator」の右側にある「+」をクリック - 「エージェントを選択」で「
quality-reviewer」を選択 - 「入力メッセージ」に「
Local.article_text」と入力 - 「エージェント出力メッセージを指定した名前で保存」で「新しい変数の作成」をクリックし、「
Local.article_text」と入力 - 「出力の json_object/json_schema を指定した名前で保存」に「
Local.article_text」と入力 - 「完了」をクリック
If/Elseの設定
- 「
quality-reviewer」の右側にある「+」をクリック - 「フロー」の項目から「If/Else」をクリック
- 「If」ノードをクリック
- 「条件 1」に「
Local.result.score >= 90」を入力し、「完了」をクリック
90点以上の場合
- 「If」ノードの右にある「+」をクリック
- 「基本情報」にある「終了」をクリック
90点未満の場合
- 「If」ノードの右にある「+」をクリック
- 「呼び出す」項目から「エージェントの呼び出し」をクリック
- 「エージェントを選択」で「
content-improver」を選択 - 「エージェント出力メッセージを指定した名前で保存」で「新しい変数の作成」をクリックし、「
Local.article_text」と入力 - 「完了」をクリック
- 「
content-improver」ノードの右にある「+」をクリック - 「フロー」項目から「移動」をクリック
- 「Select action」で「
quality-reviewer」を選択 - 「完了」をクリック
これで90点以上の業務レポートを作成するワークフローを作成できました。
ワークフローはreport-ai-workflowで保存します。
5-6 テスト
プレビューで作成したワークフローの動作テストができます。
以下は入力と最終成果物です。一度めの生成では85点の成果物だったので評価の根拠をもとに再生成しました。
入力
単体のAIとワークフローを比較するとワークフローの方が組織の業務改善に向いている
最終成果物
以下、業務レポートの文章例です。
---
単体のAIとワークフローを比較すると、ワークフローの方が組織の業務改善により適していると考えられます。
単体のAIは特定の業務や課題に対して高いパフォーマンスを発揮しますが、組織全体の業務プロセスを包括的に改善するには限界があります。
一方、ワークフローは複数の業務プロセスを連携させ、業務の流れを最適化することが可能です。
これにより、部門間の連携強化や業務の標準化、効率化が実現しやすくなります。
また、ワークフローにAIを組み込むことで、AIの強みを活かしつつ、組織全体の業務改善を推進することができます。
以上の理由から、単体のAIよりもワークフローの方が組織の業務改善に向いていると言えます。
ワークフローを実施したときの流れ
学習リソース
さらに深く学びたい方のために、公式の学習リソースをまとめました。これらを活用することで、より専門的な知識を身につけることができます。
ノーコードでワークフロー構築の流れは掴んだ。次はLnagGraphでワークフローを構築してみたいとお考えの方は以下がおすすめです。
Gitの情報から80点以上の週報レポートをLangGraphで構築した方法を執筆したので、Pythonで本格的に実装してみたいと思っている方はチェックしてみてください!
まとめ
本記事では、Microsoft Foundryのワークフロー機能を使った業務自動化を、環境構築から実践まで段階的に学びました。
重要なポイント:
- ワークフローは一貫性のある自動化を実現する
- プロセスの可視化により改善点が明確になる
- 評価と分岐を組み合わせることで信頼性が向上する
ChatGPTで「AIを使う」フェーズから、Foundryで「AIシステムを構築する」フェーズへ。ぜひ皆さんの業務でこの強力なツールを活用してみてください!
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