Embedded SREの発想をQAの文脈で考えてみたらどうなる? ― チームの中に品質を根づかせる試み
この記事は Hacobu Advent Calendar 2025 の 2日目の記事です。
2025年11月、私は「Findy Job Lunch Talk」のイベントに登壇し、QAをチームに埋め込むという考え方についてお話しする機会をいただきました。
発表スライドはこちらです:
登壇では時間の都合上、実践の一部しかお伝えできませんでしたが、
この記事では、発表で語りきれなかった背景や考え方について、もう少し深く書いていきたいと思います。
はじめに
近年、「QAエンジニアをプロダクトチームに専任で配置する」という体制を取る会社が増えています。
Hacobuでも、各プロダクトごとにQAがスクラムチームの一員として入り、PdMや開発者と日々議論しながら品質を作り上げています。
この体制を表す言葉として「プロダクト専任QA」という表現が使われることが多いのですが、
私はこの言葉に少しだけ違和感を持っています。
"専任"という言葉には、「QAという職種の人を配置しておく」という印象が強く、
「チーム全体で品質を作る」という本来の意図が少し薄れてしまうように感じるのです。
チーム全体で品質をつくるということ
品質を誰か一人が担うのではなく、チーム全員が品質を意識し、関わる。
それが私たちが目指している姿です。
SREの世界で「Embedded SRE」という考え方があります。
信頼性をOps組織だけでなく、開発チームの中に埋め込み、チーム全体で高めていくという考え方です。
この考え方をQAに置き換えると、
QAの視点や手法をチームの中に"埋め込む"ことで、品質を自分ごととして扱う文化をつくる
という方向にたどり着きます。
ここでいう"埋め込む"とは、QAエンジニアを配置することそのものではなく、
チームがQAの観点や習慣を内在化している状態を指します。
QAがいなくても品質を語れ、
開発・PdM・デザイナーがそれぞれの視点で品質に向き合える。
そんな「Embedded QA」とでも呼べるような、"品質をつくるチーム"を目指しています。
Hacobuでの実践
Hacobuでは、QAが各プロダクトチームに入り、スクラムのメンバーとして日々開発サイクルに参加しています。
いわゆる「独立したQAチーム」からアサインされるのではなく、最初からチームの一員として、開発・PdM・デザイナーと同じリズムで動く体制です。
デイリースクラムやプランニング、リリース振り返りにも常に参加。
テスト工程だけでなく、要件定義や仕様検討の段階から会話に入ることで、
"リリース後に見つかる不具合"を減らし、早い段階で品質リスクを共有できるようになりました。
たとえば、UIや挙動の細かい部分──
「デバイス幅によって表示が崩れないか」「お気に入り機能の挙動がページごとに揃っているか」など、
開発メンバーが見落としがちな観点をQAがその場で指摘できるようになります。
結果として、リリース直前の手戻りが減り、開発スピードと品質を両立できるようになっています。
また、定期的にバグバッシュを開催し、開発者やPdMが一緒にアプリを触って品質を確認する文化も生まれました。
これにより、「今の品質をどう維持・向上させるか」といった会話が自然に起こり、チーム全体が"品質を自分ごととして扱う"状態になっています。
横断的な動きの場合
品質をチームに埋め込むという発想は、固定配置だけでなく横断的な動きにも応用することができます。
QAがチーム間を移動しながら、
各チームの開発者に品質の観点やテスト手法を伝え、横断的に品質文化を広めていく活動もまた、各チームの中に品質文化を"埋め込む"ための取り組みです。
一度に複数のチームを支援しながら、品質の考え方を定着させていく──。
そんな実践を通して、QAという役割が"チームの血流"として働く状態を目指しています。
たとえばQAが訪問したチームに対して:
- テストの観点を共有: よくある不具合パターンや、どういう視点でテストすべきかを伝える
- 簡易的なチェックリストを残す: QAが離れたあとも開発者が自己チェックできる仕組みを残す
- ペアテストやレビューを実施: 開発者と一緒にテストを行い、品質への感度を高める
こうして品質の考え方をチームに浸透させ、
どのチームも自走できる状態を作っていく。
それが、私の考える"Embedded QA的な動き"です。
さいごに
この記事で書いた「Embedded QA」という言葉は、
Embedded SREの発想をQAの文脈で考えてみたらどうなるだろう?
という素朴な問いかけに近いものです。
QAがチームの外にいるのではなく、チームの中で呼吸するように動く。
そして最終的には、QAがいなくても品質を語れるチームをつくる。
品質は、誰かが守るものではなく、
チーム全員で育てていくもの。
そんな状態を目指して、私たちは日々少しずつ取り組んでいます。
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