「持ち運べる」ライセンスをどう活かす? 今後のインフラ戦略と Google Cloud VMware Engine (GCVE) 選定の勘所
はじめに
こんにちは! Google Cloud でインフラストラクチャ領域の事業開発をしている Koichi です。
本業の傍ら、VMware vExpert としてユーザーコミュニティ活動もしている元インフラエンジニアです。
いきなりですが、長年運用してきたオンプレミスの VMware 仮想環境を、クラウドへ移行することにハードルを感じていませんか?
運用フローやアプリケーションの変更に伴うリスクや手間を考えると、「クラウド化はしたいけれど、二の足を踏んでしまう」というのが正直なところではないでしょうか。
Google Cloud VMware Engine (GCVE) は、まさにそんな懸念を解消するためのソリューションです。既存オンプレミスの VMware 仮想環境をそのままクラウド側に持ち運ぶ (移行させる) ことができるので、今まで培ったノウハウやシステム資産をクラウド上で活用できます!

VMware HCX という技術を活用したネットワーク L2 延伸(Layer 2 Extension) により、オンプレミスのネットワークをそのままクラウドへ「延長」することもできます。つまり、使い慣れた IP アドレス体系を変えることなく、システムをクラウドへ移行することが可能なのです。
移行のハードルを極限まで下げられる GCVE ですが、2025年の今、Google Cloud のアップデートに伴って、さらに「ビジネス価値を生むプラットフォーム」として進化しています。
今回は、Tocchy さんによる GCVE 技術解説記事 をベースにしつつ、この1年で変化した市場環境やハードウェアの進化を踏まえ、「今、最適な GCVE の選択」 について、その設計思想と勘所をアップデートしていきたいと思います。
VCF への集約と「ライセンス ポータビリティ」
まずは、前提となる環境の変化についておさらいしておきます。
VMware のライセンス体系が VMware Cloud Foundation (VCF) を中心に集約され、シンプルになりました。
多くの VMware ユーザーにとって、この変化の最大のメリットは 「ライセンス ポータビリティ(可搬性)」 の獲得ではないでしょうか。
これにより、オンプレミスとクラウドの間の垣根が取り払われました。自社で保有する VCF ライセンスを、要件に応じてオンプレミスで使うことも、Google Cloud に持ち込んで(BYOL)使うことも自由に選択できるようになりました。VCF によってもたらされる VMware テクノロジーの進化を享受しつつも、Google Cloud ならではの先進性も同時に獲得することができます。

この「自由」を手に入れた今、VMware 仮想環境のインフラ選定においては、「持ち込んだライセンス資産を、いかに効率よく収容できる器(プラットフォーム)であるか」 が、これまで以上に重要な評価軸となっています。
ワークロードの変化に適応する「ve2 ファミリー」新登場!
GCVE では、プライベートクラウドを構成する物理ノードのタイプを選択できます。
今まで東京リージョンでは ve1 ファミリーのみ選択可能でしたが、2025 年 11 月には上位互換となる ve2 ファミリー が新たに登場しました。
これから新たに設計を行う場合、私は断然 ve2 ファミリーをおすすめします。
新しいノードタイプなので価格性能比が向上していることに加えて、単純に、「今の時代のワークロードにフィットしているから」 です。
メモリとストレージの「密度」がパワーアップ
仮想化基盤を運用していると、「CPU は余っているのに、メモリやストレージ容量が先に足りなくなる」という経験はありませんか?
現代のアプリケーションやデータベースは、特にメモリを大量に消費する傾向にあります。
ve2-mega ノードはこの傾向を見越して設計されており、特に大規模環境に最適です。
旧世代のノードと比較して、1 台あたりに搭載できるメモリやストレージの量が大幅に増強されています。
VCF ライセンス消費量は、CPU 物理コアベースでカウントされるため、「1コアあたりに、どれだけ多くのメモリを搭載しているか(メモリ密度)」 が、インフラ全体のコスト効率を決定づける重要な指標となります。
ここで、主要なノードタイプのスペック(コアあたりのメモリ量)を見てみましょう。
| ノードタイプ | 物理コア数 | メモリ | 1コアあたりのメモリ |
|---|---|---|---|
| ve1-standard-72 | 36 Cores | 768 GiB | 約 21 GiB |
| ve2-mega-128 | 64 Cores | 2,048 GiB | 32 GiB |
ve2 ファミリー(表は一例として ve2-mega)は、旧世代と比較して 1コアあたりのメモリ搭載量が大幅に強化されていることがわかります。
「スペックが高すぎる」と敬遠するのではなく、「高密度なノードに集約することで、ライセンス効率を最大化する」 というのが、BYOL 時代の合理的なアーキテクチャです。なお、ve2 ファミリーにはリソース要件に応じていくつかのバリエーションがありますので、ワークロードに最適なものを選択可能です。
コンピュートとストレージの分離:「Storage Only Node」
もう一つ、設計の柔軟性を高める重要な要素が 「Storage Only Node」 です。
HCI (Hyper-Converged Infrastructure) である VMware vSAN の構成上、これまでは「ストレージ容量だけを増やしたいのに、ノードを追加すると CPU/メモリ(そして VCF ライセンス消費)も増えてしまう」という課題がありました。
Google Cloud はこれに対し、コンピュート機能を持たず、ストレージ容量だけをクラスタに提供する特殊なノードを用意しています。
- HCI Node (ve2 など): アプリケーションの計算処理を担当
- Storage Only Node: データの保存・拡張を担当
これらを組み合わせることで、バックアップやアーカイブ、大容量ファイルサーバーといったストレージ偏重のワークロードに対しても、VCF ライセンス消費を抑えた最適な構成を組むことが可能です。
「接続」から「活用」へ:Google Cloud ネイティブ連携
最後に、GCVE を選択する最大の意義とも言える Google Cloud エコシステムとの連携 についてです。
GCVE は、Google Cloud のネイティブサービスと Private Service Access (PSA) を通じて広帯域・低遅延で接続されています。
Tocchy さんによる GCVE 技術解説記事 でもネットワーク構成については詳しく解説されていますが、この接続性は単なる「疎通」以上の価値を生み出します。
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データ分析:
インターネットを経由せず、Oracle や SQL Server のデータを高速・セキュアに BigQuery へ同期し、リアルタイム分析基盤を構築する。 -
AI 活用:
VMware 仮想環境上の非構造化データ(ドキュメントや画像)を、Vertex AI の生成 AI モデルと連携させ、新たなナレッジを引き出す。
これらが、アプリケーションの大規模な改修(リファクタリング)なしで、インフラを移行するだけで実現の入り口に立てます。
GCVE は、単なる「オンプレミス VMware 仮想環境」の移行先ではなく、「Google のデータ・AI パワーを注入してモダナイズするためのゲートウェイ」 として機能します。
まとめ
Google Cloud VMware Engine (GCVE) は、「既存 VMware 資産の保護」と「新しいテクノロジーへの投資」を両立させるプラットフォームへと進化しています。
- L2 延伸とポータビリティ: ネットワークもライセンスも、既存資産をそのまま「持ち運ぶ」ことで移行ハードルを下げる。
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密度の高いアーキテクチャ:
ve2ファミリーのような高密度ノードを活用し、ライセンス効率とリソース集約率を高める。 - データ・AI との融合: 移行をゴールにせず、その先の Google Cloud サービス活用を見据えた設計を行う。
もし、具体的な構成や他の選択肢はないのかといったご要望があれば、ぜひお気軽に Google Cloud の担当者までご相談ください!
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