AWS Solutions Architect Professionalに受かった——勉強法と本番で効いたこと
AWS認定ソリューションアーキテクト プロフェッショナル、通称SAP。AWS資格の中で最難関と言われる試験です。75問を180分で解く。問題文が長い。選択肢も長い。3時間の試験が終わったあと、手応えはかなりありました。結果は835点。合格ラインの750点を余裕を持って超えていて、体感と実際のスコアが一致した形です。
勉強の進め方と本番の立ち回りについて、自分がやったことと他の合格者から聞いた話を混ぜて書いていきます。
試験の全体像
SAP-C02の出題範囲は4つのドメインに分かれています。
| ドメイン | 内容 | 配分 |
|---|---|---|
| 第1分野 | 複雑な組織に対応するソリューションの設計 | 26% |
| 第2分野 | 新しいソリューションのための設計 | 29% |
| 第3分野 | 既存ソリューションの継続的な改善 | 25% |
| 第4分野 | ワークロードの移行とモダナイゼーションの加速 | 20% |
75問の選択式で、合格ラインは750/1000点。受験料は税込44,000円。試験時間は180分ですが、英語が母語でない場合はESL申請で30分延長できます。この30分は絶対に取っておいてください。210分でも余る問題量ではありません。
SAAを取ってからSAPに進む人が多いと思います。自分もその流れでした。SAAの延長だろうと甘く見ていたら、最初の模擬試験で叩きのめされました。問題文の長さが段違いで、1問読むだけで2〜3分かかる。しかも選択肢がどれもそれっぽく見えて、2つまで絞れるのに最後の1つが選べない。SAAとは別の試験だと考えたほうがいいです。
何が難しいのか
受けてみて感じた難しさは3つあります。
サービスの数が膨大。 AWSのサービスは200を超えていて、SAPではその大半が出題範囲に入ります。SAAで扱うのは主要な30〜40サービスですが、SAPではOrganizations、Control Tower、RAM、Service Catalog、Migration Hub、DataSync、Transfer Familyといった実務で触らないとなかなか覚えないサービスがどんどん出てきます。
問題文が長い。 シナリオベースの問題が中心で、1問あたりの文章量がSAAの倍以上あります。会社の組織構成、既存のアーキテクチャ、移行要件、コスト制約、セキュリティ要件が全部盛り込まれた問題文を読み解いて、最も適切なソリューションを選ぶ。速読力と情報整理力が問われます。
2択で迷う。 4つの選択肢のうち2つは明らかに外せます。残った2つがどちらも正解に見える。違いは「コストを最小化する」のか「運用負荷を最小化する」のかといった、問題文のキーワードにかかっています。ここを読み飛ばすと確実に間違えます。
使った教材
自分が使ったものと、合格者に聞いて評判がよかったものを並べます。
書籍
| 書籍 | 用途 |
|---|---|
| AWS認定資格試験テキスト&問題集 SAP 改訂第2版(SBクリエイティブ) | インプットの軸。図解が多くて全体像をつかみやすい |
| AWS認定ソリューションアーキテクト プロフェッショナル ガイドブック | サービス間の使い分けを整理するのに役立った |
改訂第2版のテキストは章末にポイントがまとまっていて、直前の見直しに使えます。ただし出版時期の関係で最新サービスが反映されていないこともあるので、公式ドキュメントで補完する必要があります。
Udemy
Udemyの模擬試験はSAP対策の定番です。自分は「AWS Solution Architect Professional 演習テスト」を使いました。本番より少し難しめに作られているという評判で、ここで安定して正解できればかなり自信がつきます。
もう1つ、英語に抵抗がなければStephane Maarekの「Ultimate AWS Certified Solutions Architect Professional」もおすすめです。サービスの全体像を動画で俯瞰できるので、テキストだけでは頭に入りにくい部分を補えます。
WEB問題集
CloudLicenseのWEB問題集を使った合格者が周囲に何人かいました。解説が丁寧で、隙間時間にスマホで解けるのが強みです。ある合格者は「本番で全く同じ問題が30問くらい出た」と言っていましたが、年度や受験時期によって差があると思うので、過度な期待はしないほうがいいでしょう。
公式ドキュメントとBlack Belt
AWS公式のホワイトペーパーとBlack Beltのスライドは、サービスの深い理解に欠かせません。特に以下のテーマは出題頻度が高いので、一度は目を通しておくべきです。
- Well-Architected Framework
- AWS Organizations のベストプラクティス
- マルチアカウント戦略
- 災害対策のパターン(Pilot Light、Warm Standby、Multi-Site Active/Active)
- データ移行サービスの使い分け
DevelopersIOやサーバーワークスのエンジニアブログも、実際のユースケースを理解するのに役立ちます。模擬試験で間違えたサービスについてこれらのブログで検索すると、公式ドキュメントよりもわかりやすい記事が見つかることが多いです。
勉強の進め方
勉強期間は約2ヶ月半、トータルの勉強時間はざっくり100時間くらいでした。SAAを取ってから半年ほど経っていたので、基礎知識はある程度残っていましたが、SAP固有のサービスはゼロからのスタートです。
前半3週間——テキストでインプット
テキストを1周読みます。全部を完璧に理解しようとせず、どの分野でどんなサービスが登場するのかを掴むのが目的です。1周目で覚えられなくても気にしません。2周目以降で模擬試験と並行しながら定着させます。
読みながら気になったサービスはBlack Beltのスライドを開いて確認しました。特にOrganizations、Control Tower、SCPの関係性はテキストだけだとわかりにくいので、図を見ながら整理したほうがいいです。
中盤4週間——模擬試験を回す
ここが勉強の核になります。Udemyの模擬試験を解き、間違えた問題の解説を読み、関連するサービスを公式ドキュメントで調べる。このサイクルを繰り返します。
模擬試験は最終的に3周しました。
- 1周目:正解率55%前後。問題文の長さに慣れるのが目的
- 2周目:正解率70%台。間違えた問題に絞って解き直す
- 3周目:正解率85〜90%。ここまで来ると本番でも戦える
1周目はかなり辛いです。問題文を読むのに時間がかかるし、知らないサービスが次々に出てくる。心が折れそうになりますが、150問くらい解くと自分がどの分野に弱いかが見えてきます。
間違えた問題はNotionにキーワードだけメモしておき、数日後に解き直す。このループが知識の定着に一番効きました。答えを丸暗記するのではなく、なぜその選択肢が正解なのか、他の選択肢はなぜ不正解なのかを説明できる状態を目指します。
直前2週間——弱点の補強と総仕上げ
模擬試験で正解率が低い分野を集中的に潰します。自分の場合はデータ移行とマルチアカウント戦略が弱かったので、以下のサービスを重点的に復習しました。
- AWS Migration Hub、DMS、SMS、DataSync、Transfer Familyの使い分け
- Organizations、SCP、Control Tower、AWS RAMの連携パターン
- CloudFront + S3 + Route 53のマルチリージョン構成
直前1週間は新しい教材に手を出さず、既に解いた模擬試験の見直しに集中しました。正解した問題でも「たまたま合っていた」ものを洗い出して、確実に理解しているか確認します。
出題頻度が高かったテーマ
本番で体感的に多かったテーマを書いておきます。年度や試験バージョンによって変わるので参考程度に。
- Organizations / マルチアカウント戦略——SCP、AWS RAM、クロスアカウントアクセスの設計が繰り返し問われた
- 移行——オンプレミスからAWSへの移行パターン、6R戦略、Migration Hubの役割
- コスト最適化——Savings Plans、Reserved Instance、スポットインスタンスの使い分け。Compute Optimizerの活用
- 災害対策——RTO/RPOに基づくDR戦略の選択。Pilot LightとWarm Standbyの違い
- ネットワーク——Direct Connect、Transit Gateway、VPCピアリングのどれを選ぶか
- ストレージ——S3のストレージクラスの使い分け、EFSとFSxの棲み分け
Organizations周りは本当によく出ます。SCPで何を制御できて何を制御できないのか、AWS RAMでどのリソースを共有できるのか、Control Towerがやってくれることは何か。このあたりを曖昧にしたまま受けると得点が伸びません。
本番で効いたこと
問題文のキーワードに線を引く
画面上で物理的に線は引けませんが、頭の中で引きます。特に注目すべきワードは以下の通りです。
- 「最もコスト効率が良い」→ コストが最優先
- 「運用の負荷を最小限にする」→ マネージドサービスを選ぶ
- 「最も安全な」→ 最小権限の原則に沿った選択肢
- 「ダウンタイムを最小限にする」→ ブルーグリーンデプロイやマルチAZ構成
この一言で正解が変わります。2択で迷ったときは、問題文の要件に立ち返ってください。
時間配分を意識する
75問を180分で解く場合、1問あたり2分24秒。ESL延長を使っても1問2分48秒です。長考は1問3分まで、それ以上迷ったらフラグを付けて先に進む。この割り切りがないと後半の問題に手が回りません。
自分は65問まで解いた時点で残り30分でした。フラグを付けた問題が12問。見直しに使える時間は1問あたり2分半。ギリギリです。最初から時間を意識して解いていなかったら間に合わなかったと思います。
消去法を使い倒す
正解がわからなくても、不正解を消すことはできます。明らかに要件を満たさない選択肢、存在しないサービスの組み合わせ、コスト面で明らかに不利な選択肢。これらを先に消して、残った選択肢を比較するほうが正答率は上がります。
全くわからない問題が出ても、白紙にはしないでください。4択なら当てずっぽうでも25%、2つ消せれば50%です。SAPは合格ラインが75%なので、わからない問題で拾えた数点が合否を分けることは普通にあります。
合格者のスコアと勉強パターン
周囲の合格者や体験記から集めたデータを載せておきます。
| 前提 | 勉強期間 | 勉強時間 | スコア |
|---|---|---|---|
| SAA取得済み・AWS実務2年 | 1ヶ月 | 約50時間 | 804点 |
| SAA取得済み・AWS実務半年 | 2ヶ月半 | 約100時間 | 835点 |
| SAA取得済み・AWS実務3年 | 6ヶ月(通勤時間中心) | 約120時間 | 859点 |
| AWS未経験 | 3週間 | 約51時間 | 非公開 |
| SAA取得済み・ブランクあり | 1ヶ月 | 平日2時間/土日4時間 | 798点 |
| SAA取得済み・2回目受験 | 3ヶ月 | 非公開 | 864点 |
勉強時間は50〜120時間あたりに集中しています。ただしAWSの実務経験があるかどうかで、同じ勉強時間でも吸収速度がまるで違います。実務でOrganizationsやDirect Connectを触ったことがある人は、テキストの内容がすんなり入る。触ったことがない人は、サービスの存在意義から理解する必要があるので倍の時間がかかります。
4回受験してようやく合格した人の体験記も読みました。その人は「SAAレベルの理解で止まっていたのが敗因。各サービスの概要を知っているだけでは2択から先に進めない」と書いていました。SAPで求められるのはサービスの概要ではなく、どの場面でどのサービスを選ぶかという判断力です。
振り返り
受かって思うのは、模擬試験を繰り返すのが結局いちばん効率がいいということです。テキストでインプットする時間は全体の3割、残りの7割は模擬試験を解いて復習するサイクルに充てたほうがいい。
模擬試験の正解率が安定して85%を超えたら、本番でも戦えます。逆に70%台のまま受験すると、初見問題で崩される可能性が高い。本番は模擬試験よりスコアが50点くらい下がると見込んでおくのが安全です。
あと、ESLの30分延長は必ず申請してください。申請しなかった合格者が「あの30分があれば見直しに使えたのに」と後悔していました。不合格になった人は「時間が足りなかった」を理由に挙げることが多いです。たかが30分ですが、12問の見直しができるかできないかの差は大きい。
SAPを取ったからといって業務が劇的に変わるわけではありません。ただ、勉強の過程でAWSサービスの全体像が頭に入るので、設計の引き出しは確実に増えます。「このケースならTransit Gatewayよりも Cloud WANのほうが合うかもしれない」といった選択肢が自然に浮かぶようになる。その感覚を得られただけでも、勉強した価値はありました。
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