その指示、誰からの指示ですか?-ブラック準委任-
その指示、誰からの指示ですか?-ブラック準委任-
――契約構造を超えて命令が飛び交う現場で、派遣者が気をつけるべきこと
序章:その指示に、違和感はありませんか?
日々、忙しい現場の中で、誰が指示を出して、誰が責任を取っているのか――
明確に答えられる人は、意外と少ないかもしれません。
特に、外注チーム・受託開発・派遣・SESが入り混じる現場では、
「その指示、誰からのものなのか?」が、曖昧なまま進んでいるケースもあります。
この構造は、一歩間違えば法的リスクを伴い、個人にも責任が押し寄せる可能性すらある。
本稿は、そんな見えにくいトラップを回避するための、現場で働く人への実務的なお話です。
第1章:派遣・請負・受注の構造、何が違うのか?
立場 | 説明 | 指揮命令権 |
---|---|---|
クライアント社員 | 発注元。現場のオーナー | ✅ 派遣社員への指示が可能 |
派遣社員 | 派遣先に常駐するが、雇用主は別 | ❌ 指揮命令はクライアント限定 |
受注者(請負・準委任) | 納品や業務遂行を請け負う外注企業 | ❌ クライアント社員にも派遣社員にも指示不可 |
指揮命令のラインが崩れれば、
それは「偽装請負」「違法派遣」「違法指示?」といった法的リスクに直結します。
実際の現場では形骸化されがちですが、誰が誰に命令していいのかは、明確に決まっています。
第2章:この指示、OK?NG? 現場で起きがちなグレー実例集
❌ Case 1:外注が派遣(他社)に命令する
- 指示:「今週中にマニュアルまとめといて」
- 発信者:請負契約のリーダー
- 対象:派遣契約の別企業社員
- 解説:外注が派遣に直接命令するのは契約違反。法的にアウト。
❌ Case 2:外注がクライアントの新人に教育指示
- 指示:「このサンプルコードで勉強して、結果はパワポで説明して」
- 解説:教育行為は労務管理。外注がクライアント社員を管理するのは越権行為。
✅ Case A:クライアントが派遣社員にタスクを割り振る
- 指示:「このチケットお願い」
- 解説:クライアントからの正当な指示。契約構造上、問題なし。
✅ Case B:外注がクライアントに提案・相談
- 発言:「こういう処理に変えた方がいいかも」
- 解説:命令ではなく意見表明。協働関係として適正なやり取り。
第3章:準委任が一番やばいという話
準委任契約は、表向きは「業務支援」「一時的な技術補助」のはずです。
ですが実際の現場では、この契約が最大の地雷になっているケースが後を絶ちません。
項目 | 請負 | 準委任 |
---|---|---|
完成責任 | ✅ ある(成果物納品) | ❌ なし(やったかどうかだけ) |
指揮命令者 | 自社で統制(責任あり) | なし(原則クライアントからもNG) |
支払い | 納品ベース | 時間ベース(人月) |
適用場面 | 開発・制作など | 運用・常駐支援など |
問題はここです。
成果は求められるのに、責任は発生しない。
準委任で現場を支配し、成果を評価し、命令を出していた人間は、
その全ての結果に法的責任を負いません。
完成責任がない人間の指示は、適当でも痛まない。
だからこそ現場は壊れる。
準委任とは、支配できて、逃げられる。
その点で、ある意味、最も恐ろしい契約構造なのです。
まとめ:黙って従うことがリスクになる時代
「誰に従うか」が不明瞭なまま働くと、責任も帰属も曖昧になります。
派遣社員が「これはおかしい」と気づけるタイミングなんて、ほんとはどこにもない。
指示がくる。作業をする。終われば帰る。それだけの日々の中で、
その指示が“契約違反かもしれない”なんて、誰も教えてくれない。
忙しさに流されて、「まあ、現場が動いてるならそれでいい」――
そうやって構造の歪みが放置され、ある日突然、違法認定や炎上に巻き込まれる。
だからこそ、ひとつだけ確認してください。
🔥 その指示、誰からの指示ですか?
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