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【特許・知財業務】特許・知財業務の基本まとめと、知財業務とLLMとの相性について

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【特許・知財業務】特許・知財業務の基本まとめと、知財業務とLLMとの相性について

こんにちは、株式会社エムニでPM兼、ソフトウェアエンジニア/LLMエンジニアをしている、まさぴょんです🐱
今回は、個人的に携わることが多い分野である特許・知財業務関連のドメイン知識を整理していきます📝

はじめに

エンジニアやプロダクト開発に関わる人にとって、「特許」や「知財業務」は遠い世界のように見えて、実は 製品リリースの安全性自社技術の権利化 に直結する重要なテーマです。
本記事では、「これから知財業務に関わる」「FTO 調査を依頼する立場になった」「自社プロダクトの特許出願を検討している」といった方向けに、特許・知財業務の基礎について整理してみました。
また、後半では 知財業務と LLM(大規模言語モデル)の相性 についても考察しています。

なお、この記事は、自分の Zenn スクラップにまとめてきた知財業務の基本知識を、加筆修正したものになります📝

https://zenn.dev/manase/scraps/7fc48414cc60a4

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https://zenn.dev/manase/scraps/87fbcf90827f29

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https://zenn.dev/manase/scraps/e4d62c6e04f14d

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1. 特許調査の種類について

特許調査は、目的や用途・タイミング(出願時か事業開始時か)によって、何を実施すべきかが大きく変わります。
主に以下の 4 種類に分類されます。

# 調査名 目的 主なタイミング
1 先行技術調査(出願前調査・新規性調査) 出願前に類似技術を調べ、権利化可能性を判断 特許出願の直前
2 侵害防止調査(クリアランス調査・FTO 調査) 製品化前に他社権利を侵害しないか確認 開発初期〜販売開始前
3 無効資料調査(公知例調査) 他社の特許を無効化する資料を探す 警告・係争時など
4 技術動向調査(パテントマップ作成) 業界の特許出願状況を俯瞰・分析 戦略立案時

それぞれ、もう少し詳しく見ていきます。

1-1. 先行技術調査(出願前調査・新規性調査)

  • 目的: 特許出願の前に、類似した発明がすでに世の中(特許公報や文献)に出されていないかを確認する。
  • 効果: 無駄な出願を防ぎ、既存の技術を踏まえて自社発明をブラッシュアップできる。

1-2. 侵害防止調査(クリアランス調査・FTO 調査)

  • 目的: 新製品の開発・販売において、他社の有効な特許権(登録特許)を侵害しないかを確認する。
  • 効果: 販売差し止めや損害賠償などの事業リスクを未然に回避する。

1-3. 無効資料調査(公知例調査)

  • 目的: 自社事業の妨げとなる他社の特許について、その特許が「登録されるべきではなかった(新規性・進歩性がない)」ことを証明する文献(証拠)を探す。
  • 効果: 異議申し立てや無効審判を行い、特許を無効化することで事業活動を安定させる。

1-4. 技術動向調査(パテントマップ作成・情報収集)

  • 目的: 特定の技術分野における公開された特許情報を集計・分析し、研究開発の方向性や競合他社の動向を把握する。
  • 効果: 参入すべき技術分野の特定や、自社の技術戦略の立案に役立てる。

1-5. その他の調査

  • ステータス調査・ウォッチング: 特定の企業が出願している技術や、特定の特許の権利が現在も有効かどうかを定期的に確認する。

1-6. 調査種類と目的別の精度目安

調査種類 目的 精度目安 コメント
先行技術調査 特許取得可能性(新規性・進歩性があるか)の確認 70% 程度 新規性・進歩性を少しでも主張できれば OK
侵害予防調査 既存特許を侵害していないかの確認 95% 程度 抜け漏れが許されない
無効資料調査 他社の有効な特許を無効化できるかどうかの確認 変動あり 無効化の目的や重要度による

2. FTO 調査(クリアランス調査)の詳細

FTO 調査(Freedom to Operate:自由実施調査)は、新製品やサービスを市場投入する前に、他社の特許権や意匠権を侵害していないか確認する「侵害予防調査」です。

  • 開発・販売時の訴訟や損害賠償リスクを回避し、安全に事業を行うために実施される、主に特許事務所や専門業者に依頼する重要なプロセス。
  • スタートアップや技術競争が激しい分野では、特に必須となる調査。

2-1. FTO 調査の概要とポイント

  • 目的: 自社独自の製品でも、他社が先に特許を取得していれば侵害となるため、そのリスク(障壁特許)を早期に特定・回避する。
  • 実施タイミング: 開発の初期〜試作段階。仕様変更が可能な時期に行うのが理想的。
  • 主な調査対象: 特許、実用新案、意匠(製品デザイン)。
  • 方法: AI ツールなどを活用した特許検索や、専門家による IPC・F ターム(特許分類)を用いた精査。
  • 依頼先: 弁理士や専門の調査会社。
  • メリット: 訴訟による製品回収や販売停止、巨額の損害賠償リスクを未然に防ぐ。

2-2. 調査プロセス

  1. 製品・技術要素の分析: 対象製品の技術的特徴(クレームの対象)を整理。
  2. 特許・意匠調査: 公開公報などから関連特許を検索。
  3. リスク評価と対応: 侵害可能性のある特許(障壁特許)があれば、設計変更やライセンス交渉を検討。

2-3. 「FTO 調査」と「クリアランス調査」の違い

実質的に、両者は 同じものを指す言葉(新製品が他社の特許・意匠権を侵害していないか確認する「侵害予防調査」)です。

  • FTO 調査: 特許侵害を主とした「機能面」の調査によく使われる。
  • クリアランス調査: 意匠や商標を含めた「製品全体」の調査で使われる傾向。
観点 FTO(Freedom To Operate) クリアランス
由来 Freedom To Operate(事業遂行の自由) Clear(権利の障害を取り除く)
文脈 特許の機能面 意匠・商標を含む製品全体
目的 他社の権利を侵害しているリスクの未然防止 同上

実務上はどちらも「自社製品が安全に売れるか」を調べる目的で行われるため、明確に区別しなくても問題ありません。

2-4. FTO 調査と出願前調査(先行技術調査)の違い

特徴 FTO 調査(Freedom To Operate) 出願前調査(先行技術調査)
主な目的 他社権利の侵害回避(安全確認) 特許取得可能性(新規性・進歩性)の判断
何を調べる? 自社の製品/技術が他社の有効な特許に抵触しないか 自社の発明に類似した過去の特許や文献があるか
調査対象 現在有効な(生きている)他社の特許権 世界中の全公開文献(特許、論文、公開公報)
いつやる? 製品の企画・開発〜販売開始前 特許出願の直前
別名 クリアランス調査、侵害予防調査 特許性調査、先行技術調査

ざっくり言うと、「安全に製品を売るための調査(FTO)」「特許を登録するための調査(出願前)」 という、目的の明確な違いがあります。

3. 特許の主なステータスと、調査の目的による違い

3-1. 特許の主なステータス

特許出願から権利化、そしてその後に至るまで、特許(または特許出願)は主に以下のステータスに分類されます。

  • 出願中(審査係属中): 特許庁に出願され、審査を待っている、または現在審査が行われている状態。出願から 1 年半が経過すると「公開特許公報」が発行される。
  • 登録(権利存続中): 審査を通過し、特許料を納付して特許権が設定登録され、現在も有効に存続している状態。
  • 拒絶: 審査の結果、特許の要件を満たさない(すでに似た技術がある等)と判断され、特許にできないことが確定した状態。
  • みなし取下・放棄: 出願人が途中で手続きをやめたり、期限内に必要な手続き(審査請求など)を行わなかったため、出願が取り下げられたものとみなされたり、放棄された状態。
  • 消滅: 一度登録されて特許権が発生したものの、その後「存続期間(原則 20 年)の満了」「特許料(年金)の未納」「無効審判による無効確定」などの理由で、権利が失われた状態。

3-2. 先行技術調査で確認すべきステータス

結論から言うと、先行技術調査においては 「すべてのステータス」 の特許(公報)を確認する必要があります。

特許法上、「一度でも公報として公開された情報」は、その特許権が現在、有効か無効かに関わらず、すべて公知技術(先行技術)となります。

したがって、以下のようなケースでも、出願前調査の対象として確認が必要です。

  • 拒絶された出願の公開公報
  • すでに権利が消滅した昔の特許公報
  • 出願人が途中で取り下げた出願の公開公報

これらに記載されている技術と同じ、あるいは容易に思いつく技術を新たに出願しても、特許庁の審査では引例として「拒絶」されます。

3-3. 調査目的によるステータスの違い

調査目的 確認対象ステータス 理由
先行技術調査・無効資料調査 すべてのステータス 発明が新しいか、他社の特許を無効にできる過去の文献はないかを探すため
侵害予防調査(FTO・クリアランス) 登録(存続中)・出願中 のみ 「消滅」「拒絶」が確定したものは権利が存在せず、侵害のしようがないため

4. 特許の構成要素と構造

特許は、技術的特徴(構造、方法、材料等)を保護する 「特許請求の範囲(クレーム)」 と、その詳細を説明する 「明細書」 等で構成されます。

4-1. 特許出願書類の 5 つの構成要素

  1. 願書: 出願人や発明者の情報。
  2. 特許請求の範囲(請求項/クレーム): 権利範囲を確定する最も重要な部分。発明の核心となる必須構成要素(部品、ステップ等)を記載。
  3. 明細書: 発明の詳細な説明。以下の項目を含む。
    • 【発明の名称】
    • 【技術分野】
    • 【背景技術】
    • 【発明が解決しようとする課題】
    • 【課題を解決するための手段】
    • 【発明の効果】
    • 【図面の簡単な説明】
    • 【符号の説明】
    • 【発明を実施するための形態(実施形態)】
  4. 図面: 構造や処理手順を視覚的に理解するための図。
  5. 要約書: 発明の要点を約 400 字以内でまとめたもの。

4-2. 特許(構造特許)の構成要素(技術的特徴)

機械装置などの「物」の特許では、以下の要素で発明が定義されます。

  • コンポーネント(構成要素): 装置を構成する部品、部材。
  • 構造・配置: 部品間の連結関係や位置関係(上下、左右、嵌合関係など)。
  • 材料・特性: 使用される物質やその物理的・化学的性質。

4-3. 特許の構造と役割

  • 上位概念から下位概念へ: 広い権利から、具体的な制限を加えた狭い権利へ、複数の請求項(請求項 1, 2 ...)で構成。
  • 請求項の必須構成要件: 特許侵害かどうかの判断(構成要件充足性)は、特許請求の範囲に記載されたすべての必須要素を含んでいるかどうかが基準。
  • 変形例(実施形態): 特許の権利範囲を補完し、他の要素への置き換えや応用可能性について記述。

特許が成立するためには、産業上利用でき、新しく(新規性)、容易に考え出せず(進歩性)、先に出願されている(先願) などの要件を満たす必要があります。

4-4. 請求項(クレーム)とは

特許の請求項(クレーム)とは、特許出願において 「保護を受けたい発明の技術的範囲」 を文章で具体的に定義した項目です。

  • この記載に基づいて特許の権利範囲が確定され、審査や権利行使の対象となる。
  • 特許請求の範囲は、特許権の効力が及ぶ範囲を公示する役割も果たす。

請求項の種類

  1. 独立請求項: 他の請求項を引用せず、独立して技術的特徴を記載するもの。
  2. 従属請求項: 独立請求項(または他の従属請求項)を引用し、要素を追加・限定して記載するもの。

記載の注意点

  • 明確化・簡潔性: 明確な言葉で、簡潔に記載しなければならない。
  • 根拠: 発明の詳細な説明に記載されている内容に限られる。
  • 符号: 図面で使用した符号をカッコ書きで併記する場合がある。

5. 上位概念と下位概念

特許における「上位概念」と「下位概念」は、技術の包括的な広さを示す概念です。広い権利(上位)を狙いつつ、審査を通すため具体例(下位)を並列するのが基本戦略になります。

5-1. 上位概念(Broad Concept)

  • 特徴: 権利範囲が広い(多くのバリエーションをカバーできる)。
  • メリット: 第三者が少し仕様を変えても特許侵害を主張しやすい。
  • デメリット: 先行技術と重なりやすく、審査で拒絶されやすい。
  • : 「筆記用具」「有機溶媒」「金属製治具」「機械的固定手段」

5-2. 下位概念(Narrow Concept)

  • 特徴: 権利範囲が小さい(ピンポイントの技術のみカバー)。
  • メリット: 具体的な技術なので、先行技術との違いを主張しやすく、権利化率が高い。
  • デメリット: 競合他社が容易に回避できる可能性がある。
  • : 「鉛筆(筆記用具の下位)」「エタノール(有機溶媒の下位)」「ネジ(固定手段の下位)」

5-3. 特許戦略における関係

特許請求の範囲(クレーム)では、これらを組み合わせて記載します。

  • 請求項 1(独立項): 上位概念で記載(例:金属製容器)
  • 請求項 2(従属項): 請求項 1 を具体化した下位概念で記載(例:請求項 1 に記載の容器において、材質がアルミニウムである容器)

この構成により、基本は広く(上位)権利を確保し、もし上位概念が拒絶されても、具体例(下位)で権利を確定させる「逃げ道」を作る 手法が取られます。

5-4. 審査への影響

審査官は、特許出願された発明の「上位概念化」を行って、既存の技術(公知技術)と比較することがあります。

  • 進歩性判断: 出願された「下位概念」の具体例が、よく知られた「上位概念」に属しており、容易に置き換え可能と判断されると、進歩性が否定されます。
観点 上位概念 下位概念
表現 抽象的・包括的 具体的・限定的
権利の強さ 強い(広範) 弱い(限定的)
審査の通りやすさ 厳しい 通りやすい
筆記用具 鉛筆

両者のバランスを、特許明細書作成において上手く調整することが重要です。

6. 新規性と進歩性

特許における 新規性進歩性 は、発明が特許として認められるための最も重要な要件です。

6-1. 新規性(Novelty)とは

出願した技術(発明)が、出願時点で世界中のどこにも公知(知られている)技術ではないこと。

  • 基準: 特許出願前に世に出ていないこと(特許法 29 条 1 項)。
  • 新規性を失う例: 学会発表、展示会、製品販売、Web サイトへの公開など。
  • 具体例: 既存製品と構成・目的が全く同じものは新規性がないと判定される。

6-2. 進歩性(Inventive Step)とは

その技術分野における通常の知識を有する者(当業者)が、公知の技術に基づいて容易に考えつくことができないこと。

  • 基準: 容易に創作(思いつく)できないこと(特許法 29 条 2 項)。
  • 判断ポイント: 公知の技術から「容易に改良・改変」できるものは進歩性がない(容易想到)と判断される。
  • 具体例: 単なる設計変更、複数の公知技術の単なる組み合わせなどは進歩性が否定されやすい。

6-3. 同義語・関連用語

  • 新規性がない状態: 公知、公用、文献公知。
  • 進歩性がない状態: 容易想到、技術的な困難性がない、設計変更の範囲内。

6-4. 新規性と進歩性の違い・関係性

観点 新規性 進歩性
性質 客観的な「事実の有無」 技術的困難性に基づく「評価・法的判断」
判定基準 公知技術と少しでも違えば通常は認められる 公知技術と少し違っていても、当業者に容易に思いつくなら否定される
根拠条文 特許法 29 条 1 項 特許法 29 条 2 項

6-5. 事例

  • 新規性がない例: 既に発売されている機能性マスクと全く同じ構造のマスクを特許出願する。
  • 進歩性がない例: A という種類の材料でできたコップに、公知の B という持ち手をつけただけの製品(単なる組み合わせ)。
  • 進歩性が認められた事例: 楽器用チューナーの発明において、単なる構成の変更ではなく、特定の課題を解決する顕著な作用効果を奏する場合。

7. 特許検索プラットフォーム

特許を検索できるプラットフォームは、公的機関が提供する 無料 のものから、民間企業が提供する 高機能な有料サービス まで多数存在します。

7-1. 無料の特許検索データベース(公的機関・グローバル)

サービス 提供元 特徴・用途
J-PlatPat INPIT(工業所有権情報・研修館) 日本最大級の無料 DB。日本の特許・実用新案・意匠・商標をほぼ網羅。番号照会、経過情報確認に最適。
Google Patents Google 世界中の特許文献をキーワードで高速検索。クイック調査向き。
PATENTSCOPE WIPO(世界知的所有権機関) 国際的な特許 DB。PCT 国際出願などを検索可能。
Espacenet EPO(欧州特許庁) 世界 100 か国以上の特許情報にアクセス可能。
開放特許情報 DB INPIT 企業が保有する「使っていない特許(開放特許)」を検索。ライセンス契約検討用。

7-2. 民間・有料の特許検索サービス

高速な AI 検索、高度な分析機能、使いやすい UI が特徴です。調査業務を効率化したい場合に向いています。

サービス 提供元 特徴
Patentfield パテントフィールド AI を活用した特許検索・分析ツール。高速なキーワード検索やマッピングが可能。
JP-NET 日本特許情報機構 日本特許 DB として老舗の有料サービス。
Orbit Intelligence Questel 世界的な特許 DB。高度な検索式や分析が可能。
Derwent Innovation Clarivate 高品質な英語抄録が特徴。グローバル特許調査に強み。

7-3. プラットフォームの選び方

  • 手軽に検索したい: J-PlatPat、Google Patents
  • 海外特許も調べたい: Google Patents、Espacenet、PATENTSCOPE
  • 本格的な先行技術調査・侵害予防調査: Patentfield や Derwent などの有料ツール
  • 技術提携先を探したい: 開放特許情報データベース

8. 特許検索式の基本

特許の 検索式 とは、膨大な特許公報の中から目的の文献を効率よく抽出するために、キーワードや特許分類を 論理演算子(AND, OR, NOT) で組み合わせたコマンドです。

Google などの一般的な検索とは違い、専門的な「特許分類」を活用することで、言葉のゆれ(例:「車」と「自動車」)による漏れを防ぎ、精度の高い調査が可能になります。

8-1. 検索式の基本構成要素

検索式は主に以下の 3 つの要素で組み立てます。

  1. キーワード: 技術内容を表す用語(例:「リチウムイオン電池」「自動運転」)。
  2. 特許分類(FI / F ターム): 特許庁の審査官が付与する技術分野ごとのコード。
    • FI: 国際特許分類(IPC)を日本独自に細分化したもの。
    • F ターム: 技術の目的や構造など、多角的な観点から分類したもの。
  3. 論理演算子: 項目同士をつなぐ記号。
    • AND(*: 両方の条件を満たす(絞り込み)。
    • OR(+: いずれかの条件を満たす(類義語の集約)。
    • NOT(-: 特定の条件を除外する。

8-2. 検索式の作成例(J-PlatPat の場合)

例えば「スマートフォンのカメラに関する技術」を調べたい場合:

[スマートフォン/TX] * [カメラ/TX]

/TX は全文検索を意味するタグの例です。

8-3. なぜ検索式が必要なのか?

特許調査には 「漏れがないこと(再現率)」「ノイズが少ないこと(適合率)」 の両立が求められます。

  • 侵害予防調査: 他社の権利を侵害しないよう、漏れなく探すために複雑な式を組む。
  • 技術動向調査: 特定分野のトレンドを把握するために、分類コードを主軸に構成する。

8-4. データベースごとにフォーマットが違うので注意!

基本的な考え方(キーワードや分類を組み合わせる点)は同じですが、以下の 3 つのポイントで書き方が変わります。

① 演算子の記号

DB AND OR NOT
J-PlatPat * + -
Google Patents AND OR -
商用 DB(JP-NET、Patent Square 等) * ほか、近接検索など独自コマンドあり 同左 同左

② 検索項目を指定する「タグ」

DB
J-PlatPat [スマートフォン/TX](全文検索)
Google Patents ti:スマートフォン(タイトル)
Espacenet txt = "smartphone"

③ ワイルドカードのルール

?$* など、1 文字分なのか複数文字分なのかが DB によって定義が異なります。

8-5. DB プラットフォームに依存しない、基本的な検索式の考え方

どのデータベースを使う場合でも共通する、検索式作成の「黄金律」は 「集合のベン図」で考えること です。ツールごとの記号を覚える前に、以下の 3 つのステップで構造を組み立てます。

ステップ 1: 「掛け算」でコンセプトを固める(AND)

調べたいテーマを、独立した 2〜3 つの概念(要素)に分解します。

  • 例:「電気自動車」 の 「急速充電」 に関する技術
  • 構造:[概念A:電気自動車] AND [概念B:急速充電]

要素を増やしすぎるとヒット件数がゼロになるため、まずは 2〜3 個に留めます。

ステップ 2: 「足し算」で漏れを防ぐ(OR)

各概念について、言い換え(類義語)や、対応する特許分類をすべて足し合わせます。

  • [概念A] = (電気自動車 OR EV OR [分類:B60L...])
  • [概念B] = (急速充電 OR チャージ OR [分類:H02J...])

この「足し算」の塊(集合)をカッコで括るのが、DB を問わない鉄則です。

ステップ 3: 「引き算」でノイズを消す(NOT)

検索結果に全く関係ない分野が混ざる場合のみ、最後に除外します。

  • 例:おもちゃの車を除外したい場合
  • 構造:(全体の結果) NOT [概念C:玩具]

NOT は必要な文献まで消してしまうリスクがあるため、慎重に使います。

汎用的な構成イメージ

どの DB でも、最終的には以下の形を目指してメモ帳などで下書きします。

( 類義語A1 + A2 + 分類A ) × ( 類義語B1 + B2 + 分類B )

このように「概念ごとの箱」を先に作っておけば、あとは各 DB のルールに合わせて記号(+OR に変えるなど)を置換するだけで済みます。

9. 特許分類体系(IPC・CPC・FI・F ターム)

検索式や FTO 調査で頻出する IPCCPC。両方とも特許文献を技術分野ごとに分類するためのコード体系ですが、運用主体・粒度・カバー範囲が異なります。
ここでは違いと、それぞれの公式分類表をどこから取得するかを整理します。

9-1. IPC と CPC の違い

項目 IPC(国際特許分類) CPC(共通特許分類)
正式名称 International Patent Classification Cooperative Patent Classification
運用主体 WIPO(世界知的所有権機関) EPO(欧州特許庁)と USPTO(米国特許商標庁)が共同運用
発足 1968 年〜 2013 年 1 月 1 日に発効
セクション数 8 セクション(A〜H) IPC の 8 セクションに Y を加えた計 9 セクション
分類項目数 約 7 万項目 25 万以上(最も精緻)
採用国 世界共通 欧米だけでなく中国や韓国などでも採用が広がっており、日本でも一部付与
関係 ベース体系 IPC のサブグループ末尾に数字を付加し、IPC よりも細かい分類を可能にしている

9-2. ざっくりまとめ

  • IPC = 世界の共通言語。粒度はやや粗い。
  • CPC = IPC をベースに EPO/USPTO がさらに細分化したもの。形式は ECLA に類似しており、イメージとしては ECLA を発展させたもの。
  • 日本独自の FI も IPC をベースにした細分化体系で、約 19 万項目ある。

実務的には、次の使い分けが基本です。

対象 使う分類体系
日本特許 FI(必要に応じて F ターム)
欧米特許 CPC
全世界の俯瞰 IPC

9-3. IPC・CPC の一覧(公式分類表)の取得先

IPC

提供元 URL 特徴
WIPO(公式・本家) https://ipcpub.wipo.int/ 英語・仏語の正式版、PDF・XML 形式でダウンロード可
日本特許庁(JPO) https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/bunrui/ipc/ipc8wk.html 「国際特許分類(IPC)について」のページ。IPC 第 8 版の概要や IPC 分類表および更新情報を公開。日本語版 を取得するならここ

CPC

提供元 URL 特徴
CPC 公式サイト(EPO/USPTO 共同) https://www.cooperativepatentclassification.org/ 最新の Scheme と Definition をダウンロード可(XML/PDF)
EPO Espacenet 分類検索 https://worldwide.espacenet.com/patent/cpc-browser ブラウザ上で階層をたどれる
USPTO https://www.uspto.gov/web/patents/classification/cpc/html/cpc.html 米国側の公式ページ

9-4. 検索・参照ツール(実務向け)

  • J-PlatPat(特許情報プラットフォーム / 日本特許庁)— IPC・FI・F タームの検索&定義参照に強い。
  • PATENTSCOPE(WIPO)— IPC / CPC の両方で検索可能。
  • Espacenet(EPO)— CPC で検索する場合の定番。

10. 特許番号のフォーマット

10-1. 世界の特許番号の Prefix について

特許番号の先頭に付く JP US CN などは、通常は WIPO Standard ST.3 の 2 文字コード です。これは、どの国・機関の特許文献かを示すためのコードです。

代表的なものは次のとおりです。

Prefix 意味
JP 日本
US 米国
CN 中国
KR 韓国
TW 台湾
EP 欧州特許庁
WO WIPO / PCT 国際公開
GB 英国
DE ドイツ
FR フランス
CA カナダ
AU オーストラリア
IN インド
RU ロシア
BR ブラジル
MX メキシコ
SG シンガポール
HK 香港
EA ユーラシア特許機構
AP ARIPO(アフリカ広域機関)
OA OAPI(アフリカ知財機関)

Prefix だけでは文献の種類までは分からない

たとえば JP2024-123456A のような形では、

  • JP → 国・機関コード
  • 末尾の AB などは kind code(文献種別コード)

WIPO は ST.16 で文献種別コードを整理しており、EPO でも A1 は公開公報系、B1 は成立特許系、といった説明があります。

ざっくり次の見方になります。

  • JP / US / CN = どこの国・機関か
  • A / A1 / B1 / B2 = その文献が公開なのか、特許公報なのか、補正後なのか、などの種別

補足として、WO は「国」ではなく PCT の国際公開番号EP欧州特許庁の公開・公報番号 です。WOEP も Prefix としてよく出ますが、ST.3 上は 機関コード として扱われます。

10-2. 主要国・機関の特許番号フォーマット一覧(JP / US / CN / EP / WO)

実務で見るなら、「出願番号」「公開番号」「登録/特許番号」 を分けて覚えるのが一番わかりやすいです。さらに、A1 B1 などの kind code(文献種別コード) が付くと、公開公報なのか、成立後の特許公報なのかまで判断できます。

Prefix 主体 種別 典型フォーマット 実務メモ
JP 日本 出願番号 / 公開番号 YYYY-NNNNNN JP 2024-123456 JPO のコード表では、出願・公開・公表・公告番号は同形式。2000 年以降は西暦 4 桁+6 桁番号。
JP 日本 登録番号(特許番号) NNNNNNN JP 7654321 日本の登録番号は 年を含まない 7 桁系。検索 DB では kind code 付きで JP2021511705A のような compact 表示になることがある。
US 米国 出願番号 SS/NNNNNN または SSNNNNNN 99/999999 USPTO では、2 桁 series code + 6 桁 serial が application number。
US 米国 公開番号 US YYYY-9999999 KC US 2003-1234567 A1 USPTO では、4 桁年 + 7 桁連番 + 2 文字 kind code
US 米国 特許番号 NNNNNNN... US 12,156,579 / US 7,654,321 B1 USPTO の utility patent は 7 桁以上。実務では B1 B2 まで見ることが多い。
CN 中国 出願番号 YYYY t NNNNNNN.n CN201210367974.4 4 桁年 + 権利種別 1 桁 + 7 桁連番 + チェック digitt=1 は発明、2 は実用新案、3 は意匠。
CN 中国 公開番号 / 公告番号 CN t NNNNNNNN KC CN114989376B 1 桁の種別 + 8 桁連番。CNIPA は公告号の例として CN114989376B を提示。
CN 中国 特許番号 ZL + 出願番号 ZL201210367974.4 CNIPA では、付与後の特許号は ZL+出願番号
EP 欧州特許庁 出願番号 EPYYNNNNNN.C EP00101010.7 2002 年以降の出願番号は 9 桁。先頭 2 桁が年、末尾 1 桁がチェック digit。Register では EP20000101010 のような入力も可能。
EP 欧州特許庁 公開番号 EPNNNNNNN KC EP0927553A1 EPO Publication Server では EP0927553 のように検索可能。kind code は A1 A2 A3 など。
EP 欧州特許庁 特許公報番号 EPNNNNNNN B1/B2/B3 EP0927553B1 B1:付与特許 / B2:異議後の補正明細書 / B3:訂正・制限後の仕様書。
WO WIPO / PCT 国際出願番号 PCT/XXYYYY/NNNNNN PCT/US2013/033682 受理官庁コード + 出願年 + 6 桁番号XX は受理官庁コード(JPUS など)。
WO WIPO / PCT 国際公開番号 WO YYYY/NNNNNN KC WO 2004/123456 A1 WO + 4 桁年 + / + 6 桁番号。kind code は A1 A2 A3 A4 が代表的。WO は公開番号であって、登録番号ではない 点に注意。

10-3. まずこれだけ覚える版

実務で最初に覚えるなら、次の対応でかなり足ります。

  • JP: YYYY-123456 系(出願・公開)/登録は 7 桁
  • US: 公開 = US 2024-1234567 A1、成立特許 = US 12,345,678 B2
  • CN: 出願 = 201210367974.4 系、付与後の特許号 = ZL201210367974.4
  • EP: 公開 = EP1234567A1、特許 = EP1234567B1
  • WO: 国際出願 = PCT/JP2026/123456、国際公開 = WO 2026/123456 A1

10-4. 検索時の注意

Espacenet などの DB では、元の国の表記をそのまま入れるより、標準化された compact 形式 で入れたほうがヒットしやすいです。

EPO は標準形式を CC(ccyy)n(nnnnnn)KC と説明しています。たとえば:

  • US 10,896,908 B2 ではなく → US10896908B2
  • 日本の P2021-511705A 系 → JP2021511705A

10-5. 古い文献でズレやすい点

古い文献では現在の見た目と違うことがあります。

  • 日本: 2000 年より前は 2 桁年や和暦系 が混ざる。
  • EPO の EP 出願番号: 検索画面では 2 桁年 / 4 桁年の両方 が受け付けられる。
  • PCT の WO 公開番号: 古い文献では現在の 4 桁年 + 6 桁番号ではなく、旧形式 が出てくることがある。

11. 知財業務と LLM との相性

ここまで知財業務の基本を整理してきましたが、近年は LLM(大規模言語モデル)を活用した知財支援サービスや、社内独自の AI ワークフローを構築する事例が急速に増えてきました。
ここでは、「なぜ知財業務と LLM の相性が良いのか」 という観点と、「それでも残る難しさ」 の両面から整理していきます。

11-1. 知財業務と LLM が相性が良い理由

特許・知財業務は、結論から言うと LLM が得意とする領域とかなり重なる ドメインです。理由は大きく次の 5 つです。

① 圧倒的に「テキスト中心」のドメインである

特許文献は、明細書・請求項・要約書・拒絶理由通知書・意見書など、ほぼすべてが 構造化された自然言語テキスト で構成されています。
画像(図面)も補助的にありますが、本質的な権利範囲は 文章で定義 されるため、テキスト処理が極めて強い LLM とは構造的に相性が良い領域です。

② フォーマットがある程度パターン化されている

明細書には【発明の名称】【背景技術】【課題】【解決手段】【効果】【実施形態】といった 定型の章立て があり、請求項も「Aを備え、Bを有し、Cすることを特徴とする…」といった 定型表現 が頻出します。
LLM は、こうした 構造化されたパターン を抽出・要約・変換するのが非常に得意です。

③ 専門用語と「自然言語の言い換え」が両立している

特許文献は専門用語が多い一方で、同じ概念を違う表現で書くこと(クレーム・ドラフティング上のテクニック)が頻繁にあります。
たとえば「ネジ」「ボルト」「締結部材」「機械的固定手段」はすべて同じ対象を指す可能性があります。
従来のキーワード検索ではこうした 表現のゆれ で漏れが発生しがちでしたが、LLM や Embedding を使った セマンティック検索 であれば、意味ベースで類似文献を拾うことができます。

④ 多言語対応が必須の領域である

特許は国ごとに出願されるため、日本語・英語・中国語・韓国語・ドイツ語など、多言語にまたがる調査 が必要になります。
LLM は多言語の翻訳・要約に強く、「日本語で発明を説明しただけで、英語・中国語の類似特許を横断的に検索できる」 といった体験を作れるのが大きな強みです。

⑤ 「分類タスク」の塊である

IPC / CPC / FI / F ターム など、特許の世界は 巨大な分類体系 が前提です。
新しい発明の概要から適切な分類コードを提案したり、明細書から自動的に技術分野タグを推定したりする「分類タスク」は、LLM がもっとも得意とするタスクの一つです。

11-2. 具体的なユースケース

実際に、知財業務のどの工程で LLM が活躍するかを整理すると、ざっくり次のようになります。

工程 LLM の活用例
先行技術調査 発明概要から検索クエリ生成、Embedding によるセマンティック検索、類似文献の要約・並べ替え
FTO 調査(侵害予防) 自社製品仕様と請求項を突き合わせ、構成要件充足性の 一次スクリーニング
無効資料調査 対象特許のクレームから「無効化に効きそうな引例の特徴」を逆算し、検索式や Embedding 検索を支援
明細書ドラフト 発明者ヒアリングメモから【背景技術】【課題】【解決手段】の 初稿生成
拒絶理由通知への対応 拒絶理由通知書と引例の論点整理、意見書の 論点リストアップ
翻訳 日本語明細書 ↔ 英語明細書の翻訳ドラフト、PCT 翻訳の下訳
分類・タグ付け IPC / CPC / FI の候補提案、社内独自タクソノミーへの自動分類
パテントマップ作成 大量公報のクラスタリング、各クラスタの自動命名・要約
社内ナレッジ化 過去の出願明細書・社内技術文書の Q&A ボット化、RAG による検索

特に 「最初の一次スクリーニング」「ドラフトの叩き台作り」「大量文献の要約」 といった、人が一次的にやると時間がかかるが、判断ミスがあっても致命傷にならない作業 との相性が非常に良いです。

11-3. それでも残る難しさ・注意点

一方で、知財業務のすべてを LLM に任せられるかというと、現時点ではまだ 慎重な運用が必要 です。
特に次の 4 点は意識しておくべきポイントです。

① ハルシネーション(事実誤認)の致命性

知財業務、特に FTO 調査意見書 は、誤った情報が混ざると 訴訟リスク・経営判断のミス に直結します。
LLM の特性として、もっともらしい誤情報を生成する ハルシネーション は完全には消せないため、

  • 出典(特許番号・段落番号)を必ず提示させる
  • 一次情報(原文)にリンクで遡れる UI にする
  • 重要判断は弁理士・知財担当者の最終レビューを必須にする

といった 「LLM 出力を検証可能にする」設計 が必須になります。

② 機密情報・営業秘密の取り扱い

未出願の発明、出願準備中のクレーム、社外秘の技術資料などを、外部の LLM API にそのまま投げてしまう のは情報漏洩リスクが大きい領域です。

  • 商用 API でも学習に使われない契約(ゼロデータリテンション等) かどうかを確認
  • 社内でのプロンプト運用ルール化(PII / 営業秘密のマスキング)

といった対応をセットで考える必要があります。

③ すべての法的判断は LLM に委ねられない

「この製品はこの特許に侵害しているか」「この発明に進歩性があるか」といった 法的・最終的な判断 は、依然として弁理士・弁護士の専門領域です。
LLM はあくまで 論点整理・候補提示・ドラフト生成 の支援ツールに留め、最終判断を人間が下す Human-in-the-Loop の前提を崩さないことが重要です。

④ 学習データのカットオフと最新特許

LLM の汎用知識には学習データの カットオフ日 があるため、それ以降に公開された特許や法改正の情報は、モデル単体では正しく扱えません。
最新の特許 DB と接続した RAG(Retrieval-Augmented Generation)構成など にして、「検索は外部 DB/生成は LLM」と役割分担するのが現実解です。

11-4. 実装アプローチの事例:RAG + Embedding + 専用 UI

例えば、実務で「知財 × LLM」のシステムを設計するなら、次のような構成などが考えられます。

  1. 特許 DB(J-PlatPat / Espacenet / Patent Public Search / 商用 API) から公報データを取得。
  2. 各文献を チャンク分割(請求項単位、段落単位など)して Embedding 化し、ベクトル DB に格納。
  3. ユーザーの発明概要や製品仕様も Embedding して、ベクトル検索(セマンティック検索) で類似文献を取得。
  4. 取得した文献を LLM に渡し、要約・論点抽出・比較表生成 を行う。
  5. 出力には 必ず出典(特許番号・段落番号)を明記 し、ユーザーが一次情報に戻れるようにする。
  6. FI / CPC / IPC のフィルター有効・消滅などのステータスフィルター を UI 側で組み合わせる。

ポイントは、「LLM 単体で完結させない」 ことです。
特許検索プラットフォームや分類体系といった 既存の知財インフラ と組み合わせることで、初めて実務に耐える精度になります。

11-5. 既に存在する「知財 × AI」サービス例

国内外で、すでに LLM や機械学習を取り入れた知財支援サービスが多数登場しています。
代表的な方向性は次のとおりです。

  • AI 特許検索・分析ツール(例:Patentfield、Tokkyo.Ai、Amplified AI、IPRally など)
    セマンティック検索、自動分類、類似度スコアリング、引用関係の可視化など。
  • 明細書ドラフト支援ツール
    発明概要の入力から、明細書の各項目の初稿を生成。社内ナレッジを取り込んで自社スタイルに合わせるものも。
  • クレームチャート自動生成ツール
    製品仕様と請求項を突き合わせ、構成要件ごとに対応関係を表形式で整理。
  • 拒絶理由通知対応支援ツール
    拒絶理由通知書と引用文献を読み込み、論点整理・補正案・反論案の候補を提示。

サービスの進化は早いため、自社で内製するか/既存サービスを使うかは、「機密性・カスタマイズ性・コスト」 の観点で都度判断する必要があります。

11-6. まとめ:知財業務と LLM の相性は「かなり良い」

総合すると、知財業務と LLM は 構造的にかなり相性が良いドメイン だと言えます。

  • テキスト中心・パターン化された文書・多言語・分類タスクという特徴が、LLM の得意分野とほぼ一致する。
  • 一方で、ハルシネーション・機密性・法的責任 といった観点から、LLM に「最終判断」をさせる設計はまだ早い。
  • 現実的には、RAG + Embedding + 専用 UI + 人間レビュー を組み合わせた 「支援ツールとしての LLM」 が現時点での最適解。

エンジニア視点では、知財業務は 「ドメイン特化 LLM アプリケーション」 を作る題材としても非常に面白い領域です。
特許 DB という大規模な公開データ、明確な分類体系、明らかな業務ペイン(時間がかかる・属人化しやすい)が揃っており、プロダクトとして勝ち筋を作りやすい ドメインでもあります。

まとめ

知財業務の基本を、調査の入口から特許番号のフォーマット、そして LLM との相性まで一通り整理しました。
押さえておきたい全体像は次の 5 点です。

  1. 調査は目的で使い分ける: 出願前なら先行技術調査、製品リリース前なら FTO 調査、警告対応なら無効資料調査。
  2. 権利範囲は「請求項」で決まる: 上位概念で広く、下位概念で逃げ道を作る、というクレーム戦略が基本。
  3. 分類体系は対象で使い分ける: 日本特許なら FI、欧米特許なら CPC、全世界の俯瞰なら IPC。検索式の精度を上げる鍵。
  4. 特許番号は「Prefix + 形式 + kind code」で読む: JP US EP WO などの prefix と、A1 B1 B2 などの kind code を理解すれば、世界中の文献の意味が読み解ける。
  5. 知財業務と LLM の相性は良いが、最終判断は人間に: テキスト・分類・多言語といった LLM の得意分野と重なる一方、ハルシネーションや機密性の観点から、RAG +人間レビューの設計が前提。

エンジニアやプロダクト開発者にとっても、これらを「最低限のリテラシー」として持っておくと、弁理士・知財担当者とのコミュニケーションがスムーズになり、開発の早い段階でリスクを潰せるようになります。
さらに、知財ドメインは LLM アプリケーションの題材としても非常に魅力的 な領域なので、エンジニア視点で関わる価値は今後ますます高まっていくはずです。

[おまけ] LLM/AIエージェントのプロダクト開発ならではの考え方について📝

https://zenn.dev/manase/articles/96a17a6797848e

https://zenn.dev/manase/articles/96a17a6797848e

参考リンク

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/bunrui/ipc/ipc8wk.html

https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/bunrui/ipc/ipc8wk.html

https://www.wipo.int/en/web/standards

https://www.wipo.int/en/web/standards

https://register.epo.org/help?lng=en&topic=countrycodes

https://register.epo.org/help?lng=en&topic=countrycodes

https://zenn.dev/manase/scraps/7fc48414cc60a4

https://zenn.dev/manase/scraps/7fc48414cc60a4

https://zenn.dev/manase/scraps/87fbcf90827f29

https://zenn.dev/manase/scraps/87fbcf90827f29

https://zenn.dev/manase/scraps/e4d62c6e04f14d

https://zenn.dev/manase/scraps/e4d62c6e04f14d

株式会社エムニ
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