生成AIアプリ開発に従事する/したい若手エンジニアのためのTerraform入門: マルチクラウド環境におけるインフラ管理の新時代
はじめに
クラウドサービスの多様化が進む現在、エンジニアとして複数のクラウド環境(AWS、GCP、Azure)を管理する機会が増えています。
こうした環境では、Infrastructure as Code(IaC)の導入が不可欠ですが、「Terraformを学ぶべきか、それとも各クラウドの独自IaCツールを学ぶべきか」という選択に迷う方も多いでしょう。
この記事では、特にこれからIaCを学ぶ若手エンジニアに向けて、Terraformと各クラウド独自ツールの比較を行い、マルチクラウド環境において効率的なスキルアップ方法を私になりに結論付けます。
結論:私はTerraform一択です
なぜならマルチクラウドに対応しているからです。以上。(他にも理由はありますが、ここが重要なので。)
特に生成AIアプリ開発を実施するなら、各社それぞれのAPIがリリースされている環境が違うと思います。
例えばAzureであればOpenAI、AWSであればClaude、GCPであればGemini等です。
そして、これらは時と場合によって様々な使い分けをなされます。
ということは全ての環境を経験することは必然だからです。
さらに今の時代は迅速に環境開発を求められて検証を行わなければならないため、できるだけコストをかけたくないですよね。
ということで私はTerraformを推します。理由は後述します。
IaCとは何か?そしてなぜ必要なのか?
そもそもInfrastructure as Code(IaC)とは、サーバーやネットワークなどのインフラストラクチャを構築・管理するための設定をコード化する手法です。
従来の手動設定に代わり、宣言的なコードでインフラを定義することで、以下のようなメリットが得られます:
- 再現性: 同じコードから常に同じ環境が作成される(ここめっちゃ大事。横展開できるし、資産として積み上がる)
- バージョン管理: インフラの変更履歴をGitなどで追跡できる(開発中にめっちゃ仕様変更があり、その度にデプロイしては情報共有が難しかった)
- 自動化: デプロイメントプロセスを自動化し人的ミスを削減(環境変数の設定忘れが起きがち…)
- ドキュメント化: コード自体がインフラの設計図となる(このコードをそのままclaude 3.7 sonet等でsvg化してインフラ構成図へ)
- スケーラビリティ: 環境のコピーや拡張が容易になる(横展開して別プロジェクトに応用)
Terraformと各クラウド独自IaCツールの比較
Terraformとは?
Terraformは、HashiCorpが開発したオープンソースのIaCツールです。クラウドやオンプレミスのリソースを宣言的な設定ファイルを使って構築・管理できます。最大の特徴は、AWSやGCP、Azureなど複数のクラウドプロバイダーに対応している点です。
各クラウド独自のIaCツール
- AWS CloudFormation: AWSリソース専用のIaCサービス
- Azure Resource Manager (ARM) Templates: Azureリソース管理用のテンプレート
- Google Cloud Deployment Manager: GCPリソースを定義するためのサービス
選択の観点:何を基準に選ぶべきか?
1. 学習効率とスキル転用性
Terraformのメリット:
- 1つのツールと言語(HCL)を学ぶだけで複数のクラウドに対応できる
- 基本的な概念を理解すれば、どのクラウドでも応用可能
- 学習した知識が無駄になりにくい
各クラウドツールのメリット:
- 特定クラウドに特化した詳細な設定や最適化が学べる
- クラウドベンダーによる充実したドキュメントが利用できる
若手エンジニアにとって、マルチクラウド環境を前提とする場合、Terraformの学習効率の高さは大きなメリットかなと思います。
2. 市場価値と将来性
Terraformのメリット:
- マルチクラウド対応スキルとして就職市場での評価が高い
- クラウド間の移行プロジェクトでの重要性が増している
- オープンソースコミュニティのサポートがある
各クラウドツールのメリット:
- 特定のクラウドに特化したプロジェクトでの専門性が評価される
- クラウドベンダー公式の認定資格と連携している
将来的にキャリアの選択肢を広げたいなら、Terraformのスキルは汎用性が高く、価値が下がりにくいでしょう。
3. 実装の柔軟性と機能対応
Terraformのメリット:
- クラウド間の資源移行やハイブリッド構成が容易
- プロバイダーエコシステムが豊富で拡張性が高い
- モジュール化によるコード再利用が容易
各クラウドツールのメリット:
- クラウドネイティブな機能との統合が優れている
- 最新機能への対応が早い
- クラウド固有の最適化機能が充実
マルチクラウド環境での一貫した管理を重視するなら、Terraformの柔軟性は大きな利点となります。
4. 開発ワークフローとの親和性
Terraformのメリット:
- GitOpsワークフローとの親和性が高い
- CI/CDパイプラインへの組み込みが容易
- ローカル開発とテストが比較的シンプル
各クラウドツールのメリット:
- クラウドコンソールとの統合が優れている
- クラウド内のCI/CDサービスとの連携が容易
既存の開発ワークフローを維持したいチームにとって、Terraformはソフトウェア開発の手法と親和性が高いです。
若手エンジニア向け学習ロードマップ
マルチクラウド環境でのIaC導入を目指す若手エンジニアには、以下のようなステップでの学習をお勧めします:
ステップ1: クラウドの基礎知識を固める
- 各クラウドプラットフォームの基本概念を理解する
- 手動でリソースを作成して、動作や関連性を体験する
ステップ2: Terraformの基本を学ぶ
- Terraformの基本概念(プロバイダー、リソース、状態管理など)
- 簡単なリソース(ストレージバケットなど)の作成と管理
ステップ3: 実践的なプロジェクトに取り組む
- 簡単なウェブアプリケーションのインフラをコード化
- 開発環境から本番環境までの管理を自動化
ステップ4: 応用と最適化
- モジュール化とベストプラクティスの適用
- 必要に応じて特定クラウドの独自機能を学習
おすすめの学習リソース
- 私がこれから開設するzenn記事(以下のチュートリアルやドキュメントもありますが、サクッと動作確認したいなら私のzenn記事がおすすめ)
- Terraform公式ドキュメント
- HashiCorp Learn(Terraformチュートリアル)
- GitHub上のTerraformサンプルプロジェクト
- 各クラウドプロバイダーのTerraform統合ガイド
実践:最初のTerraformプロジェクト
マルチクラウド環境での最初のステップとして、各クラウドに簡単なストレージリソースを作成するTerraformコードを見てみましょう:
# AWSプロバイダー設定
provider "aws" {
region = "ap-northeast-1"
}
# Azureプロバイダー設定
provider "azurerm" {
features {}
}
# GCPプロバイダー設定
provider "google" {
project = "your-gcp-project-id"
region = "asia-northeast1"
}
# AWS: S3バケットを作成
resource "aws_s3_bucket" "test_bucket" {
bucket = "my-terraform-test-bucket"
}
# Azure: リソースグループとストレージアカウントを作成
resource "azurerm_resource_group" "example" {
name = "terraform-test-rg"
location = "japaneast"
}
resource "azurerm_storage_account" "example" {
name = "terraformteststorage"
resource_group_name = azurerm_resource_group.example.name
location = azurerm_resource_group.example.location
account_tier = "Standard"
account_replication_type = "LRS"
}
# GCP: Cloud Storageバケットを作成
resource "google_storage_bucket" "example" {
name = "terraform-test-bucket"
location = "asia-northeast1"
}
このコード一つで、3つのクラウドプロバイダーにストレージリソースをデプロイできます。各クラウド固有のツールを使うなら、3つの異なる言語や構文を学ぶ必要があるでしょう。
Terraformによる各クラウドサービスへのデプロイ方法についても記事化して公開していきたいと思います。
結論:Terraformを選ぶべき理由
マルチクラウド環境でのリソース管理を始める若手エンジニアにとって、Terraformを学ぶことには大きなメリットがあります:
- 学習効率の最大化: 1つのツールで複数クラウドをカバー
- 市場価値の高いスキル獲得: 汎用性の高い技術として評価される
- 一貫した管理手法: クラウド間で統一された方法でリソースを管理
- キャリアの選択肢拡大: 特定クラウドに縛られないスキルセット
もちろん、プロジェクトの特性や組織の方針によっては、特定クラウドのツールを深く学ぶ価値もあります。しかし、マルチクラウド環境を視野に入れるなら、Terraformから始めることで、効率的に実践的なIaCスキルを身につけることができるでしょう。
IaCの導入は、単なるツールの習得以上に、インフラ管理に対する考え方の変革です。コードでインフラを表現し、バージョン管理し、自動化することで、より安定した、スケーラブルなシステム運用が可能になります。
若手エンジニアの皆さんが、Terraformを通じてIaCの世界に一歩を踏み出し、次世代のクラウドインフラを支える存在になることを願っています。
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