狭ピッチJSTコネクタで「メスコネクタ付きケーブル」を作ろう!
はじめに
こんにちは。Fairy Devicesのhikariです。
最近は機器のはんだ付けをする機会が増えています。
ハードウェアを作っていると、どうしてもケーブル類が増えてきます。
評価用ボード、マイコン基板、センサ基板……と、構成が複雑になりがちです。
当初はブレッドボードで作成していたものも、デモ用途で使う段階になると、次のような要求が出てきます。
- ブレッドボードを使わず、できるだけコンパクトにしたい
- 新たに基板を起こさず、評価ボード同士を直接接続したい
- 必要に応じてすぐに着脱できるようにしたい
- ケーブルの取り回しを良くしたい
こうした理由から、
基板側にはケーブルを直接はんだ付けし、反対側をコネクタにして、ケーブル同士を接続したい
という場面が頻繁に出てきます。
しかし、ここで必ず直面する問題があります。
既製品は「オスコネクタ付きケーブル」ばかり問題
秋月電子などで販売されている小型系JST系コネクタを見てみると、
次のような構成になっていることがほとんどです。
- ケーブル付きで販売されているのはオスコネクタ
- メスコネクタ側は基板実装用コネクタのみ
このため、基板と基板をケーブルで接続しようとすると、
- メスコネクタ付きのケーブルが必要になる
- しかし、そのようなケーブルは市販されていない
- 結果として、自作するしかない
という結論に行き着きます。
※JST-SM系コネクタだとオスメス自作できますが、2.5mmピッチなので、多ピンにするとコネクタサイズが大きくなってしまうので、今回は小型ピッチ(2.0mm以下)で検討しました。
コネクタ形状について
JSTコネクタは、メスコネクタ側には、オスピンが入っていて、
オスコネクタ側には、メスピンが入っています。
- メスコネクタ:金属ピンが突き出ている側 (オスピン)
- オスコネクタ:金属ソケット(受け)になっている側 (メスピン)
となり、呼び方が逆転するため注意が必要です。

JST-SHメスコネクタ (オスピン)

JST-SHケーブル付きオスコネクタ (メスピン)
圧着すればいい? → そもそも圧着が存在しない
メスピンはケーブルと圧着されてオスコネクタのハウジングの中に入っています。
それならオスピン側も圧着すればいいのでは?
と考えがちですが、ここには大きな誤解があります。
JSTのオスピンには圧着端子が存在しない
JSTの狭ピッチコネクタ(PH / ZH / SH 系)では、
- メスピン:圧着端子が存在
- オスピン:圧着端子が存在しない
という仕様になっています。
オスピン(メスコネクタ)は、
- 基板実装前提
- リフロー/フローはんだ想定
- 機械的強度は基板で確保
という設計のため、
ケーブル直結はメーカー想定外の使い方になります。
結果として「はんだ付け」しか選択肢がない
まとめると、
- オスピン用の圧着端子は存在しない
- 市販のメスコネクタ(オスピン)ケーブルもほぼない
- 正規手段でケーブル化できない
結果として、
メスコネクタのオスピンにケーブルを直接はんだ付けする
という方法しか残りません。
そして何度も何度もチャレンジしましたがハウジングを溶かしてしまって、
メスコネクタを作成できずに失敗していました。
そこで考えました。
それぞれの融点は何度?
JST系コネクタのハウジング素材はナイロン66(PA66) です。
融点は、約 255〜265℃ です。
一方、一般的なはんだこてのこて先温度:約350℃
……普通にやれば、ハウジングは溶けますね。。。
ちなみに、鉛フリーはんだの融点は217~219℃ のようです。
発想の転換:はんだごての温度を下げてはんだ付けできないか?
そこで考えました。
ナイロン66の融点以下ではんだ付けできればハウジングは溶けないのでは?
温度調節可能なはんだごてを使い、実際に温度を変えて試してみました。
温度実験の結果
-
200℃
- はんだが溶けない
-
250℃
- はんだは溶ける
- こて先でハウジングに触れると、若干軟化するが
350℃のようにドロドロにはならない
-
350℃
- はんだはよく溶ける
- こて先でハウジングに触れるとドロドロになる
→ 250℃が実用ライン
※ 面積の広い基板などへのはんだ付けは、250度では温まりが悪く難しいようです。
実際の作業手順
1. ケーブルとメスコネクタに仮はんだ
- ケーブル側
- メスコネクタ側のピン
それぞれに250℃で仮はんだを行います。

📷 ケーブルとオスピンに仮はんだした状態
JST-SH 1.5mmピッチ
2. 仮はんだ同士を接合
仮はんだ部分を合わせ、250℃で短時間だけ加熱
- ハウジングへのダメージ最小
- 端子ズレも起きにくい

📷 ハウジングを保持したままはんだ付け
3. 熱収縮チューブで保護
端子むき出しのままだと、
- ショートしやすい
- 機械的に弱い
ため、熱収縮チューブで
- 絶縁
- 応力分散
を行います。

📷 熱収縮チューブで補強した完成状態
ピンを抜いてはんだ付けする方法は失敗した
当初は、
- ピンをハウジングから抜く
- はんだ付け
- 再度差し込む
という方法も試しました。
この方法だと温度を気にしなくてもはんだ付けが容易です。
しかし、
- ピンを一度抜くと保持力が弱くなる
- 数回の抜き差しでピンごと抜ける
ため、この方法は断念しました。
秋月で入手しやすい対象コネクタ
この方法と相性がいい、秋月で手に入る定番コネクタも挙げておきます。
- JST-PH 系(2.0mmピッチ)
- JST-ZH 系(1.5mmピッチ)
- JST-SH 系(1.0mmピッチ)
ピッチが小さくなると、ハウジングが小さいので
低温はんだ付けの効果が特に効いてきます。
コネクタを使って接続

📷 コネクタ同士の接続
JST-ZH 系(1.5mmピッチ)

📷 機器へ組み込んだ時のコネクタの接続
JST-XH 系(2.5mmピッチ)
⚠ 注意事項(重要)
- 本記事の方法は メーカー非推奨
- 評価・試作・一時用途向け
- 振動・量産・長期信頼性用途には不向き
量産や製品用途では正規のコネクタ構成を使ってください。
おわりに
- 「はんだ付けの温度は高ければ良い」という、ともすれば固定観念になってしまいがちな考えを一度手放してみる
- 樹脂の融点という物理的な特性に目を向ける
このシンプルな「発想の転換」が、私たちエンジニアが日々直面する「市販品がない」という壁を乗り越えるための、ささやかながらも確実な「現実解」へと繋がりました。
試作の現場では、必ずしも公式ルートだけでは解決できない課題にぶつかるものです。
今回の低温はんだ付けの知見が、同じように様ピッチコネクタのメス側ケーブルがなくて困っている方々の、ちょっとしたブレイクスルーの一助となれば幸いです。
ぜひ、皆さんの電子工作ライフに、この小さな工夫を取り入れてみてくださいね!
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