QAコミュニケーションアンチパターン 序章
有路玲夢(あいろれむ) ハンドルネーム メビウス君
ハンドルネームは「メビウス君」。中学2年生の頃、とあるロボットアニメのエンディングテーマに心を奪われ、勢いで「メビウス」というハンドルネームを作成したが、クラスメイトにその名前がバレてしまい、それ以来ずっと「メビウス君」と呼ばれるようになった。「メビウス君」と呼ばれるたびに、思春期の黒歴史を思い出して微妙な気持ちになるが、今さら変えることもできず、しぶしぶ受け入れている。 技術力と人間性を兼ね備えた「いい奴」で、コミュニケーション力に優れ、フェアネスと共感を大切にしている。
「はぁ…」楽しみにしていたライブの帰り、電車の中で深いため息が無意識に出てしまう。今日は楽しかったはずなのに、そのため息がよほど重かったのだろうか、なんとなく視線を感じ、恥ずかしくなって下を向いた。
「少しは元気になったかな…」そう自分に問いかけるが、明日を思うとやはり憂鬱になる。また、プレッシャーや叱責、疑心暗鬼、そして言葉の一言一言に気を配らなければならない環境が待っている。正直、仕事に集中できる状態ではない。余計な人間関係やコミュニケーションに気をつけることに、心底疲れていた。
ふと気がつくと、降車駅に到着していた。ドアが開き、乗客が電車を降り、次々に乗り込んでいく。慌てて席を立ち、電車を降りた。
寝ていたわけでもないのに、気づかないほど疲れていたのだろう。そのことを自覚して、さらに気持ちが落ち込んでしまう。何もかもがマイナスに感じられる。
駅の改札を抜けると、突然「今日、ライブ会場にいましたよね?」と声をかけられた。
驚いて振り返ると、どこかで見覚えのある顔だったが、記憶は曖昧だ。向こうも一瞬「あれ?」という表情をしたようだったが、今日見に行ったライブはインディーバンドのもので、会場のキャパシティも200人ほどだったので、驚きが先に立った。
「は、はい!」
「やっぱり!今日のライブ、セットリストやばくなかった???」
インディーバンドのライブあるあるだが、狭いコミュニティなので共通の趣味を持つ人に出会うとテンションが上がる。その人の表情があまりにも明るかったので、つられて自分も笑顔になる。
「ですよね!まさか、あの曲を演奏するとは!」
「だよねだよね、号泣しちゃったよ」
「わかります!」
すっかり意気投合してしまった。
「時間あります?ちょっと話しません?」
「ぜひぜひ」
近くの居酒屋に入り、少し落ち着いたところで、バンドの話が一段落した後に
「何の仕事をしてるの?」と聞かれたので
「エンジニアをやっています」
「マジ?同業?」
「そうなんですか?」
「さっき電車で深いため息をついていたでしょ?」
「あ…見られてました…恥ずかしい」
「何か辛いことがあるの?」
「そうですね…」
そして、これまでの出来事を話し始めた。
Discussion