本記事は,以下の書籍の内容を参考にした勉強メモです.
https://www.kspub.co.jp/book/detail/1565715.html
重要な議論を飛ばしてイメージ先行で書いていますので,誤り等ありましたらコメントください.
準備
加算無限・非加算無限
任意の集合を考えるとき,それらは集合の要素数に応じて「有限集合」と「無限集合」に分けられる.この無限集合のうち,自然数 \mathbb{N} と1対1で対応がつけられるものを特に加算無限集合であるといい,逆にそうでないものは非加算無限集合であるという.
例えば,3の倍数の集合の要素はある自然数を3倍したものと考えられるため加算無限集合であり,有理数全体の集合は非加算無限集合である.
集合族と冪(べき)集合
要素が集合である集合を集合族といい,ある集合 A のすべての部分集合を要素とする集合族を冪集合という.
一般の和集合・積集合と直和
ある集合族 \{A_\alpha\}_{\alpha\in \Lambda}を考える.この添え字集合 \Lambdaが有限・加算無限・非加算無限にかかわらず,この要素同士の和集合と積集合は以下で定義される.
\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_\lambda = \{x\in S: \exist\lambda\in\Lambda, x\in A_\lambda\} \\
\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_\lambda = \{x\in S: \forall\lambda\in\Lambda, x\in A_\lambda\}
また,集合族\{A_\alpha\}_{\alpha\in \Lambda}の各要素が共通部分を持たない場合,この集合族を非交差的であるといい,非交差的な集合族の和集合を直和であるという.
A=\sqcup_{\lambda}A_\lambda
\sigma-加法族・可測集合・可測空間
ある空でない集合 Sに対して部分集合の集合族 \mathcal{M}が以下の性質を満たすとき,\mathcal{M}を \sigma-加法族という.
\begin{align}
1.& \emptyset\in\mathcal{M} \\
2.& A\in\mathcal{M} => A^\mathcal{C}\in\mathcal{M} \\
3.& \bigcup_n^\infin A_n = A_1\cup A_2\cup ... \in\mathcal{M}
\end{align}
また,Sの部分集合で \sigma-加法族 \mathcal{M}に属するもの( A_n) を可測集合といい,これらの組 (S, \mathcal{M})を可測空間と呼ぶ.
測度・測度空間
可測空間(S, \mathcal{M})に対し, \mathcal{M}上で定義される関数 \muが以下を満たすとき, 写像\muを測度(measure) という.
\begin{align}
1.& \forall A\in\mathcal{M} => 0\leq\mu(A)\leq\infin, \mu(\emptyset)=0 \\
2.& \mu(\bigcup_{n=1}^\infin A_n)=\sum_{n=1}^\infin \mu(A_n)
\end{align}
このS, \mathcal{M}, \muの組(S, \mathcal{M}, \mu)を測度空間という.
また, \mu(N)=0となる N\in\mathcal{M}を零集合といい,測度0の集合を除外する際に便利である.
確率と測度
確率を完全に説明することはできていない(らしい)が,以下で説明する確率空間と確率の定義が,現状では理論と応用で最も成功している.
確率とは,ある集合 \Omegaの部分集合の集合族のうち,ある よい性質を持つ集合族 \mathcal{F} から実数への,ある よい性質を持つ写像 P のことであり,この三つ組み (\Omega, \mathcal{F}, P)を考える.
この(\Omega, \mathcal{F}, P)が測度空間であり,かつ P(\Omega)=1である場合,(\Omega, \mathcal{F}, P)は確率空間となる.この P(A), A\in\mathcal{F}が事象Aの確率であり, \sigma-加法族 \mathcal{F}は事象の集合であると言える.
ここで,\mathcal{F}が有限集合,つまり事象A_1, A_2, ..., A_Nが有限個である場合,確率P(A_n)とは何になるかを考える.定義から,P(A_n)は測度であるため式(5)が成り立ち,さらにA_nが可測集合であるため式(3)が成り立つ.このことから,事象A_nとは測度によって何かしらの大きさに写像され,かつ事象の和の大きさと事象の大きさの和が等しいことがわかる.つまり確率とは,有限個の事象(集合)に対して大きさを定義する写像であり,一般の大きさ(長さ,面積,重さなど)と同様に加算が可能である.
拡張定理 (\mathcal{F}が無限集合の場合)
前章では,\mathcal{F}が有限集合の場合に限定して確率を考えた.\mathcal{F}が無限集合の場合,すべての要素(事象)に対する確率を直感的に決定することは困難である.(式(5)とP(\Omega)=1とか?)そこで,有限の場合に構成しておき,その性質を保つようなものが無限の状況に存在するかを問う.これを「拡張」という.
ここでは拡張定理の説明は飛ばして,適用例のみ説明する.
参考:ホップの拡張定理
空でない集合 S上の有限加法族 \mathcal{A}( \sigma-加法族でなくてもいい)上の有限加法的測度 \nu(測度ではない)は, \nuが \mathcal{A}上で\sigma-加法的であれば, \mathcal{A}から生成された\sigma-加法族\sigma[\mathcal{A}]上の測度 \muに拡張できる.さらに, (S,\mathcal{A},\nu)が\sigma-有限ならば,この拡張された測度 \muは一意的である.
拡張定理の適用例 (無限回のコイン投げ)
標本集合 \Omegaを以下のように定義する.
\Omega = \{(\omega_n)_{n\in\mathbb{N}}:\omega_n\in\{H,T\}\}
ここで,H/T は表/裏を表し, (\omega_n)_{n\in\mathbb{N}}は無限列 \omega_1\omega_2\omega_3 ...を表す.
この無限集合\Omegaの上に問題に沿った \sigma-加法族と確率測度を構成したい.任意の自然数 kと任意の自然数 n_1<n_2<…<n_kと \{H,T\}の要素 \epsilon_1,…,\epsilon_kに対し,
A(n_1,...,n_k;\epsilon_1,...,\epsilon_k)=\{(\omega_n)_{n\in\mathbb{N}}\in\Omega:\omega_{n_1}=\epsilon_1,...,\omega_{n_k}=\epsilon_k\}
の形の部分集合を考える.つまり,無限列に対し有限個の場所とそこでの結果は指定するが,そのほかは何でもよい,という集合である.この形の部分集合とそれらの有限和集合のなす集合族 \mathcal{A}上の集合関数 Pを「表の出る確率」 p(0<p<1)について,
P(A(n_1,...,n_k;\epsilon_1,...,\epsilon_k)) = p^m(1-p)^{k-m}
で定める.ここで, mは\epsilon_1,…,\epsilon_kの中のHの個数となる.あとは,この Pが \mathcal{A}上で \sigma-加法的であることを確認すればよい.(これがちょっと難しい…)
ルベーグ測度
上記のように,(例えば)任意の確率にとって良い性質を持つ\sigma-加法族 \mathcal{F}や写像 Pを一意に構成するのは容易ではない.そこで, n次元ユークリッド空間 \mathbb{R}^n上の大きさ(長さ,面積,重さといった概念)と自然に対応する一様な測度をルベーグ測度といい,ルベーグ測度空間は (\mathbb{R}, \overline{\mathcal{B}(\mathbb{R})}, \overline{l})と表現される.
簡単に説明すると,ルベーグ測度とは,実数全体を標本集合とし,実数上のすべての開区間のなる集合族から生成される \sigma-加法族(ボレル集合族)を対象とし,任意の二要素 a<b\in\mathbb{R}に対して l((a,b])=b-aとする写像である.
また, \overline{l}は完備化を示しており,測度空間(\mathbb{R}, {\mathcal{B}(\mathbb{R})}, {l})の写像 lの零集合 Nがあるとき, 以下が成り立つ.
\overline{\mathcal{B}(\mathbb{R})} = \{B\cup Z : B\in\mathcal{B}(\mathbb{R}), Z\subset N\in\mathcal{B}(\mathbb{R}), l(N)=0\} \\
\overline{l}(B\cup Z) = l(B)
まとめ
測度とは,一般的な大きさ(長さ,面積,重さなど)の概念の抽象化である.
確率とは,有限個の事象(集合)に対して大きさを定義する写像であり,一般の大きさ(長さ,面積,重さなど)と同様に加算が可能である.
また,確率とは,無限列に対し有限個の場所とそこでの結果は指定するが,そのほかは何でもよい,という集合を定義することで,無限列についても拡張可能である.
ルベーグ測度とは,n次元ユークリッド空間 \mathbb{R}^n上の大きさ(長さ,面積,重さといった概念)と自然に対応する一様な測度である.
Discussion