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M&A後のプロダクトにQAはどう伴走するか ─ カラオケBanBanへのQA導入から自動化までの2年間

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こんにちは、Platform Engineering部 QA マネージャーの安藤です。

私たちGENDAは「2040年、世界一のエンタメ企業へ」を「Vision/野望」に掲げ、その実現に向け、連続的なM&Aを成長の軸の一つとしています。それに伴い、GENDAには急速な事業拡大に加え、プロダクト数も多く、その事業内容も多岐にわたるという特徴があります。
そのため、GENDAにおけるプロダクトの品質保証を担う私たちは、インプロセスQAではなく、横断的にプロダクト開発に伴走するPlatform Engineering部の一員としてQAチームを組成し、品質改善活動を行っています。

本記事では、M&Aで新しくグループインしたプロダクトに対し、GENDAのQAがどのように品質保証を行っているのかをお伝えします。2024年にグループインした「カラオケBanBan」を例に取り上げ、QA導入から現在までの約2年間の取り組みをご紹介します。

カラオケBanBanはモバイルアプリやWebサービスだけではなく、POS端末、セルフ端末などの機器もQA対象になっている点が特徴です。

QAのプロダクトへの関わり方

QAのプロダクトへの関わり方は、M&Aなどをきっかけとする新規またはリニューアルを伴うプロダクトと、継続してエンハンスリリースをするプロダクトの大きく分けて二つのパターンがあります。

新規またはリニューアルを伴うプロダクト

M&Aに伴いプロダクトが増えることがあります。グループインのタイミングで事業戦略も検討されますが、そこで新規にプロダクトを立ち上げたり、リニューアルを実施することがあります。

一からプロダクトを見直すため、要件定義やデザイン作成など、上流工程からQAが入り込むことで、シフトレフトによるテスト前品質の向上を図っています。案件の立ち上げ初期からの対応になるので、数ヶ月以上にわたる案件もあります。

継続してエンハンスリリースをするプロダクト

各プロダクトのコア機能に対してリファクタリングのような大幅改修が入る場合や、新たに大きな機能実装をするような場合はQAとしてもスケジュール調整の上で対応しています。

状況に応じて、QAではなくプロダクト開発を行うチーム自身でのテスト実施も可能な体制にしています。専門性が必要となる領域はQAが責任を持つという体制で、QAのセルフ化を進めています。

以前にGENDA主催のテックイベント「GENDA Tech Talk」で登壇した際の資料も併せてご覧いただくと、GENDAのQA全体の流れがよりご理解いただけるかと思います。

カラオケBanBan公式アプリのフルリニューアル

カラオケBanBanを運営するシン・コーポレーションは、2024年2月にGENDAに仲間入りしました。カラオケBanBanは全国に約400店舗を展開しています。

カラオケBanBan公式アプリとQAについて、この2年間の主な出来事は以下の通りです。

グループイン後、最初に行われたのは既存アプリのフルリニューアルでした。10年以上運用され、店舗運営を支えてきた旧アプリと基盤を、GENDAのプロダクトチームによる内製開発で全面的に作り直し、グループインからわずか9ヶ月後の2024年11月にリリースしています。

既存アプリは長期運用されていたこともあり、レガシーなUI設計・インフラという課題があったため、グループイン後に最初に着手されました。

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このリニューアルの大きなポイントが、旧会員からGENDA ID会員への移行です。

GENDA IDはGENDAが展開するサービス共通のIDです。「カラオケBanBanの会員が、同じGENDA IDのアカウントで利用しているサービスのクーポンを受け取れる」といった、プロダクト横断の施策を打てるようになりました。単なるアプリの刷新ではなく、グループ全体のエンタメ・プラットフォームにプロダクトを組み込むためのリニューアルでもありました。

QAとしての関わり方

このリニューアルは「QAが一度も入ったことのないプロダクトに、大型リリースと同時にQAを導入する」「会員データを引き継ぎつつ、GENDAの共通IDであるGENDA IDへ移行する」というQAとしてもチャレンジングな案件でした。

特に以下の3点が求められるものでした。

  1. アプリ ↔ POS ↔ 管理画面 の情報連携が正しく行われ、入室処理から会計まで問題なく進められること
  2. 旧会員のユーザーがスムーズに新会員へ移行できること
  3. ポイント付与・利用が正しく行われること

そのなかでも特に注力したのが会員移行のテストです。ポイントやランク情報などを含む旧アプリの会員情報を、新基盤向けに変換して引き継ぎます。そのため、移行パターンの洗い出しと検証を重点的に行いました。通常の会員移行の観点に加えて、GENDA IDを複数プロダクトへ導入するタイミングだったこともあり、既存のGENDA IDアカウントを持つユーザーと新規登録のユーザーが混在し、今まで以上に考慮すべきパターンが増えていました。そのため、観点漏れがないかのチェックも入念に行いました。

旧基盤と新基盤は同時稼働させず、リリースと同時に一斉切り替えとなるため、失敗すれば全国の店舗で会員証システムが止まるリスクがあります。この緊張感をひしひしと感じながら、開発チームと一緒に何度も検証を重ねてリリースを迎えました。

結果として、GENDA ID会員数はカラオケBanBan公式アプリリリースから4ヶ月後の2025年3月に100万人を突破。また、リニューアル後のアプリもストア評価が大きく改善し、カラオケBanBan公式アプリの会員数も2026年6月に300万人を突破しています。
品質面からこの成長を支えられたことは、QAとしても大きな自信につながりました。

この移行を乗り切れた理由として、特に以下の3点が挙げられます。

  1. 旧アプリの会員パターンを網羅した移行テストケースが整備されていた
  2. GENDA IDが複数プロダクトで利用されるID基盤だからこそ生まれるパターン(既存GENDA ID会員、新規会員など)の観点漏れがないかの入念なチェックをした
  3. 開発チームと妥協なく何度も検証を重ねた

グループイン後のフルリニューアルということもあり、QAが一度も入ったことのないプロダクトで、これだけの大型かつ緊張感あるリリースを無事に終えられた経験は、その後のPOS・セルフ端末対応など、より複雑な領域に踏み込んでいくための土台にもなりました 。

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POSのQAという新領域 ─ オペレーションを踏まえたシステム間テストへの挑戦

カラオケBanBanのQAを進めるなかで、GENDAのQAとして初めて踏み込んだ領域がPOS端末です。

それまでのGENDAのQAは、モバイルアプリやWebサービスが対象の中心でした。しかしカラオケBanBanでは、店舗のPOS端末がモバイルアプリ・基盤と密に連携します。POS端末用のSDKは協力会社が開発し、GENDA側がAPIを開発するという体制です。QAとしては「モバイルアプリで行った操作がPOS端末にどう反映されるか」「POS端末での会計が会員のポイントにどう反映されるか」「実際の店舗での使われ方に即したパターンですべて問題がないか」といった、複数システム・端末を跨いだ結合テストが必要でした。


カラオケBanBanにおけるシステム相関図

物理的な端末が絡むテストならではの工夫も生まれました。

  • POS端末はリモート操作ツールを使い、オフィスや自宅からでも実機試験ができる体制を整備(のちに導入されたセルフ端末も同様の体制を整備)
  • QA担当者が知っておくべきPOS端末に関する情報(データの作成方法や特定機能の仕様など)は「テスト実施Tips」としてドキュメント化し、誰が担当しても同じ品質でテストできる状態を維持(操作方法を明確にし、初めてテストする場合でも手順を見て実施できるように準備)

単に「モバイルアプリとWebの表示を確認する」だけではなく、「店舗のオペレーションまで含めてプロダクトの品質を見る」ことが大切だと改めて実感しました。カラオケBanBanは、GENDAのQAの守備範囲を一段広げるきっかけにもなったプロダクトの一つです。

モバイルアプリ予約とセルフ受付 ─ 増え続けるQA対象

リニューアル後も、カラオケBanBanの開発は続きます。QAにとって、次の大きな山となったのがモバイルアプリ予約機能の導入でした。

それまで電話で受け付けていた予約を、モバイルアプリ上で完結できるようにする機能です。機種やルームの選択、予約の確認・変更・キャンセルまでモバイルアプリ上で操作でき、2026年3月には「イマカラ予約」として全国の店舗に展開されました。

https://genda.jp/2026/03/16/genda-group-karaoke-banban-reservation-function/

このタイミングで店舗には自身で受付や会計が可能なセルフ端末も段階的に導入されました。モバイルアプリで予約したお客様が、店頭の端末で二次元コードを読み取ってセルフで受付・入室できる仕組みです。


カラオケBanBanに導入されたセルフ端末

これにより、試験対象がさらに増えることになりました。現在のカラオケBanBanのQA対象は以下の五つです。

  • モバイルアプリ(iOS・Android)
  • 管理画面(店舗・データを管理するPCで利用するWebサービス)
  • セルフ端末(受付、途中入退室を担う店頭端末)
  • POS端末
  • BanBan NAVI(店舗DXツール。2026年7月からQA対象に追加)

予約機能のテストでは「モバイルアプリで予約 → セルフ端末で二次元コードを読み取り入室 → POS端末で会計」という、モバイルアプリ・セルフ端末・POS端末・管理画面すべてを横断するE2E(end-to-end)のシナリオを検証する必要があります。しかも予約には「予約時刻の10分前から入室可能」といった時間条件や、店舗ごとの営業時間・料金コースの出し分けなど、パターンの組み合わせが発生します。その結果、マニュアルテストの工数が膨大になり、リグレッションテストの負担も大きくなってしまいます。


セルフ端末の実機

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自動テストの導入 ─ 活発に新機能開発が続くプロダクトのテスト戦略

この課題に対する打ち手が、テスト自動化を含めたテスト戦略です。

GENDAのQAでは、新機能開発の頻度に合わせてテスト戦略のパターンを定義しています。

新機能開発の頻度 テスト戦略
低:機能がほぼ固まっている 全体正常系を自動テストとして実装し、定期実行で本番品質を担保
中:安定運用、定期的な軽微更新、改善メインの機能開発 コア機能のみ自動テストを実装
高:活発に新機能開発が続く 初期はコア機能のみ、追ってパターンを網羅するまで自動テストを拡充

カラオケBanBanは三つ目のパターンです。効果が高いと見込まれる箇所から順に、MagicPodによる自動テストの実装と定期実行を進めています。

GENDAでは、SETエンジニアや開発者のようにコードの読み書きができるメンバーだけではなく、マニュアルテストメインのQAやPdMなどのエンジニアではないメンバーでも自動テストの保守・運用ができる状態を目指しています。そのため、ノーコードで実装できるMagicPodで自動テストを実装しています。QAのセルフ化を、自動テストの領域にも広げていくためです。

セルフ端末のような店舗に設置されている物理端末が関わる領域まで自動テストの対象に含むことは、なかなか珍しい状況かと思います。

前述したとおり、QAではなくプロダクト開発を行うチーム自身でテストを行う場合もあります。自動化によって、そのような場合でも品質のベースラインを確認してリリースできる状態を構築しています。複雑なプロダクトの品質担保と開発スピードの両立を、この形で実現させます。

M&A後のQAで大事だったこと

カラオケBanBanでの2年間を振り返って、M&AでグループインしたプロダクトのQAで特に効果的だったと感じるポイントを三つ挙げます。

1. 初期リリース時の品質をできるだけ高いものにする

M&Aに伴ってプロダクトも一緒にグループインする場合、新規サービスとは異なり、すでにサービスを利用しているユーザーがいる状態です。

既存のユーザーはこれまでのプロダクトに一定の評価を持っており、M&Aによってさらに品質が良くなることを期待していると考えられます。そのため、スピードはもちろん重要ですが、品質をとにかく高いものにしてリリースすることが、GENDAの価値を高めることにつながると考えています。

リニューアルでは新機能も重要ですが、会員データや基盤の移行がユーザー影響の中心になります。移行パターンの検証にリソースを重点的に割くことが、一斉切り替えリリースの成功につながりました。

2. 知識の資産化を最初からやる

オンボーディング資料、テスト実施Tips、画面一覧とPRDの紐付けといったQAに必要なドキュメントを整備してきたことで、普段担当していないQAメンバーでもカラオケBanBanのQAが可能な状態を維持しています。POS端末やセルフ端末のような特殊な試験環境があるプロダクトほど、この効果は大きいです。

3. プロダクトの成長に合わせてテスト戦略を進化させる

リニューアル時は総力戦のマニュアルテスト、運用が始まればリグレッションテストの整備とプロダクトチームによるQAのセルフ化、開発が加速すればテスト自動化、のように、フェーズごとに品質担保の形を変えてきました。「このプロダクトにはこのやり方」と固定化せず、変化に追従し続けることが、M&Aで多様なプロダクトが増え続けるGENDAでは特に重要だと感じています。

おわりに

GENDAは連続的なM&Aを成長の軸の一つとしているため、それに伴うプロダクトの仲間入りは、これからも続きます。カラオケBanBanでの経験は、「新規プロダクトへのQA導入 → 複数システム・端末を跨いだ結合テスト → 自動化」という型となり、今後同様のケースを確実に前へ進めるための資産になりました。

特にモバイルアプリやWebサービス以外の場合、どのようにQAを行うかという検討から入っていくことになるため、QAとして未経験の領域に踏み込む際に今回の経験が役立っています。
次にどんなプロダクトに出会うか、どんな未知の端末やシステムの領域に出会うのか、私たち自身も楽しみにしています。この記事が、M&A後のプロダクトや、複雑なプロダクトの品質保証に悩む方の参考になれば幸いです。

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