入社してから印象に残っている案件について(後半)
27歳で新たにIT業界に挑戦した株式会社HESの川添です。
前回の記事では、この半年間で特に印象に残った案件について、顧客提案までの内容をお話ししました。
今回は導入に至るまでの手配および構築作業について、後半部分をお話しします。
目次
- ストレージ導入前作業
- ストレージ構築作業
- 特に気になった事
- 学び
案件概要
顧客の依頼内容とそれに対する提案内容を以下に再掲します。
依頼内容
- 既存ストレージの容量が枯渇しているため、遅くても半年後までに500GBの容量を拡張する必要がある。
- 設計構築作業も併せて依頼される。
- できるだけ予算を抑えたい。
既存のRAID構成
- RAIDレベル: RAID6
- ディスク構成: 12D+2P
- ディスクの種類: HDD(回転数15K min⁻¹)
提案内容
- RAIDレベル: RAID6
- ディスク構成: 6D+2P
- ディスクの種類: HDD(回転数10K min⁻¹)
- ディスク容量: 3221GB(1台あたり600GBのディスク使用)
ストレージ導入前作業
ストレージの構築作業よりも、導入までの手配に多くの時間と手間がかかることを実感しました。
以下のようなタスクを進める中で、多くの部署や会社と連携を取る必要があり、大変勉強になりました。
- 納期調整:手配会社との連携を密にし、期日内に機器を揃える。
- 費用計画:導入に伴う費用回収計画を作成し、承認を得る。
- 社内調整:関係部署と頻繁にコミュニケーションを図り、承認プロセスをスムーズに進める。
ストレージ構築作業
実際の構築作業は、先輩社員のサポートとして携わりました。
以下の工程について、一つ一つの作業内容を理解しながら進めることの重要性を学びました。
事前性能確認
構築前後でストレージの性能に大きな変化がないかを確認するため、性能モニタ画面を使用して、現状の性能やリソース使用状況をチェックしました。
パリティグループ作成
ドライブをグループ化してRAIDを構成します。今回はRAID6の構成を作成しました。
プールボリュームの作成と拡張
物理ストレージを仮想化してストレージ領域(プール)を作成しました。また、必要に応じて容量を3.14TB拡張しました。
仮想VOLの作成
作成したプールからストレージボリューム(VOL)を作成しました。
マッピング設定
作成した仮想VOLをサーバーに認識させるための接続設定を行いました。これにより、サーバー側でディスクとして認識されます。
ShadowImageの設定
データ保護やバックアップを目的として、ストレージ内でデータの複製を設定しました。この機能により、正ボリュームの内容を副ボリュームにコピーします。
特に気になった事
導入手配や構築作業を進める中で、「バックアップ」という言葉が頻繁に出てきました。
特に「LTOへの洗い出し」と「ShadowImage」という2つの手法に関連して使用されることが多く、なんとなく違いは理解していましたが、この機会にそれぞれの役割や特性を改めて整理しました。
LTOへの洗い出し
LTO (Linear Tape-Open) は、テープストレージを使用したバックアップ手法です。以下がその目的と特徴です。
-
目的:
データを長期保存するため、また災害やシステム障害に備えるために利用されます。
大量のデータを低コストで保管したい場合に最適です。 -
特徴:
- 高容量: 1本のLTOテープで最大数TBのデータを保存可能。
- 低コスト: ストレージ単価がHDDやSSDと比較して安価。
- オフライン保管: ネットワークから切り離して保管するため、サイバー攻撃に対して高い耐性がある。
- シーケンシャルアクセス: データの読み書きは順次行われるため、アクセス速度は遅いものの、大量データの一括保存には適している。
実際の現場では、業務終了後や定期的にデータをLTOテープに書き出し、安全な場所(データセンタなど)に保管する運用が多く見られます。
ShadowImage
ShadowImage は、ストレージシステム内でリアルタイムにデータを複製する技術です。以下がその目的と特徴です。
-
目的:
データの保護および迅速なリストアを目的として、システム内でデータのコピーを保持します。バックアップというよりも、システム内の冗長性を高めるための手法に近いです。 -
特徴:
- リアルタイム複製: データの更新と同時に副ボリュームに複製が作成されるため、最新の状態を保つことが可能。
- 高速リストア: システム障害時には、ミラーリングされたデータを即座に使用して復旧が可能。
- ランダムアクセス可能: テープとは異なり、必要なデータに即座にアクセスできるため、業務中のデータ利用にも適している。
- 高コスト: 副ボリュームのストレージ容量が必要なため、LTOと比較してコストがかかる。
ShadowImageは、業務の継続性を確保するために非常に有効です。例えば、定期的なバックアップ作業の合間にデータが失われた場合でも、ShadowImageにより直近の状態に即座に復元することができます。
LTOは長期保存や災害対策に適しており、ShadowImageは日々の業務の継続性や迅速な復旧に役立つことがわかりました。
それぞれの特徴を理解し、目的に応じて使い分ける事が重要であると思いました。
学び
機器一つ導入するにも社内・社外の人の承認などが必要のため、常に情報を共有して進める事が大事だと感じました。
また、手配などを進めて行く上で自分がしっかりと理解して進めないとうまく相手にやりたい事が伝わらず、お互いに余計な時間や手間を費やす事になるという事も身を持って実感しました。
構築作業を通じて、「なぜこの作業が必要なのか」「なんのためにやっているのか」を理解しながら進める姿勢の重要性も再認識しました。
提案から構築まで一貫して取り組んだことで、ストレージ知識を少し深めることができました。
またバックアップの一部について学ぶ良い機会となりました。
課題としては、まだまだ知識不足やもっと一つの案件から学ぼうとする姿勢が足りないと感じたので一つ一つの案件を大事に取り組んでいきたいと思います。
参考資料
- Seagate Cloud Product Comparison
- ShadowImage - Hitachi Vantara Documentation
- 確実なデータ保護を実現するコピー機能を使いこなす
- LTOテープとその仕組み
- Linear Tape-Open Technology Overview
Discussion