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【QCon San Francisco 2025 体験記】Netflix リードエンジニアが語る「コードを超えたシニアエンジニアの成長」

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Insurtechドメインの記事です

この記事は、Finatext Advent Calendar 2025 の23日目の記事です。

はじめに

サンフランシスコで毎年開催されているQConというカンファレンスに参加してきました!

私が所属しているFinatextグループでは、福利厚生の一環で、毎年十数人程度、海外カンファレンスへの参加をサポートしてもらえる制度があります。
参加申請が通ったら、参加したいカンファレンスに応じて個々人に予算が割り当てられ、カンファレンスの参加費用、渡航費、宿泊費、食費など、カンファレンス参加のために必要な費用で、かつ予算内であれば全てサポートしてもらえます。

私も今回会社から費用をサポートしてもらって、QConに参加してきました。

Qcon とは

QCon は、ソフトウェアエンジニアリングに関するメディア・コミュニティである InfoQ が主催するテックカンファレンスで、2026年はロンドンやボストンでも開催される予定になっています。

今回のカンファレンスの会場は Hyatt Regency, San Francisco で、 サンフランシスコ街を走る自動運転車 Waymo にも搭乗できたりと、たくさんの刺激を受けました。

この記事では、セッションの中から一つピックアップしてご紹介させていただきます。

セッションを紹介

私は、3日間で十数個のセッションに参加したのですが、その中でも、NetflixのリードエンジニアKasia Trapsch氏による「Beyond Coding: How Senior ICs Grow Influence and Drive Impact」という講演が大変興味深かったです。もしあなたがミドル・シニアエンジニアであれば、今日から試せるアクションプランも紹介されていたので、ぜひトライしてみてください。

引用している箇所は Kasia氏の話そのままで、他の箇所は私の主観が入ってるところもあります。

【まずは結論】講演のメッセージ

「シニアエンジニアの影響力は、自分が書くコードの量ではなく、他者の思考・判断・コミュニケーションにどう影響を与えるかで測られる」

Kasia氏が長いキャリアの中で気づいたのは、エンジニアが直面する最も困難な問題は、システムではなく人に関するものだということ。この講演では、コミュニケーション、前提、整合性、そして自分がもうコードを書かなくなった時に良い決定が続くよう判断をスケールさせる方法について語られていました。

3つの重要な柱とその連鎖

講演では大きく3つの概念が取り上げられました。これらは独立した概念ではなく、段階的に積み上がる連鎖になっています。

  1. Clarity(明確性): 複雑さをシンプルにし、パターンを認識し、他者が理解できるよう支援する。結果として個人レベルの信頼が構築され、人々があなたに相談しに来るようになる。
  2. Alignment(整合性): 個々のClarityを組織全体で整合させ、「us vs problem」の構図を作る。結果として組織レベルの前進力が生まれ、チーム間の協働が改善される。
  3. Scaling Yourself(自己のスケーリング): AlignmentとClarityを自己維持する仕組みに変換し、あなたがいなくても機能させる。結果として持続可能で指数関数的な影響力が生まれる。

1. Clarityが信頼を構築する

Clarityとは何か?

講演の中で明確な定義はありませんでしたが、私はClarityを「課題に対する答えを知っていることではなく、答えに辿り着くための道筋を知っていること」と理解しました。

なぜClarityが重要なのか

Kasia氏は講演でこう述べています。

「シニアエンジニアリングとは、すべての答えを知っていることではありません。過去に解決した問題のパターンを認識できるだけの十分な『傷跡(scar tissue)』を持っているということなんです」

特に強調されていたのは、次のポイントです。

「明確性が本当に行うことは、自信を持って話すことで影響力を得ることではありません。他者が明確に物事を見られるよう支援することで影響力を得るということです。あなたの明確性が人々の仕事を楽にすると気づいた時、人々はより早い段階であなたのところに来て、一緒に考え抜こうとし始めます。これがシニアエンジニアのリーダーシップです。権限によってではなく、信頼を獲得する論理的思考によってリードするということです」

課題に対する明確な理解、あるいは答えに辿り着くための道筋を持つこと。まずはこれがチームメンバーの信頼を得る上で重要だと感じました。

一方で、個人が明確な理解を持つことは第一歩ですが、それだけでは組織レベルの影響力にはならないという指摘もありました。

2. AlignmentがClarityを組織の力に変える

Alignmentとは何か?

Alignmentについても講演内で明確な定義があったわけではありませんが、私は「異なるロールや立場の人間が対立せず、同じ問題を解決している状態を作ること」と理解しました。

ClarityからAlignmentへの橋渡し

個々人は明確なゴールや道筋が見えているのに、それがチームや組織レベルですり合っていないと、物事がうまく前に進まなくなります。

Alignmentの実践:「Us vs Them」から「Us vs Problem」へ

Kasia氏が経験した事例として、機械学習モデルの拡張について意見が対立していたケースが紹介されました。

プロジェクトチームは「モデルは良い、もっと使うべき」、エンジニアリング側は「統合が散らかっている、まず安定化すべき」、プロダクトは「結果が欲しい」。議論は「us vs them」(エンジニアリング vs ビジネス)の構図に陥りかけていたとのこと。

そこでKasia氏は質問を変えました。

『これらの新しいユースケースを追加すべきか?』ではなく、『6ヶ月後に全員がこのモデルに自信を持てるようになるには何が必要か?』と聞きました。その質問が即座に口調を変えました。会話が us vs them から us vs problem に変わったんです

すると突然、全員が同じゴール(よりシンプルで進化しやすく、サプライズの少ないモデル)を望んでいることが見えてきたそうです。

私は、「Alignmentとは、合意を強制することではなく、メンバーが2つの異なる角度から同じ問題を解決しているという状況を見える化してあげること」だと思いました。

ここでAlignmentの重要性が明確になります。個人レベルのClarityがあっても、それが組織全体で整合していなければ、物事は前に進まない。Alignmentは、個々のClarityを組織レベルのモメンタムに変換します。

最後の課題は「あなたがいなくても、その明確性と整合性が維持されるか?」です。

3. Scaling Yourselfがなければ持続しない

シニアエンジニアが直面する壁

Kasia氏がシニアエンジニアが直面する課題としてよく見るものと話していたのは以下でした。

「ある時点で、全シニアエンジニアが壁にぶつかります。仕事が難しくなるからではなく、単に仕事の量が多すぎるからです。より多くの設計レビュー、会議、メモ、Slack会話。そしてある日気づくんです。自分の影響力が、自分が覚えてさえいない会議で人々が覚えている何かに依存していることに」

同じ技術的議論を繰り返す。同じトレードオフを何度も説明する。過去の決定の理由が失われ、また同じ議論をする。これでは持続不可能です。

自己スケーリングとはより多くをやることではなく、あなたがいなくても他者が良い決定を続けられるだけの十分な明確性を作り出すことだと話されていました。

今日から実践できること

Kasia氏が提案する具体的なアクションプランはシンプルです。

今週行った1つの意思決定について、たった3文で記録してみてください。

  1. なぜその決定をしたのか?
  2. 他に何を検討したか?
  3. どんなトレードオフを行ったか?

そして、他者が見つけられる場所に保存する。
偉大な戦略は不要で、必要なのは、ただ一つの小さな明確性の行為とのこと。

まとめ

シニアエンジニアが取り組むべきことは、より多くのコードを書くことでも、より複雑なシステムを設計することでもなく、以下の連鎖を理解し実践することで、自分が直接書くコードを超えて、組織全体に波及させることというのがKasia氏の一貫した主張でした。

  • Clarity:複雑さをシンプルにし、他者が理解できるよう支援する
  • Alignment:個々の明確性を組織全体で整合させ、協働を生み出す
  • Scaling Yourself:自分がいなくても機能する仕組みを作る

所感

私の考え方としては、「実際に手を動かしてやることにこそ意味がある」というのがベースにありつつ、Kasia氏のシニアエンジニアの成長論は、組織のアウトプットをスケールする上でとても重要な考え方だと感じたので、現場でのアウトプットに取り入れてみようと思いました。

Kasia氏
「人をスケールさせましょう、システムだけでなく。なぜなら、そのうち一方は実際に耳を傾けてくれるから」

このセッション以外にも生成AI関連のセッションなど、大変興味深いセッションがたくさんあり、日本人も数人いたので、参加できるチャンスがあれば、ぜひ勇気を出して行ってみてほしいです!

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