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JSAI2025参加報告

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JSAI2025参加報告

今年5/27〜5/29に大阪国際会議場(グランキューブ大阪)にてJSAI2025(第39回人工知能学会全国大会)が開催されました。
エクサウィザーズグループから5名(小島啓明、隅田大勇、椎久翔太、張馳、小林広明)が参加しました。小林の筆が遅く、記事の公開が遅くなってしまいましたが、JSAI2025の参加報告をさせていただきます。

JSAIは、「誰もが AI 研究の最前線にアクセスできる」を理念とした、人工知能についての国内最大の学会です。今年は1100件を超える発表と4900名を超える参加者が集まる過去最大の大会となりました。

以下では印象に残ったものをいくつか紹介しますが、参加者の一人、張馳はこの大会で学生時代の研究成果を発表しました:

Automatic Psychological Counseling Classification Using BERT-Based Models and LLM-Driven Data Augmentation

この研究は心理カウンセリングへLLMを応用するものです。よろしければこちらもご確認ください。

全体感

東京大学の鳥海教授が学会発表についてデータ分析した記事を書かれています。事実ベースでJSAIの全体感を把握するにはこちらが参考になると思います。

参加者の一人である小林の主観的な印象ですが、JSAIはこれまで「いかにAIを作り出すか」がメインテーマであったと思うのですが、今年は「AIといかに付き合うか」を題材にしたセッションが多く見られたように思います。タイトル例をいくつか以下に挙げますが、これらを眺めるだけでも少し雰囲気が伝わるのではないでしょうか。

これら以外にも、AIと人間の関係性を考えるセッション・発表が多くありました。AIと呼ばれる多様な技術の社会実装が現実に進んでいること、並びにAGI/ASI(汎用人工知能/超人工知能)が今後現れる前提での議論が進んでいることを感じました。

もちろん、現在でも「AIをいかに作るか」というテーマは最重要であり、それらの発表も多くありました。以下では個々の発表の中で参加者の印象に残ったものをいくつか紹介します。

印象に残った発表

[PS-1] バディAIがいる世界へ

栗原聡会長によるオープニングの基調講演です。
AIの歴史と3つのブームから始まり、道具型AIが自立性を獲得するリスクに言及され、「おもてなし」のようなあり方が望ましいという話がありました。人間とのインタラクション設計に他者推定は重要であり、興味深い内容でした。全体的に未来に対する懸念を含む話題も多くありましたが、AIと人間の関係性を考える上での重要な視点を提供いただきました。

[TS-2] 深層基盤モデルの数理

東京大学の鈴木大慈教授によるチュートリアル講演です。こちらの講演資料はSpeaker Deckで公開されています。
ニューラルネットワークが線形モデルやカーネルモデルなど従来の他手法と異なる点は、学習する関数自体も学習可能であるという特徴学習の有無にあることやTransformerの利点、各種のスケーリング則などについて、数理的な観点から解説されました。
事前学習におけるスケーリングの限界が近づき、事後学習や推論時のスケーリング則の重要性が増した今、それらを行うユーザーサイドの私たちにとって筋の良い実験・利活用を行うために理論的な理解が重要になるでしょう。

[PS-2] アバターと未来社会(石黒 浩)

大阪大学の石黒浩教授による招待講演です。
人間型ロボットを用いて人間の高次の認知機能を理解する試みについて講演されました。高齢者や障害者を含む、誰もが多数のCA(サイバネティックアバター)を用いて能力を拡張し、様々な活動に自在に参加できる社会の実現を目指すムーンショット型研究開発事業が中心的な話題でした。
より具体的にはアバター技術の社会実装を行うAVITA株式会社の活動や、現在開催中の万博でプロデュースされたシグネチャーパビリオン「いのちの未来」の紹介がありました。アバター技術は、AIと人間、あるいは近い将来の人間同士の関係性を考える上で非常に興味深いものでした。

[OS-1a-01] (OS招待講演)オープンデータ等をAI開発に利用する際のライセンスの読み解き方と、研究開発成果物公開の際のライセンス設定の考え方

STORIA法律事務所の柿沼太一弁護士によるOS招待講演です。
AI開発で利用するデータや成果物は、著作物か非著作物かを区別することが重要であると話されました。この区別により、ライセンスの解釈や違反時の影響が異なるとのことです。またライセンスは「許諾された利用行為」と「利用する場合の条件・義務」で構成される話や、CCライセンス、ODCライセンス、OSSライセンスなどについて解説されました。
関連して、2025年7月に日本加除出版から『AIと法 実務大全』(柿沼・杉浦 共著)が刊行予定です。AI開発における法的な側面についての理解を深めるために参考になると思います。書籍内容の一部がブログで公開されています。

[OS-43-02] (OS招待講演)「道具屋」ワコムが挑むモノとコト

株式会社ワコム CEO 代表取締役社長 井出信孝 氏によるOS招待講演です。
Preferred Networks、CLIP STUDIO PAINT(セルシス)、ワコムの三社共同プロジェクトである「KISEKI ART」の取り組みについて紹介されました。AIで創作の軌跡を可視化する試みで、AIの自動生成に対して人間が書いたものだと証明しうるという点が画期的でした。
「完成した作品だけでなく、その制作過程自体にも独自の価値があるのではないか」「人間が手ずから道具を握って何かを作り出す「行為そのもの」に、人の心を動かす秘密があるのではないか」との言葉が印象的でした。

[GS-6-02] 「生きづらさ」を抱える人のチャット相談へのLLMの適用可能性

横浜市立大学の山本彩弥加さんによる発表です。
あなたのいばしょチャット相談のデータセットを用いて、発表者らは教師あり微調整 (SFT) と直接パフォーマンス最適化 (DPO) という 2 つのアライメント手法を使用した際の、ベースモデル Japanese-gpt-neox-3.6b の改善について報告されました。
SFTの方がBERTスコアが高いものの、丁寧語、傾聴・受容表現、危険な表現などのルールベースでの評価はDPOの方がパフォーマンスが高いことを報告されました。
これはおそらく、理性と感性の間にジレンマがあるということを意味していると思います。心理チャットボットは、より正確な表現をするべきでしょうか、それともより心温まる表現をするべきでしょうか?

[OS-34-02] 大規模言語モデルエージェントによる繰り返し寄付ゲームでの戦略進化

理化学研究所の堀部和也研究員による発表です。
進化寄付ゲームを行うLLMエージェントの振る舞いに対する分析研究でした。先行研究において、いくつかのモデルの中でClaudeのみが協力的な振る舞いを進化させるという結果が得られており、その結果に関する分析がかなり豊富に行われていました。参加者の一人である椎久の研究グループ(Griffiths, Tらの流れを汲む)の論文をいくつか引いており親近感のある内容だったとのことです。
この研究に限らず、LLMエージェントの意思決定を観察するという研究、テキスト解析だけでなく、エージェントのふるまいを基に分析するタイプの研究は今後重要性が増していくと思われます。

[GS-10-03] 大規模言語モデルを用いた自然言語入力による看護師勤務表生成手法の検討

Ubie株式会社の太田満久さんによる発表です。
数理最適化分野で有名なナース・スケジューリング問題に対して、LLMを用いたモデリングについての試みでした。2つの方法について検証されています。
直接定式化と呼ぶ、LLMが数理最適化ソルバーを利用するPythonコードを生成させる方法を最初に示されました。LLMは多くの制約を無視する傾向があるため、結果は良くなかったとのことでした。
続いて分離アプローチと呼ぶ、LLMに制約条件を表すデータクラス(中間表現)を生成させる方法について報告されました。このアプローチの利点は、現場の方が生成結果について良し悪しを判断しやすくなることにあります。結果として、GPT-4o は複雑なルールの解釈を間違えることがある点や、直接定式化と同様に制約を無視する場合があったことなどが報告されていました。

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