マナビDXクエストのPoCが2年超の継続プロジェクトに発展した話
マナビDXクエストとは
マナビDXクエストは、経済産業省が提供するデジタル人材育成プログラムです。実際の企業データを用いたケーススタディ教育と、地域の中小企業と協働して課題解決に取り組む「地域企業協働プログラム」で構成されています。
私は2023年度の地域企業協働プログラムに参加し、クライアント企業の課題解決に取り組みました。
はじめに
マナビDXクエストで、クライアント企業の古紙リサイクルステーション(RPS)とリサイクルポイントアプリのデータを活用したPoC分析を行いました。
このPoCは単なる実証実験で終わらず、2023年11月のプログラム開始から2年以上にわたり、チームとしてクライアント企業側に入り込んでプロジェクトを継続しています。 マナビDXクエストの中でもかなりユニークな事例ではないかと思います。
本記事では、マナビDXクエスト期間中のPoCの概要と成果、そしてプログラム終了後も継続しているプロジェクトの展開についてご紹介します。
PoC期間(2023年11月〜2024年2月)の取り組み
分析の背景と目的
古紙リサイクルステーションでは、容器が満杯になると回収できず、機会損失が発生します。マナビDXプログラム期間中のPoC(実現性検証)として、リサイクルポイントアプリとRPSデータを活用した施策の実現性を検証しました。
具体的には以下の2つに取り組みました:
- RPS充填率予測AIの構築 - 「いつ回収に行くべきか」を予測
- ランクシステム再構築 - ランクアップ条件の最適化
使用したデータ
以下のデータを組み合わせて分析しました:
- ポイント履歴 - ユーザーの利用記録
- ユーザー情報 - 属性や居住地
- 天候データ - 気温、降水量など
分析手法と結果
充填率予測モデル
LightGBMを用いて、充填率を予測するモデルを構築しました。
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| 予測誤差(RMSE) | 約10% |
| 精度評価 | 回収タイミングの意思決定に十分な精度 |
回収効率向上に寄与可能と判断しました。

充填率予測モデルの概要(当時の発表資料より)
ランクシステム再構築
AI予測の精度不足によりパーソナライズは断念しましたが、AIに依らない適切なランクアップ条件のアイデアを提示しました。
逸失利益の算出
容器が満杯で回収できなかった場合の年間逸失利益を算出し、追加回収による収益改善効果を試算しました。
PoCの成果と課題
成果
- 充填率予測モデルにより、回収タイミングの最適化が可能であることを実証
- 逸失利益の定量化により、ビジネスインパクトを可視化
- ユーザークラスタリングによる利用パターンの把握
課題
- ランクのパーソナライズにはAI予測精度が不足
- データドリブン経営を実現するにはデータ基盤の整備が必要
PoC以降のプロジェクト展開
PoCの成果を踏まえ、マナビDXクエスト終了後もプロジェクトを継続しています。現在はクライアント企業側の立場で開発ベンダと折衝しながら、データドリブン経営の実現を目指しています。
目指すデータ基盤
データ拡充(GA4連携)
リサイクルポイントアプリのユーザーIDをGA4に連携することで、アプリ内の行動データ(どの画面を見たか、どのボタンを押したか等)とアプリDBのデータ(ポイント履歴、ユーザー属性等)を紐づけた分析が可能になります。これにより、ユーザー行動の全体像を把握し、より精度の高いマーケティング施策の立案ができるようになります。

GA4連携によるデータ拡充のイメージ
データ基盤構築(Snowflake/データレイクハウス)
Snowflakeとデータレイクを導入することで、大量データの高速処理と柔軟な分析環境を実現します。従来のMetabaseではタイムアウトしていたような複雑なクエリも高速に実行でき、AI/機械学習モデルの構築やリアルタイム分析といった高度なデータ活用が可能になります。
役割分担
- 開発ベンダ: アプリデータ転送、データレイク構築、オプトアウト機能の実装
- 我々(マナビDXチーム): GA4によるユーザー行動データ収集、Snowflakeを活用したデータレイクハウス構築、Metabaseダッシュボード保守
| フェーズ | 期間 | 主な活動内容 |
|---|---|---|
| 初期準備 | 2024年6月〜7月 | プロジェクト開始、GA4調査、データ所在調査 |
| フェーズ1 | 2024年秋〜2025年夏 | 計画策定・要件定義、GA4ユーザーID連携仕様書作成 |
| フェーズ2 | 2025年秋〜冬 | GA4イベント実装、Snowflake構築準備、Metabase保守 |
| フェーズ3 | 2026年1月〜3月 | データ基盤完成、次期計画策定 |
| フェーズ4 | 2026年4月以降 | 高度なデータ活用、AI活用、業務自動化 |
初期準備(2024年6月〜7月)
プロジェクト開始にあたり、短期・中長期の目標を定義しました。
- 短期目標(CY2025年): GA4活用とBIダッシュボード構築 → 現在進行中
- 中長期目標(CY2026年以降): 古紙リサイクルステーション全体のデータ基盤構築(データドリブン経営の足掛かり)
具体的な活動として、GA4調査、プライバシーポリシー草案作成、関連法令調査、データ所在調査、Metabase調査、目的・目標設定のためのヒアリングを実施しました。
フェーズ1(2024年秋〜2025年夏)
計画策定・要件定義と初期調査を行いました。
- プロジェクトの目的とスコープを確定
- データ拡充(GA4)におけるユーザーID連携の要求仕様書作成
- データ基盤構築に向けた個人情報関連の調査(GDPR/CCPA/国内法改正後の対応)
- 開発ベンダとの要件定義書、マスタースケジュールの共有・レビュー
- 開発ベンダの初期見積もり工数を削減するための指摘と修正協議
フェーズ2(2025年秋〜冬)
実装の本格化と課題解決に取り組みました。
データ拡充(GA4)
- 顧客と連携し、カスタムイベントの候補洗い出しと検証環境での優先度の高いイベントの実装に着手
- リサイクルポイントアプリからGA4へのユーザーID・イベント連携を推進
データ基盤構築
- Snowflake構築に向けたテーブル定義やデータ変換ツール(dbt)の採用検討
- 既存DB設計書からのSQL文構築など先行着手作業を実施
Metabase保守
- グラフのエラー、タイムアウト問題(1分・3分設定)の調査
- SQLチューニング、開発ベンダとの連携を重点的に実施
対外業務
- 開発ベンダとの定例を毎週に調整
- データ転送作業遅延に伴うスケジュール(ユーザーID連携の実装が2月以降に延期)についてフォロー
フェーズ3(2026年1月〜3月)
データ基盤の完成と次期計画の策定を進めています。
データ拡充(GA4)
- GTM上の計測タグの重複問題への対応
- GA4カスタムイベントの本番環境への移行に向けた動作テストと課題解決
データ基盤構築
- アプリ移行に伴うテーブル定義の更新に対応したSQL更新
- データ基盤完成に向けた最終調整
次期計画(2026年4月以降)に向けたブレストテーマ
- データ分析担当者の必要性
- AIを活用したデータ分析(Snowflake上のAIモデル)
- 業務自動化(AIブラウザ)
フェーズ4(2026年4月以降・計画)
高度なデータ活用とチーム体制の再構築を予定しています。
チーム運営
- 報酬体系を時給制から施策と報酬を明確化した月額制へ移行
- メンバーの活動休止、稼働減など体制見直しを実施予定
データ分析の高度化
- データ基盤を足がかりとして、より専門的なデータ分析(例:AIモデルの活用)
- クライアント企業全体へのデータ基盤展開の可能性を検討
長期目標
- 非技術者でも利用可能なデータマート整備
- アプリデータとアプリ行動データを紐づけた分析の実現
おわりに
マナビDXクエストでのPoCをきっかけに、回収タイミングの最適化と収益改善の可能性を示すことができました。
現在はデータドリブン経営の基盤構築に取り組んでおり、2026年4月以降はAI活用や業務自動化といった高度なデータ活用フェーズへ進む予定です。
マナビDXクエストで得た知見と経験が、実際のビジネス価値創出につながっていることを実感しています。
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