チームの文化的遺伝子と、その乗り物たち
この記事は Akatsuki Games Advent Calendar 2025 9日目の記事です。
はじめに
これは、あるエンジニアリングチームのリードを務めていた私が、過去にチーム崩壊の危機(といっても喧嘩別れなどではなく、静かなる文化の絶滅)を感じた際に、メンバーに不安を打ち明け、文化の再定義を試みた際の話です。
この不安はどこから?
時は数年前の春頃。
ふと、チームの目標を振り返ろうとした時、ある事実に気づきました。
「目標を立てた時にいた人が、もういない」
エンジニア組織において人の入れ替わりは世の常です。しかし、当時の私のチームは、私がJoinした頃と比べてメンバーがほぼ総入れ替えに近い状態になっていました。
もちろん、新しいメンバーが加わることは嬉しいことです。開発体制も変わるし、リーダーも変わる。組織は変わり続ける生き物です。
しかし、当時の私は強烈な 「不安」 を感じていました。
- 今まで自分たちが大切にしてきた「チームらしさ」が無くなってしまうのではないか?
- 阿吽の呼吸で通じていた「良さ」が、継承されずに断絶してしまうのではないか?
この不安の正体は、「文化(カルチャー)の喪失」 への恐怖でした。
このチームらしさ、とは何か
不安を打ち消すためには、形のない「文化」を言葉にする必要がありました。
私はスライドを作り、メンバー全員を集めた定例の場で、少し気恥ずかしさを感じながらも、私が思う「このチームの良さ」を語りかけました。
私が思う「我々のらしさ」とは、以下のようなものでした。
* 自然に助け合うこと
* 息をするように改善すること
* お互いを信頼し、尊敬し、驕らないこと
* 落ち着いているけれど、ノリが良いこと
* 困っている人がいれば、スッと手を差し伸べること
これらは明文化されたルールではありません。しかし、確実にそこに存在していた空気感、いわばチームの 「文化」 でした。
私は好きなこのチームの らしさ を継いでいきたい
良き文化を 遺伝子を MEMEを 繋いでいきたい
継いで繋いで紡いでいくために
改めて 今ある文化を
言い合い 話し合い 言葉にして 文字にして 遺したい
変わり続ける環境の中で、変わらずあり続けるために、「これまで」 を再確認し、「これから」 をみんなで話したかったのです。
「文化」について、話してみる
気持ちをぶつけた後、私たちはオンラインホワイトボードを使って、改めて自分たちの文化についてブレインストーミングを行いました。
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今ある良いところ・続けていきたいこと
- 「ドキュメントが豊富で証跡を残す文化」
- 「夕会でのTips共有」
- 「Oncall対応のノウハウ共有」
- 「誰かの良いところを良いと言う」
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こうありたい・こうしていきたいこと
- 「スクラムチームで別れても情報共有したい」
- 「特定のヒーローに頼らないチームになりたい」
- 「新しい人に優しくありたい」
- 「プランニングポーカーのようなゲーム要素も欲しい」
漠然としていた「良さ」が、具体的なアクションや習慣として言語化された瞬間でした。
優れたスターターは新来者に菌を植えつける
文化作りに関して、とても好きな図があります
「サワードゥ・ブレッド(パン種)」 のメタファーです。
美味しいパンを作り続けるには、優れた「スターター(種)」が必要です。新しい材料(新入社員)が入ってきても、元からある強力なスターターが混ざり合うことで、そのパン(チーム)独自の風味が継承され、さらに美味しく発酵し続けます。
もしスターターが弱ければ、新しい材料に負けてしまい、味は変わってしまう。
私たちがやった「言語化」は、このスターターの菌を培養し、強くする作業だったのだと思います。
たまには感情的になるのも悪くない
それからさらに時が経ち、チームはまた形を変えました。
あの時の話し合いが、定量的な「成果」に直結したかと問われれば、正直わかりません。KPIが何%向上したとか、ベロシティがどうなったとか、そういう話ではないからです。
けれど、「なんかこういうのも必要だよなあ」 と、強く思いました。
長期運用には、継続的に価値を出せるチームが必要です。
そのためには、開発プロセスの改善やチームマネジメントといった「仕組み」ももちろん大事です。
しかし、それと同じくらい、「心」や「思い」といった部分も大事だと思うのです。
システムやコードに向き合う毎日ですが、それを作っているのは人間です。
だからこそ、たまにはロジックを外れて、感情的(エモ)になり、「自分たちは何者か」「どうありたいか」を熱く語る時間があってもいい。
明日は自分たちの手の中に
気持ちを伝えたスライドの最後に、私はこんなメッセージを込めました。
「自分の手で 繋がり・紡ぎ
自分達の手で 自分達の場所を作っていく」
誰かが良いチームを作ってくれるわけではありません。
良い文化も、放っておけば消えてしまいます。
自分たちの手で水をやり、手入れをし、紡いでいく。
これから先、どんなに人が入れ替わろうとも、その意志さえあれば、きっと「良いチーム」であり続けられると信じています。
Tomorrow is in your hands.
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