『現代のマルチ──AI活用屋という幻想』

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✍️ 序文:

2023年以降、生成AIの爆発的な普及に伴い、「AIをどう活用するか」がビジネスの新しいテーマとして急浮上した。だが、その波に最初に乗ったのは、おそらく“技術者”でも“実務家”でもない。乗ったのは、いわゆる旧・情報商材屋界隈の人達。

本ZINEは、AIブームの裏で量産されている“AI活用屋”という存在の構造、手口、そして終焉までを追いながら、なぜ彼らが現代のマルチ構造と化しているのかを読み解く批評的ドキュメントである。


🧬系譜で見る「AI活用屋のルーツ」:

👨‍🏫 起源:2000年代〜 情報商材屋(自称マーケター)

  • 「ブログで稼げる!」「転売で月収50万!」「月5万円の副収入!」
  • 「誰でもできる系ノウハウ」を高額で売る人たち
  • 重要なのは中身より、“煽り方”

📱 進化:2010年代〜 SNS副業インフルエンサー化

  • 「Twitterで売上100万達成!」「noteで教材販売!」
  • “ノウハウ×キャラ売り”で信用を演出
  • 「実践してみたら失敗した人」は空気化

🤖 現在:2023年〜 AI活用屋に“転生”

  • 「ChatGPTで即収益!」「生成AIで月商300万!」「AI副業大全!」
  • 今回の商材はAI。中身はいつものテンプレ
  • でも体験が新しいから、“一時的に”また売れてしまう

🔁手口の中身はまったく変わってない:

フェーズ 中身 AI版での展開
体験系の感動を売る 初期衝撃を演出 「AIが1秒で記事書いた!」
ノウハウをパッケージ化 内容は薄くてもOK 「プロンプト大全」爆誕
コミュニティ商法 仲間づくりで離脱防止 「一緒に学ぶAIサロン!」
高単価バックエンド 結局売りたいのはこっち 「生成AI活用塾 月5万」

→ 全部、“雰囲気ビジネス”のリスキンだけ。


🧨体験系の感動を売る

「ChatGPTに“書いて”って言ったら、ほんとに書いたんです!!」

──この驚きはたしかに、初見だと新しい。でも、これって「Googleで調べたら出た!」って騒いでるのと構造的には大差ない。

AI活用屋たちは、この“初期衝撃”を切り取って売る。「AIに〇〇させてみた」系動画、ワークショップ、サロン。それらの共通点は、「使い方を見せるだけ」「その後の応用や業務実装は語らない」ことである。

つまり体験は売るが、設計はしない。

それどころか、「体験がすごい」ことで思考停止を誘導し、「導入すればなんとかなる」という幻想に企業を誘う。その結果、現場では「で、どこに使えばいいの?」というAIの“宙ぶらりん”だけが残される。

体験は1度きり。驚きの再現性がないものは、すぐに飽きられる。


📦ノウハウをパッケージ化:プロンプト大全の誕生

AI活用屋が次にやるのは、「ノウハウのパッケージ化」。

いわゆる“プロンプト大全”がそれだ。「この言い方で指示すると、うまくいく」というテンプレを集めたPDF資料、有料Note、スプレッドシート。だがその多くは、ただの文言バリエーションであり、文脈依存性の高いAIにおいては“使える風”の罠である。

しかも、こういったノウハウ集の中には、ChatGPT公式ヘルプからコピーしてきたものすら混じっている。すごいのはAIではなく、**“再利用された説明をあたかも独自発見のように売るスキル”**なのだ。

結果として、活用者は「テンプレはあるが、応用できない」という袋小路に迷い込む。人間の理解を深めるはずのノウハウが、むしろ“使えない理由”の根拠になってしまっている。


🤝コミュニティ商法:一緒に学ぶAIサロン

「一人だと不安。でも仲間がいれば頑張れる」
──その心理を突くのが、AI活用サロン系コミュニティ。

しかし、その実態は“情報の再加熱と回覧”でしかないことが多い。「今日のプロンプト」「ChatGPTの新しい小ネタ」など、“中身よりも参加感”を売る構造になっている。そこには深掘りも検証もなく、議論の代わりにスタンプと感想だけが回る。

もちろん、つながりを求める人にとっては意味があるかもしれない。だが問題は、それを**“スキル習得の場”と偽って売っている点**である。実際には参加しても、プロンプトは書けてもAI活用の構造は理解されず、いつのまにか月額課金だけが残る。


🪜高単価バックエンド:AI塾・講座ビジネスの実態

最終目標は、やはり「高額講座」への誘導だ。

「もっと深く学びたい方へ」「継続的に稼げるスキルを」
──そんな言葉で導かれる先は、月額5万〜10万の“AI活用塾”。

内容はというと、既出のテンプレの焼き直しや、「使ってみよう」の範囲を超えない実習が中心。カリキュラムは抽象的、フィードバックは少なめ。だが、講師と仲間とつながれることで、“高い買い物をした価値”が演出される。

だが、AI自体が日々進化する中で、“今のノウハウ”を売るモデルはどこまで持つか?
いずれ、テンプレも講座もAI自身が提供できるようになる未来を前に、彼らが売っているのはスキルではなく、**“安心感と所属感”**に過ぎない。


🪜まとめ

無料版でいいので自分達で使うところから始めましょう。

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