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QAコミュニケーションアンチパターン 3章 絶望への足音

2024/09/18に公開

絶望への足音

「独黒さん、よろしいでしょうか?」

「なんだ」

この会社に入って3ヶ月になるが、独黒さんの態度はだいぶ変わっていた。3ヶ月後にオフィスを移転すると言っていた話も、いつの間にか消えていた。

「今日は提案資料を作って持ってきました」

「ほぉ、提案か。元コンサルの俺に提案するとは、いい度胸だな。クックック。見せてみろよ」

独黒さんは資料を紙でしか見ないため、ペラペラと紙をめくっていた。

「説明させていただいてもよろしいでしょうか?」

「説明?なんだこの資料は?クソだな」

そう言うと、独黒さんは説明資料をシュレッダーにかけてしまった。唖然としていると、

「改善したいなら、自分でどこかから金を引っ張ってきて、その金でやれよ。なんで俺にその話をするんだ?意味ねぇだろ」

何も言い返せなかった。というか、言う気力がなかった。それから2時間近く、昔のコンサル時代の自慢話や、昨日の夜の出来事など、どうでもいい話を延々と聞かされた。何一つ頭に入ってこない。

しばらくすると、社員の女性がすごい剣幕で部屋に入ってきた。

「メビウス、ちょっと出てろ」

部屋を追い出された。部屋からは、

「ちょっと、これどういうこと?」

「なんだろうな?」

「借金の取り立てじゃない?」

「ば、バカか、聞こえるだろ」

「資金の調達って、借金じゃないでしょうね?」

「そんなわけないだろ。金は入るってばよ」

「もう、信じられるわけないでしょ」

僕は、何をしているのだろう。

「だいたい、この詐欺みたいなマッチングアプリは何よ。ついに訴状も来ているわよ」

「そんなの放っておけよ。払わなければいいんだ。やばくなったら海外に逃げればいいさ」

「もう、ついていけないよ」

女性が部屋から出てきて、そのまま会社を出て行ってしまった。

「なんだ、聞いていたのか?」

「よく聞こえませんでした」

「なら、いいよ」

僕は放心したまま、会社を出た。今週末は楽しみにしていたライブがある。

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